半導体の検査装置とは?主な検査項目・種類を解説

 2022.07.20  株式会社システムインテグレータ

さまざまな電化製品やIT機器、自動車などに用いられている半導体。現代社会には欠かせないものですが、非常に繊細なため半導体が市場に出る前には精密な検査が行われます。

本記事では、半導体の検査装置や主な検査項目・種類をご説明します。半導体の検査装置に関して理解を深めたい場合や検査装置の導入を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。

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半導体製造とは

半導体の検査装置とは?主な検査項目・種類を解説

半導体は、電気を通す導体と通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質です。トランジスタやダイオードなどのディスクリート半導体部品、トランジスタなどのICを半導体と呼ぶことがあります。

半導体が発明されたのは19世紀です。1940年代にはトランジスタが発明され、素材としてシリコンが広く使われるようになりました。それまで真空管を使っていたラジオも小型化されて携帯できるようになり、半導体ビジネスが急激に拡大していったのです。

そして、現在の半導体は製造技術の進化により、システムの効率化や省エネといった効果をもたらしています。電化製品や交通、通信など私たちの生活にも欠かせないものとなりました。

例えば、どの家庭にも設置されてあるエアコンにも半導体が使われています。エアコンに半導体を使うことで、快適な温度に設定する制御機能が働きます。また、自動車の安全性の向上や最先端の医療機器のコントロールにも半導体が使われています。

機械にとって半導体はいわば脳のようなもので、今後も応用される領域は広がっていくと期待されています。

半導体に使われるシリコンウエハーについては以下の記事で詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
シリコンウエハーとは?製造プロセスからニーズが高まる理由まで解説

半導体製造の流れ

半導体製造の流れは、前工程と後工程に分けられます。まずは前工程の流れと検査について見ていきます。

前工程

1.回路設計

小さなチップの中に回路図を作る工程です。いかに効率よく配置するかなど検討を重ねて、フォトマスクを作成します。その後、フォトマスクでウェーハの表面に回路パターンを焼き付けます。ここでの検査はウェーハのゆがみや欠け、割れを識別します。

2.ウェーハ製造

半導体のベースであるシリコンの単結晶を作ります。慎重にゆっくりと引き上げると良質な単結晶が完成します。その後、ウェーハ表面を鏡面状に研磨します。

3.素子形成など

ウェーハに回路パターンを焼き付けるために酸化膜を付けていきます。フォトレジストという感光剤をウェーハの表面に塗布して感光性を持たせたら、ウェーハの表面に回路を焼き付けます。

その後エッチングで不要な酸化膜を取り除いて、必要なイオンの注入に移ります。表面を研磨し、電極形成を経てウェーハ検査を実施したら前工程は完了です。

なおウェーハ検査では、異物混入、回路パターンの乱れ、電気特性不良などを判定します。

後工程

1.組み立て

ウェーハをチップに切断して、良品のチップをリードフレームに固定し接合します。そしてセラミックや樹脂パッケージに全体を封入したらフレームを切断してリードを成型します。

2.検査・マーキング

電気的特性検査や外観構造検査、長期寿命試験などを行って不良品を取り除きます。最後に良品と判定されたものに半導体製品本体にレーザーで品名などを刻印し、出荷します。

以上の流れで半導体が製造されます。半導体製造ではストッカーなどの各種搬送装置、純水・薬液装置、排ガス処理装置などの各種ガス装置、クリーンルーム装置など、さまざまな装置が使われます。

半導体の製造について以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
半導体の製造工程とは?必要な装置や製造における注意点を解説

半導体の検査工程と検査項目

半導体の製造工程では、信頼性や品質などの確保のために各工程で半導体検査装置を使った検査が行われます。検査はウェーハ製造時、ウェーハ上の回路製作時、半導体のパッケージ化時などに実施され、検査項目は多岐にわたります。

ここでは製造工程と検査項目を簡単にまとめました。

  • ウェーハ製造時の検査項目
    ウェーハのゆがみ、割れ、エッジの欠け、異物付着など。

  • ウェーハ上の回路製作時の検査項目
    異物付着、異物形態、回路パターンのずれ、電気特性不良、ダイシング時の寸法不良など

  • パッケージ化時の検査項目
    電気特性不良、ワイヤーボンディング不良

上記でご紹介した検査では、画像データを用いた外観検査が行われます。高解像度のカメラや赤外線カメラを用いて異常や不良がないかを確認し、異物を発見した後は、パターン転写を行ってレーザー発信機・受信機で異物の位置を特定します。

また、回路パターンを作成した後であれば微細パターンのための電子顕微鏡を使って、画像解析によって異物や回路パターンの不良を検出します。

なお、ウェーハの異物には、ランダムに発生するものと、機械の調整不足で複数のウェーハの同じ箇所に発生するものがあります。同じ箇所に発生する異物は、製造したウェーハすべてに発生する可能性が高く、歩留まり率の大幅な低下につながることがあります。異物の状態を調べて原因を突き止めることで、ウェーハの生産性や信頼性、安全性の確保につながります。

回路パターンの作成やパッケージ化などの後には、テスターを用いて電気特性の不良の有無を検査します。電気特性の検査ではプローブ上に設置されたウェーハを、テスターを使って半導体の電極に当てて調べます。

半導体製造では多くの工程がありますが、各工程の検査項目もさまざまで、検査装置の活用も広範囲にわたります。

なお製造における検査工程については以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
製造における検査工程とは?各工程の解説&検査のメリット・デメリット

半導体検査の課題

半導体製造では、回路パターンを形成する前に欠陥が生じやすいとされています。ベアウェーハの欠陥や前工程の各プロセスで発生する欠陥は、後工程や半導体の品質そのものに大きな影響を与えるため、前工程における外観検査は特に重要視されています。

ベアウェーハには、ウェーハ製造の工程で発生するクラックや汚れ、キズ、結晶欠陥などが内在している可能性があります。それらの欠陥は回路パターンの形成に影響するため、回路パターンを形成する前に受入検査が必要です。

しかしながら、半導体製造は工程が多く複雑です。すべての工程で高精度な検査を行うには膨大な時間とコストがかかります。外観検査を従来のように検査員が目視で行うのも困難でしょう。

リワークが可能なエッチング工程の前にまとめて検査を行うなど、検査ステップの削減に取り組んでいる現場でも、発生した不良に対処するばかりで、不良の発生原因を追及することにリソースを割くことができていない点が課題となっているケースが少なくありません。

また、半導体製造の技術が向上するにつれて形成される回路パターンが微細になり、要求される検査精度も高まっています。検査員の目視で検出できないケースもあるため、高精度な検査装置を導入して、より早く正確に不良を検出することが重要となります。

さらに、近年はウェーハが大型化する傾向もあり、検査に時間がかかってしまうという課題が発生しています。歩留まり向上のために欠陥を素早く正確に検知するには、検査装置の導入はもはや必須といえます。年々厳しくなる製品要求に応えるためにも、検査装置の導入によって検査の精度とスピードを上げ、品質や効率の向上につなげることが求められています。

半導体検査装置とは

半導体検査装置とは、半導体チップの信頼性を確保するために、各工程において規定通りのワークが作られているかを検査する装置です。主に液晶、基板、半導体ウェーハなどの外観検査に用いられます。

半導体検査装置は、ウェーハ作成、ウェーハ上回路作成、パッケージ化という半導体製造における3つの工程で検査に使われます。

ウェーハの外観検査が行われるのは、回路パターンを転写する前後です。まず、回路パターンを転写する前の検査は、主にウェーハメーカーにて行われます。高解像度のカメラを使い、ほこりなどの異物の付着だけでなく、傷やゆがみなどについても検査します。

パターン転写後の異物検査は、半導体の製造メーカーによって行われる検査です。レーザー受信機とレーザー発信機を使い、異物の位置を特定します。位置が特定された異物は、電子顕微鏡によって詳細にチェックされ、画像データとして蓄積されます。そして、ほかに検出された異物との比較や解析が行われます。

前述のとおり、ウェーハ上の異物が同じ位置に複数回発生している場合、検査対象以外のウェーハでも同様の異物が発生している可能性が高く、歩留まり率の低下の恐れがあります。そのような問題を早期に発見するために、半導体検査装置と電子顕微鏡によって異物の位置を特定し詳細を分析する必要があります。そして異物の発生原因を究明し対処ができれば、ウェーハ製造の信頼性の向上や、現場の生産性向上につなげることができます。

なお、半導体検査では、高感度カメラやテスター、電子顕微鏡、画像解析ソフト、赤外線カメラなどの機器を使って検査を行います。

半導体検査装置の種類

ここからは半導体検査装置の種類をウェーハ検査とパッケージ検査に分けてご紹介します。

ウェーハ検査

前述のとおりウェーハは半導体の基盤となる材料で、半導体の品質や性能に直結します。そのため、綿密な検査が必要です。

ウェーハの不良は、キズや欠け、ゆがみと異物付着などが例として挙げられます。これらの欠陥は表面検査装置を使って検知されます。

表面検査装置はウェーハを回転させてレーザー光を照射して反射した光を検出する仕組みとなっています。ウェーハの表面に欠陥があったり異物が混入していると、当たった光が散乱するため、検出器でその散乱光を検知するのです。

装置によっては欠陥や異物の位置をマップで出力したり、内訳のグラフやサイズを分類できたりする機能を備えています。サイズに応じてランク分けを行って良否の仕分けができる機種もあり、課題に応じて活用することで検査の精度や効率の向上がが可能です。

なお、検査機器に関しては以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
製造現場の検査機器メーカー徹底比較【目的別・15選】

パッケージ検査

パッケージ検査は、半導体製造の後工程で行う検査で、ファイナル検査と呼ばれることもあります。パッケージングされたチップが電気などの厳しい環境においても正常に機能するかを確認する検査です。さまざまな検証を徹底して行うため、検査完了までに1週間程度要することがあります。

なお、パッケージ検査ではハンドラと呼ばれる性能評価や良否判定用の搬送装置を使います。

すべての検査が完了すると、合格した半導体チップが出荷されます。

まとめ

半導体は日常で使うさまざまな製品に使われています。非常に精密で、微細な欠陥が製品の品質に大きく影響することもあるため、高い検査精度が求められます。

市場に出るまでに多岐にわたる検査が行われており、外観検査もその一つです。従来は検査員による目視検査が行われてきましたが、検査の高度化などによって対応が難しくなり、自動化する事例が増えています。

なかでも近年注目されているのが、AIを活用した外観検査の自動化です。詳しい資料をご用意しましたので、興味がありましたらぜひご覧ください。

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