ものづくり白書2020年版から見た製造業のデジタル技術の活用について

 2020.08.25  株式会社システムインテグレータ

経済産業省から「ものづくり白書2020年版」が2020年5月29日に公開されました。本ブログでは、ものづくり白書2020年版のデータから日本の製造業におけるデジタル技術の活用について考えていきます。

日本製造業の足元の状況

新型コロナウィルスの拡大や米中貿易摩擦など世界景気の不確実性が高まっています。製造業ではこの不確実性の高まりによって、グローバル・サプライチェーン寸断のリスクが浮上し、効率性だけはなく、柔軟性を備えたサプライチェーンの再構築が必要になってきています。

2020年10-12月期のGDP速報(※図1)では個人消費や設備投資が縮小しており、製造業でも米中貿易摩擦や天候要因などの影響を受けて売上高・営業利益ともに直近および今後の見通し(※図2)において弱さが表れています。

実質 GDP 成長率の推移(前期比)とその寄与度

※図1 実質 GDP 成長率の推移(前期比)とその寄与度 出典:2020年版ものづくり白書

今後3年間の見通し(国内)

※図2 今後3年間の見通し(国内) 出典:2020年版ものづくり白書

日本製造業の労働生産性について

一方製造業の労働生産性については、バブル崩壊、アジア金融危機、リーマンショック、欧州債務危機など不測の事態や環境変化を乗り越えて、付加価値額や生産性を高めてきていることがわかります。(※図3)

また、製造業は就業者数が長期的に減少しつつも、機械化や産業の高付加価値化によって、一人当たり労働生産性が非製造業に比べても高い状態(※図4)であることが分かります。ただし、人口の減少下においては、機械化やデジタル技術の活用によるさらなる労働生産性の向上が不可欠なのです。

※図3製造業、非製造業における労働生産性の推移 出典:2020年版ものづくり白書

※図4産業と製造業の一人当たり名目労働生産性の推移 出典:2020年版ものづくり白書

日本製造業のデジタル技術の活用状況

製造業のデジタル技術の活用と労働生産性の関係を見てみましょう。デジタル技術活用企業は自社の労働生産性が3年前と比較して「向上した」と回答しているのに対して、デジタル技術を活用していない企業は労働生産性が「変わらない」「低下した」と回答した企業の方が上回っています。(※図5)

また、生産性の高い現場を構築するためには「デジタルツールなどの利活用」が重要となりますが、ものづくりの工程・活動におけるデジタル技術の活用状況は「すでに活用している」または「活用を検討中」と回答した企業が75%近くになります(※図6)。デジタル技術を活用することによって「そのままの人員配置で業務効率が上がったり、成果が拡大した」と回答する企業が5割弱あり、今後デジタル技術の活用がさらに加速していくと考えられます。

デジタル技術の活用と3年前と比較した自社の労働生産性

※図5デジタル技術の活用と3年前と比較した自社の労働生産性 出典:2020年版ものづくり白書

ものづくりの工程・活動におけるデジタル技術の活用状況

※図6 ものづくりの工程・活動におけるデジタル技術の活用状況 出典:2020年版ものづくり白書

デジタル技術を活用したことによるものづくり人材の配置や異動における変化

※図7 デジタル技術を活用したことによるものづくり人材の配置や異動における変化 出典:2020年版ものづくり白書

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日本製造業で使われているデジタル技術

それでは、実際に製造業で活用されているデジタル技術をいくつかご紹介します。

設計のデジタル技術

次のようなデジタルツールをPLM(製品ライフサイクルマネジメント)で管理することで生産性向上が見込めます。これは製造業における製品や部品に関する設計データベースのようなものです。これを図書やExcelなどで管理されているとメンテナンスや検索などの効率性が悪くなり非生産的な作業が増えてしまいます。

例)

・設計ツール(3DCADなど)

・構造解析ツール(CAE)

・BOM/BOPシステム

・PDM(Product Data Management)

経営管理手法のデジタル技術

製品の企画・設計・生産・販売・保守に至るまでのプロセスを IT で一元的に管理することでデータ駆動の経営を具現化できます。製品の企画から製造して販売し、製品寿命を終えるまで全てのプロセスに関する定量的、定性的な情報を統合的に管理します。もちろん、それだけ売れて、どれだけ利益が出たのかなど製品別の収支なども管理できます。

例)

PLM(製品ライフサイクルマネジメント)と基幹システムのデータ連携

生産管理のデジタル技術

製造業では、計画、実行、実績の管理をそれぞれ行いますが、このために生産管理システムと生産実行システムが連携することで、製造現場で行われている手入力による非効率な作業を低減し、生産状況を生産管理側からリアルタイムで把握することが可能になり、生産の遅れを早く察知して対策をうてるなど効率化が可能です。

例)

・生産計画システム

・MES(生産実行システム)

・予知保全分析システム

検査のデジタル技術

外観検査システム(検査機や最近でAI画像技術を使った検査システム)を導入することで、属人的な検査業務を平準化、省人化することが可能になります。また、AIによる外観検査では、異常の種類を分類することができるので、分類した結果を予知保全の分析データとして活用することもできます。

例)

・ルールベース画像検査システム

・AI外観画像検査システム

いかがでしたでしょうか?今後は経済大国間の対立、カントリーリスク、災害、疫病(新型コロナウィルスなど)など予想できない事象で景気の不確実性が高まる世界経済の中で日本の製造業を取り巻く環境が日に日に大きく変化していきます。そんな状況でも不確実性に対処しつつ、労働生産性を向上し続ける強い企業体質にするためには、もっともっと積極的なデジタル技術の活用を推進していく必要があります。

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