CCDとは?概要・メリット・デメリットやCMOSとの違いなどを解説

 2023.10.12  株式会社システムインテグレータ

CCDはカメラや検査機器など、さまざまな撮影機器に採用されています。近年ではCCDだけでなくCMOSを採用した検査機器もあり、選定の際にはそれぞれの方式のメリット・デメリットを把握して比較する必要があります。本記事では、CCDの用途や仕組み、特徴といった概要をはじめ、CMOSとの違いなどについて解説します。

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CCDとは?

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CCDとは、Charge Coupled Deviceの略で、日本語では電荷結合素子と訳されます。主に光を取り込んで電気信号へと変換する際に用いる半導体素子であり、これを利用した固体撮像素子をCCDイメージセンサと呼びます。なおCCDイメージセンサを指して、単にCCDと呼ばれることもあります。

CCDイメージセンサの用途

CCDイメージセンサの一般的な用途はカメラ類であり、以下のような機器に用いられています。

  • デジタルカメラ
  • ビデオカメラ
  • 産業用カメラ
  • 検査機器

CCDイメージセンサは撮影の精度が高いことから、カメラ以外にも検査機器での用途があります。錠剤検査やシート外観検査、垂直反射カラー画像計測など、外観から破損や汚れといった不良、異物を検出するために利用されています。

CCDの仕組み

CCDのセンサ部は、フォトダイオード(受光素子)が表面を覆うように配列されています。撮影を行うと、フォトダイオードが受けた光の強弱に応じて大小の電荷を蓄積し、これにより1個のフォトダイオードが画素1個分の情報を記録します。
蓄積された電荷は、CCD転送路に流し込むことで増幅器へと送られます。「電荷結合素子」と呼ばれるのは、転送路として連結された素子から素子へとバケツリレーのように電荷を伝えていくためです。
転送された電荷は同じ増幅器でひとつずつ電圧に変換され、アナログの電気信号として出力されます。こうしてCCDイメージセンサが出力した電気信号を処理・加工することで、1枚の写真として画像を作り出します。

CCDの特徴

CCDは主に撮影への用途がメインであり、画質の良さが特徴です。かつてのCCDは、他のデバイスに比べコンパクトで、消費電力も抑えやすいことからイメージセンサの主流として扱われていました。現在では、後述するCMOSイメージセンサと比べてこれらの点で劣りますが、画像の品質については原理的にCCDが優れています。

CCDのメリット

CCDは、撮影の仕組みから歪みが発生しにくく、高品質の写真を撮影できるというメリットがあります。詳しく解説します。

歪みが起きない

CCDは、ローリングシャッター現象を起こすことがないため、歪みを抑えて撮影できます。
ローリングシャッター現象とは、高速で動作する物体を撮影したときに被写体が歪んでしまう現象です。この現象は、フォトダイオードの光の読み取りに時間差が生じるローリングシャッター方式を採用したイメージセンサで発生します。
ローリングシャッター方式は基本的に上から下の順で読み取るため、たとえば左から右へと高速で移動する車を撮影すると、時間差の間に車が移動した分だけ左上から右下の方向に画像が歪みます。

CCDはグローバルシャッター方式であり、露光と同時にすべてのフォトダイオードが時間差なく読み取ります。歪みだけでなくブレも発生しにくいため、高速で移動する被写体に対してはCCDが有効です。

高品質な写真が撮影できる

撮影する画像の品質が優れているのもCCDのメリットです。高品質を実現できる理由は、電荷を電気信号に変換する過程で、ひとつの増幅器をすべての画素に適用しているためです。
画素ごとに別々の増幅器を適用すると、増幅器のわずかな個体差のために全体で均一な処理が施されず、ノイズが発生することがあります。こうした電気的ノイズは信号を処理する段階で軽減することもできますが、原理的にノイズが発生しないCCDを使用するほうが品質が高い傾向にあります。

CCDのデメリット

CCDは画質の面で大きなメリットがありますが、高価である、消費電力が大きい、特有のノイズが発生するリスクがある、といったデメリットもあります。

高価である

CCDの主なデメリットとして、高価である点が挙げられます。CCDは構造が複雑で、製造工程が特殊であるためコストがかかります。
高額ゆえに、故障などのトラブルで買い替えが必要になったときは、多額の出費を迫られるリスクがあります。一度にいくつもの製品を買い替えるとなれば、自社の財務状況を悪化させかねません。
また、調達が難しいのもデメリットです。製造の困難さから、現在ではCCDを扱っている企業は多くありません。故障などの際に、同等品の用意に時間がかかると業務に支障をきたすおそれがあります。

消費電力が大きい

CCDは他の方式と比べて消費電力が大きいため、持ち出して利用するには撮影枚数が制限されるデメリットがあります。伝送路の電荷をバケツリレー方式で伝えていく構造上、伝送路全体に高い電圧をかける必要があるためです。さらに処理速度向上のために複数の電源を使用するので、駆動時に必要な電圧が高く、必然的に消費電力が大きくなります。
消費電力が大きいと、短時間でバッテリーを消耗してしまい、撮影に支障をきたす可能性があります。膨大な数の写真を撮影しなければならないシーンでは、予備バッテリーを用意するなどの必要性が生じます。

ノイズが出る

CCDの構造上、特有のノイズが発生することがあります。スミアとブルーミング、パープルフリンジと呼ばれる3つのノイズが該当します。

スミアとは?

スミア(Smear)は、シミや汚れを意味します。CCDカメラで太陽などの強い光を直接撮影すると、光源を中心に垂直または水平方向に線状のノイズが発生することがあり、これがスミアと呼ばれます。
スミアが発生する原因は、強い光源を捉えたことによる電荷の増幅です。CCDは画像の垂直または水平方向に電荷を転送していくため、フォトダイオードが過剰に光を受けると、あふれた電荷が転送路に漏れ出すことで影響を与えます。これらの電荷をまとめて増幅して電気信号に変換するため、ノイズキャンセルなどの処理でスミアを取り除くことはできません。
スミアを防ぐには物理的に光を遮断するか、被写体を照らす光量を調整する必要があります。

ブルーミングとは?

ブルーミング(Blooming)とは、撮影した光源の周りが明るく滲みだす現象です。光源を軸に垂直・水平へ線が伸びるスミアに対し、ブルーミングは円状のノイズが広がります。なお、スミアとブルーミングが同時に現れるケースもあります。
ブルーミングの原因は、スミアと同様に過剰な光の入射です。光源を捉えたフォトダイオードから電荷があふれ、隣接する周囲に影響を与えることで発生します。なお、ブルーミングはスミアのようにCCD特有のノイズではなく、後述するCMOSイメージセンサで発生することもあります。

なお、検査機器での利用においてはイメージセンサの性能を考慮し、検知に問題のない光量となるよう照明を調節して撮影します。そのため、基本的に環境の変化がない限りスミアやブルーミングなどのノイズは起こりにくいと考えられます。

パープルフリンジとは?

パープルフリンジ(PF:Purple fringing)は、CCDだけでなくデジタルカメラでも発生するノイズです。明暗の差が激しい箇所によく見られる現象で、被写体の輪郭といった画像の明暗の境目に発生する紫がかった滲みを指します。
パープルフリンジの原因として、電荷ギャップが挙げられます。明るい背景で暗い被写体を撮影する場合、電荷ギャップが増大しパープルフリンジ現象が発生します。

パープルフリンジの対策としては、色収差の少ないレンズの使用や、絞りを絞って撮影することが挙げられます。ただ、この方法は発生を抑制する効果は期待できるものの、完全に抑えるのは不可能です。画像の細かなディテールが損なわれるため、検査機器での利用では誤検知などを起こさないためになるべく発生しないような調整が必要となります。

CMOSとは?

現在、産業用カメラのイメージセンサとして主流であったCCDに代わり、台頭しているのがCMOSです。CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの略であり、日本語では相補型金属酸化膜半導体と呼ばれます。この名称はトランジスタの回路構造を指しており、その構造上、電気信号を高速で処理・転送できるのが特徴です。

CMOSはもともとカメラ向けの用途を主とするものではありませんが、現在ではWebカメラや車載カメラ、スマートフォン、デジタル一眼レフなどさまざまな撮影機器に採用されています。以前はノイズの発生が懸念点であったものの、改良を重ねることで高画質化を実現しています。

CCDとCMOSの違い

CCDとCMOSは、さまざまな部分に違いがあります。主に消費電力や画像の処理速度、画質、機能、価格などが異なります。検査機器の導入を検討しており、CCDとCMOSどちらを選ぶべきか悩んでいるのなら、双方の違いを正しく理解しておきましょう。

消費電力

CCDは、一つひとつの電荷を転送したうえで増幅器にかける仕組みゆえに、転送に高い電圧をかける必要があり、消費電力が大きくなります。

一方のCMOSは、それぞれのフォトダイオードへダイレクトに増幅器を接続し、電荷の転送を行うことなく電気信号に変換します。信号はスイッチの切り替えで表現するため常に電圧をかける必要がなく、消費する電力を抑えられます。
少ない電力で稼働できるため、CMOSイメージセンサを利用したカメラであれば、バッテリー駆動における撮影枚数の最大化が可能です。

画像の処理速度

CCDの画像処理速度は基本的に低速です。隣り合う素子へバケツリレーのように次々と電荷を転送し、ひとつずつ増幅器にかけていく仕組みゆえに、処理速度は遅くなってしまいます。また、高電圧をかけて転送を速めようとすると、電荷が飛散するなどして正しく伝えられなくなるので、品質を維持するためには低速で処理する必要があります。

一方、CMOSはフォトダイオードに蓄積した電荷を即座に個別の増幅器にかけ、スイッチの切り替えで読み出してゆく仕組みです。スイッチによる電気信号の変換は非常に高速であり、単純にスイッチの切り替えを速めることで処理速度を高めることができます。

画質

画質の面では、CCDに軍配があがります。CCDがすべての画素に対してひとつの増幅器を使うのに対し、CMOSはそれぞれの画素に別の増幅器を適用するため、増幅器のばらつきによってノイズが生じます。
ノイズキャンセラーの性能向上といった改良は進んでいるものの、このノイズが原理的に発生しないCCDに比べると画質は劣る傾向です。

また、CMOSイメージセンサの多くはローリングシャッター方式であり、動く被写体に対して歪みが生じる可能性があります。なお、現在は歪みやブレを抑えたグローバルシャッター方式を採用したCMOSイメージセンサもあります。

機能

CCDは画素を部分的に読み出す機能が限定的であり、柔軟性に欠けます。
CMOSはスイッチの制御によって読み出す画素の指定を行えます。これにより、指定の解像度となるよう画素数を間引けるほか、そのままの解像度で視野範囲を狭めることができます。
これらの機能で読み出す画素数を減らせば、データが軽量になるため処理を高速化でき、動画撮影時のフレームレートを高めるのに役立ちます。

価格

CCDは、構造そのものが複雑であり、特殊な製造プロセスで製造されます。また、現在では扱える企業が少なくなったこともあり、必然的に高価な製品が多くを占めるようになりました。

一方、CMOSはシンプルな構造が特徴です。CMOSイメージセンサの製造工程は一般的に量産されるLSI(大規模集積回路)と同様であり、安価に製造できます。市場に出回る多くの製品もリーズナブルな価格で、入手しやすい点が魅力です。

まとめ

 
CCDは、主にイメージセンサに用いられる半導体素子であり、携帯電話やスマートフォン、産業用カメラ、検査機器などに採用されてきました。高画質な画像の生成が可能である反面、価格が高くなりやすい、特有のノイズが発生する、消費電力が大きいといったデメリットがあることを覚えておきましょう。
かつては産業用カメラのイメージセンサとして主流であったものの、現在その座はCMOSに奪われつつあります。一方で画像の品質などにおいてはCCDが上回る点もあるため、産業用カメラや検査機器を導入する際には、双方の特徴を正しく理解したうえで比較・検討しましょう。
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