画像解析とは人間に代わってコンピューターが画像に含まれる情報を見つけ出す技術です。製造業や農業、小売業など、さまざまな業種で活用されています。
本記事では、生産性向上や業務効率化を実現する手段として大きく期待されている画像解析について理解を深めるため、基本的な仕組みからメリット・デメリット、導入シーンまで簡潔に紹介します。
画像解析とは
画像解析とは、カメラやセンサーにより取得した画像を使い、対象に含まれる形状などの特徴を認識し、分析する技術です。人間が目で物体の形状や色を認識するのと同じような手順で、コンピューターも対象を認識します。
順序としてはまず映像から物体の特徴を抽出する「画像認識」を行い、特徴を踏まえてそれがいったい何なのかを「画像分析」で判断します。
画像解析はさまざまな分野で活用されています。白黒の画像パターンから商品情報を読み取るバーコードや、画像データからテキストを認識してデジタルデータに変換するOCR(Optical Character Reader)も古くから利用されてきた画像解析のひとつです。
画像認識については以下の記事でも詳しく解説しています。
画像認識とは?機械学習による発展の歴史と実世界での活用シーンを紹介
AIを活用した画像解析
近年ではAIが発達したことで、画像解析の活用範囲が格段に広がりました。
農業分野における作物の育成状況監視や防犯カメラでの不審者検知、医療現場での病理診断補助などにも使われています。身近な活用事例としては、スマートフォンの指紋認証システム、オフィスの入退室や金融機関の本人確認などで使用される顔認証システムなどがあります。
画像解析が必要な理由
ここまで画像解析技術の需要が高まった理由として、今まで人間が行っていた作業をコンピューターが代替するニーズが増えたことが挙げられます。人手不足の解消や働き方改革の実現、市場における競争力強化などのために、多くの企業でAIを活用した自動化・省人化への取り組みが進められています。
なかでも画像解析は、オフィスでのペーパーレス化、生産現場での自動化を実現する手段として導入する企業が増えています。
画像解析の仕組み
画像解析は、画像から対象物を抽出、抽出したピクセルデータに対する演算処理、最終的な判別という手順で分析が行われます。
人間は視覚によって対象物を判別できますが、コンピューターから見ると画像はピクセル(点)の集合体にすぎません。そのため、まずはコンピューターが画像を認識しやすくするためにノイズ除去や背景除去、明るさや色の補正などの画像処理を行います。そして対象物の画像データをピクセル単位で抽出し、そのデータに対して演算処理を行って特徴量を算出して何が映っているのかを判別します。
現代では、従来の画像解析技術にAIの技術(ディープラーニング)を組み合わせることで、より精度の高い画像判別や、処理時間の大幅な短縮が実現しています。一般的な機械学習では、人が特徴量を設計して指定する必要があるため、手間がかかるうえに精度にも限界があります。しかしディープラーニングはAIがデータ解析によって自ら特徴量を見つけ出すため、人の手間を大幅に省くことができ、データ量が増えるほど精度も向上します。
画像解析が活用される場面
画像解析は、日常生活でも活用されていますが、ビジネスシーンでも数多く利用されています。ここでは代表的なシーンを3つ紹介します。
不良品の検出
製造現場では、前の工程から流れてきた製品が設計どおりに作られているかをチェックする検品という工程があります。従来は人間の目でキズの有無や位置、汚れなどを確認していましたが、作業負担が大きく、また見落としなどのヒューマンエラーが起きやすいのが課題でした。
製品をカメラで撮影し、学習済みのAIが不良の有無をチェックすることで、作業員の負担を軽減し、ヒューマンエラーを防止することができます。
それに加えて目視での確認は、作業員の経験に拠るところが大きく、ノウハウの継承が難しいという課題があります。画像認識技術の活用により属人的なノウハウをデータとして管理できるようになるため、技術継承の手段としても期待されています。
画像を用いた検査についてはこちらのブログで詳しく解説しています。
画像検査の仕組みや検出できる範囲とは?おすすめのシステムまでご紹介
ドローンを用いた農薬の散布
ドローンを用いた農薬の散布にも画像解析が用いられています。ドローンにカメラを搭載し、農薬を散布する場所を検知し、害虫がいる箇所など必要な箇所にだけ農薬を散布します。
人間では発見が難しい害虫の早期発見ができるほか、農薬使用を最小限に絞ることによるコスト削減にも役立ちます。
小売業のマーケティングへの活用
小売業では、実店舗とオンラインを統合するOMO(Online Merges with Offline)への動きを背景に、画像解析技術を用いたマーケティング手法が積極的に取り入れられています。市場も拡大傾向にあり、2020年度に約11億円だったのが2024年度には44億円にまで成長すると予測されています。(参照:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2837)
例えば地方のあるスーパーでは、店舗内に数百台のネットワークカメラを設置し、来店客の経路や手に取った商品、性別・年齢などを取得、データ分析することで販売戦略や商品配置に役立てています。さらに会員カードの情報やPOSデータと組み合わせることで、より詳細な分析も可能です。
画像解析を導入する3つのメリット
企業がAIを活用した画像解析技術を導入するメリットのうち代表的なものを3つ紹介します。
人件費の削減が可能
画像解析システムを導入することで、従来人間が行っていた作業を自動化できます。これにより作業員の負荷を軽減できるほか、繁忙期に増員する必要もなくなるため、人件費の削減が可能です。
また創出された時間を付加価値が高い作業に充てることで、人員配置の最適化につながります。
労働環境の改善につながる
深夜作業や危険な場所で行う作業を画像解析システムに任せることで、人間は長時間労働や危険な作業を避けられます。労災発生を予防できるだけでなく、労働環境の改善にもつながります。
業務の効率が上がる
人間が作業を行う以上、見落としや間違いといったヒューマンエラーは避けられません。画像解析システムを導入することで、ヒューマンエラー防止や精度向上が期待でき、作業品質も安定します。システムは休憩・休日不要で稼働できるため業務効率も向上します。
画像解析を導入する2つのデメリット
画像解析技術には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。導入する際には以下2つのデメリットを理解したうえで検討する必要があります。
導入の際には多くの費用が必要になる
画像解析システムを導入するためには、システム導入費用やカメラ購入費用、運用管理費用などがかかります。当然ながら高機能になればなるほど高額になるため、資金が潤沢ではない中小規模の企業にとっては大きな負担になるでしょう。
実践レベルまで達するのに時間がかかる
AIを活用した画像解析システムは、多くの事前準備が必要で、実運用までに時間がかかります。導入した後にも、メンテナンスや微調整、再学習などが必要になるため、継続的に手間と費用が必要です。
例えば工場で検品用途の画像解析システムを導入するのであれば、AI学習用として事前に大量の製品写真を撮影する必要があります。良品を学習して異常値を不良品と判断する場合と不良品を学習して合致したものを不良品と判断する場合がありますが、日本の製造業は質が高く不良品がなかなか出ないため、後者の場合は不良品の学習データを確保するのも大変です。
また、業務に使いやすいソフトウェアやアプリも、ニーズに対して普及が追いついていない傾向があるので、その面でも時間がかかるでしょう。
まとめ
AI画像解析は、生産性向上や業務効率化に役立つ技術です。特に自動化のニーズが高い製造現場では今後導入が不可欠になるでしょう。
近年は外観検査を自動化する事例も増えています。AIによる検査自動化についてまとめた資料もありますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。