製造における検査工程とは?各工程の解説&検査のメリット・デメリット

 2022.01.14  株式会社システムインテグレータ

製造業において、生産した製品をチェックもせずに出荷してしまうと、不良品が発生した際に取引先やエンドユーザーからの信頼を大きく損なってしまう可能性があります。そこで欠かせない業務となるのが、製造工程で行われる製品の検査です。

今回は製造における検査の目的を解説したうえで、検査工程の主な流れや検査のメリット・デメリット、そしてデメリットを解消して業務効率化や生産性向上を実現する検査の自動化についてお伝えします。

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製造工程で検査を行う目的

製造工程で検査を行う目的

製造の工程のなかで検査を行う目的はいくつか考えられますが、そのなかでも重要なのは次の2点です。

不良品の削減、品質の保証

どれほど慎重に製品の製造を行ったとしても、不良品の発生をゼロに抑えることは困難です。だからといって何もしなければ多くの不良品が生み出されてしまうリスクが高まります。

もちろん出荷中の事故による不良は製造段階では抑えられませんが、製造段階で起こる不良については、できるだけ出荷前に見つけ出さなければなりません。製造工程で検査を行う目的のひとつは、出荷前の不良品の削減であり、それが取引先やエンドユーザーに対する製品品質の保証にもつながります。

製品品質の維持・向上

外観検査により製造工程で不良品を検出できれば、不良が起きた原因の特定もしやすくなります。その結果、設備の改善や人員育成など不良品を出さないための対策が取れるようになり、製品品質の維持・向上が期待できます。

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検査工程の主な流れ

では、実際に製造工程のなかで行う検査について、まず簡単に全体的な流れを見たうえで、それぞれの詳細について説明していきます。

一般的に製造工程のなかで行われるのは、以下に挙げる「受入検査」「工程内検査」「最終検査」の4つの検査です。

  • 製品の製造に使うために入荷した原料や資材に問題がないかを調べる「受入検査」
  • 生産ラインのなかから定期的に製造途中の製品を抜き出して行う「工程内検査」
  • 完成した製品が取引先の求める基準に達しているかどうかを調べる「最終検査」
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受入検査

製造工程のなかで最初に行うのが受入検査です。その内容と主な方法は次のとおりです。

受入検査とは

受入検査とは、製品の製造に欠かせない原料や資材が入荷した際に行われる検査で、それぞれが品質基準に適合しているかどうかを調べます。製造工程に問題がなくても、入荷した原料や資材に不良があれば、良品の製造はできません。

受入検査が不十分だと、後の検査により大きな負担がかかり、コスト増となる場合があります。逆に言えば受入検査を行い不良のある原料や資材を事前にはじくことで、生産ラインの稼働を最適化できます。結果として、人員の負担やコストの削減といった効果を得られるでしょう。

また、特定の仕入先から原料や資材を購入して自社の工場や倉庫に入庫しても問題ないかを判断するための検査も受入検査に含まれる場合があります。これは受入検査のなかでも「購入検査」とも呼ばれる検査です。

受入検査の主な方法

受入検査は、社外で行われる「原料や資材の購入を決めるための検査」と、社内で行われる「工場や倉庫に入庫するための検査」の大きく2つに分けられます。

どちらも検査方法に決まりはありませんが、社外検査は仕入先と検討したうえで合意形成しておくとトラブルに発展するリスクが抑えられます。基本的には製品を納品する取引先が求める基準と照らし合わせて決定するとよいでしょう。

具体的な検査方法としては、原料や資材の抜き取り検査もしくは全数検査を主に目視によって行います。全数検査は不良品を限りなくゼロに近づけられますが、時間もコストもかかるため、不良品をひとつも出せない状況でない限りは抜き取りで検査を行うのが一般的です。

原料検査では「外観」「におい」「性状」「機器分析」など仕入先と合意形成した原料規格に基づき検査を行います。資材検査では「機能」「外観」などを資材検査規格に基づいて実施します。

ちなみに、受入検査が終わった時点で受け入れた原料や資材に関する責任はすべて仕入先から受け入れた側に移行するため、その後に不良を検出してもその責任を持つのは自社となります。

工程内検査

製品の本格的な生産を始めた段階で行う検査です。まだ工程の途中で完成していない半製品を調べることから工程内検査と呼ばれています。

工程内検査とは

工程内検査とは、生産ラインに乗った製造途中の半製品を定期的に抜き出し、その段階で不良が起きていないか、次の工程へと進めて問題ないかを調べるものです。工程検査や中間検査とも呼ばれ、不良品が次の工程に進むのを防ぐために行われます。

工程の途中で不良品を検出できないと、その後も同じ場所で不良品が出てしまうリスクが高まります。工程内検査を実施すれば、不良品が起きやすい場所の特定にもつながるため、製造工程の改善に大きく貢献する検査といえるでしょう。

工程内検査の主な方法

工程内検査の主な方法としては、外観に傷や汚れがないかを調べる「外観検査」、製品に異物が混入していないかを調べる「異物検査」、内容量が適正かを調べる「充填量検査」、ラベルの印刷ミスや汚れがないかを調べる「印刷表示検査」、製品が正常に動いているかを調べる「機能性確認検査」などがあります。

化粧品や医薬部外品のバルク検査

製造業のなかでも主に化粧品や医薬部外品などの製造工程においては、中身を個別の容器に充填する前の段階でバルク検査が行われます。

バルクとは、個別の容器に充填させる前の中身だけの状態を指すものです。バルク検査では、できあがったバルクが規格に適合しているか確認するためにさまざまな方法で検査し、合格したものが充填や仕上げの工程に進みます。また、検査結果を記録に残してサンプルを保管することで、品質管理と安全管理を行う目的もあります。

バルク検査の主な方法

バルク検査はさまざまな検査方法がありますが、主要なものとしては次の4つが挙げられます。ここでは、化粧品や医薬部外品を例にそれぞれの検査方法を見ていきましょう。

官能検査

官能検査とは、「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」「味覚」など人の五感を使って行う検査です。外観や色、におい、使用感などを実際に人の感覚で検査します。

物性検査

物理的な性質を見るための検査です。特定の装置を使い、「粘度」「硬度」「折れ強度」「密度」などを検査します。

定量・定性分析による検査

専門機器を使ってバルクの分析を行う検査です。主に使われる機器は、製品に含まれる物質を分離して分析するための「液体クロマトグラフィー」、気体を分離して分析するための「ガスクロマトグラフィー」、測定したい物質に赤外線を照射して分析するための「フーリエ変換型赤外分光光度計」、光源からの光束が被測定物質を通過する際にどのくらい光が吸収されたかを測定するための「原子吸光光度計」などがあります。

微生物検査

バルクが微生物に汚染されていないかを調べるための検査です。大腸菌やブドウ菌などの一般細菌とカビや酵母などの真菌を調べ、バルクが汚染されていないかを調べます。

これらの検査を行い基準に達していると判断されたら次の工程に進むことができます。

最終検査

工程内検査に通り、最終工程を経て完成した製品の検査を行うのが最終検査です。

最終検査とは

最終検査とは文字どおり、製品を出荷する前の段階で取引先やエンドユーザーに不良品が届いてしまうことを防ぐために行う検査を指します。出荷時に行うことから出荷検査とも呼ばれます。

ほかの検査と同様にひとつの不良品も許されない製品の場合は全数検査を、それ以外の場合は抜き取りで検査を行い、定められた基準を満たしているかを判断します。

最終検査の主な方法

最終検査の主な方法としては、目視による外観検査が一般的です。製品としての基準を満たす標準見本や、良品と不良品の限度を見極めるための限度見本を使い、完成した商品との比較によって検査を行います。製品によっては点検用のチェックリストを作成し、一つひとつチェックしながら検査を行う場合もあります。この際、1人では見落としてしまう可能性もあるため、2~3人で行うのが一般的です。

限度見本については以下の記事で解説しています。
限度見本とは?必要性や作成方法、運用のポイントを徹底解説 

製造工程で検査を行うデメリット

製造工程で検査を行うデメリット

製造工程で複数の検査を行うメリットは、不良品が出ている状態で最終工程まで進めてしまうことで発生する無駄を省ける点。そして製造工程のどの部分で不良品が出てくるのかを特定し改善につなげられる点などが挙げられます。

しかし、次のようなデメリットも存在します。

業務効率を下げてしまう

製造工程のなかで検査を行うには、その都度、検査を行うために人数を割かなければなりません。その間、検査担当者は製造に手が回らなくなり、業務効率が下がってしまいます。

もちろん人手が豊富で検査専門の担当者を設置できるのであれば問題ないでしょう。しかし多くの製造業では人手不足が慢性化しており、製造業務の片手間に検査も行うケースが多いため、どうしても業務が滞ってしまう可能性が高まります。

ヒューマンエラーが出やすい

検査では、官能検査のように人の判断による検査も少なくありません。そのため、検査基準が設けられていたとしても、人によって判断が微妙に異なるケースも多く、品質を一定に保つのが難しい場合があります。人が検査をする以上、良品・不良品の見極めを間違ってしまうこともあるでしょう。ヒューマンエラーが出やすくなってしまうのもデメリットのひとつです。

検査工程は削減できる?自動化で効率アップを目指そう

「業務を滞らせてしまう」「ヒューマンエラーが出やすい」といったデメリットを解消し製造現場の効率を改善するには、検査品質を維持しながら検査工程を削減する必要があります。そのための対策として考えられるのは次の2点です。

検査基準の明確化

官能検査では、限度見本やチェックリストを用意したとしても人によって評価基準がバラバラになってしまう可能性があります。そのため、より評価基準を明確にして検査時に迷わないようする対策が必要です。できるだけコストをかけずに効率化を進めたい場合は、この方法がおすすめです。

検査の自動化を進める

どんなに評価基準を明確にしたとしても、人が検査を行う以上はミスが起こる可能性は残ります。そこで、もう一つの方法が検査の自動化です。すべての検査を自動化しようとすれば大幅なコストがかかるため、まずは工程を省くことができないうえに多くの工数がかかる検査の自動化を進めます。その後、様子を見ながら予算に応じて自動化を進めていくとよいでしょう。

AIによる外観検査の自動化については以下の記事で解説しています。
AI外観検査完全ガイド | 導入手順から費用相場まで徹底解説

まとめ

製造時における工程検査は、不良の発見はもちろん、不良が発生する原因の特定にも効果を発揮する重要な検査です。検査は段階を踏んで行われ、仕入前の段階から倉庫や工場への納入時、バルク制作時、製造工程内、そして完成した製品に対して行います。高い品質を保ち続けるには工程のなかで状況に応じた適切な検査が欠かせません。

ただし、これらの多くは手作業であったり、機器を使う場合でも人の手がなければ成立しない検査がほとんどです。そのため、担当者にかかる負担は大きく、本格的に検査できるようになるための育成コストも大きくなりがちです。

そこで、自動化できる部分はできるだけ自動化を進め、効率的かつ的確な検査を実施していくことが、製品の品質維持・向上を実現しながら効率化を進める重要なポイントといえるでしょう。

品質管理の基本についてより詳しく解説した資料がありますので、ぜひ併せてご覧ください。

AIを活用して生産性・品質を向上させるには?~品質管理の基礎を徹底解説~

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