画像による不良検知とは?不良の主な種類や検知手法を解説

 2024.07.30  株式会社システムインテグレータ

製造現場において製品の品質を担保するために検査は必要不可欠な工程です。製品の表面に問題がないかを確認する外観検査の実施方法には目視検査や画像検査があります。
今回は画像を用いた不良検知について、主な不良の種類や検知手法をご紹介します。また、画像検査の構築に必要な機器もご説明します。

今後、画像検査を導入したいと検討している方は、ぜひ参考にしてください。

 

製造現場で発生する主な外観不良の種類とは

画像を用いた不良検知とは?主な不良の種類や検知手法を解説

製造現場では製品にさまざまな不良が発生することがあります。ここでは、業界ごとに起こりやすい製品の不良をご紹介します。

金属

金属業界では、主に以下のような不良が発生します。

ボルト/ネジ バリ、クラック、割れ、変形、寸法ずれ
ベアリング さび、腐食、キズ、へこみ、打痕
溶接部分 アンダーフィル、アンダーカット、割れ、気泡、ピット

ボルトやネジは型を使った大量生産で精度の均一化とコストダウンを実現しています。一方で完全に不良を防ぐことは困難であり、バリや割れ、変形といった不良が発生してしまいます。不良があるボルトやネジを使った製品は破損などによりトラブルを引き起こします。

ベアリングは、製造工程で発生する衝撃によりへこみなどが発生します。また、ホコリやゴミの侵入などにより不良が生じることもあるでしょう。

溶接部分はそれぞれの溶接方式ごとに異なる不良が発生します。たとえば、巻き込まれたガスからできる気泡や温度変化による割れ、隙間が空いたりあふれたりする形状不良などがあります。隙間が大きくなるなどの不良が起こります。

食品

食品業界では、主に以下のような不良が発生します。

パッケージ キズ、汚れ、印字ずれ、印字間違い、異物混入
容器 焼け、焦げ、汚れ、破れ、へこみ、キズ、異物、印刷ミス
ボトル 気泡、異物混入、キズ、ピンホール、汚れ、印字ミス

パッケージは薄いフィルムなどでできており、製造工程でキズや汚れが付くことがあります。破れた箇所などからの異物混入も考えられます。

容器は成形中の温度変化による焼けや変形といった不良が起こります。

ボトルの不良は多岐にわたりますが、特に気泡や異物混入、ラベル関係の不良が起こりやすいです。

ラベルの不良のひとつ「シュリンク破れ」については以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
シュリンクの破れや不良が起きる原因と検査の方法とは

日用品・医療品

日用品・医療品業界では、主に以下のような不良が発生ます。

ガラス瓶、軟包装、
プラスチック容器(日用品)
印字の有無、印字のかすれ、印字ミス、ラベルずれ、ラベル破れ
医療用容器、外箱(医療品) 異物、キズ、汚れ、液面高さ、内容量、印字ミス、ラベルのずれ、ラベル破れ

日用品の不良ではラベル関係で不良が起こりやすく、素材によっては衝撃や落下などによる破損のリスクももあります。

医療品には、表示ルールに則って非常に多くの情報を記載しなければならないものがあります。そのため、印字関係の不良に注意が必要です。

電子デバイス

電子デバイス関連では、主に以下のような不良が発生します。

プリント基板 断線、ショート、クレイジング、ミーズリング
半導体パッケージ モールド不良による膨らみ・変形、ピン端子の曲がり・変形、表面のキズ・クラック・汚れ・バリ
はんだ ボイド、はんだボール、ピンホール、ブリッジはんだ、はんだ不足
コネクタ ピンリードの曲がり・欠陥、ピッチ幅の位置ずれ
シリコンウエハー 反り、変形、割れ、欠け、キズ、クラック、打痕、異物
液晶 反り、変形、割れ、欠け

電子デバイスの種類は多岐にわたり、それぞれ発生する不良が異なります。

たとえば、半導体パッケージについてはモールド不良による変形や、衝撃による表面の傷などといった不良が挙げられます。

ほかの不良については一部以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
【はんだ付けの目視検査】検査装置の導入は可能か?
プリント基板製造では目視検査が主流?よくある不良パターンや効率化の方法まで解説
シリコンウエハーとは?製造プロセスからニーズが高まる理由まで解説

樹脂・成形部品

樹脂・成形部品関連では、主に以下のような不良が発生します。

樹脂成型品 キズ、スジ、気泡、銀状、フローマーク
ボルトキャップ パージ材の残り、変形、焼け、汚れ
ガラス キズ、汚れ、異物、気泡、割れ、クラック
シート/フィルム ピンホール、ゲル、気泡、異物、汚れ、フィッシュアイ、スジ、シワ
樹脂・成形部品の不良も製品によって多岐にわたります。たとえば、ボトルキャップの焼けは空気やガスが断熱圧縮する際に熱が生じて起こります。シートやフィルムのピンホールは、小さな穴が開く不良であり、突起物などとの接触で発生することが多いです。

一部の不良については以下の記事で詳しく説明していますのでご覧ください。
射出成形で起きる「成形不良」の主な種類と原因・対策を解説
ピンホール検査とは?その仕組みと活用シーンを解説

不良を検知するための「外観検査」

画像を用いた不良検知とは?主な不良の種類や検知手法を解説-1

前項ではさまざまな業界の製品の不良をご紹介しました。各現場では製品の外観に不良がないか検査を行っており、これを外観検査と呼びます。

ここからは外観検査の方法についてご説明します。

人の目で不良を検知する「目視検査」

外観検査には人間の目で不良を検知する目視検査と呼ばれる方法があります。ここで目視検査について詳しくご説明します。

目視検査とは

目視検査とは、人間の目視によって部品や製品の状態を確認し、良否を判断する検査です。人間の五感である目視(視覚)、聴覚、味覚、嗅覚、触覚を活用して判定する官能検査のひとつに分類されます。

官能検査のなかで最も一般的な方法がこの目視検査です。目視検査は作業員が行うため、特別な設備を導入する必要がなく、イニシャルコストがかかりません。また、機器を導入した後のメンテナンスの手間や費用を考慮する必要がない点もメリットでしょう。

目視検査の課題点

目視検査は設備面のコストがかからない点にメリットがありますが、検知の難しさと人員不足といった課題もあります。

不良を検知するためには、作業員の検査精度も高いレベルが求められます。そのため、習熟度が高い作業員を確保する必要があります。

しかし、習熟度の高い人材が作業を行った場合においても、ヒューマンエラーをゼロにすることはできません。作業者の集中力や体調などによって検査精度が左右される可能性があるためです。

さらに、昨今の人材不足の状況下では作業員の確保そのものが困難を極めます。企業によってはバブル崩壊後の新規採用を見送っていたケースもあり、特に30〜40代の人事が不足しています。新たに人財を採用できたとしても、的確な検査ができるようになるまでの教育に時間とコストがかかってしまいます。退職した人を再雇用して欠員補充をするケースもありますが、近年限界を迎えつつあります。

このような人材不足を解消するために登場したのが画像検査システムです。

自動で不良を検知する「画像検査」とは

画像を用いた不良検知とは?主な不良の種類や検知手法を解説-2

ここでは製品の不良を自動で検知する画像検査についてメリットやデメリットをご紹介します。

画像検査は、画像センサーを利用して行います。人間による目視検査でいうと、目がカメラ、脳をコントローラーに置き換えたものが画像センサーです。画像センサーはカメラで撮影したデータを処理して、対象物の寸法や形状、角度、位置などを出力します。

出力したデータは登録しておいた良否判定用のデータと照合され、良否が判定される仕組みです。従来の目視検査で人間が担っていた役割をすべて機械が代行します。

画像検査のメリット

画像検査のメリットを4点ご紹介します。

検査効率を改善できる

画像検査は目視検査よりも検査時間が短くなるため、作業効率が向上します。目視検査は場合によっては顕微鏡を用意する必要があり、検査精度が向上しても作業効率が低下してしまうという課題がありました。

しかし、画像検査であればカメラを使用して細かなキズや汚れも素早く検出できるため、目視検査よりも大幅に検査効率が向上します。

細かな不良を検知できる

画像検査では高画質なカメラを使って対象物の撮影を行うため、肉眼では見つけることが困難な不良も検出できます。なかには2,100万画素のカメラを活用するケースもあり、細部まで鮮明に検査することが可能です。

ヒューマンエラーの防止

人間が行う目視検査は、作業員の体調やコンディションで検査精度が左右されます。一方で画像検査は機械で行いますので、安定した検査品質の維持が可能です。

全数検査が可能になる

検査には生産した製品の一部を抜き取って検査する抜き取り検査と、全製品を検査する全数検査があります。目視検査のリソースでは限界がありますが、機械による画像検査であれば全数検査を実施できます。全数検査をすることで検査品質の担保につながり、製品の信頼性が向上するでしょう。

以上のように、画像検査は目視検査では実現できなかったメリットが多くあります。

画像検査のデメリット

画像検査にデメリットがないわけではありません。導入を検討する際は以下の点に注意する必要があります。

イニシャルコストがかかる

画像検査には高額な機器を揃える必要があり、イニシャルコストがかかります。必要な機器は業種や製品によって異なるため、汎用性の低い機器を導入することもあるでしょう。汎用性が低いとラインが変わったときに利用できず、買い替えが必要になる場合もあります。

ただし、画像センサーを内蔵している機器であれば、パーツの変更によって柔軟に利用できる場合もあります。導入機器に関しては十分な検討が必要です。

機器を導入して終わりではない

画像検査のシステムを導入した後も管理や保守が必要です。機器がしっかりと稼働しているか、検査実績に問題がないか、検出ミスがないかなどを日々確認する必要があります。検査を機械任せにするのではなく、あくまでも自分達で検査を行っているという認識が大事です。

画像認識にはそれほど多くのデメリットはありませんが、導入に向けて把握しておく必要があります。

画像検査に必要な撮像環境

画像を用いた不良検知とは?主な不良の種類や検知手法を解説-3

画像検査を実施するには、必要な撮像環境を整える必要があります。以下を参考に撮像環境について把握しましょう。

レンズ

レンズは光を集めて像を作る役割があります。一般的にカメラは複数のレンズ、絞り、ピント調節機構から構成されています。レンズの性能によってコントラストに差が生じるため、細かな不良まで検出したい際は高解像度レンズを選ぶ必要があります。

照明

照明は対象物のキズや形状などを検出しやすくするために使います。照明の当て方には、正反射タイプ、拡散反射タイプ、透過タイプがあります。金属ならば正反射タイプ、フィルムは拡散反射タイプ、同系色の対象物は透過タイプなど、使い分けが必要です。

照明の当て方を決めたら照明の設置場所や照明の色を決めます。対象物によって最適な照明や当て方が異なるため、自社に適するものを選ぶ必要があります。

カメラ

画像検査に使うカメラは、画素数、カラー・モノクロ、転送速度に着目して選びます。画素数は画像分解能と視野サイズをもとにすると必要な要件の目安がわかります。たとえば、視野30mm内で0.1mmの異物まで検出したい場合は、200万画素以上のカメラが必要です。

カラー・モノクロに関しては、色相変化で差が出るならばカラー、明度変化で差が出るときはモノクロを選びましょう。なお、より安定性を高めた検査をしたいときは、高速タイプのカメラを選んでみてください。

撮像環境については以下の記事でも説明していますので、ぜひご覧ください。

外観検査で使用するカメラ
AIに分かりやすく伝える画像データ ~光の当て方~

まとめ

製品の異常や不良を確実に検知するためには、外観検査の撮像環境が整っている必要があります。今回は画像検査に必要な機器をご紹介しました。目視検査と比べたときのメリット・デメリットを考慮して検討してみてください。

なお、AISIA-ADではAIを活用して生産現場の生産性・品質を向上させるポイントをまとめた資料をご用意しております。この機会にぜひご覧ください。


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