シリコンウエハーとは?製造プロセスからニーズが高まる理由まで解説

 2021.07.30  株式会社システムインテグレータ

最近は技術の進歩が著しく、半導体の製造や品質も大きく向上しています。
その半導体の中でも、性能を左右するほど重要な部品のシリコンウエハー。シリコンウエハーは一般消費者にとってはあまり馴染みがありませんが、多くの電子機器にとって不可欠な部品です。

実はシリコンウエハーの輸出は日本メーカーだけで世界シェアの半分を占めるなど、日本の製造業が世界の半導体産業を支えているといっても過言ではありません。

今回は、そんなシリコンウエハーの製造プロセスやニーズが高まる理由を解説します。

シリコンウエハーとは?

Circuits from a mother board-1

シリコンウエハーは、半導体の材料基板(基盤)です。

その名のとおりシリコンから作られた部品であり、薄い円盤状であることが特徴です。表面は鏡面仕上げであり、微細な凹凸や微粒子は徹底的に排除されています。

半導体の初期段階の製造では、半導体メーカーは半導体製造装置を使ってシリコンウエハー内部に微細な回路を形成することで、半導体チップを製造しています。

シリコンウエハーの表面が平坦であるほど高性能であり、シリコンウエハーの性能があらゆる電子機器の性能向上につながるといっても過言ではありません。

以下は、シリコンウエハーが使われている製品の例です。

  • スマートフォンやパソコンのCPU・メモリー
  • テレビやエアコンといった電化製品
  • 自動車の部品(各種センサーや電子機器制御装置など)
  • 太陽光電池
  • クレジットカードやSIMカードのICチップ

シリコンウエハーは、ゴムやシャンプーに使われるシリコーンと混同されがちです。

原料は同じケイ石でも、シリコンウエハーに使われるシリコンは純度を「99.999999999(イレブンナインと呼ばれる)」まで高められています。一方のシリコーンはケイ石が原料の合成樹脂のことであり、高分子有機ケイ素化合物と呼ばれています。

シリコンウエハーの製造プロセス

Man in printing house showing client printed documents

半導体に欠かせないシリコンウエハーですが、どのように製造されているのかご説明します。大まかな製造プロセスは、以下のとおりです。

  1. 単結晶インゴットの作成
  2. スライシング
  3. ベベリング
  4. ラッピング
  5. エッチング
  6. 熱処理
  7. ポリッシング
  8. 洗浄・乾燥
  9. 品質検査

上から順番に見ていきましょう。

単結晶インゴットの作成

シリコンウエハーの原料であるケイ石を、還元・精留反応によって多結晶シリコンへと加工します。ケイ石は、昔に火打ち石として使われていた石です。

加工後は、フローティングゾーン法(FZ法)やチョクラリスキー法(CZ法)といった方法によって溶融したものから、純度イレブンナインのほぼ不純物を含有しない単結晶シリコンインゴット(塊)を引き上げます。

ちなみに、現在のシリコンウエハーの製造で多く採用されているのはCZ法です。

スライシング

棒状の単結晶インゴットを、内周切断機(単数切断)やワイヤーソー(複数切断)といった専用ノコギリを使用してスライスするのがスライシング工程です。この時点でのシリコンウエハーはアズカット・ウエハーといって、厚さのバラつきや切断面の荒さが残っています。

この工程で、結晶軸との傾きや厚さが決まります。

べべリング

スライシング工程でスライスされたシリコンウエハーの側面を、ダイヤモンド砥石などを使って面取り加工する工程です。切断時の外縁部の加工歪層が除去されるとともに、角度のついた切断面も正円に整えられます。

ラッピング

シリコンウエハー表面を、両面研磨する工程です。

スライシング工程で残ったシリコンウエハー表面の歪みやキズ、厚みのバラつきを修正します。この時点のシリコンウエハーは厚さが均一化されていて、ラップド・ウエハーと呼ばれます。

エッチング

ラッピング工程で修正できないほどの細かい歪みやキズを、科学的方法(薬品洗浄)によって整える工程です。同時に、これまでの工程でシリコンウエハー表面に付着した研磨剤、ワックス、金属不純物、パーティクル(付着ゴミ)などを除去します。

この時点のシリコンウエハーは、エッチドウエハーと呼ばれます。

熱処理

アニーリングとも呼ばれる工程です。

組織を軟化させて展延性を向上させる「アニール」、ガス状の気体原料で科学的反応を用いる「CVD」などによって熱処理します。結晶内の酸化ドナーを低温熱処理することで消滅させて抵抗値を安定化させます。

ポリッシング

平坦化装置によって、シリコンウエハー表面を極微細な砥粒で研磨する工程です。

キズや凹凸、不純物を取り除いて、高品質な鏡面仕上げのシリコンウエハーに磨き上げます。この時点のシリコンウエハーはポリッシュド・ウエハーと呼ばれるもので、まったく歪みのない美しい鏡面を持つミラー・ウエハーに仕上げられます。

洗浄・乾燥

加工を終えたシリコンウエハー表面に付着した異物や汚れを落とす工程です。

クリーンルーム内で、枚葉洗浄装置やバッチ洗浄装置を使って徹底的な洗浄が行われます。この工程を経ることで、出荷できるレベルの高品質なウエハーが完成します。

品質検査

清浄度の高いクリーンルーム内で行われる検査工程です。

シリコンのウエハー表面に付着した0.1μmレベルの異物や不具合を、専用の検査装置や検査員の目によって厳重に検査が行われます。

半導体の製造プロセス

engineer drawing lightbulb and construction as concept

前章では、シリコンウエハーの製造プロセスをご紹介しました。

ここでは、そのシリコンウエハーが、どのように半導体に生まれ変わるのかプロセスをご紹介していきます。

  1. シリコンウエハーを洗浄
  2. 成膜
  3. レジストコーティング
  4. 露光
  5. 現像
  6. エッチング
  7. 活性化
  8. レジスト剥離
  9. 組み立て

それぞれ順番に見ていきましょう。

シリコンウエハーを洗浄

半導体の材料であるシリコンウエハーを洗浄する工程です。

半導体の工程でも洗浄が行われるのは、少しでもシリコンウエハーに汚れがあると回路に欠陥が生じてしまうからです。

この工程では、以下のような種類の汚れを取り除きます。

  • 梱包からの取り出しや工場の外気から付着したパーティクル
  • 工場で使う薬液に含まれる微量な重金属原子や炭素分子など
  • 人のフケや垢に含まれる炭素、汗に含まれる油脂など
  • 大気中の自然酸化膜

一般的に、洗浄・乾燥にはウェットステーションと呼ばれる洗浄装置が使われます。

成膜

成膜は、シリコンウエハー上へ回路を形成するのに必要な素材の層を作る工程です。

回路の素材は酸化シリコンやアルミニウムであり、配線やトランジスタなどになる薄膜層をシリコンウエハー上に形成します。

成膜工程には、大きく3つの方法があります。

  • スパッタ法:イオンをアルミニウムの塊にぶつけてアルミ原子を剥がし、シリコンウエハー上に積もらせて層を作る
  • CVD法:ガスによる化学反応で生成された分子の層をウエハー上に形成する
  • 熱酸化:シリコンウエハーを加熱して酸化シリコンの膜を形成する

成膜後は、ブラシや純水、ナノスプレーといった物理洗浄によって微細なパーティクルを除去します。

レジストコーティング

フォトレジスト(感光剤)を、シリコンウエハーの表面に塗布する工程です。

シリコンウエハーを回転させた遠心力を利用して、均一なレジスト膜を形成します。感光材の塗布により、光に反応して回路パターンを焼き付けることができるようになります。

照射する光源の種類によって、異なる感光材が選ばれることも特徴です。

露光

露光して回路パターンを焼き付ける工程です。

フォトマスク(回路パターンが描画された透明な板)や縮小レンズを通して、シリコンウエハーに光を照射します。光が当たった部分だけレジスト膜が変質することで、パターンを転写することができます。

現像

フォトレジストの露光された部分を、現像液で溶かす工程です。

不要な部分を除去して薄膜の表面を露出させますが、残ったレジストのことを「レジストマスク」といいます。レジストマスクの下の層は次工程のエッチングでも腐食されず、最終的な回路として残ります。

エッチング

薄膜や酸化膜を部分的に除去して、回路パターンを形成する工程です。

リン酸やフッ素といった薬液を使って、フォトレジストで形成されたパターンに沿って薄膜・酸化膜を削り取ることで、回路パターンが形成されます。

ほかには、イオンをぶつけて薄膜を削り取る方法(ドライエッチング)もあります。

活性化

不純物イオンの注入や高温拡散したあと、熱処理によって活性化させる工程です。

ボロンやリンといった不純物イオンをシリコンウエハーに注入したり高温拡散したりすると、シリコンが出ている部分だけが半導体の特性を持ちます。

活性化には、フラッシュランプやレーザー照射による熱処理が行われます。

レジスト剥離

残ったフォトレジストを剥離する工程です。

レジスト剥離には、2つの方法があります。

  • ウェットステーションなど、薬液を使って剥離する
  • ガスとの化学反応でレジストをアッシング(灰化)

シリコンウエハー上に残った不純物は、薬液に浸して取り除かれます。

組み立て

以上までの工程を何度も繰り返してICの回路を形成したあと、検査(評価テスト)や組み立てが行われます。

  • ダンシング:シリコンウエハーを1つ1つのチップに切断する
  • ワイヤーボンディング:リードフレームという金属の枠にチップを固定して、金線で接続する

上記の工程を経て、セラミックや樹脂などのパッケージで封入(パッケージング)します。

高まるシリコンウエハーのニーズ

Customer service operator talking on the phone

近年、シリコンウエハーのニーズは急激に高まっています。

以下のような要因によって、半導体の生産数も増えているからです。

  • 新型コロナウイルスによるテレワークの増加
  • 第5世代移動通信システム「5G」の普及
  • EV(電気自動車)やHV(ハイブリッドカー)などの生産数が増加
  • 人工知能やIoTといった革新技術の拡大

その分、シリコンウエハーのニーズも高まっています。

ウエハー世界2位の「SUMCO」の推計によると、世界の半導体メーカーは2020年初頭にはスマホ向け300mmウエハーの在庫が平均1.6ヶ月分は保有していました。しかし、2月には1.3ヶ月分にまで減少していたのです。

2023年までにシリコンウエハーの供給能力が増えていない場合、同年の需要に対して1~2割りほど足りなくなってしまうといわれています。

出典:日経ビジネス:「シリコンウエハーが足りない」、半導体揺るがすもう一つの影

シリコンウエハーや半導体の外観検査

Hand using wireless mouse with financial concept on dark background

ここでは、シリコンウエハーや半導体で行われる外観検査をご紹介します。

シリコンウエハーの外観検査は、回路パターンを写す前後に検査を行います。

「回路パターンを写す前に行う検査」は、主に納入する半導体デバイスメーカーが行う検査です。異物のほか、欠けやキズ、歪みなどのチェックも行われます。

主な検査は、以下の2つです。

  • ミラーウエハーの検査
  • パターンありウエハーの検査

ミラーウエハーの検査では、シリコンウエハー表面にレーザービームを照射したあとの反射した散乱光を検出器で検出します。

ミラーウエハーに回路パターンが転写されたのが「パターンありウエハーの検査」です。

明視野式検査装置や暗視野式検査、SEM式検査装置など、メーカー独自の技術が採用されています。シリコンウエハー表面のパターン画像を取り込んで正常なパターンと比較することで欠陥を検知します。

「回路パターンを写した後の検査」は、半導体メーカーが行う検査です。ウエハーの表面には、ほこりや炭素が付着したものと、パターン転写時のズレが異物化したものがあります。

以下は、回路パターンを写した後の主な検査です。

  • 電子顕微鏡による検査
  • 検査装置による検査

レーザーによる異物検査で調べた異物の位置から電子顕微鏡を位置づけて、異物の情報を画像データとして記録して、解析や評価を行います。

検査装置では、回路パターンが形成されたあとに回路の電気特性が正常・異常かの検査を行います。

まとめ

シリコンウエハーは聞きなれない言葉だとは思いますが、半導体の製造には欠かせず、まさにPCやスマートフォンから自動車まであらゆるものに使われている部品です。

新型コロナウイルスによるテレワーク増加などを受け、PCやスマホの需要が膨らみ、半導体の需要も比例して増加しました。

今後、ますます暮らしに欠かせないものになってくるでしょう。

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