18世紀半ばに最初の産業革命が起こって以降、21世紀の現代において4度目の技術革新と位置づけられる「第4次産業革命」の実現が期待されています。その主要な技術として大きな注目を集めているのが「AI」と「IoT」です。
本記事ではAIとIoTの概要について解説するとともに、それぞれの相違点や関係性を紹介します。
目覚ましい進歩を遂げるAIとは
「AI」とはArtificial Intelligenceの略称で、日本語では「人工知能」と訳されます。1956年に計算機科学者のジョン・マッカーシー氏によって提唱された概念で、人工知能学会は「知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と定義しています。
(引用元:https://www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/AIfaq.html)
特に、AIによって膨大なデータ群から法則性や規則性を導き出し、事象を法則化する技術「機械学習」は、ビッグデータ分析の領域で活用が進んでおり、DXを推進する上で欠かせない技術として注目を集めています。
AIでできること
AIは主に「特化型人工知能」と「汎用人工知能」の2種類に分類されます。現在の技術では、人間と同等にあらゆる問題に対応できる「汎用人工知能(Artificial General Intelligence:AGI)」の開発には至っていません。しかし、画像認識や音声認識、機械学習、自然言語処理、予測分析など特化型人工知能の分野においては、人間をはるかにしのぐ成果を生み出しています。
例えば、音声をテキストデータに変換する音声認識は、コールセンターの顧客対応や医療現場でのカルテ作成などのシーンで活用されている技術です。また、製造業では画像認識技術や機械学習などの活用が進んでおり、予知保全の高精度化や検査業務の自動化などに貢献しています。
AIのメリット
AI技術の導入によるメリットのひとつが、業務プロセスのオートメーション化による業務効率化・省人化です。現在、国内の総人口は2008年を頂点に下降の一途をたどっており、高齢化率の上昇と相まって、さまざまな分野で人材不足が深刻化しています。
(参照元:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/dl/all.pdf)
AI技術の導入はデータ分析や設備保全、検品業務などの省人化、業務負担の軽減や人材不足の解消など、さまざまな問題解決に寄与します。また、単純作業をオートメーション化することで空いた人材を、業績向上に直結するコア業務に集中させられる点も大きなメリットです。
AIのデメリット
AI技術の普及によって生じ得るデメリットのひとつが雇用の崩壊です。すでに無人レジや警備ロボット、自動運転車などが登場しており、人々の利便性を高める一方で、従来は人が行っていた業務がAIに代替されつつあります。
また、AI技術を導入する際は業務フローを再構築する必要があるため、環境整備に相応のコストを要する点もデメリットです。さらに、テクノロジーの向上は同時にサイバー攻撃の巧妙化をもたらすという負の側面があるため、AI技術の悪用に対抗するために高度なセキュリティ環境を整備することが求められます。
モノのインターネットと呼ばれるIoTとは
「IoT」とはInternet of Thingsの略称で、モノをインターネットに接続する技術のことです。具体的には情報機器や電子機器、空調機器、家電製品などがネットワークにつながることで、機器の遠隔操作や自動制御、データ収集のオートメーション化などが可能になります。IoTはAIとともに「第4次産業革命」の要となる技術であり、自動車産業や医療、宇宙航空産業など、さまざまな分野で活用が進んでいます。
IoTでできること
IoTにおける最大の特徴は、検知器や感知器などのセンシング技術を用いて、対象の定量的な情報を取得することです。
IoTは、「モノを操作・制御する」「モノの状態を把握する」「モノの動きを検知する」「モノ同士で通信する」といった機能を持ちます。デバイスに搭載されたセンサーによってモノや人の動きを検知し、さまざまな情報を自動的に取得します。例えば、製造現場の生産設備にIoTのセンシング技術を導入することによって、ピッキングロボットの遠隔操作や監視カメラの自動追尾などが可能です。
関連記事:IoTセンサーとは?メリットや製造現場での活用事例を紹介
IoTのメリット
IoTの活用によって得られる最大のメリットは、利便性や業務効率の向上です。
電子機器や産業機器などのモノがインターネットに相互接続されることで、これまで不可能とされてきた遠隔地からの操作やデータの自動取得などが可能となります。例えば、産業機器や生産ラインの稼働状況を遠隔地からリアルタイムに監視する体制を構築することで、設備の点検業務や巡回業務などの業務が省人化でき、生産性の向上やコスト削減に貢献します。
IoTのデメリット
IoTが抱えるデメリットとしてまず挙げられるのがセキュリティ問題です。
あらゆるモノがインターネットに接続されることで、機器の遠隔操作や自動操縦が可能になる一方で、常に外部ネットワークからの脅威にさらされるという負の側面をもたらします。IoT特有の脆弱性を突くサイバー攻撃も増加傾向にあるため、IoTの活用を推進する際は同時にデバイスの乗っ取りや情報の窃取、プライバシーの侵害などに対するセキュリティ管理の対策を導入しなくてはなりません。
AIとIoTを組み合わせてできること
AIとIoTは非常に親和性の高い技術であり、それぞれを組み合わせることで新たな付加価値を生み出すことができます。
AIとIoTの組み合わせによる代表的な活用事例として挙げられるのが、製造業における設備保全の自動化です。センシング技術が搭載されたIoTが電子機器や駆動装置などを常時監視し、取得した稼働データをAIが分析することで、異常や故障を自動的に検知・検出します。こうした技術は、農業分野においては栽培管理や土壌管理の自動化など、医療分野では健康状態の可視化や病気の早期発見などに役立てられています。
AIとIoTの違い
AI技術の目的は、言語の理解や物事の判断、事象の認識など、人間が持つ知的処理能力をコンピューティング環境で再現することです。一方、IoTの目的は産業機器や生産設備などをインターネットに接続し、対象となるモノの情報を取得することにあります。
つまり、AIは「インテリジェントな情報処理」を目的とする技術であり、IoTは「データ収集のオートメーション化」を目的とするソリューションです。また、AIは必ずしもモノに依存しない一方で、IoTはモノありきの技術であるという物理的な違いもあります。
AIとIoTの関係性
2011年にドイツ政府主導のもと「インダストリー4.0」が提唱されました。これは、ドイツが掲げる第4次産業革命の実現に向けた国家プロジェクトです。製造業をはじめさまざまな分野において、コンピューター化とオートメーション化が推進され、生産体制の効率化が図られています。
このような取り組みを実現するためには、センシング技術によって多様なデータをリアルタイムに取得するIoTと、そのデータをインテリジェントに処理するAI技術の活用が欠かせません。AIとIoTは相互補完の関係で成り立っており、それぞれの技術を組み合わせることで、新しい時代に即した生産体制の構築につながることが期待されています。
まとめ
AIはコンピューティング環境において知的な処理を行う技術であり、IoTはモノをインターネットに接続するソリューションです。特に製造る企業が市場の競争優位性を確立するためには、技術革新の戦略的活用が欠かせません。製造業におけるDXの推進についてまとめた資料もありますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。
- カテゴリ:
- キーワード: