高品質な製品を製造するうえで、不良品をいかに見逃さないかという点も重要です。
高い品質を保つには、不良品をできるだけ少なくする取り組みとともに、発生した不良品を検査する仕組みが必要です。しかし、検査の仕組みを作った場合でもヒューマンエラーによる見逃しを防止することは非常に困難です。異常のある製品を見逃して市場へ流出してしまうと、クレームや会社への信頼低下といった致命的なダメージを会社に与えてしまいます。
ところが、近年では新技術の台頭により課題は解消されつつあります。
そこで本記事では、製造業で発生する外観検査の見逃しを防止するのに最適な方法をご紹介します。不良品の見逃しに頭を抱えている方は、ぜひご覧ください。
製造業における外観検査とは?
外観検査とは、製品の表面に欠陥や不具合がないかチェックすることです。
その外観検査の大きな役割は、2つあります。
- 欠陥品の市場流出を防止
- 品質の改善
規格に適合しない欠陥品を流出させてしまうと、膨大な回収コストが発生するうえに自社の信頼を大きく損ねてしまいます。事前に検査をすることで、欠陥品が発生した場合でも流出を防ぐことができます。
また、検査により常時発生している不具合があると分かった場合は、その根本原因を確認・対応することで全体の品質改善が可能にもなります。
外観検査を行うことで、「余計なコストの削減」「信頼の維持」「前工程の設備改善」といった効果があるのです。
以上の理由から、高品質な製品の生産に外観検査は欠かせません。
外観検査で見逃しが発生する要因
現在、製造業において外観検査は「目視検査」で行うことが主流です。
この目視検査は、検査員さえ確保できればすぐに実施できるというメリットはありますが、いくつか課題があり、見逃しが発生しやすい検査方法であるといえます。
実際にどのような課題があるのか見ていきましょう。
人手不足の深刻化
先ほど「検査員さえ確保できれば」メリットがあるとご説明しましたが、製造現場での人手不足は深刻化しており、十分な検査員を確保できないケースも多いです。
大きな要因のひとつが少子高齢化であると同時に、働き方改革の推進によってパートタイマーやアルバイトの時給は10年前と比べて200円近く上昇しています(2011年は時給837円、2021年は時給1,013円(東京都の場合))。
こうした背景から、外国人技能実習生の受け入れが活発化しています。しかし、在留資格やビザの取得、管理団体への申し込み、認定申請といった複雑な手続きを経なければなりません。
このような理由から、多くの製造現場では人手不足が深刻化しているのが現状です。
検査員が不足することで一人あたりの負担は大きくなり、体や精神にダメージを与えます。コンディションの悪化は、見逃しのリスクを高めてしまいます。
教育の難しさ
検査員の検査スキルは経験が培う部分も大きく、教育は困難です。また、修練者の技能を共有することが必要ですが、限界があります。
その理由は、大きく2つあります。
- 中間層の検査員がいない
- 修練者の再雇用は長期で継続できない
バブル期以降の不景気を理由に新規採用を見送ってきたため中間層が少なく、新入社員の習熟は定年退職後に再雇用された検査員が行うケースも珍しくありません。実際、再雇用による高齢者の就業者数は年々増加していて、現在はピークをむかえています。
しかし、再雇用からの継続は体力面で難しく、おおむね5年以内にはリタイアする人が急増します。総務省の資料(※)から年齢階級別の就業率を見ると、65~69歳は48.8%ですが、70歳以上は17.2%にまで落ち込んでしまうのです。
認定試験制度などの教育を施す方法もありますが、多額の予算を投じられる企業は多くありません。教育が不十分なまま検査してしまうと、やはり見逃しが発生してしまいます。
(※)高齢者の就業|総務省
環境整備の必要性
目視検査は、検査員のコンディションが重症になるため、「検査をしやすい環境」を整える必要があります。
- 健康状態の確認
- 不良検出に適した照明の選択
- できるだけ製品を動かして検査を実施する
- 実検査での訓練
- 検査時間の短縮
しかし、コストの問題で環境整備に限界があるものも存在します。
たとえば、検査員の体に負担を最小限にして大きな製品を検査するには、専用の設備を導入しなければなりません。負担の少ない姿勢で検査をする以外の方法は少ないでしょう。
検査環境の悪化が、見逃し発生の要因になることもあります。
外観検査の見逃し防止策
外観検査の見逃しを防止するには、「外観検査の自動化」が効果的です。外観検査の自動以下により、以下の問題を解消できるからです。
- 人手不足を解消できる
- 疲労がないので、高い検査精度を維持できる
- 最低限の環境整備で十分
自動化では、画像を用いて検査を実施する「画像検査」が行われます。
画像検査は、カメラで撮像した製品の画像を処理装置へ送り、画像から読み取ることのできる特徴をもとに異常の有無を判定します。
不良品が発生したときの対応は、主に3パターンです。
- 不良品に人が対応:作業員が不良品を仮置き場に静置する
- 不良品に機械が対応:ロボットが不良品を仮置き場に静置する
- 不良品に自動搬送が対応:NGラインへと切り替えて不良品を搬送する
製造現場によって臨機応変に対応できることから、外観検査の見逃し防止には画像検査が最も有効な手段といえます。
外観検査システムを活用して見逃し防止!
画像検査では、外観検査システムを活用して検査を行います。
ここでは、その外観検査システムの種類をご紹介します。
- ルールベース型システム
- AI外観検査システム
上から順番に見ていきましょう。
ルールベース型システム
ルールベース型システムとは、センサーによって測定されたデータが許容範囲外である製品を不適合と判断する「外れ値検査」と呼ばれる検査方法を利用したシステムです。寸法、パーツの有無、汚れ、色ムラといった製品情報を自動で測定したあと、しきい値と比較して判定します。
しきい値の設定には、手動と自動があります。
人間が過去のデータからしきい値を設定して、生産を継続しながら大きな不具合が行い範囲で微妙に調整していく方法が「手動」です。「自動」の場合は、過去のデータを使って統計的に作成したデータ分布から外れた値のものを異常と判断します。
ルール設定上ならば高い精度で判定できるものの、定義の難易度が高いうえに、設定や管理をする技術者が属人化してしまうデメリットがあります。
AI外観検査システム
AI外観検査システムは、「ディープラーニング」を用いた外観検査です。
機械学習の一種であるディープラーニング(深層学習)は、人間が行うタスクをコンピューターに学習させることが可能です。画像認識だけでなく、音声認識や言語学習にも適用されています。
「画像認識」という点ではベース型システムと共通していますが、以下のような点に大きな違いがあります。
- 位置修正や異常判定を自動で行う
- 学習が進むほど正常・異常をより高い精度で判断できるようになる
人間に近い検査が可能な一方で、学習データ量の多さや定量的ルールの学習が苦手です。
判定する対象の製品や、何を異常・不良として判断するかなどによってどちらのシステムがより適しているかが変わってきます。自社の目的に沿ったシステム導入を検討しましょう。
AI外観検査システム 「AISIA-AD」
弊社システムインテグレータが提供するAISIA-ADは、製品のキズや凹みなどの欠陥をAIで自動検出するAIソフトウェアパッケージです。
学習データ管理、ラベル付け、異常個所の表示、監視・訂正、追加学習といった製造現場に活かせる機能が搭載されているので、初めからAIモデルを構築していく必要はありません。
従来のルールベース型検査システムは、複雑なルール設定に技術者が属人化していました。これにより、生産効率の悪化や後継者不足といった問題に悩まされていたのです。
しかし、AISIA-ADは検査対象となる製品の正常・異常の画像だけで学習させることが可能です。そのため導入時の作業者の負担やコストをおさえることも可能です。
複雑な設定が不要なことから、AIに慣れていないユーザー・ベンダーでも簡単に使用できます。人手不足にお悩みの企業様は、ぜひ前向きにご検討ください。
まとめ
外観検査によって、製造現場における不良品の流出防止や製品の品質担保などが可能になります。不良品の検査を熟練の経験に依存している場合、ヒューマンエラーや人材不足といった課題は常について回ります。
外観検査をAI化することで、このような課題を解決した導入事例などまとめた資料もございますので、現在課題をお持ちの方はぜひご一読ください。