「4M」とは?品質管理や変更管理の分析に活用するポイントを解説

 2021.08.30  株式会社システムインテグレータ

日本の製造業において、古くから採用されている「4M」。
もともと日本では一般的に行われてきた管理手法ですが、近年になって欧米をはじめとする世界各国でも着目されています。この4Mは、国際的な品質マネジメント規格である「ISO 9001」に追加された新しい変化管理の要求事項においても重要な考え方になります。

日本製品の品質が世界トップレベルで安定しているのは、4Mのような手法があったからであり、特に最終製品メーカーにおいては重要視されています。

そこで今回の記事では、品質管理の4Mについての説明から、新たな要素やポイントまでを徹底的に解説します。

品質管理の基礎を徹底解説

製造業の品質管理「4M」とは?

製造業の品質管理「4M」とは?

4Mとは、製造業の品質管理や変更管理、生産ラインの改善において重要な4つの要素、「Man(作業者)」、「Machine(機械)」、「Material(材料)」、「Method(作業方法)」の頭文字をとった略語です。

製品の製造に必要な要素を4つに分類し分析することで、課題や問題の発見と解決につながります。ほかにも、不具合が起こった場合などの製造現場における変更対応をシステム化する「変更管理」に活用することも可能です。

品質管理については以下の記事で解説しています。
関連記事:品質管理とは。今さら聞けない品質管理の基礎知識

では、4つの要素を順番に説明していきます。

Man:作業者

「Man」は、製造現場における「作業者」のことです。

製造現場では、人員の過剰や不足、スキルなどを踏まえて調整を行います。

品質の維持・向上において「人手」という角度から考えた場合、生産形態に合わせて適切な人員配置や教育を行う必要があります。非正規社員を多く雇用する企業の場合は、欠勤や突然の退社などによって現場が混乱する恐れがあるため研修制度などで会社のルールやマナーを教えなければなりません。

「スキル」という角度であれば、生産ラインへの配置を熟考して、特定のスキルが要求される作業に適した人員の割り当てが求められます。日ごろから効率よく人員を割り当てて品質を維持・向上するためには、スキルマップを作成して管理するなど各作業に適した作業員を配置することが大切です。多能工を育てることで、突然の欠員や移動が発生しても柔軟に対応できるようになります。

Machine:機械

「Machine」は、「機械」や「設備」のことです。

安定した品質の製品を製造するためには機械や設備の管理が必要であり、性能や耐久性、稼働率などを事前に調べて分析しておくことが大切です。日ごろの点検やメンテナンスの計画を立てたり、新しい機械・設備の導入で自動化を促進したり、レイアウト変更を検討したりするなどの対策が求められます。

たとえば、設備のメンテナンスでは本体に付着したホコリや汚れといった不要なものを落とします。清掃する過程で設備の仕組みを理解できるとともに、異音に気づきやすくなるため異常をいち早く察知できます。

Material:材料

「Material」は、製品に使用する「材料」のことです。

製品を製造するためには素材が必要ですが、必要な数や分量の検討は品質管理において大切な業務です。たとえば、10ロットしか必要のない材料を20ロットも購入するとムダなコストが発生します。生産数から必要な材料を算出して、不足や過剰がないように購入する必要があります。

材料を調達する手段も重要なポイントです。

購入先や運搬方法によって、発生するコストや製品の品質、納期の早さなども変わってきます。たとえば、総合的に判断して現在の取引先よりも別の会社の方が安く高品質な製品を調達できるなら、調達先を見直すべきです。材料の品質は製造する製品の品質に大きな影響を与えますし、材料コストが高いと製品の価格まで上がってしまいます。

材料の性質や製造スケジュールなどの条件によっては、現状よりも早く安全に運搬できる運送業者を探すことも求められます。

Method:作業方法

「Method」は、製品を製造する際の「作業方法」のことです。

現場の作業員が生産ラインに配置された際に作業方法がわからなければ、作業効率が下がるだけでなく、ケガをするリスクもあります。効率性と安全性を確保するためには、作業方法を確立して見える化(可視化)することが重要です。

作業方法を見える化するには、マニュアルを作成する必要があります。

手順書や仕様書などをいつでも確認できる場所に提示することで、誰でも同じレベルで作業できます。文字だけでは認識しにくい場合は、手順書や仕様書に写真を添えるといった工夫も求められます。

追加された新たな要素「5M+1E」「6M」とは?

追加された新たな要素「5M+1E」「6M」とは?

「5M+1E」や「6M」とは、4Mでは不十分なケースで用いられる品質管理の要素です。

4Mが確立された当時は、限られた製品だけを大量に生産する時代でした。しかし、現在は多品種少量生産の時代へとシフトしています。従来の要素だけでは品質管理が難しいケースが出てきたため、時代の変化に対応した新しい要素が追加されたのです。

  • 5M+1E:Measurement(検査・測定)とEnvironment(環境)を追加
  • 6M:Measurement(検査・測定)とManegement(マネジメント)を追加

ただし、生産活動における「検査・測定」は重要な要素であることから、機械や方法とは別に管理するようになりつつあります。

それぞれの要素については、次で詳しく説明します。

5M+1E

従来の4Mに、Mesurement(検査・測定)とEnvironment(環境)が加わったものです。

検査・測定は製品の仕上がりに大きな影響を与えるものであり、実施しないと不良品が市場へ流出したり、製品や生産ラインに不具合があっても改善が進まなかったりします。

特に一部の業種においては、「環境」も重要な要素です。

温度や湿度、時間などの環境を管理しないと、品質を維持・向上させるのは困難です。たとえば、食品を扱う業種は温度管理ができていないと、商品の品質が低下してしまうだけでなく食中毒を起こすリスクも高くなります。

近年では検査・測定の重要性は上がっているため、生産ラインから独立して管理することも珍しくありません。

6M

6Mは、上記の5MにManegement(マネジメント)が追加されたものです。

マネジメントとは、生産ライン全体を把握して適切な采配を行うことです。「Method」(作業方法)に近い要素ですが、近年の品質管理における重要な要素として位置づけられています。

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4M変更管理とは?

4M変更管理とは?

4Mを管理して製品の品質を維持することを4M変更管理(変化点管理)といいます。

もともと製造業では、機械・設備の入れ替えや材料の変更といったように、決められた作業や製造プロセスへの変更を求められることが多くあります。時代の変化などに伴い、多様な顧客ニーズに応えるために変化が求められているからです。

変更管理の主な目的は、そうした変更の影響による品質の低下を防ぐことです。

そのため、生産や品質に影響する事象は事前に対応策を用意する必要がありますが、その際「予測できる変化点」と「予測できない変化点」を認識しておくことがカギとなります。

予測可能な変更を明確にする

予測可能な変更の場合は、変化点を明確にします。

  • Man:担当者やシフトの変更、ローテーション
  • Machine:機械・設備のレイアウト変更、動作の設定数値の変更など
  • Method:作業内容の変更
  • Material:材料や取引先の変更

担当者の変更やローテーションは日常的に変化しますが、シフトの変更などは中長期的な期間で変化する場合がほとんどです。このような変化は書面に起こすといった形で見える化し、対応策なども記載しておく必要があります。

さらに、習熟度の低い社員が確認してもすぐにわかるようにしておくことが大切です。

しかし、実際の製造現場では変化が起こる要素が多いのが現状です。従業員の人数や機械・設備の数値変更などは代表的な例ですが、すべての変化を管理するのは難しいでしょう。その場合、品質への影響の大小によって優先順を付けるといった工夫で柔軟な対応が可能になります。

予測外のトラブルは4Mで原因を特定

予測外のトラブルが発生したときは、4Mを活用して原因の特定や改善を行います。

予測しているトラブルであれば現場に用意しているマニュアルを確認することで対応できるのですが、予想外のトラブルでは同じ対応はできません。

管理者はあらかじめ「予測外のトラブルが発生したときの報告先」や「暫定的な対処法」などを決めておく必要があります。これらをルール化することで、トラブルの発生時に現場の作業員は「報・連・相」を誰にどうやって報告するのか、責任者は生産ラインを継続すべきかどうかを迅速に判断できるようになります。

報告が完了したら、次にトラブルが発生した原因を究明しなければなりません。

品質管理の要素に起こった変化、どの変化点が問題の主原因なのか、日々のデータと照合することで特定が容易になります。特定できたら、対応策をマニュアル化したり手順書や仕様書の設定を変更したり、再発しないように対策を打ちます。

トラブル再発防止対策を打つ管理者自身が継続的に改善意識を持っておくことが重要です。

4Mを活用した品質管理のポイントは?

4Mを活用した品質管理のポイントは?

品質を維持・向上していくには、問題の原因を特定するだけではなく、4Mを活用して継続的に改善していく必要があります。

トラブルの発生が続く場合はその要素を特定し、その問題を解消することで品質や生産性を維持・向上できるのであれば、イニシャルコストが発生しても投資を惜しまないことです。

たとえば、外観検査において担当者のスキルにバラツキや不安定要素があるなら、AI搭載の外観検査装置を導入して検査を自動化する方法もあります。肉体的な作業で従業員の負担が大きくヒューマンエラーが発生しやすいのなら、産業用ロボットの導入を検討した方がいいかもしれません。

近年では、産業用ロボットや外観検査装置も小型化や低価格化が進んでおり、特定の作業だけの部分的な導入や、検査の補助としての導入も可能です。AIのほかにも、IoT(モノのインターネット)を導入して生産ライン全体を自動化する方法もあります。

自社の課題と直面したときに対処法が見つからないのであれば、製造業のソリューションに特化した業者に相談するのもいいでしょう。豊富な実績や経験を元に、最適な方法をアドバイスしてくれるはずです。

製造現場における課題解決のためには、場当たり的な対応ではなく、原因の特定や対処法を検討し、4Mなどの重要要素の管理を活用して再発防止に努めることが大切です。

まとめ

4Mや、その他の品質管理の要素をそれぞれ適切に管理することで、生産現場における品質改善や品質の維持が可能になります。

また、これらは継続的な改善が必要な要素です。現状、浮き彫りになっている課題を解決できたら、次はさらに業務を改善・効率化できるような施策を考えるなど、より良くしていく活動を続けることで企業としての成長にもつながります。

まずは、現状どのような課題があるのか洗い出し、改善策を検討してみましょう。

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