AIにはさまざまなデータ解析方法があります。なかでも代表的なものが「機械学習モデル」です。
この記事では、機械学習モデルの概要や重要視されている背景、学習方法の主要な仕組みについて解説し、モデル構築の手順や注意すべきポイントについてもご紹介します。
機械学習モデルとは
「機械学習モデル」とは、入力されたデータに対してコンピューターが評価・判断した結果を出力する仕組みです。AIはこの「入力」→「評価・判断」→「出力」のプロセスを通して自律的に学習します。これまで人間が試行錯誤を繰り返して学習しなければならなかったことを、コンピューターによってより迅速かつ正確に自動化できることが特徴です。
機械学習におけるモデルは、機械学習のプロセス自体のアルゴリズム(問題解決のための手順や方法)を指しています。データが特性として持っている意味や規則性といった情報をコンピューターに与え、アルゴリズムに基づいて学習させるプロセスが機械学習モデルです。身近な例としては、大量の受信メールの中から、ある特定のフレーズなどを基に迷惑メールかどうかを評価するモデルが挙げられます。
機械学習モデルが重要視される理由
機械学習モデルの目的は、一見すると無意味に見えるデータから意味のある洞察を見出だし、意思決定に寄与することにあります。機械学習モデルはデータ分析の基礎に当たるもので、これがなければデータにどのような関係性があるのかを把握できず、有用なアウトプットを得られなくなります。
人間がこれまでの知識や経験などを活用して問題解決に当たるのと同様に、機械学習モデルも自律的学習によって得られたアルゴリズムを用いてデータ分析に当たります。機械学習が重要視されるのは人間には処理しきれない膨大なデータ群を処理したり、無関係のデータ同士から共通点を見いだしたりといったことが可能だからです。
変化の激しい市場で生き残るためにはニーズに素早く対応していく必要がある現代において、常に最新のデータに基づいた意思決定ができなくてはなりません。機械学習はそれを可能にするために必要不可欠な存在になりつつあります。
機械学習の種類
一般的に機械学習モデルは、入力されたデータを評価・判断して出力します。目的に応じてさまざまな種類のモデルがありますが、主な種類は「教師あり」「教師なし」「強化学習」の3つです。また最近は「半教師あり学習」も注目されています。
教師あり学習
「教師あり学習」とは、あらかじめ正解ラベルが付けられた学習データを使う方法のことです。正解ラベルを付けられたデータは「教師データ」と呼ばれ、これを用いてモデルを構築して学習していきます。教師あり学習には、連続する数値を予測する「回帰モデル」と、データをクラス分けする「分類モデル」があります。正しく学習が進めていくことで、例えば入力した画像に書かれた文字を、AからZのうちどのアルファベットなのか、といったことが判別できるようになります。
教師なし学習
「教師なし学習」とは、学習データに正解ラベルを与えない状態で学習させる方法のことです。教師あり学習とは異なり、コンピューターには何が正解であるかという情報が与えられない一方で、大量のデータ構造の中からそれらの関係性や分布を読み取り、一定の規則性やパターンを発見します。この学習方法では「クラスタリング」と呼ばれるデータのグループ分けを行ったり、異常値を検出したりする分類作業によく用いられています。
強化学習
「強化学習」は、条件と結果をセットにして、最大の効果を生み出せるように学習させる方法です。これは、人間が特定の目標に対して試行錯誤を繰り返しながら達成するやり方と似ています。強化学習において、コンピューターは多くの学習体験を重ね、どの条件でどの結果になったのかを考えます。その結果によって与える報酬を変化させることで、より精度の高い予測結果を出力できるようになるのです。この方法は、学習に多くの時間を割かなければならないのがネックである一方、複雑な場面でも最適化できるため、ゲームソフトやロボットの制御などのAIによく使われています。
半教師あり学習
半教師あり学習とは、教師あり学習と教師なし学習を組み合わせた手法です。教師あり学習のデメリットとして、あらかじめ大量のデータに関連情報のメタデータを付与する、いわゆる「アノテーション」の工程に多くの時間やコストを割かなければならないことが挙げられます。「半教師あり学習」はメタデータ付きの教師データが少量であっても、その学習結果をもとにメタデータなしのデータからも学習することでその欠点を補うことができます。教師あり学習で必要なアノテーションを一部自動化させることで、より効率的に学習効果を高められるのが特徴です。
機械学習モデルの性能評価
機械学習モデルを作成しても、精度が低ければ実用に耐えられません。そのため、モデルの精度を確認するには性能評価が必要不可欠です。
性能評価基準には多くの種類があります。例えば、教師あり学習における回帰モデルであれば「RMSE」「MAE」「R2」など、分類モデルであれば「混同行列」などの指標がよく使われます。どの指標を用いるかは、状況や目的に応じて決めることになるでしょう。
これらの性能評価は客観的な数値によって行われるものですが、データ数が足りていなかったりデータに適合しすぎたりすると「過学習」と呼ばれる現象が起きてしまいます。そのため、十分なデータを用意したうえで、データセットを分割して学習とテストをそれぞれ実施する「交差検証」を行うなどの対策を取る必要があります。
機械学習モデルの作成手順
精度の高い機械学習モデルを作成するには、従うべき基本的な流れがあります。データ収集や加工を経た後、モデルを構築し、実際に運用していくという流れです。モデル作成方法を順に説明します。
精度を上げるためのデータを収集する
機械学習モデルを作成するにあたって重要なことは、「なぜ機械学習モデルが必要なのか」という目的をはっきりさせることです。目的がぶれていると、どのようなデータを集めて学習させればよいかがわからなくなってしまいます。
また、収集したデータが正確なものかをあらかじめ調査・確認したり、データ量が十分であるかを事前にチェックしたりしておくことで、この後の工程がスムーズに進みます。学習データの収集作業は、無料で使えるAPIやデータセットを活用することによって効率化が図れるでしょう。
モデルに適しているデータに加工する
データを収集した後は、モデル作成に適したデータかどうかを改めて精査し、欠陥や破損、不要なデータを排除していきます。そして、画像や動画、音声、テキストといった多様なデータの種類を見ながら、「タグ」を付けていくアノテーション作業に進みます。生データのままでは、機械学習モデルのアルゴリズムは正確なパターン認識ができません。大量に集めたデータへのタグ付けを行うアノテーションは、モデル構築のために必須ともいえる重要な作業です。
機械学習モデルの構築をする
次は、機械学習モデルを構築する工程です。モデルにはそれぞれ得意とする分野があり、なかでも画像認識や音声認識などは代表的な例です。AIに何を学習させたいのか、最初に定めた目的に照らし、最適なモデルを選択する必要があります。
また、機械学習モデルは大量のパラメータを自動的に調整することで予測の精度を高めるため、パラメータとなる誤差の許容範囲などもあわせてモデルに組み込んでおくと、開発をスムーズに進められるでしょう。
運用するための学習をする
精度の高い機械学習モデルを作成できたとしても、永続的に活用できるわけではありません。日々技術革新が進む現代においては、短期間のうちにモデルの精度が要求される水準を満たさなくなる恐れがあります。AIの予測精度を適宜チェックし、状況や変化に合わせて再度学習させる必要があります。
モデル構築後の継続的な運用のことを「MLOps(機械学習によるIT運用)」と呼びます。また、近年ではAIを活用することでITの運用強化を図ろうとする「AIOps(AIによるIT運用)」も注目されています。
まとめ
機械学習モデルとは、入力データをコンピューターが評価し出力することで、予測を自動化させる仕組みです。データ分析の基礎でもあり、有効な洞察を得ることでさまざまなビジネスに役立てられています。
近年は製造業におけるAI活用も進んでおり、画像認識を使った外観検査の自動化もその一例です。外観検査の自動化についてまとめた資料もありますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。
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