目視検査の作業方法や内容は?よくある課題とその解決策についても解説

 2024.04.24  株式会社システムインテグレータ

製造業のグローバル競争が激化する近年では、新商品の開発や原材料のコスト上昇だけでなく、品質をめぐる競争も激化しています。
品質の向上で欠かせないのが目視検査です。目視検査は不良品あるかどうかの検査と合わせて、どこに不良品発生の原因があるのかを究明するのも大きな目的です。

そこで今回の記事では、目視検査の作業方法や内容、よくある課題とその解決策を解説します。

目視検査とは?

目視検査とは?

目視検査は、人の目で製品や部品の品質をチェックする検査のことで、「官能検査」と呼ばれる検査の一部です。

官能検査では人間の五感(視覚・嗅覚・聴覚・味覚・触覚)を使って品質をチェックします。

目視検査は、五感のうちの視覚を用いた検査です。たとえば、製品の表面にある異物やキズのほか、形状不良や印字ミスがないか、という情報を目で検査します。

外観検査との違い

目視検査は外観検査の一種であり、不良品を検出するという目的は変わりません。

近年では、検査の自動化が進んでいるものの、自動化が困難な部分は目視検査で補う傾向にあります。多くの製造現場では、検査装置が製品の検査を済ませたあとに、目視検査を行うパターンが採用されています。

なぜ自動検査でも正確な判定が困難な場合があるのでしょうか。外観検査の自動化が難しい領域について見ていきましょう。

関連記事:外観検査とは?目的や発見可能な不良など徹底解説

自動化が難しい検査項目

現在では外観検査の自動化も普及しつつありますが、製品によっては自動化が困難な場合もあります。そうした製造現場では、「自動化できる項目」と「目視検査が必要な項目」に分けて、人による検査結果のばらつきを抑える必要があります。

外観検査の自動検査において、正確な判定が難しいケースについていくつかご紹介します。

キズ

正常な製品や部品にはないキズの検出です。

目視検査の場合は、製品を手に取って確認することができるため、製品に照明の光が反射していたり、キズが見えにくい位置にあったりする場合でもキズの有無を判別しやすいでしょう。しかし、従来の画像検査は画像で確認できる位置に付いたキズの検出はできても、製品の裏や内面にあるキズの検出は難しいのが現状です。

また、製品の状況次第では定量化が難しいことも問題といえます。

たとえば、切削痕といって部品の切削する際につく痕は良品として判定する一方で、切削痕とは違ったキズを不良にするような場合は、画像処理システムで判別するのは困難です。

この場合、外観処理システムではなく人の目による外観検査で不良の判別を行わなければなりません。

色味

色味とは、製品の色の濃淡や色合いのことです。

製品表面にある色味の違いは定量化が難しいことから、自動化は難しい傾向にあります。焼成のしすぎによるガラスの色ムラや銅基板の酸化などが主な例です。このように定量化が難しいものは、検査員によって外観検査を実施するのが一般的です。

異物

異物とは、正常品にはない固形物のことです。

ひと括りに異物といっても種類や付着箇所が異なるので、キズや色味と同じく定量化が困難な検査項目です。また、製品の表面にさまざまなパターンが存在する場合は、異物や付着箇所によっては正常と判断されてしまう恐れがあります。

以上の理由から、キズや色味の判定などは自動化が難しく、人による検査に頼るケースが多いのが現状です。

目視検査で必要になる「基準」

前述したような項目は不良品検出の自動化が難しく、まだ目視検査が必要とされるケースが多くあります。目視検査を実施するにあたり必要になるのが、「どこからが良品で、どこからが不良品である」を定める「基準」です。そして、その基準をまとめたものが「基準書」となります。

目視検査のメリット・デメリット

製品や部品の品質チェックは、その製品や部品に不具合や欠陥、異物などがないかを出荷前に確認する重要なもので、正確さと迅速さが求められます。そんな品質チェックの方法として、今でも多くの製造現場で人間の目による目視検査が行われていますが、どのようなメリット・デメリットがあるのか考えていきましょう。

メリット

設備を用意する必要がない

人間の目によって行われる目視検査には、上記のように比較的安価な光学スコープ(ルーペ、顕微鏡など)を用意する程度で、特別な設備・機械などを導入する必要がありません。このため、目視検査を導入する際にかかるイニシャルコストを低く抑えることが可能となります。

柔軟に対応できる

人間の目による目視検査は、担当する検査員の熟練度によっては非常に高度かつ複雑な判断も瞬時に、柔軟に対応することが可能です。しかも、その検査精度は非常に高く、一般的な画像検査では検出しきれない程度の欠陥や異物にも柔軟に対応できるといったメリットがあります。

デメリット

人手不足

日本社会が抱える少子高齢化などにともない、目視検査を行える技術を持つ検査員の人手が不足しているという現状があります。さらに、熟練度の高い目視検査員の人材を確保するためには、相応の人件費が必要となります。なお、これは次のデメリット項目ともリンクしています。

教育の難しさ

目視検査の熟練度を向上させるためには、一定期間の実務経験が必要となります。熟練度の高い目視検査員が育っても、教育係として指名すると製造現場から離れなければならないため、短期的には人手不足の解消はつながりません。

さらに、新人検査員に目視検査の教育を一定期間実施しても、目視検査には適正が必要なため、教育終了後に不向きという判定が出ることもあります。このように、高度で精度の高い検査が柔軟に行える目視検査員を育成することは非常に困難で、結果として熟練度が高くない検査員に任せることで、検査品質にばらつきが出るといった恐れもあります。

検査員のコンディション

いくら熟練度の高い目視検査員といっても、その時のコンディションによって検査精度が常に一定というわけにはいかないケースもあります。

例えば、体調(疲労感や疾病など)や感情、そして経験によって検査品質が安定しないといったデメリットが人間の目による目視検査にはあります。
また、こうした疲労感や健康不安を一時的に解消する検査方法として、「周辺視目視検査法」というものが提唱されています。
周辺視目視検査法は、検査員の体格に最適な作業机や検品トレイなどの高さ、配置を見直したり、検査する製品や部品の欠陥箇所を鮮明に認識できるライティングや照度を最適化したりするといった考え方です。

ただ、こうした対処は目視を行う検査員の消耗度によって効果が小さくなる可能性があり、さらに、どれだけ熟練した目視検査員であっても、ヒューマンエラーによるミスが生じるといったケースもあります。

目視検査作業の方法

目視検査作業の方法

目視検査には、いくつか方法があります。

  1. インライン検査
  2. オフライン検査
  3. 全数検査
  4. 抜き取り検査

上から順番に説明していきます。

インライン検査

インライン検査は、製造ラインの中に検査工程を組み込んだものです。

そもそも大量生産を行う製造工場の多くは、ライン生産方式を採用しています。単一製品を大量に製造する場合は、工程順に設備や作業員を配置することで効率よく生産できるからです。

インライン検査のメリットとデメリットは、以下のとおりです。

メリット

デメリット

  • 検査スピードが速い
  • 全数検査に向いている
  • 自動化が容易で人件費を軽減できる
  • 設備の設置に手間がかかる
  • 自動化の場合は設備の設計が必要
  • 人件費や設備投資に費用がかかる

全数検査が行いやすいという点はありますが、一方で人間の能力の限界があることから画像センサなどを活用した検査装置とセットで目視検査を行う場合がほとんどです。

オフライン検査

オフライン検査は、製造ラインとは別で検査を行うことです。

検査工程が製造ライン外にあることから、精密な検査を実施しやすい特徴があります。インライン検査の場合は、ある程度は設備の速度に合わせて検査を行う必要があるので、精密な検査を実施するのは困難です。

しかし、製造ラインとは違った場所に検査工程のあるオフライン検査では、拡大鏡や顕微鏡を使った時間のかかる検査を行うことができます。

以下は、オフライン検査のメリットとデメリットです。

メリット

デメリット

  • 精密な検査を行いやすい
  • 抜取検査に向いている
  • 設備投資の費用などを抑えられる
  • 全数検査には不向き
  • 目視検査では検査員でばらつきが出やすい
  • 目視検査の場合は人件費が高額になりやすい

オフライン検査は、製造ラインから検査する製品を運搬したり、計測や精密検査を手作業で行ったりする必要があることから、手間と労力がかかってしまいます。

全数検査

全数検査は、対象の製品や部品をすべて検査することです。

完全な全数検査の実施により、検査した製品や部品の品質を完全に保証することができます。検査の結果は、自社の規定に適合しているかどうかで判定します。

全数検査を行うことのメリットとデメリットは、以下のとおりです。

メリット

デメリット

  • 対象製品の品質を完全に保証できる
  • 不良品が市場に流通するリスクが低い
  • 人件費や時間がかかってしまう
  • 耐久検査や破壊検査には不向き
  • 検査のスピードは能力的に限界がある

全数検査は高い検査精度が期待できますが、ボルトやナットといった安価で数量の多い製品で実施すると費用対効果が見合わないデメリットもあります。

また、長時間稼働させた製品を検査する耐久検査、強度を調べるために外力を加える破壊検査や引張検査などは、製品や部品の価値を損ねるために、全数検査を行うことはありません。

抜取検査

抜取検査は、検査対象のロットからサンプルを抜き取って調べる検査のことです。

ロットの品質水準と検査結果を照合して、ロットの合否判定を行います。全数検査に比べて検査数が少ないことから検査にかかる費用や時間を節約できるほか、全数検査ではできない多項目の検査を行うことができます。

抜取検査を行うメリットとデメリットは、以下のとおりです。

メリット

デメリット

  • 検査の費用や時間を節約できる
  • 他項目の検査を実施できる
  • 耐久性や破壊試験に対応できる
  • すべての製品の品質は保証できない
  • 不具合が発生する可能性もある
  • 品質改善につながらない恐れがある

抜き取り検査はサンプルでのチェックとなるため、不良品が発見された場合、対象ロットの良品がすべて不良品扱いになったり、逆に良品と判断されてもチェックしていない部分に不良品が入っている可能性もゼロではありません。

そのため、近年では画像センサの導入で検査の自動化を進め、安価で数量の多い製品にも全数検査を行う現場が増えています。

目視検査の作業内容

目視検査の作業内容

ひと括りに目視検査といっても、作業内容はさまざまです。例えば以下のような項目の検査があります。

形状や構造に関する検査

製品や部品が作られた段階では、形状や構造に関する検査が行われます。

製品の多くは設計の段階で仕様が決まっていますが、生産ライン上の設備に異常が発生した場合は、仕様とは異なる形状の製品が作られてしまいます。

手作業による工程が含まれる場合は、作業者のヒューマンエラーによって規格外の製品が作られることも珍しくありません。製品の形状や構造が定められた仕様を超過してしまうと、品質が保証はされることはありません。

形状や構造に関する検査を自動化する場合は、検出精度の高い外観検査が要求されます。

表面形状に関する検査

表面形状に関する検査では、製品の表面についた傷や欠け、付着物や汚れをチェックします。

製品の形状が複雑あるいは加工箇所が多い製品では、表面に不具合が起こりやすい傾向にあります。熱によって変形する樹脂成形(プラスチック)は、製品の表面に亀裂や凹みが生じやすいのが特徴です。

表面形状に関する不具合は種類が多いので、発見や原因特定の早さが品質を左右します。

仕上がりに関する検査

生産ラインの最終工程に位置する「仕上がり」での検査は、製品そのものの品質を最終確認する重要な検査です。

組み立て後の丁寧さ、バリや欠けの有無などの確認のほか、組み立ての際に生じた欠陥の有無もチェックします。

完成した製品や部品にバリや欠けが残っている場合は、消費者にケガをさせてしまう恐れがあります。そのため、仕上がりに関する検査で「不合格」と判定された製品は、不良品として処理される場合がほとんどです。

関連記事:工場における目視検査のコツとは?トレーニング方法、今後懸念される検査の限界とは?

目視検査作業でよくある課題

目視検査作業でよくある課題

以下は、目視検査作業が直面している代表的な課題です。

  1. 検査員の確保が難しい
  2. 教育の難しさ
  3. コスト面で負担が大きい

下記で、順番に解説していきます。

検査員の確保が難しい

日本全体の労働人口が減少しているため、現在は検査員の確保が困難です。

他社より好待遇を用意できなければ採用活動をしても人材が集まらず、人材が集まらないことで業績が伸びないという悪循環に陥るケースも珍しくありません。

外国人技能実習生の受け入れによって人材不足を補うことはできますが、その場合最大のデメリットは膨大な手続きの量です。

以下は、その手続きの一例です。

  • 管理団体への申し込み
  • 技能実習計画の認定申請
  • 在留資格・ビザの取得

このような手続きを終えても、面接から配属までに最低でも半年の期間を要します。雇用が確定したあともサポートが必要なうえ、定められた実習期間以上の滞在は認められていません。

外国人技能実習生だけでは十分な検査員を確保するのは難しく、また通常の採用も難しくなってきているのでどうにか検査員増以外の解決の方法を検討する必要があります。

教育の難しさ

不良品の判定は長年の経験で感覚が培われる部分もあるため、教育が容易ではありません。経験を補うための教育制度や、ノウハウを共有する時間を十分に設けるなどの対策をしないと検査品質にばらつきが出てしまう恐れがあります

また、一部では認定制度を導入する会社もあります。

認定制度を導入する場合は、以下のようなプロセスを踏む必要があります。

  • 検査の適正試験
  • 実務作業・教育(トレーニング)
  • 仮認定試験
  • 認定の取得
  • 検査精度の維持・向上活動

上記からわかるように、認定制度を導入するには十分な時間や予算を確保する必要があるので、導入できる会社は限られます。人材の確保というハードルを乗り越えたとしても、次に「教育」という困難な課題をクリアする必要があるのです。

目視検査における基準書(手順書)の必要性

基準書(手順書)は、「良否判断の基準を定めたガイドライン」のことです。

検査員が客観的に製品の検査を行うために必要なもので、検査時にいつでも確認できるような場所に掲示して日常的に利用します。

人が目視で外観検査を行う場合は、明確な基準がなければ検査員によって検査品質に大きなばらつきが生じてしまいます。これを防ぐために外観基準書を作成して、一定のルールを設けることで、誰が外観検査を行っても同じ判定ができるようになります。

基準書を作成することで、ヒューマンエラーを減らすことができ、外観検査時の判定のばらつきを抑制できます。

以上の理由から、人の目で外観検査を行う製造現場においては基準書を用意する必要があるのです。

目視検査基準書(手順書)の内容

基準書に記載されている主な内容は、以下のとおりです。順番に説明していきます。

  1. 検査項目
  2. 検査方法
  3. 検査担当者
  4. 不良品発生時の処理
  5. 判定基準

検査項目

検査項目は、「製品の何をどのように判定するのか」を文字と写真で記載したものです。

製品によって異なりますが、製品のどの部位がどういった状態になっていると不良と判定するのか定めます。製品表面の見た目だけでなく感触に違和感はないかなど、触覚を使った検査についても項目を定めます。

一部の製品では、「安全基準の範囲に入っているか」「法規制にかからないか」といった重要な項目でもあるでしょう。

定量的でない項目の検査では、良品写真や不良項目ごとの良品限度や不良品のサンプル写真が必要です。

検査方法

各検査項目の検査方法について、以下のような内容を記載します。

  • 機械の使い方(測定器などを使う場合)
  • 抜き取り・全数検査といった検査の頻度
  • サンプリング数
  • 測定器の指定

測定器の指定では、たとえば色味の測定で色度計、打音検査で騒音計を使用するなどの取り決めを行います。

検査担当者

技能が要求される検査においては、適正評価や認定制度を導入する現場もあります。新規採用者には適正評価、新規検査員には認定制度が効果的です。

適正評価では、周辺視野や動体視力を測定するスクリーニングテストを実施し、座り仕事や測定器の適正などを評価します。認定制度は検査精度の向上や維持に効果があり、座学や認定サンプルを使った試験や再教育を行います。

基準書には、評価結果や認定ランクを記載するのが一般的です。

不良品発生時の処理

検査員が不良品を検出した際の処理方法を記載します。

  • 不具合の手直しの可否
  • 不良分析の要否
  • 保管の要否

上記のような内容を記載することで検査員が判定後の判断に迷わず、検査時に発生するタイムロスを少なくします。

判定基準

設定した判定項目や検査方法で検査を行ったあとに、どのような状態なら良品で、どのような欠陥があれば不良品とするのかを決めます。

満たすべき仕様や形状だけでなく、不適合時の数値や条件といった基準も明確にします。判定基準を曖昧にすると、基準書の意味がなくなるので注意が必要です。

判定基準の数値化が難しい場合は、「見本」を設けるのが効果的です。詳しい説明は後述します。

目視検査基準書(手順書)を作る際のポイント

この章では、基準書を作る際のポイントについて解説します。

基準書を作成しても、記載する内容がわかりにくかったり、必要な内容の記載漏れがあると、効果が得られないこともあります。

基準書を作る際のポイントを、以下にまとめました。

  1. 検査目的の明確化
  2. 明確な検査基準を定める

上から順番に見ていきましょう。

検査目的の明確化

ムダなくスムーズに基準書を策定するために、外観検査を行う目的を明確にしておきましょう。そもそも目的が曖昧になってしまうと、何を検査するのか何のために行うのかわからなくなり、検査すべき内容の見逃しや意欲の低下などにつながってしまうからです。

具体的な目的としては、製品の安全性や求められる機能、クライアントからの要求、法的な規制の遵守などが挙げられます。これらの目的に合った漏れのない基準を策定することが大切です。

ほかにも、不適合と判定された製品はどのように対応するのか、手直しする場合はその手順なども細かく記載しておかなければなりません。検査する製品によって形状や性質、検査項目が違うのであれば、それぞれの製品にあった個別のルール設定が必要です。

明確な検査基準を定める

外観基準書に記載する基準は、誰が検査をしてもわかるよう明確にしましょう。

検査の基準が明確でないと、判定のばらつきが生じてしまいます。

たとえば、不適合判定になるための条件として、不良個数の数や不良の発生個所など数値化できるものははっきりと記載する必要があります。ほかには、実際に不良が発生している写真やイラストを活用するなど、直感的に理解できるよう工夫することも重要です。

さらに、限度見本、不良見本、標準見本といった見本を用意しておくと、より具体的でわかりやすくなるでしょう。「明確な基準を決めてわかりやすく記載すること」を意識することで、基準書の策定がスムーズに進みます。

数値化が難しい検査は「見本」を作成

目視検査は寸法検査のように数値化できないことが多く、判定基準が曖昧になりやすい点が課題です。検査員が多い場合は全員に正しく伝える必要があるので、基準書のような文字と写真だけでなく、現物で確認できる見本を作成します。

外観検査に用いられる見本は、主に4つあります。

  1. 限度見本
  2. 不良見本
  3. 標準見本
  4. ドットゲージ

それぞれ、順番に見ていきましょう。

限度見本

限度見本とは、製品を自社の基準に適合した「良品」と基準に適合しない「不良品」に分別するための限度を示した製品の見本のことです。主に、品質上問題のないキズ、汚れ、色味を判定する際に用いられます。

外観検査では「視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚」といった人間の五感で品質を判定する官能検査が用いられます。目視検査も官能検査のひとつです。

官能試験では結果を明確に数値化できないことから、合否判定の基準が曖昧になりがちです。

この曖昧さを解消するために用いられるのが限度見本です。キズの深さや色ムラの範囲、汚れの程度といった良品の限度がわかるので、検査員による品質のばらつきやオーバーキルを抑えられます。

ただし、限度見本は定期的な更新や適切な管理が求められます。

不良見本

限度見本の一種である不良見本は、不適合品の条件を示すものです。

外観検査では、大きな変化は検出しやすいものの、小さな変化は気づきにくいという問題があります。

たとえば、濃い色のムラや深いキズはとらえやすくても、少しずつ濃くなっていく色ムラや少しずつ深くなっていくキズは見逃しやすい傾向にあります。また、検査の範囲が広い製品の中に小さな異物がある場合も検出は困難です。

そこで、事前に見逃しやすい不良を不良見本として見える化しておくことで、検査の精度を高めることができます。

標準見本

品質の基準を示すのが標準見本です。

簡単に説明すると「良品の見本」であり、標準見本に近い状態のものは良品と判定することができます。あくまでも製品の標準的な品質を示す見本なので、「良品判定できる範囲」の基準にはなりません。

限度見本や不良見本は、標準見本からどれだけ逸脱しているかわかることから、不具合の度合いを知ることができます。

ドットゲージ

キズや異物などの形状を、さまざまな面積で示した標準ゲージのことです。

ドットゲージは透明なシートに印刷されていることから、良否判定の判断に迷うときに直接製品を乗せて確認することができます。キズや異物の比較を直接行えることから、ノギスなどの測定器で計測するよりも個人差が生まれにくいメリットがあります。

基準書(手順書)を作業員に遵守させるには?

ここでは、基準書を作業員に遵守させる方法について解説します。

そもそもどんなに明確でわかりやすい外観検査手順書を作成しても、検査員全員が遵守しないと意味がありません。手順書が遵守されない現場では、検査した製品の品質が一定以上をクリアできていない可能性もあります。実際、製造現場をよく観察すると「検査員の作業と外観検査標準書の内容が一致していない」というケースもあります。

それでは、どのように基準書を作業員に遵守してもらうのか、その方法をご紹介していきます。

手順を守らなかった要因を見つける

基準書を遵守しない原因は、2つに絞ることができます。

  • 作業員が独自の判断で検査を行わない
  • 守ることができない基準書を作成していた

1つ目は、作業員の独自判断です。

経験や知識の増加や現場の状況によって、作業員が独自判断を行うことがあります。たとえば、基準書に書かれている内容の不良であっても長く発生していなければ、その不良をみつけるための検査を省略する恐れがあります。また、欠員などの理由から検査員一人当たりの負担が大きくなると検査精度よりも数を優先しがちです。

2つ目は、基準書そのものの不備です。

ルールの設定がきちんと行われていないと、正しい検査が行えない可能性があります。

たとえば、新しく検査が追加あるいは変更されても検査時間が設定された時間を超えてしまうようでは、納期に間に合わせるために検査が省略されてしまう可能性もあります。

基準書が遵守されない場合、手順を守らなかった要因を探しましょう。

基準書(手順書)を遵守させる具体的な方法

上記のように「基準書を正しく守れていない」「そもそも守れない基準書が作成されている」といった問題があると、不良品が市場へ流出するリスクが高まります。

そこで、作業者に基準書を遵守させる具体的な方法をご紹介します。

  1. 作業の観察を行う
  2. 作業員とともに基準書を更新する
  3. その場で適切な注意を行う

これらを実施することで、基準書が遵守されなくなる可能性を大きく低減することができます。

それでは、上記の方法を順番に見ていきましょう。

作業の観察を行う

1つ目は、管理者が作業の観察を行うことです。

基準書には、検査項目だけでなく検査の手順などがまとめられているので、管理者はそれが守られているか確認する必要があります。

作業員に基準書の教育を行うだけでなく、外観検査において作業員が作業手順書を遵守しているか現場で観察します。検査の観察時は、基準書と実際に行われている検査が一致しているか1項目ずつ確認することが大切です。

万が一作業員が基準書とは違う検査を行っていれば、検査を一旦中止して正しい検査方法を守ってもらいましょう。

作業員とともに基準書(手順書)を更新する

2つ目は、作業員とともに基準書を更新することです。

実際に検査を行っていない管理者が基準書の更新を行った場合、定められた方法で検査を行うのが困難な内容や、既定の時間内に検査を終えられなくなるような方法になっている可能性もあるからです。

そのため、特に新規項目を追加する場合には作業員と一緒に基準書を更新するようにして、作業可能な内容になっているか自ら確かめてもらうようにすると良いでしょう。

また、作業員自身が基準書に記載された方法よりも良い検査方法を考えつくこともあるので、そういった場合には上司に報告してもらい、一緒に検証して基準書を更新するようにします。

その場で適切な注意を行う

最後は、その場で適切な注意を行うことです。

外観検査では、作業員が基準書に則って検査を行うことで、効率よく品質の良い製品だけを市場へ送り込んでいます。そのため、一部の作業員が基準書を守らずに検査を行っているのなら、その場で注意する必要があります。

「最近はこの不良が発生していないので目視検査を行わなくていいと思った」のようなケースであれば、基準書の重要性をきちんと説明すべきです。「この検査は意味がないと思うので守らなかった」といったように、怠慢によって基準書を遵守しない作業員には、厳しく注意して守ってもらうようにしましょう。

目視検査作業の改善は「自動化」が必須?

目視検査作業の改善は「自動化」が必須?

目視検査は前章でご説明したとおり、さまざまな課題が多数あります。こういった課題を解決する方法のひとつとして外観検査装置を活用した目視検査の自動化があります。一般的には、画像処理検査機能によって製品の正常・異常を判断するシステムです。

外観検査装置とは?

外観検査装置(システム)とは、製造現場で大量に生産される製品や部品などの外観を検査できる機械のことを指します。生産量が多ければ多いほど、人間の目による目視検査よりも、外観検査装置による自動化された目視検査を行うメリットが大きくなります。

外観検査装置では、主に製品や部品の表面に付着した汚れや異物を検知したり、製品や部品自体に発生したバリやひび、割れ、欠けといった欠陥を判定したりすることができます。なお、目視検査を行う工程も製造段階から表面などの処理を行なった後、さらに製品を組み立てた後の検査といったタイミングで行うことが可能です。

外観検査装置で目視検査を行う際は、事前に製造品質の基準を決めておく必要があります。これは「検査前準備」といい、人間の目による目視検査でも必要な工程です。主に検査データ(正常品か欠陥品かを判断する基準など)を作成し、これに基づいて目視検査の工程を運用していくのですが、後ほどご説明するAI(ディープラーニング)を搭載した外観検査装置の場合、ティーチングによってデータを熟成させるための指針などを事前に組み込んでおくことで、検査の精度を高めていくことが可能となります。

外観検査装置の仕組み

外観検査装置は、どんな仕組みで目視検査を行う機械なのかご紹介します。
製造現場で生産された製品や部品における欠陥、異物などを検知する外観検査装置は、おもにCCDカメラを利用して不具合や欠陥を検知します。もし、製品や部品に欠陥や異物があれば、そこで光が反射してレンズを通してカメラに入力し、検知するといったシステムとなっています。

これを人間による目視検査に置き換えると、ここまでの工程は欠陥や異物を目で見た状態です。これを欠陥や異物だと判断するのは、脳の働きによるものになります。

外観検査装置では欠陥や異物を判断するための「脳」にあたる部分が、画像処理装置ということになります。この画像処理装置は、カメラで撮影した製品や部品を正常品か欠陥、異物かを判断する場所です。ただし、こうした外観検査装置は産業、職種によって種類が分かれており、X線を照射して欠陥や異物を検知したり、複数台のカメラによって多角的に検査を行なったりする装置もあります。また、画像処理部に関しても最近ではAI技術を活用した機械が登場しています。

AI技術によって、外観検査を行えば行うほど学習し、より高精度で高度な判断を行えるようになります。

外観検査装置についてはこちらのブログで詳しく解説しています。
外観検査装置とは?メリットや検査の特徴は?導入事例やおすすめ製品も紹介

AI外観検査システム「AISIA-AD」

記事でご説明したとおり、キズや色味といった不良は自動化が難しく、人の目に頼る製造現場は多く存在します。

しかし、検査員に頼りきる現場には以下のようなリスクがあります。

  • 後継者不足
  • ランニングコストの増加
  • ラインを増やしたくても検査人員の確保が難しい

ベテランの検査員の能力を模倣するのは簡単ではありません。2倍の量を製造するのに検査員を2倍に増やさなくてはならないとなると採用も困難ですし、人件費も高額になります。しかし、AIを活用した外観検査システム「AISIA-AD」であれば、自動化が難しいとされてきた検査も、人による目視検査と同等のレベルで実施が可能です。

AISIA-ADはディープラーニング(深層学習)を活用したAI外観検査システムです。正常品と異常品の分類や異常パターンを記憶して学習することで、ベテラン検査員と同じような精度で外観検査を行うことが可能です。

従来のAI外観検査では一からモデルを作成する必要があり、多くの学習サンプルを揃える手間やコストがかかっていました。

AISIA-ADはカメラで撮影した動画データをラベル付けするだけで学習でき、「正常データのみ」「正常と異常の両方」を学習する2つのモデルがあるので、状況に応じて導入できます。

まとめ

目視検査がどのように行われるのか、実際の作業についてご紹介しました。いかがでしたでしょうか?

目視検査はすぐに実施できるというメリットがある反面、検査員不足やコスト面で課題もあり、自動化を推進する風潮が高まっています。AIの活用は、ランニングコストの削減にもつながります。弊社が提供している「AISIA-AD」は、初期投資の費用が安価であるほか、良品サンプルだけで学習できるソフトウェアも選べます。

検査に課題をお持ちの場合は、ぜひご相談ください。また、お役立ち資料も公開中ですので、こちらもあわせてチェックしてみてください。


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