ものづくりの現場においては品質管理が重要な役割を担います。万が一事故が起こると人の命に関わる事態になりかねないからです。一方で限られたリソースで品質を管理していく必要があり、頭を悩ませている担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、品質管理体制を構築するうえで大切なポイントや企業の取り組みなどを紹介します。
そもそも品質管理とは?
品質管理とは、製品やサービスの品質を検査・検証し、保証するための重要な工程です。
特に食品や自動車、医療分野など、品質問題が大きな問題に発展する分野では非常に重要な工程です。
例えば製品を製造する場面ひとつでも、各部品に問題がないかの外観検査、製品を製造する工程に問題がないかの工程管理、完成した製品が仕様どおりに動くか、キズや凹みなどがないかなどの品質検査など、品質管理は多岐にわたります。
従来は人の目や手によって品質管理がなされてきましたが、現在では品質管理のデジタル化が進み、高効率・高精度な検査が実現可能となっています。
品質管理については以下のブログで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
品質管理とは?定義や業務の基礎知識、品質保証との違いを解説
品質管理体制の必要性とは?
商品やサービスを提供するうえで、最終的な製品やサービスにおける品質の担保が特に重要です。製造業では必須といってもよいでしょう。例えば自動車や飲食物、医薬品など、商品のカテゴリによっては、万が一品質に不備があれば、大きな事故につながることもあります。
品質による問題を未然に防ぐには、製造工程から品質検査、品質改善の取り組みまで全体を管理する体制を整えることが有効です。正しく作業手順が守られているか、実際の完成品に問題はないか、すべての生産工程を振り返り品質改善につなげられるところはないかといった管理を繰り返すことで、品質向上につながるだけでなく、無駄な作業を省くことで工数削減やコストカットにも寄与します。
工程管理については以下ブログでも解説していますので、あわせてご覧ください。
素材別の主な製造工程・管理方法・課題点を解説【金属・フィルムetc】
品質管理体制を整備する方法
次に、品質管理体制を整備する方法についていくつかのポイントを解説します。
管理項目の洗い出し
まずは、そもそもどのような項目を管理する必要があるのか、全体像をクリアにしておくことが大切です。項目の洗い出しにあたっては、品質に影響を与えうる要因を全て洗い出し、また、生産工程の作業プロセスの洗い出しを行います。そのうえで、それぞれについて実行する手段やプロセス、品質基準を達成できているのかを確認していくとよいでしょう。
管理基準の設定
管理すべき項目が明確になれば、あとはそれぞれについて管理基準を定めます。項目の洗い出しだけで終わると運用面が曖昧になってしまうので、できるだけ数値化しつつ、クリアすべき基準もセットで設定します。数値化することで、たとえば担当者が入れ替わっても安定的に品質基準を満たした製品を生産できます。
PDCAサイクルを回す
項目や基準まで設定できると一段落はしますが、ここがスタートラインでもあります。いきなり絶対的な基準を定めたり、抜け漏れのない項目の洗い出しができたりするとは限りません。日々生産活動を行うなかで、PDCAサイクルを回しながら管理体制を改善していくことが大切です。PDCAは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(対策)」からなりますが、項目や基準はあくまで「Plan」にすぎず、Do・Check・Actionまでのプロセスを短いサイクルで回すことで、品質管理の精度が高まります。
品質管理体制強化に向けた各企業の取り組み
品質管理体制強化に向けて各企業が取り組んでいる事例を紹介します。
トヨタ自動車
世界的な自動車メーカー「トヨタ自動車」で行われているのは、生産のモニタリング機能の強化です。モニタリングで収集したさまざまな情報をスピーディーに分析し、その結果をもとに改善を行うことで、自動車製造で重要な安全性の問題を未然に防止します。
さらに中長期的な取り組みとしても、品質の維持や向上を目的とした人材育成拠点「カスタマー・ファースト・トレーニングセンター(CFTC)」を日本、北米、欧州、アジア・オセアニア、中国の5ヶ所に開設。この取り組みによって、場所や時代を越えて高度な品質管理体制を確保しようと努めています。
セブン&アイHLDGS.
流通大手の「セブン&アイHLDGS.」は、農業生産工程管理手法の「JGAP認証」や国際的な食品安全マネジメントシステムの「ISO22000認証」を取得しており、「ISO9001」をベースにした衛生管理を実施しています。食品の安全性を高め、消費者に安心して購入してもらうための取り組みです。
ほかにも、野菜の鮮度を保つことを目的とした「コールドチェーン(低温物流網)」を導入しています。コールドチェーンを活用することで、低温で商品を輸送・加工できます。商品事故を未然に防ぐために、従業員教育にも力を入れています。
富士通
ICTなどの領域で大手の「富士通」ですが、その品質管理体制強化には、製品やサービスに応じた品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)を活用しています。
それだけでなく、富士通グループでは製品やあらゆる業務のクオリティを向上し続ける改善・革新活動「Qfinity」を長期にわたり実施しています。このように、風土として品質管理に高い意識を持ち、実践している点が企業としての強さにつながっている部分もあるでしょう。
体制の構築だけでなく省人化も重要
上記の事例でも触れたように、品質管理体制を強化する取り組みは体制や仕組みで対応するケースが多いです。これらももちろん有効ですが、近年はさまざまなテクノロジーが発展しており、AIを活用して省人化を進める動きもあります。業務フローの見直しにより無駄な工程を削減し、人員を減らし利益率の向上などにつなげます。
たとえば品質検査では、外観検査をAIで代替するシステムも多数出てきています。人の目視では手間がかかり、さらに人によるばらつきが生じますが、機械で行えば人手を減らしつつ、精度も一定です。データが蓄積されるほど、機械学習により精度は高まります。画像認識技術などが高度化するなか、機械やAIで対応できる領域が増えており、このような外観検査システムの導入を通じて省人化し業務の無駄を解消できるのです。
体制や仕組みによる対応は、ある程度人員の確保が計算しやすい状況であれば特に有効でしょう。しかし、特に少子高齢化が進み人口減少が見込まれる日本では、より少ない人員で企業全体の生産性を高めていく視点も重要です。その点を踏まえ品質管理体制についても、高度な技術が搭載されたシステムやツールをうまく活用しながら効率よく強化していきましょう。
関連記事:AI外観検査とは?画像処理の仕組みや事例・メリット、導入費用相場まで徹底解説
まとめ
世の中に商品を提供していくうえで、品質管理体制の構築は大切です。一方、企業目線で「コスト」である品質管理に割けるリソースは限られます。人手不足の日本においては、AISIA-ADのように品質管理プロセスを自動化できるツールの導入も増えています。体制整備に加え、これらのツールの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
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