近年の製造現場では、人手不足や製品の精密化などの理由により、AIによる外観検査の普及拡大が進んでいます。
しかし、外観検査を自動化することによるメリットはあっても、自社が導入することで同じような恩恵が受けられるのか、という不安があるかもしれません。
そこで本記事では、AIによる外観検査の注意点やおすすめシステム、事例などもご紹介します。
AIによる外観検査の仕組みは?
AIによる外観検査において有名なのは、「ディープラーニング」という技術です。機械学習の一種であり、無数のデータから特徴やパターンを自ら学習していきます。
「ディープニューラルネットワーク」といって「人間の脳の神経回路の一部を模した数理モデル」である隠れ層の重みづけのパラメータを、シミュレーションしながら最適化することが特徴です。これにより、入力に対して最適な結果が出力されます。
ディープラーニングの活用によって、エンジニア自身が細かい設定やアルゴリズムを考えることなく欠陥箇所の特定を行うことができるのです。
AIによる外観検査のメリットとは?
課題の多い製造現場ではAIによる外観検査に期待が寄せられていますが、AI外観検査を導入するメリットは大きく4つあります。
- ヒューマンエラーの防止
- 検査スピードの向上(業務効率化)
- 高い検査精度
- 設定の簡易化
順番に見ていきましょう。
ヒューマンエラーの防止
AIによる外観検査には、ヒューマンエラーを防止できるメリットがあります。
人間の目を使った目視検査では、ヒューマンエラーがゼロになることはありません。そもそも外観検査には、細かい不具合も見逃さないような高い集中力や洞察力が求められます。しかし、たとえ熟練の検査員を配置したとしても、その日の体調や精神状態が悪ければ見逃しのリスクは高まるでしょう。
AIであれば常に安定して高度な検査を継続することができます。
検査スピードの向上(業務効率化)
検査スピードが向上して業務の効率化が図れることも、AI外観検査のメリットです。
製造現場では、不具合が発生するたびに検査員の負担は増加してしまいます。平常時は1人の検査員が配置されていても、不具合が発生すると2人になったり場合によってはそれ以上の人手が必要になる場合もあります。
企業の生命活動というべき生産工程に配置された人員を検査に補填する形になってしまうことから、生産工程における人手不足や人件費の増加を生んでしまうのです。
AIによる外観検査を導入することで、検査に必要な検査員を最小限に抑えるとともに、過剰な人員を生産へと回すことができます。
高い検査精度
検査精度の高さも、AI外観検査ならではのメリットです。
一眼レフカメラレンズやセラミック基板など、製造現場によってはごく微小な不具合でも許されない現場もあります。しかし、2100万画素の高性能な画像センサーを搭載した検査用カメラを使えば、0.05mm以下のキズや異物も見逃しません。
上記のようなシビアな現場では、専用のソリューションや熟練の検査員が検査を行われていることがほとんどです。場合によっては、拡大鏡や顕微鏡を使って検査を行うので、検査員にとっては負担の大きな作業であることは間違いありません。
設定の簡易化
従来の画像検査システムの場合、新製品が登場するたびに設定を変更する必要があるのですが、この作業には膨大な時間と労力を必要とします。また、設定変更はシステムに知見をもった技術者でないと難しいことから、人員不足の原因や生産効率の悪化、後継者不足といった問題も生じてしまいます。
AI外観検査の一部製品では、良品をもとに未知の不良(今まで発生したことがない不良)を判定することが可能です。データ設定を簡易化できるほか、不良品の見逃しリスクを低減することができます。
AIを活用することで、従来の画像検査システムにはない設定の簡素化を実現できるのです。
AIによる外観検査の事例
ここでは、AIによる外観検査を導入して成功した事例をご紹介します。
- 業務効率化に成功
- 検査基準の統一化に成功
- 人件費の大幅削減に成功
以下で、詳しく見ていきましょう。
<事例①>業務効率化に成功
「免疫検査抗体製造における冷凍真空乾燥準備工程」に、ロボットを導入した企業の事例です。
抗原抗体反応を利用した迅速検査の「イムノクロマト」の準備工程では、他種のチューブ状容器と他種のろ紙状シートを目視検査を行いながら、トレイの上に整列させて試薬を分注するという複雑な作業をしていました。
自動化を進めたあとは、双腕ロボットと検査カメラが部材の取り出しやトレイの整列、試薬塗布・分注を行うようになりました。
【課題】
- 多品種の繊細な目視検査に時間がかかる
- 検査品質にばらつきが出てしまう
【導入による効果】
- 大幅な作業工数を削減(1日7.5時間から1時間へ短縮)
- 検査品質の安定に成功
AIによる外観検査の導入により、労働生産性が7.5倍に増えています。
※引用元:外観検査の自動化における従来技術とAIの違いや活用事例について|日本サポートシステム株式会社
<事例②>検査基準の均一化に成功
次は、プラスチック製品製造会社での事例です。
樹脂成形工程において検査員が製品の全数検査を行っていたのですが、曖昧な検査基準によってばらつきがあるうえ、不良流出を恐れてオーバーキルも発生していたのです。
自動化された検査システムを導入したことで、検査員を配置する必要がなくなりました。
【課題】
- 全数検査で検査員に負荷がかかり、疲労の原因になっていた
- 検査員によって判断基準がばらついていた
【導入による効果】
- 分析・改善業務に注力できるようになった
- オーバーキルが減って良品判定数が増加した
検査をデジタル化することで、検査基準の均一化や品質向上に成功しました。
※引用元:AI外観検査ソリューション 導入事例「樹脂成形」|コニカミノルタ
<事例③>人件費の大幅削減に成功
最後は、金属箔の表面外観検査を行っていた会社の事例です。
金属箔の検査工程では、画像検査機でNG判定されたキズやシミ、打痕などの画像を検査員が目視確認して、最終判定を行っていました。
AI構築だけでなく、既存ラインの生産・検査装置やPLCと連動するAI検査システムを導入したことで、NG判定された画像をAIが分析、判定するようになり、検査員の目視確認が不要になったのです。
【課題】
- 検査員の人件費が発生
- 判定基準にばらつきがある
【導入による効果】
- 人件費の大幅な削減に成功
- 検査精度の均一化・向上に成功(不良分類を15種類から89種類に詳細化)
目視検査をAIが行うことで、人件費の削減と検査精度の均一化・向上に成功しました。
※引用元:活用事例|AI外観検査ソリューション「WisSight」
AIによる外観検査の注意点
AIによる外観検査の注意点は、以下の2つです。
- 学習データの準備が必要
- システム選びが重要
それぞれ、詳しくご説明していきます。
学習データの準備が必要
ディープラーニングは機械学習の一種であることから、キズや異物といった不具合を自動的に発見するには学習データが不可欠です。検査レベルによっては、ラベル付けされた大量の学習データを要します。
ただし、適切な学習データが準備できれば、あとは半自動的なプロセスによって仕組みを構築することができます。
システム選びが重要
自社の検査に適切なシステム選びができていないと、精度の低い判定結果しか出すことができない恐れがあります。そのため、システムや技術への理解があって適切なプロセスを構築できるベンダーと課題に取り組む必要があります。
AI外観検査システム「AISIA-AD」
最後に、AI外観検査システムの「AISIA-AD」をご紹介します。
AISIA-ADの特徴
AISIA-ADは、汎用性が高いマイクロソフト社の「Azure Machine Learning」を活用したAIソフトウェアパッケージです。工場、現場、倉庫などで培われた熟練検査員の経験や技が活かされているので、精度の高い検査を実現します。
主な特徴は、以下の通りです。
- 最適AIモデルの適用
- 最適AIモデルと連携する機器
AISIA-ADを提供するシステムインテグレータでは、AIモデルを限定することなく適合するAIモデルや機器類を組み合わせて、お客様固有の条件に合ったAI外観検査システムをご提案します。
また、照明、カメラ、各種センサー、搬送機器などとデータ連携して画像データ処理、判定、判定後の処理までトータルでサポートします。
AISIA-ADの導入事例
AISIA-ADの導入事例を、ご紹介します。
【事例1:機能性シートメーカーA社様】
A社様は1000枚/日の異常判定の中で60%もの過検出判定であったことから、検査機による検査後に人による目視検査を行っていました。検査機の導入で目視検査対象を最小に抑える計画が、過検出によって検査員の負荷を高めていたのです。
AISIA-ADを導入いただいたことで、目視検査数が9割減の60枚/日まで減少しました。
まとめ
御社の検査対象にマッチするソリューションは見つかりましたでしょうか?
実際に自社の検査対象でどれくらい自動化が実現できるのかわからないと思われる方も多いのではないでしょうか。どのような製品がAI導入に効果的なのか、その他ブログでは紹介していない導入事例などまとめた資料もございますので、ぜひご活用ください。