ウェルドラインとはどのような成形不良?要因や対策を紹介

 2022.01.14  株式会社システムインテグレータ

射出成形品を製造する際に起こるウェルドラインは、製品の強度が落ちてしまうリスクがある成形不良のひとつです。ウェルドラインを完全に防ぐのは簡単ではありませんが、ある程度発生を予見して防ぐことはできます。

今回はウェルドラインに関する基礎知識から、発生要因や対策方法までご紹介します。

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ウェルドラインとは

ウェルドラインとはどのような成形不良?要因や対策を紹介

一般的な樹脂(プラスチック)の成形方法は、熱硬化性樹脂であれば「真空成形」「圧縮成形」「積層成形」など、熱可塑性樹脂であれば「射出成形」「ブロー成形」「押出し成形」などがあります。

このなかで、ウェルドラインが起こる成形方法は、熱可塑性樹脂の成形方法のひとつである「射出成形」です。

ウェルドラインとは、成形品の表面に出るライン状の模様を指すもので、一見すると成形品にひっかき傷がついているようにも見えます。

実際には、ライン状の筋が入っているだけではあるものの、ウェルドラインが入っている箇所は、樹脂がうまく混ざり合っていないために強度が弱くなっています。軽い衝撃を与えただけでも割れや破損が起きやすく、取引先や消費者からのクレームにつながるリスクが高い成形不良といえるでしょう。

射出成形以外の成形方法を詳しく知りたい場合は「樹脂成型品の種類や加工方法は?よくある加工不良と効率的な検査法まで解説!」をご覧ください。

ウェルドラインの発生要因

なぜ射出成形においてウェルドラインが発生してしまうのでしょう。ここでは発生要因と、ウェルドラインの発生が強度低下につながってしまう理由について説明します。

ウェルドラインの発生要因を知るには、まず射出成形とはどのようなものなのかを知らなくてはなりません。

射出成形とは、加熱して溶けた樹脂を射出機から金型へ射出・圧入することで加工する成形方法です。肉厚の薄い製品や複雑な形状の加工にも向いた方法で、大量の製品を素早く成形でき、仕上げの工程も不要といったさまざまなメリットを持っています。

この射出成形を行う際にウェルドラインが発生するのは、射出された樹脂が金型のなかで一旦分岐し、再度合流する部分です。

前述したように射出成形は複雑な形状の製品加工に使われることが多く、金型に射出された樹脂はさまざまな方向へと分岐していきます。分岐して流れていくなかで加熱された樹脂の温度が下がり、合流する際に樹脂の先端部分がすでに固まっている状態だと、うまく混ざり合えません。固化した樹脂がぶつかり合い、その部分にラインが生じてしまいます。これがウェルドラインの発生する主な原因です。

なお、ウェルドラインには金型の形状によって主に次の2種類があります。

対向流ウェルド

穴の開いた形状の金型のなかで円を描くような形で樹脂が分岐し、その先端部分が正面から合流するパターンのウェルドです。先端の固化している部分が正面からぶつかり合うため、合流した際に深いV字の溝ができ、ウェルドラインがよりはっきりと浮かび上がります。

並走流ウェルド

複数のゲートから射出された樹脂が同じ方向へ向かって進み、そのまま合流するパターンのウェルドです。並走する形で合流するため、対向流ウェルドに比べるとV字も浅く、ウェルドラインもそれほど強くは浮かび上がりません。

ほかのパターンとしては、肉厚が極端に異なる金型に樹脂を流す場合が考えられます。樹脂は厚い部分で流れやすく、薄い部分では流れにくくなるため、薄い部分から肉薄の部分に流れる時には樹脂が固まってしまい、ウェルドラインができやすくなる傾向があります。

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ウェルドラインの発生は予見できるか

ウェルドラインとはどのような成形不良?要因や対策を紹介-1

冒頭でウェルドラインを100%防ぐことは簡単ではないとご説明しましたが、ある程度ウェルドラインができる可能性を予見し、その対策を打つことはできます。具体的には、まずウェルドラインが発生する可能性の予見から始めましょう。

前項でも説明したように、ウェルドラインの主な発生要因のひとつが成形品の形状です。特に新製品を製造する際、初めて使う金型にいきなり全量の樹脂を射出すればウェルドラインができてしまう可能性は高まります。そこで、効果的なウェルドライン対策を打つためには、ウェルドラインができた箇所のショートショットを作成して発生を予見するのがポイントになります。

ショートショットは金型への充填量が足りず製品の一部が欠けたりするプラスチックの成形不良を意味する言葉としてもも使われますが、ここでは初めて使う金型で用いられる加工方法のことを指します。最初は充填量を全量にせず、少しずつ増やしながら低い保圧に切り替えていく方法で、製造条件が不明瞭な場合に必要な条件を把握するのに有効です。

この方法を使い、ウェルドラインが発生した箇所の手前から発生後の位置までを複数の段階に分けてショートショットを成形します。これにより、時間経過による樹脂の流れが可視化され、ウェルドラインができた箇所のなかでも、さらに発生箇所を特定できます。どの部分でウェルドラインができているかが予見できれば、対策方法も検討できるようになるので、まずはウェルドラインが起きる箇所を予見しておきましょう。

ウェルドラインを防ぐ対策方法

ある程度ウェルドラインを予見できるようになれば、対策を講じることができます。そこでここでは、ウェルドラインを防ぐ主な方法を4点ご紹介します。

樹脂温度や金型温度を上げる

1つ目は樹脂温度や金型温度を上げる方法です。ウェルドラインは、加熱された樹脂が金型のなかに流れていく間に熱を奪われ冷えてしまうことが原因で発生します。そこで、樹脂の温度や金型の温度を今よりも高く設定し、できるだけ長い時間、樹脂が温度を下げずに流れられるようにします。樹脂が固まる時間を遅らせることでウェルドラインができるリスクが軽減されます。

この方法のメリットは現状の金型をそのまま使って対策が行える点にあります。新たに金型をつくり直す手間がないため、比較的、容易に行える対策といえるでしょう。

ただし、樹脂温度を上げるためには、これまで以上に熱を高める必要があり、金型の温度を上げるには、金型にカートリッジヒーターを取り付けるなどの対応が必要となるため手間とコストがかかります。

ヒートアンドクール成形を行う

ヒートアンドクール成形とは、ウェルドレス成形とも呼ばれる成形方法です。金型の表面部分を高温にして樹脂の冷却固化を遅らせ、合流したところで冷却して一気に固化させます。これにより合流した時点では完全に固化せずV字の溝ができにくくなって目立つウェルドラインの発生を大幅に削減できます。

ヒートアンドクール成形を行うメリットは主に2点あります。1つ目は、金型の表面を高温にすることで樹脂の外側部分の冷却を抑えられるため、高流動状態を維持できる点。そしてもう1つが、金型のなかで樹脂が高速で流れることから、射出時に樹脂に高圧をかける必要がない点です。

デメリットとしては、金型の表面を高温にした後、急速に冷却しなくてはならないため、急激な温度変化に耐えられる金型を用意する必要がある点。そして、成形サイクルが長くなるため光熱費が高くなり、製品単価に影響を与える可能性がある点が挙げられます。

また、ヒートアンドクール成形では、ウェルドラインが目立たなくなるだけで完全になくなるわけではありません。そのため、強度が弱くなってしまうというウェルドラインのもうひとつのデメリットへの対策が別途必要になる点にも注意が必要です。

ゲート位置を変える

ゲートとは、金型に樹脂が流れ込む入り口部分を指します。ゲートの役割は、「樹脂が射出され金型に流れる際の速度を制御する」「樹脂の射出が終わった際、先にゲート部分が固化することによる樹脂の逆流を防止し圧力を調整する」「ゲートの幅の広さを調節して摩擦熱を発生させることで樹脂温度をコントロールする」などさまざまです。そして、ゲートの位置を変えることでウェルドライン対策にもなります。

具体的には、ウェルドラインができやすい位置にゲートを設置し、高い温度のまま樹脂を射出できるようにすることでウェルドラインの発生を抑えます。また、ゲートを1カ所だけではなく複数設置し、できるだけ対向流ウェルドをつくらないようにするのもウェルドライン対策のひとつです。

ちなみにゲートにはさまざまな形状があります。製品や金型の形状に合わせて適切にゲートを設置することでウェルドラインの発生を防止できます。ここでは主なゲートの形状を紹介します。

ダイレクトゲート

通常、金型とゲートの間には樹脂が通る道(ランナー)がありますが、ダイレクトゲートはランナーを使わず直接、金型にゲートを設置するものです。形状がシンプルなものや肉厚が厚い製品に適したゲートです。ただし、金型から成形品を取り出した後にゲートを切断するゲートカットで切断面が大きくなってしまうという難点があります。

サイドゲート

金型の側面に設置するゲートです。複数のゲートを設置できるため多くの製品に使われています。設置個所を工夫すればウェルドラインを抑えることも可能です。ただし、設置数が多いほどゲートカットの仕上げ作業に手間がかかります。

ジャンプゲート

サイドゲート同様、複数箇所にゲートを設置する対策ですが、サイドゲートが金型の側面にゲートを設置するのに対し、ジャンプゲートでは金型の上面や下面に設置します。製品の側面に切断の跡を残したくない場合に使われます。ただし、サイドゲートと比べて切断しづらいのが難点です。

形状を変更する

最後の対策は、金型の形状を変更することでウェルドラインを減らす方法です。具体的には次のような方法が考えられます。

貫通穴をなくす、もしくは小さくする

金型の温度調節をする際、金型に開けた貫通穴から水や空気、油などを流します。これにより樹脂の冷却固化を進められますが、逆にウェルドライン発生の要因になるケースも少なくありません。そこで、ウェルドラインが発生しやすい箇所に貫通穴がある場合、穴の大きさを小さくするか、なくしてしまうことで冷却時間を遅らせ、ウェルドラインの発生リスクを軽減できます。

極端な肉厚差を抑える

肉が厚い部分と薄い部分の差が極端にあると、厚いほうに樹脂が流れやすくなり、薄い部分でウェルドラインが発生しやすくなります。そこで「薄い部分の外側に余肉をつける」「厚い部分から薄い部分へとつながる箇所をできるだけなだらかにする」など、極端な変化を減らすことでウェルドラインの発生を抑えることができます。

ウェルドラインの検査方法

ウェルドラインを検査する方法として、もっとも容易なのは目視による外観検査です。標準見本と限度見本(不良見本)を用意し、成形品と比較することでウェルドラインを見つけます。この方法のメリットは、大掛かりな設備や機器がなくても検査が可能で、コストを抑えられる点です。

しかし課題点も少なくありません。そのなかでも大きいのが、人が検査をするため、限度見本があったとしても検査品質にバラつきが出てしまう点です。、また、経験や知識が必要になるため教育コストもかかってしまいます。

慢性的な人手不足に悩まされている製造業において、人材の確保や育成が必要な目視検査だけに頼るのは難しいかもしれません。

そこで、おすすめなのが外観検査の自動化です。人による目視検査に比べて初期投資はかかるものの、常に一定の品質で検査できて、人手不足であっても稼働が可能になります。長期的な視点で見ればコストを抑えつつ安定した検査が行えるメリットは大きいといえるでしょう。

まとめ

ウェルドラインも製造現場における不良のひとつです。今回紹介したように、さまざまな対策がありますが、完全に不良を解消するのは容易ではありません。不良の発生に根本原因があるのであればそれを解消し、併せて不良が発生した場合に発見できる仕組みづくりが必要です。

そしてものづくりの現場で労働生産性を高めるには、自動化できる箇所は自動化を進め、それによって生まれた人員をほかの業務に振り分ける必要があります。外観検査自動化をどう実現すればよいのか具体的な手法をまとめた資料がありますので、ぜひご覧ください。

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