工場における目視検査のコツとは?トレーニング方法、今後懸念される検査の限界とは?

 2021.06.30  株式会社システムインテグレータ

ものづくり大国・日本を支える製造業ですが、提供する製品の高いクオリティを保つためには、不良品の流出を未然に防ぐための外観検査が不可欠です。
ところが、近年では少子高齢化による人材不足により、製造業においても検査員の不足といった深刻な問題に直面しています。

数年前には大手メーカーで検査の不正や品質データの改ざんなどが行われるなど、世界での信頼の低下も危ぶまれています。

そんな事態に陥らないためにも、今回の記事では工場における目視検査のコツや、検査の限界を解消するための方法などをご紹介します。 

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工場における目視検査

工場における目視検査

日本の製造業のレベルは世界的にも高く評価されています。そんな高品質な製品の製造を支えているのが、外観検査といっても過言ではありません。

外観検査は近年、自動化が進みつつありますが、従来の画像処理システムでは検査すべてを自動化することが難しく、依然目視検査を実施しているケースも多いようです。

人が行う目視検査は、画像処理システムにはないメリットも多く存在します。

  • 設備投資や開発費用といったイニシャルコストが不要
  • 高度で複雑な判断ができるので、検査精度が高い
  • ちょっとした変更にも柔軟に対応が可能
  • 汚れの除去など、修正の対応が可能

人による検査は、官能検査といって五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)も使えることから、たとえば食品の検査では目視だけでなく匂いや味で品質を確認することもできます。 

関連記事:目視検査の作業方法や内容は?よくある課題とその解決策についても解説

工場における目視検査の種類

工場における目視検査の種類

工場における目視検査の種類はいくつかあります。

  1. インライン検査
  2. オフライン検査
  3. 全数検査と抜取検査

それぞれ、どのような検査方法なのか詳しく説明します。 

インライン検査

インライン検査は、ライン生産の中に外観検査方式を組み込んだものです。

そもそも量産工場では、効率よく大量生産を行うために「ライン生産方式」を採用している場合がほとんどです。ライン生産は、ライン上を流れる部品を作業員が組み立てていく流れ作業での生産方式で、単一製品を製造するのに適した生産方法です。インライン検査は、このラインの中に検査工程を組み込んでいます。

インライン検査のメリットとデメリットは、以下のとおりです。

メリット

デメリット

  • 製品の全数検査を行いやすい
  • 検査のスピードが速い
  • 異常があったとき、すぐに発見できる
  • 自動化しやすい
  • 搬送装置の設置など手間やコストが発生
  • 目視検査は不良品流出のリスクがある
  • 自動化には設備投資が必要

 全数検査を行う場合は効率よく製品をチェックできる一方で、目視によるインライン検査には人間の能力的に限界があるため、不良品を見逃してしまうリスクもあります。 

オフライン検査

オフライン検査は、生産ラインの外で行われる検査のことです。

インライン検査がライン上に検査工程を組み込んでいるのに対し、オフライン検査は生産ラインとは違う場所に検査工程を設けています。インライン検査では出来ないような、より精密な検査を行うことが可能であり、高い精度で品質を評価することが可能です。

主に、以下のようなケースにおいてオフライン検査が行われます。

  • 生産ライン上での検査や管理が難しい
  • 測定を行うなど物理的な検査を要する
  • 複雑な検査が必要
  • インライン検査機が設置できない構造である

オフライン検査のメリットとデメリットです。

メリット

デメリット

  • 精密な検査を行うことができる
  • 抜き取り検査の実施が可能
  • 搬送装置などが不要
  • 全数検査には向いていない
  • 自動化が難しく、人件費がかかる
  • 目視検査では品質にばらつきが生じる恐れもある

 精密な検査は行いやすいのですが、製品の運搬や計測などを手作業で行う必要があることから、手間・コスト・時間がかかってしまいます。 

全数検査と抜取検査

  • 全数検査:対象の製品をすべて検査すること
  • 抜き取り検査:対象のロットからサンプルを抜き取って検査すること

全数検査が行われるのは、主に「高額な製品」「安全性が求められる製品」「検査することで破損・消費されない製品」です。

一方の抜き取り検査は、ボルトやナットのような「安価で生産量の多い製品」に適用される傾向にあります。安価で生産量の多い製品を全数検査すると、手間も費用も膨大になってしまうことから、費用対効果が見合わなくなってしまうからです。

以下は、全数検査と抜き取り検査のメリットとデメリットです。

 

メリット

デメリット

全数検査

  • 当該ロットの品質を完全に保証できる
  • 不良品や異常品の発生リスクが低い
  • 検査のコストが高額
  • 検査に時間がかかる
  • 耐久検査、強度の調査、引張試験など製品の価値が失われる検査はできない

抜取検査

  • 全数検査に比べてコストや労力といった負担が少ない
  • 製品が破損・消費する検査がしやすい
  • 検査の時間を短縮できる
  • 不具合の発生リスクがある
  • 製品すべての品質保証はできない

ただし抜き取り検査は、不良品が発見された場合は対象ロットの良品すべてが不良品扱いになったり、前工程へのフィードバックができなかったりします。

以上の理由から、近年では画像センサを使って抜き取り検査から全数検査へ移行する動きが出てきています。 

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工場における目視検査のコツ

工場における目視検査のコツ

工場における目視検査のコツは、以下のとおりです。

  1. 目視検査の環境を整える
  2. スピードは重視しすぎない
  3. 検査員の意識を統一する
  4. 検査員のモチベーション維持を図る
  5. 基準書の内容は適切か確認する
  6. 検査ノウハウを伝える場を設ける

順番にみていきましょう。 

目視検査の環境を整える

まず、企業側は、照明や音といったハード面を整えることが大切です。

目視検査を行いにくい環境では、見逃しのリスクが高まるためです。

たとえば、検査する職場が「照明が暗い」「周囲の騒音が酷い」「異臭がする」といった環境では、検査員の集中力が落ちてしまいます。

暗い場所での検査は製品の異常を確認しづらいだけでなく、目の周りの筋肉を酷使することで肩こりや眼精疲労といった体調不良の原因になるほか、騒音や異臭がすると気が散ってしまうからです。

照明の明るさについてはJIS規格の「照度基準」を満たし、周囲の騒音や異臭がしないなど検査に集中できる環境を整えましょう。 

スピードは重視し過ぎない

検査員に対して、過度な検査スピードの向上は要求しないよう注意が必要です。

生産工場の多くは納期があるために、検査員にも検査スピードを求めがちです。しかし、検査員にプレッシャーを与えると、焦りや不安から本来の能力が発揮できなくなってしまいます。

もちろん生産性を高めるために検査スピードの改善は重要ではありますが、スピードを意識しすぎると、見逃しの発生リスクが高まってしまいます。

習熟度に応じたトレーニングは必要ですが、経験の浅い検査員にまでスピードを求めないようにするなどの配慮を心がけましょう。 

検査時間を配慮する

連続して検査を行う時間は、なるべく短く設定することが大切です。

検査には集中力が必要であり、無理に長時間検査すると集中力が切れて、見逃しが発生する恐れがあるからです。

トラックやバスといった自動車の運転も、2時間に1回は10分以上の休憩が法律(※)によって定められていますが、これは過労運転による事故を防止するためのものです。

同様に集中力が求められる目視検査においても、連続して検査を続けることでミス(見逃し)を誘発してしまいます。自動車の運転と同じく、2時間を目安に10~15分の休憩を取るなどの配慮が必要でしょう。

また、検査員の欠勤時の対応も重要です。

欠員が発生したからといって勤務中の検査員に負担を押し付けてしまうと、連続検査時間が延びて休憩時間が減少してしまいます。

別の作業者にも検査を習熟しておくなど、いつでも欠員を補填できる体制を整えておきましょう。

(※)旅客自動車運送事業運輸規則第21条第1項

検査員の意識を統一する

製品の不具合を、「疑う」意識に統一することが大切です。

「不良品はあるはずがない」という意識の状態で検査を行う姿勢は、外観検査における見逃し要因のひとつになっています。

そもそも疑う気持ちをもって検査をしないと、集中力の維持が難しくなります。目視検査を、単なる単純作業と捉えがちだからです。

検査員個人の性格の問題もありますが、性格を改善するのは不可能に近いといえます。

検査員の意識を「不良があるかもしれない」という疑いへと変化させることで、集中力を維持できて、見逃しリスクの低減につながるのです。

検査員のモチベーション維持を図る

以下の要因は、検査員のモチベーションに大きく関係します。

  • 給与や労働時間は適切か
  • やりがいはあるか
  • 人間関係に問題はないか

そもそも給与が低く労働時間も長いと、目視検査に限らず労働意欲そのものが低下してしまう恐れがあります。同じ作業の繰り返しで新鮮味がないと、飽きてしまうのが人間の心理です。

以下のような恩恵が受けられるなど、職場の環境を改善する余地はあります。

  • 検査の数が多いと、給与や休暇が増加する
  • 見逃しの割合が少ないと、表彰される

検査の精度は精神状態に依存する部分もあるので、人間関係が悪いとミスや見逃しのリスクは高まってしまいます。上司や先輩がフォローするなど、忙しい中でも配慮を忘れないようにしましょう。

検査員がモチベーションを維持しながら勤務できる環境は整っているかを、定期的に確認することが大切です。

基準書の内容は適切か確認する

基準書の内容をもう一度見直すことも、検査精度の向上につながります。

目視検査では、検査品質を均一化するために基準書が必要です。検査品質は経験が影響する部分も大きいですが、基準書を作成することで品質のばらつきを抑制することができます。

忘れがちなのが、基準書の追記や更新です。

不良項目や作業内容、測定方法などに変化があっても、基準書が改定されていないケースも珍しくありません。ベテラン作業員は基準書がなくても作業ができるかもしれません。しかし、新規の作業員は基準書の内容と実際の作業が異なっていることがわからないので、ミスを誘発する恐れがあります。

基準書に関しては、こちらの記事で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。

外観(目視)検査で設定すべき基準とは?必要な項目を解説

検査ノウハウを伝える場を設ける

目視検査は、ベテラン検査員のノウハウを伝えることも大切です。

少子高齢化や中間層の不在といった理由から、製造現場の多くは後継者不足に悩まされています。検査ノウハウを伝える場を設けることで、若手社員の育成にもつながります。

具体的には、研修や認定制度があります。

実際に良品と不良のサンプルを使って、どのように検査を行っているのかを伝えます。検出テストなどを実施して、合格すると1級や2級といった資格を与えることで、検査員のモチベーションを向上させることも可能です。

工場における目視検査の限界とは?

この記事では目視検査のコツをご紹介してきましたが、近年深刻化する人材不足や働き方改革などによって、目視検査の実施の限界を感じている工場も多いかと思います。

そうした課題はAI技術を活用することで解決できる可能性があります。

弊社が提供する「AISIA-AD」は、ディープラーニング(深層学習)を採用した外観検査システムです。正常データや異常データを学習することで、ベテラン作業員による目視検査のような高い精度での異常判断が可能になります。システム導入によって検査員による判定のばらつきや、見逃しなどの人的ミスも防ぐことができます。

まとめ

工場から不良品を出さないために、目視検査はとても重要です。

記事内でご紹介したとおり、目視検査ではハード面・ソフト面どちらも整備して、最適な環境で実施することがポイントです。

しかし冒頭でもお伝えした通り、慢性的な人材不足により検査員の負担は増えており、目視検査にも限界があります。

弊社が提供する外観検査システム「AISIA-AD」で外観検査の自動化に成功したお客様が多くいらっしゃいます。自動化をご検討の場合はぜひお気軽にご相談ください。また、外観検査に関するお役立ち資料も公開中です。こちらも併せてチェックしてみてください。

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