異常検知にもディープラーニングが活用されているのをご存知でしょうか。異常検知を行う中で、機械学習の応用はすでに進んでいます。ディープラーニングを利用することによって、今まで人がこなしてきた異常検知も、機械が判定し、製品の異常を即座に判断できるようになっているのです。今後もより精度の高い異常検知の方法として利用されていくでしょう。
今回は異常検知におけるディープラーニングの活用と、その具体的な事例、そしてAIを利用したソリューションについて、詳細に解説します。
ディープラーニングとは
そもそもディープラーニングとはなんでしょうか? AIという大きな括りとして理解している方は多いですが、それ以上先のことはあまり知らない人が多いのが現状です。その概要と、AIとの関連を順に説明します。
ディープラーニングの概要
ディープラーニングとは、本来「データを複数の階層にまたがって、学習する」ことを指します。deepとは深層という意味があり、深層学習とも呼ばれています。一般的な理解としては、「大量のデータから自動的に学習できるAI」のことを指すのがスタンダードになってきました。しかし、実際には、ディープニューラルネットワークという手法を利用して、十分なデータ量の中から、人間の力を利用せずに、機械が自動的にデータから特徴を抽出する学習のことです。
ディープニューラルネットワークというのは、ニューラルネットワークという「パターン認識が可能なように設計されたアルゴリズム」を多層化したものといわれています。人間や動物の神経回路がモデルとなっており、人間の神経ネットワークを機械化してアルゴリズムとし、多層構造化したもののことを指します。ニューラルネットワークを基礎として、発展させたものという解釈が正しいでしょう。
AIを一気に実用に近付けたディープラーニング
ディープラーニングによって、AIは一気に実用化に火がつきました。これはディープラーニングによって、今までよりもAIの精度が飛躍的に向上したことにあります。すでにディープラーニングを利用することで、チェスなどのボードゲームでは人類のトップが敗れていますし、将棋などの世界でも、最善手を予測して勝率を計算し、数値的に優劣を表示することなどで注目を浴びています。
ディープラーニングは以下の4分野においてすでに実用化がされています。
- 画像認識
- 音声認識
- 機械翻訳などの自然言語処理
- 異常検知
これらの実用化に漕ぎ着けることができたのはディープラーニングの発展によるものです。AIはディープラーニングによって、非常に高度な画像認識、音声認識や、自動翻訳、そして異常検知に対しての実用的な能力を手に入れたといえるでしょう。今後も実用化される例が増えることが予想されます。
ディープラーニングを用いた異常検知の潮流
ディープラーニングは、人工知能を用いた異常検知の領域に革新をもたらしました。ディープラーニングによる機械学習や異常検知への貢献は計り知れません。その実例を紹介します。
ディープラーニング以前の機械学習
ディープラーニングも機械学習の一つであるため、別物ではないのですが、ここでは機械学習というものについて詳細に述べます。
機械学習は、コンピューターが大量のデータを学習することで、分類や予測などのタスクを遂行するアルゴリズムおよびモデルを自動的に構築するための技術です。
機械学習にはニューラルネットワークを用いた学習アルゴリズム以外にも、「ニアレストネイバー法」「決定木」「サポートベクターマシン」などのアルゴリズムが存在しています。
しかしこれらの技術には精度の面で限界があったため、実践的に用いるというにはあと一歩足りないという面が強かったのです。そこで、ディープラーニングの登場によって、異常検知の業界は一変しました。
ディープラーニングによって、AutoEncoder(オートエンコーダー)などの技術が登場し、機械学習による異常検知はブレイクスルーを迎えることになりました。AutoEncoderとは、元画像と再構築画像の差をとることで、その我が大きいと異常と認識する技術です。
こちらの記事でも詳しく解説しています。
正常データだけを学習する異常検知(Vol.3)
ディープラーニングによる異常検知の革新
異常検知の革新はディープラーニングによって引き起こされました。従来の機械学習では対応できなかった画像認識などの高次元データについても。ディープラーニングが登場したことによって対応することが可能となったためです。
特に革新に寄与した技術について以下に紹介します。
- GAN:敵対的生成ネットワーク
- AutoEncoder:自己符号化器
- Metric learning:距離学習
GANは2つのニューラルネットワークを訓練データ生成と識別の2つに分類することで、人の手によるデータの用意をしなくて良くなったことが特徴的な技術であり、最も基礎的な技術です。そして、2006年にブレイクスルーとなるきっかけとなったのが、AutoEncoderによる異常検知です。
関連記事:敵対的生成ネットワーク・GANを用いた異常検知とは
その他にも、Metric learningという距離学習による異常検知によっても異常検知が可能となりました。距離学習は似たもの同士を固めてプロットする学習方法といわれています。Metric learningは、ある学習させたモデルに対して、似たもの同士を固めてプロットしておきます。そこに対して新たなデータが出現した際には、すでにプロットされている似たもののデータとは全く違う位置にプロットされます。Metric learningは「距離」をもとに正常・異常の判断をするため、過去学習したことのない新たなデータの場合でも、すぐに異常であると判定することが可能となったのです。
関連記事:Metric Learning(距離学習)は異常検知にどこまで使えるのか?
このように、ディープラーニングによって様々な手法が登場し、異常検知の領域は一気に実用可能レベルまで引き上げられたといえるでしょう。
異常検知はハイブリッドが主流化
近年の異常検知はハイブリッド化が主流となっています。従来の機械学習とディープラーニングのハイブリッドな異常検知、あるいはディープラーニング同士によるハイブリッドな異常検知が主流になっています。
例えば、自己教師あり学習などです。工業製品で起こる異常というのは細かい傷や変色など様々な要素がありますが、あえて細かな異常を人為的に作り出してMetric learningによって学習することで、高精度な異常の検出と可視化を可能にしています。
その他にもディープラーニングを利用した異常検知の方策は多くあり、適した方法を利用することで工業製品の異常検知に用いられているのです。
ディープラーニング外観検査ソリューション AISIA-AD
AISIA-ADはディープラーニングを活用した外観検査システムです。「クラウドで学習、エッジで判定」というモデルの外観検査システムで、クラウドによって、アノテーション、クレンジング、正常品または正常異常の両方の機械学習を行うことができ、クラウドからエッジへのデプロイまでの一連の学習プロセスをサポートしています。
つまり、クラウドのAI学習データ格納環境から、学習処理を行い、AIはその情報を学習して分類器にフィードバックを行います。AI学習モデル配信によって、エッジコンピュータが工場での判定に素早く対応することが可能となっているのです。
工場の異常判定環境では常にカメラなどの撮像機器による異常検知が行われており、異常が発生すると異常検知サーバに異常情報が蓄積され、そのデータがクラウド上に学習データとして共有されるという循環が成り立ち、より検知の精度を高めていくことが可能となるといえます。
最適なAIモデルを取り入れられる
AISIA-ADではAIモデルを固定しません。現場ごとに利用するべきAIのパターンも組み合わせも違うことや、ディープラーニングによってAIの多種多様なモデルが用意されているためです。これによって自由に最適なAIモデルを取り入れることが可能となっています。
従来では不可能と考えられていた柔軟な判定も、ディープラーニングによって多様なAIが用意されることで、組み合わせ次第では判定することが容易になることや、より精度の高い判定を行うことも可能になることが想定されるといえます。
従来の異常検出よりも高精度な異常検出を求めたい、最適なAIによって属人化している現場を変えたいという場合にはぜひ弊社までご連絡ください。
まとめ
ディープラーニングの詳細から、ディープラーニングを用いた異常検知の現状と革新について解説しました。異常検知はディープラーニングによって日々検知能力が向上しているのはもちろん、検知方法も柔軟に変化しています。
日本の製造業における異常検知の課題の一つとして、異常データが少ないことが挙げられます。ディープラーニングを異常検知へ応用することで、こういった課題を解決できます。
AIの基本についてまとめた資料などもご用意してありますので、ぜひご覧ください。
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