モノづくり大国・日本で大切なのが、製品の品質。高品質な製品を製造・供給するには、「品質管理」や「品質保証」が欠かせません。
たとえば、製品やサービスを購入したものの何らかの不具合があった場合には「お客様センター」に問い合わせます。これは企業が一般消費者や事業者に対して満足してもらうための活動であり、意見やクレームを拾って品質の改善へとつなげているのです。
それらの役割を果たすのが品質管理や品質保証ですが、その活動内容は異なります。
今回は、品質管理と品質保証の違いについて解説します。
品質の定義とは?
品質(クオリティ・Quality)とは、「製品やサービスが使用目的を満たしている程度や度合い」のことです。簡単にいうと、「購入者の満足度」でもあります。
購入者の満足度なので、品質は買い手のニーズによって異なります。
- “性能”重視の買い手:「性能の良さ=品質の高さ」
- “価格”重視の買い手:「価格の低さ=品質の高さ」
- “納期”重視の買い手:「納期の短さ=品質の高さ」
つまり、価格重視の買い手に「性能が良く納期の短い製品」を提供しても高価格であれば、高い満足度を得ることはできません。
品質といえば、性能や製品の完成度ばかりが注目されがちですが、買い手が求めるものによって品質の基準は違うのです。
品質保証(QA)とは?
品質保証(Quality Assurance)とは、自社製品の品質が規定値を満たしているか確認して、納品後も買い手に安心や満足を保証する活動のことです。
主な業務は、保証を担保できるデータの確認や調査、クレーム対応などです。担当する各部門へのフィードバックにより、買い手が満足できる品質を維持・向上に努めます。
品質基準には規格がありますが、以下はその代表例です。
- 国内規格:JIS(日本産業規格)、PSE(電気用品安全法)
- 国際規格:ISO9000シリーズ(5種類の規格)
どの品質基準を選択するのか決定することも、品質管理業務の一環です。
品質管理(QC)とは?
品質管理(Quality Control)とは、製品の生産やサービス構築の際に、その品質に問題がないか検証・保証することです。同時に、高品質な製品やサービスを効率よく低コストで製造・構築するための視点も求められます。
主な業務は、材料検査や不適合材料の調査や隔離、最終製品検査などです。独自の手法により、不良の分析や工程の見直しなどを行うなど、製造プロセスの管理・改善を行います。
品質管理には、以下のような手法があります。(詳細は後述)
- PDCAサイクル:計画・実施・評価・改善といった4つのプロセスの実行
- QC7つ道具:7つのツールを使用してデータを分析
- IE:科学的な分析で作業の無駄や属人化を排除
家電・食品・医療・科学など、あらゆる製造現場において品質管理は必須とされています。
品質保証(QA)と品質管理(QC)の違いとは?
「品質保証」は買い手視点の活動(できあがった製品が対象)であり、「品質管理」は作り手視点の活動(これから製造する製品が対象)です。
両者は、3つの点に違いがあります。
|
品質保証 |
品質管理 |
---|---|---|
責任 |
出荷後の製品も保証 |
出荷時点の品質に責任を持つ |
時間軸 |
製品企画から販売後まで保証 |
保証は製品完成前まで |
業務範囲 |
業務の幅が広い |
主に製造過程のみの活動 |
品質保証は多くの部門が対象の全体的な活動なので、企画、原料の選別・購買、設計、製造、出荷、販売、カスタマーサービスといったように業務の幅が広いことが特徴です。
一方の品質管理は製造過程が中心の活動であり、品質保証の枠組みのひとつでしかありません。両者は一見似ているようですが、大きな違いがあるのです。
両視点から品質のあり方を考える
前述したように、内容に違いはありますが、別々で考えるのではなく、買い手側と作り手側の両方の視点から、品質について考える必要があります。
品質保証と品質管理を一緒に運用することで、品質の維持・向上において相乗的な効果が期待できるからです。
たとえば顧客からの苦情を受けて、製造現場にフィードバックして製品を改善したり、新商品や新機能の開発、在庫管理の見直しを行ったりするなど、すべての部門が一体となって活動することが理想的です。
また、良い製品を納得できる価格で適切な早さで納品すること、つまりQCD(Quality・Cost・Delivery)を意識することも大切です。
品質保証と品質管理について、次章以降でもう少し深堀っていきましょう。
品質保証の考え方(QA)の変化
品質保証で重視される製造過程が、下流から上流に移行しつつあります。
活動当初は、製品が完成したあとの検査に重点が置かれていました。不良品を市場へ流さないという考え方が主流だったからです。
しかし、量産するうえで流出の防止には限界があることから、製造工程で品質を向上させることで不良品を作らないという考え方に移行しました。
さらに、製造工程に問題がなくても、そもそも設計に問題があれば不良の発生を抑えることができないので、近年は最上流である開発や企画段階で顧客要求を踏まえた検討を行い、品質を向上させているのです。
そうした流れの中で、どのような品質管理を実施していけばいいのでしょうか。次章では、品質管理の具体的な進め方をご紹介していきます。
品質管理(QC)の具体的な方法
品質管理には、主に3つの方法があります。
- PDCAサイクル
- QC7つ道具
- IE(インダストリアルエンジニアリング)
それぞれの詳細を説明していきます。
PDCAサイクル
PDCAサイクルとは、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)という4つのサイクル(繰り返し)によって、業務管理を継続的に改善する手法のことです。
- 計画:実績や予測を基にした業務計画の作成
- 実行:計画の実行
- 評価:業務と計画が合っているかの評価
- 改善:計画に合わない部分を調査して改善
上記の4つを順番に行って1周すれば、「最後のActionを次のPDCAへとつなげる」といったように、繰り返して行うことで品質の改善を進めていきます。
PDCAサイクルの考え方は、国内規格・JISや国際規格・ISOにも用いられています。
QC7つ道具
QC7つ道具は、品質管理を行う際に現象を数値や定量で分析するための技法です。問題が可視化されることで、誰にでも理解や説明がしやすくなる利点があります。
文字通り、7つの道具(分析ツール)を使うことからQC7つ道具と呼ばれています。以下は、QC7つ道具で利用される分析ツールです。
- グラフ:適切なグラフによって直感的に状況を把握できる
- チェックシート:確認事項や要点を抜粋した図表形式のシート
- ヒストグラム:データの分布を可視化するための棒グラフ
- パレート図:不良項目や機械別不良数がわかる複合グラフ
- 特性要因図:問題の抽出に適しているツールで、「魚の骨図」とも呼ばれる
- 散布図:関連する2種類のデータを点の集合で示した図
- 管理図:時系列で工程データを示す折れ線グラフ
QC7つ道具でデータを分析・整理を行うことで、製造現場の問題が「見える化」されます。つまり、不良の原因や問題点、傾向や状態などがわかり、改善へとつなげることができるのです。
IE(Industrial Engineering)
IE(Industrial Engineering)は、製造工程や作業内容を科学的に分析する手法のことです。日本では、内容によって「産業工学」「生産工学」「管理工学」などと訳し分けられます。
トヨタの工場や現場で採用されていることで有名な品質管理の手法であり、戦後アメリカから導入されました。IEの手法を使った活動を「IE活動」と呼び、科学的分析によって無駄や属人化を排除します。
最適化の対象範囲が、特定の工程や作業内容におさまらず経営にまで及ぶことがIEの特徴です。企業にとって最良であることが目的なので、常に分析や改善を繰り返す必要があります。
たとえば、顧客が求める品質や性能を持つ製品を「安いコストで納期までに作るため」には、「人」「設備」「材料」「エネルギー」を効率よく使う必要があります。そのためには、人員の配分・設備投資・仕入れ先・工程などの見直しが必要です。
以上から、IE活動には社員の協力が必須であるといえます。
IEについては、こちらの記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
品質管理とは?定義や業務の基礎知識、品質保証との違いを解説
品質管理(QC)に役立つ資格
品質管理を行うのに資格は必要ありませんが、スキルを磨く場合には役立つ資格がいくつかあります。
品質管理検定(QC検定)資格
品質管理検定(QC検定)資格は、一般社団法人 日本品質管理学会の認定を受け、日本規格協会グループが実施している資格試験です。品質管理に関する知識をどの程度持っているかを客観的に評価する資格試験です。
受験資格は不要で、1級~4級までの筆記試験になっています。1級になると品質管理活動のリーダーなど、品質管理の課題解決や改善について主導していくことが期待されるレベルの内容です。
QCサークル指導士資格認定制度
QCサークル活動とは、現場で働く人々が製品やサービスなどの品質管理・品質改善を自発的かつ継続的に行う小規模なグループのことです。
このQCサークル指導士資格認定制度は、企業や団体などにおいて、QCサークルの活動や指導を正しく行えるかの能力を認定するものです。QCサークルの分野における唯一の認定資格です。
まとめ
日本の製品は高品質であるというイメージは、未だに根強くあるのではないでしょうか?大量に製品を作っている場合、少なからず不良品は生まれてしまいます。製品の安全性や企業の信頼性を担保するために、品質管理や品質保証は欠かせないものです。
弊社では、品質管理や品質保証に関する詳しい資料もご用意しております。無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
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