AI開発に必要なアノテーションとは?作業の種類やデータを集める方法を紹介

 2022.12.13  株式会社システムインテグレータ

AI開発にはアノテーションが必要ですが、実際にどのような作業を行い、何ができるようになるのかは分からない、といった方も多いのではないでしょうか。正確なアノテーションには、AIの精度向上に直結し、業務効率化による生産性アップといった効果も期待できます。そこで本記事では、AI開発におけるアノテーションの重要性や方法について解説します。

アノテーションとは

アノテーション(annotation)は日本語で「注釈」の意味を持つ言葉です。AIの開発プロセスにおいては、教師データを作成する目的でデータに情報を加える作業をアノテーションと呼びます。

AIが精度を上げるには、機械学習によるトレーニングが欠かせません。機械学習は「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」といった3つのタイプに分かれています。そのなかでも教師あり学習に用いるデータは教師データと呼ばれ、この教師データを作成するための重要な作業がアノテーションです。

教師あり学習では、AIの学習対象となるデータにタグと呼ばれる注釈を付け、正解を示すための教師データを作成します。たとえば、AIに動物の写真を分類させたいときには、単体で写された動物の写真を集め、それぞれの写真に対して「ねずみ」「うさぎ」「猫」といったように、正解となる動物名をタグ付けすることで、AIは動物を判別できるようになります。

高度な処理が行えるようAIを成長させるには、正確にタグ付けされた大量かつ多様な教師データが必要です。AI開発におけるアノテーションは、解答の精度に直結する極めて重要なプロセスです。

AIの精度は学習量に比例して向上しますが、単に大量のデータを学習させればよいというものではありません。教師データをベースに学習を行うAIにとって、データの質はAIの品質を大きく左右する重要な要素です。良質な教師データの数が多ければ多いほど、AIの正答率は高くなります。

アノテーション作業の種類

AIが学習するデータは、動画や画像、音声、テキストなど、さまざまな種類があります。そのため、アノテーションを行う際も、取り扱うデータの形式や機械学習の意図に応じて、いくつかの手法を使い分けなければなりません。

音声アノテーション

音声アノテーションとは、音声をテキスト化したうえで、単語単位で意味を結び付けていく作業です。発せられた声の意味に対するタグ付けと、音声の種類・音量に対するタグ付けの2つの方法に大きく分かれますが、言葉に結び付く感情を意味づけて活用することも可能です。

音声認識システムの精度を上げるには、年齢や性別の異なる多様な人物の音声データを収集し、より多くのパターンをAIに学ばせなければなりません。近年は精度の高い音声認識システムの登場により、カスタマーセンターでの顧客とオペレーターの会話や、会議でのやりとりを自動でテキスト化できるようになっています。

人手不足の問題が深刻化するなかで、顧客情報のスムーズな引き継ぎや議事録作成に要する手間の削減など、業務効率化が喫緊の課題となっている企業も少なくないでしょう。そのため、音声認識システムは、今後もますますビジネスの場面で広く活用されると考えられています。

テキストアノテーション

テキストアノテーションとは、人間がテキスト情報から解釈した意味をタグ付けする作業です。テキストアノテーションで作成した教師データを用いれば、AIは与えられたテキストに対して自動で回答できるようになります。大量の文章や単語に対して、芸能・スポーツ・経済など、記事を分類するためのタグ付けを行えば、AIの活用によりニュース記事の抽出もすばやく実行できるでしょう。

また、応用により高度なテキスト分析を行い、専門性の高い研究論文の分類や、不適切と判断したコンテンツを取り除く目的で活用することも可能です。ほかにも、特定の文章に対して指示あるいは依頼なのかといった意図や、ポジティブ・ネガティブな感情的な情報をタグ付けするなど、より多くのケースに対応できます。

画像・映像アノテーション

画像・映像アノテーションとは、画像や映像のなかにどのような情報が含まれているのかをタグ付けしていく作業です。主に、物体検出、領域抽出、画像分類といった3つの手法が使われています。

物体検出は、製造業における外観検査や医療の現場でよく利用されている技術です。画像・動画から、特定の物体を確認した位置や数を確認する目的で活用されています。

製造ラインの異常検出、自動運転における道路の範囲を検出などに使われるのは、領域抽出です。画像・映像から特定の領域を抽出してタグ付けを行います。領域抽出のアノテーションは、AIが対象物と背景を明確に区分するために必要な作業です。

画像分類では、顔・服・食べ物など、さまざまなイメージをAIに学ばせます。近年、画像認識はディープラーニングにより飛躍的に精度を向上させています。製品や部品の外観検査をAIで自動化する事例や、機密情報の漏えいを防止する目的で入退室の管理システムに取り入れる事例も増えているようです。

教師データを集める方法

AIの機械学習を機能させるために、教師データは非常に重要な役割を担います。AIを活用するメリットは、大量のデータに基づいて特徴やルール、基準から的確に判断できることです。メリットを最大化するためには、教師データが正答例を提示して、AIを育てなければなりません。AIの予測精度を高めるために、教師データを集めるポイントについて理解を深めておきましょう。

社内のデータを活用する

顧客情報や売上、品質管理、生産管理など、これまでの企業活動で獲得したさまざまなデータから教師データを作成できます。ただし、AIに機械学習をさせるための知識とスキルを有したエンジニアの存在が不可欠です。

社内に蓄積されたデータの有効活用は、業務効率化の推進に大きく貢献するでしょう。ただし、教師データの作成手順は単純ですが、多くの時間を要するものです。社内リソースに不足がある場合には、有用なツールの導入や代行サービスの利用も視野に入れてみましょう。

外部に依頼する

社内に十分なデータがない場合、クラウドソーシングなどを活用して情報を収集する方法もあります。クラウドソーシングに依頼する際は、適切な予算の算定、どのようなAI開発を行いたいのかといった目的の明確化も重要です。AIの機械学習には大量のデータを必要としますが、自社だけでは必要な情報がそろわないケースもあるでしょう。

クラウドソーシングを利用すれば、効率よくデータを収集できます。上述したように、AIの精度は学習量に比例します。あらゆるケースを想定したうえで、どのようなデータが必要なのか熟考することが重要です。

データセットを購入する

AI開発用のデータが不足しているのなら、データセットを購入するのも有効な手段です。ほかにも、国内外の研究機関が公開しているオープンデータを活用する方法があります。データセットは、一般的に「トレーニングセット」「バリデーションセット」「テストセット」といった3つのタイプに分かれています。

最初の機械学習に用いるのはトレーニングセットです。

トレーニング後、パフォーマンスを計測してチューニングを行うために使用するのがバリデーションセットです。機械学習モデルを構築する工程では、設計者があらかじめ設定すべきパラメーターがいくつも存在します。必要に応じて繰り返し計測することで、AIの精度向上を支える重要な役割を果たすデータセットです。

純粋にパフォーマンスだけをテストしたいときには、テストセットを使います。データセットは自社でも作成できますが、慣れていない社員が作業に対応するとなれば、膨大な時間を必要とするでしょう。そのため、効率とコストの両方を考慮した場合、質のよいデータセットを購入したほうが、最終的にはコスト最適化につながるケースもあります。

アノテーションの重要性

精度の高い予測モデルを構築するには、有効性の高い教師データを大量に作成しなければなりません。アノテーション作業によって、ビジネスの成長を支えるビッグデータを分類・パターン化しておけば、膨大なデータも効率よく管理できます。AIの機械学習は、教師データから直接情報を学習して入力されたデータの特徴やパターンから、もっとも適した判断を行う仕組みになっています。

そのため、AIが高いパフォーマンスを発揮するには、個別のデータをアノテーション作業によって、正確に分類・パターン化し、できるだけ多くの問題と正解を学習させる必要があります。ただし、膨大な情報をタグ付けしていくアノテーションは決して簡単な作業ではありません。作業を実施する際は、一部自動化も取り入れながら、効率よく進められる方法を選択しましょう。

まとめ

アノテーションは、AIの機械学習において重要度の高い作業です。製造業では、不良品の特徴・パターンをAIに学ばせて、外観検査の実施に役立てています。AIによる外観検査の自動化についてまとめた資料がありますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。


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