生成AIとは? 仕組みや種類、ビジネスでの活用例について解説

 2023.10.12  株式会社システムインテグレータ

近年、画像や音声、動画などのコンテンツを自動で生み出す生成AIが話題になっています。生成AIを利用したさまざまなサービスが急速に普及しており、ビジネスに活用する事例も増加しています。この記事では、生成AIの概要や仕組み、種類などの基本知識に触れながら、ビジネスでの活用事例を紹介します。

生成AI(ジェネレーティブAI)とは?

generative-ai

生成AIとは、テキストや画像などさまざまなコンテンツを自動生成できる人工知能(AI)のことです。従来のAIは、単純作業やルーティンワークなど、決められた作業を自動化する役割を持っていました。一方、生成AIはデータの学習によって新たな成果物を生み出すことを目的としています。生成系AI、またはジェネレーティブAI(Generative AI)とも呼ばれており、近年は生成AIをビジネスの現場で積極的に活用する企業も少なくありません。

仕組みや特徴

生成AIにおける最大の特徴は、コンテンツを生成するための学習能力を備えていることです。生成AIに用いられる生成モデルは、事前に与えられた学習用データを基に、パターンや関係性などを学んでいきます。出力するコンテンツによって用いられる生成モデルは異なり、二重のネットワーク構造で精度を向上させるものや、人が手を加えてファインチューニングするものなどさまざまな種類があります。

従来型AI(識別系)と生成AIの違い

これまで広くAIと呼ばれていた技術は「識別系AI」であり、これは事前に学習した正誤データに基づいて、入力データの正誤を判断する仕組みを用いていました。例えばAIカメラやAI-OCRなどは、識別系AIが活用されている代表的な事例です。他にも、事前に登録された人の顔のみを認識してゲートを開けるセキュリティシステムや、製造現場で生産物の規格をチェックするカメラなど、識別系AIはビジネスの現場でも多く活用されてきました。

一方、生成AIは正誤を判断する目的ではなく、全く新しいコンテンツを創造する目的で活用することを目的としています。事前学習データを基にして、新しいコンテンツを生成するための学習能力を備えている点が識別系AIとの大きな違いです。

生成AIの種類とできること

生成AIは、文章や画像、音声、動画などのコンテンツを創造できます。ここでは、コンテンツの種類ごとの特徴や代表的なサービスを紹介します。

文章生成

文章生成AIは、まるで人が書いたような文章を生成するAIです。いわゆるテキスト生成AIとして広く知られており、最も一般的な生成AIとしてすでに多くのシーンで利用されています。質問にチャット形式で回答するものや、キーワード・テーマなどを指定して文章を作成するものなど、さまざまなサービスが展開されています。

OpenAIの開発したChatGPTは、生成AIが注目を集めるきっかけとなったサービスです。2023年8月時点では、有料のGPT-4と無料のGPT-3.5が開放されています。他にも、主な文章生成AIサービスとしてNotion AIやGoogle Bardなどが挙げられます。

画像生成

画像生成AIとは、入力したテキストを基に画像を生成するAIです。例えば「日本人の家族」「白い猫」というように、生成したい画像のイメージを文章で入力します。すると、AIがテキスト内容を踏まえて、学習データを基に画像を生成します。

2022年にアメリカで発表されたMidjourneyが話題となり、現在ではさまざまな企業から数多くのサービスが展開されています。主要なものではStable DiffusionやGenerated Photosなどが知られています。

音声生成

音声生成AIとは、入力した音声やテキストをベースに、新たな音声を生成するAIのことです。まず生身の人間の声を学習させることで、当人がいない状況でも同じ声質で文章の朗読やナレーションなどの音声を生成できます。

音声生成AIが注目を集めるきっかけとなったのは、Facebookなどを運営するMeta社が発表したVoiceboxです。まるで人間が出しているかのような音声で文章を読ませたり多言語を話させたりすることで、顧客対応の自動化や視覚障がい者の支援、マルチリンガル対応など、さまざまな活用が期待されています。

動画生成

動画生成AIは、入力したテキストや画像を基に動画を生成するAIです。他のAIと比較すると開発難易度が最も高いと考えられており、現在の技術水準では長い時間の動画は生成できません。

動画生成AIの最も知られたサービスにRunway Research社の「Runway Gen-2」があります。2023年6月にサービスを全ユーザーに開放しました。その後も、それまでは4秒ほどしか生成できなかった動画がアップデートによって最大16秒まで生成できるようになるなど、性能は日々向上しています。

生成AIをビジネスで活用する5つのメリット

生成AIは文章や画像、音声などを自動で生成するクリエイティブなツールです。それらはビジネスの現場でも、活用方法によっては作業の効率化やアイデアの創出、人手不足解消などといった効果をもたらすことが期待できます。

作業の効率化

手作業による入力は、時間や労力がかかるだけでなく、誤入力などのヒューマンエラーが発生するリスクもあります。また、単純作業やルーティンワークに人材を割くあまり、より重要度の高い業務に注力できないケースも少なくありません。

これまでも作業を自動化するAIやITツールが数多く展開されており、ビジネスに活用されてきました。生成AIもビジネスに活用することで、これまで自動化できなかった分野が効率化できる可能性があります。

新しいアイデアの創出

生成AIは、短いフレーズや単一のキーワードなどから複数のコンテンツを生成できます。さらに、色や質感、構図といったより詳細な指示を加えたり、条件を指定したりすることで、さまざまなバリエーションのものを短時間で出力することも可能です。複数のパターンを人の手で作成するとなると多くの時間やコストがかかりますが、生成AIを活用することで多くのバリエーションを簡単に得られ、比較・検討といったより重要な作業に注力しやすくなります。

また、生成AIによる想定外の出力が新しいアイデアにつながることもあります。「既存のコンテンツからどれだけ乖離した作品を出すか」といったように調整できるものもあり、より革新的な作品を創造するきっかけになるかもしれません。

人手不足の解消

もともと人間が担当していた業務をAIが担うことで、人手不足の解消につながる可能性があります。例えば、製造現場で従業員の質問に自動で回答するAIアシスタントを導入することで、教育に割く人材を削減できます。また、同様のシステムを自社サイトに実装することで、365日・24時間対応可能の問い合わせ窓口を実現することも可能です。

その他にも、プログラミングなどを生成することでIT人材の不足を解消するなど、さまざまな人手不足の改善策が考えられます。

コスト削減

定型タスクをAIで自動化することで、時間や労働力などのコスト削減につながります。生成AIの活用によって短時間で多くの業務が行えるようになると、より少ない人材で業務を完結できます。空いた時間を重要度の高い他の業務に充てることで、顧客満足度や売上の向上などを目指すことも可能です。

また、製造プロセスや開発プロセスに生成AIを活用することで、生産コストを削減できます。これまでは、デザインやイラスト、設計、プログラムなどはプロの技術を必要とし、クリエイターが業務を担っていました。生成AIでそれらを創造できれば、人件費の削減や業務プロセスの効率化などにつながります。

ビジネスの加速

生成AIの活用で、ビジネスの成長や拡大を促進する可能性があります。例えばゲーム開発においては、背景画像の作成やマップの自動生成など、従来は長時間かかる反復作業を生成AIに任せる事例が想定されます。このように生成AIの活用が進めば、これまでよりもスピード感のある開発を進められるようになり、市場投入までの時間や工数を大幅に削減することが可能です。

生成AIを活用する時の4つの注意点

生成AIにはさまざまなメリットがある一方で、いくつかの課題もあります。生成AIを活用する際は、出力結果の真偽や著作権、セキュリティ、プライバシーなどの問題に注意しなければなりません。

出力結果の真偽性

生成AIから出力された結果は、必ずしも正しい情報とは限りません。例えば文章生成AIは、インターネット上の大量のデータを基に文章を生成します。虚偽の情報や古い情報を学習しているリスクがあるため、必ず真偽を確認する必要があります。特にビジネスで活用する場合は、企業の信頼性に影響をおよぼす可能性があるため、しっかりと事実確認を行いましょう。

著作権問題

生成AIは事前学習として与えられたデータから、共通点や関係性などを学習して新しいコンテンツを生成します。学習したデータの中に著作権が存在するものが含まれていると、知らないうちに著作権を侵害してしまう恐れがあります。

例えば、音声生成AIに特定のアーティストの作品を大量に学習させると、実在の人物にそっくりの音楽などを生成してしまうかもしれません。学習元となったアーティストの著作権を侵害することになり、管理会社などから苦情が来たり、訴訟にまで発展したりするケースも想定されます。

情報漏えい等セキュリティ上の懸念

生成AIに指示内容を入力した際、その内容がサービス元のデータベースに登録される場合があります。実際に日本国外の企業において文章生成AIを利用した際、入力した指示内容に機密情報を含んでいたことで、情報が流出した事例があります。企業が生成AIを利用するに当たっては、「顧客情報や取引情報などの重要な情報は入力しない」旨のルール策定と厳格な遵守が不可欠です。

個人情報・プライバシー保護の問題

これも日本国外の事例ですが、文字生成AIサービスの不具合によって、登録した個人情報が他のユーザーに表示されてしまうトラブルが発生しました。また、生成AIに他人のメールアドレスを特殊な方法で聞き出し、実際に表示されてしまった事件も起こっています。企業が扱う機密情報に加えて、個人を特定できる情報なども入力しないようにしましょう。

導入時の対策:生成AIに関するガイドライン

生成AIの利用において注意するべきデメリットに対処するには、具体的なガイドラインを策定する必要があります。このような社会的要請を受け、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)は、2023年5月1日に『生成AIの利用ガイドライン』を公開しました。これは、企業をはじめとする組織で生成AIを利用する際のガイドライン策定を援助するもので、ガイドラインのひな形が示されています。現在、一般企業だけでなく教育現場や公的機関などでも生成AIの導入が進んでいますが、それぞれの組織内で明確なルールを定めることが重要です。

参照元:JDLAが、『生成AIの利用ガイドライン』を公開

生成AIのビジネスでの活用事例

ここからは、製造業をはじめとする生成AIの活用事例を紹介します。

社内FAQ

まずは、自動車部品を製造する企業において社内FAQ構築に生成AIを活用した事例です。これまで、現場の改善事例をノウハウ集として集約していました。しかし、データ量が多いため必要な事例をすぐに取り出せず、検索性が低いという課題がありました。

そこで、事例集を生成AIに取り込み、チャットに質問を入力して目的に合致した事例を取り出す仕組みを取り入れました。現状では回答の精度が低いという課題があるものの、AIが質問意図に沿った回答を返すだけでなく、事例の注意点などを独自の視点でまとめる場合もあり、新しいヒントの提供にもつながっています。

業務サポート

日本国外のAIスタートアップでは、産業ロボットの操作サポートを生成AIが行うシステムを開発している事例があります。操作は対話形式で行い、オペレーターがロボットの起動方法やスタートボタンの位置などを尋ねると、生成AIが質問に答える仕組みです。また、タブレットで撮影したロボットの映像をアップロードし、画像を基に質問する機能も搭載しています。キャリブレーションや操作方法などを自然言語による会話形式でやり取りできるため、業務効率の向上に役立ちます。

生産計画

加工食品企業において、生産計画の策定に生成AIを活用している事例があります。従来は、生産計画のパターンを数値化・解析・検証するプロセスを手作業で行っていました。生成AIを組みあわせてそれらの作業を自動化することで、学習データを基に最適な生産計画を自動で立案する仕組みを構築しました。これによって作業にかかる時間を大幅に削減でき、コスト削減に成功しています。

需要予測・自動発注

スーパーマーケットを展開する企業が、AIを活用した需要予測・自動発注システムを導入した事例があります。過去の気象データや売上データなどを学習させることで、AIによる販売予測が可能です。これにより、発注作業にかかる工数削減をはじめ、従業員教育に関わる工数の削減や作業水準の均質化などさまざまなメリットにつながりました。

技術継承

多くの製造業では、経験豊富なベテランの従業員が業務プロセスにおいて重要な役割を果たしています。しかし、その従業員が退職したり、部署異動したりすると技術が継承されません。そこで、継承の難しい熟練工の技術を取り込むAIモデルの開発が進められています。熟練工が感覚的に持っている知識や経験を過去データから抽出し、形式知としてAIモデルに反映します。ベテランのノウハウを社内に残すことで、熟練工の技術が企業の資産として継承される仕組みです。

まとめ

生成AIは、新たなコンテンツを自動的に創造するAIです。これまでは定型作業を自動化したり正誤を判断したりするタイプのAIが主流でしたが、近年は学習データを基に新しい画像や文章、音声、動画などを生成できるAIが注目を集めています。業務効率化や人手不足解消などさまざまなメリットがある一方で、著作権やプライバシーなどの課題も多く残されています。企業で導入する際はガイドラインを策定し、ルールを設けた上で運用することが重要です。

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