【工業用】ファイバースコープとは? 使用用途や原理について解説

 2023.12.08  株式会社システムインテグレータ

ファイバースコープは活用シーンが広く、さまざまな分野で使用されています。肉眼での確認が難しい場所でもリアルタイムで画像情報を得られるため、正確性や効率性の向上が期待されるツールです。構造やファイバースコープならではのメリット・デメリットを把握し、業務に活用しましょう。

ファイバースコープ(工業用内視鏡)とは?

【工業用】ファイバースコープとは? 使用用途や原理について解説

ファイバースコープ(工業用内視鏡)とは、目視が難しい狭い空間や曲がりくねった管の内部などを確認・検査するための装置です。設備の保守、機械の点検、建築物の損傷評価などの分野で幅広く使用されています。工業用として製造されていますが、基本原理は医療用ファイバースコープと同じです。
ファイバースコープは透明度の高い石英ガラスやプラスチックなどの素材で作られています。1本1本は非常に細い繊維で、それらがひとつに束ねられ、その先端には、内部を観察するための小さなレンズが取り付けられています。このレンズを通して光を伝送し、映像を収集する構造です。また、末端には映像を表示するモニターが接続されており、レンズから得られた映像のリアルタイム表示が可能です。

ビデオスコープとファイバースコープの違い

基本的に、ビデオスコープとファイバースコープの使用用途は同じです。狭い場所や管の内部を視察・確認するために使用されます。しかし、構成要素と映像転送方法に違いがあります。
上述の通り、ファイバースコープは、細かい繊維をひとつに束ねて棒状にした光ファイバーの先端に小さなレンズが取り付けられています。光ファイバーを介して内部の映像を外部のモニターに転送する構造です。操作者はリアルタイムで内部を確認できますが、距離が長くなると映像の転送に制約が出る場合があります。

いっぽう、ビデオスコープは内部の映像をカメラで捉え、ビデオ信号として外部に送信する構造です。カメラからの映像を電子的に処理して転送するため、より遠くへの映像転送が可能であり、ファイバースコープに比べて距離の制約が少なくなっています。

ボアスコープ(硬性鏡)とファイバースコープの違い

ボアスコープ(硬性鏡)とファイバースコープは、いずれも目視が難しい場所を観察するための機器ですが、使用する距離や素材などに違いがあります。

ファイバースコープやビデオスコープは、比較的遠距離にある対象物を観察するために使用されます。棒の部分が光ファイバーや電線で構成されているので、曲げたり折りたたんだりしやすい構造です。柔軟性が高いため、管内や狭いスペースへのアクセスが容易です。

一方、ボアスコープは主に近接物の観察に使用されます棒の部分は硬いステンレス製でできているので、曲げられない構造です。

工業用ファイバースコープの原理

ファイバースコープは、多量の光ファイバーを束ねた柔軟な構造です。これらの光ファイバーが内部の映像情報を収集し、転送する仕組みです。光ファイバーを束ねたものは、「イメージファイバー」と呼ばれます。

イメージファイバーの先端にある対物レンズは、観察対象の内部を撮影し、光ファイバーを通じてファイバースコープ内部に伝送します。リアルタイムで接眼レンズに転送されるため、オペレーターはファイバースコープの先端にある状況をタイムラグなしで把握できます。

工業用ファイバースコープのメリット・デメリット

工業用ファイバースコープは優れた機器であり、多くのメリットを持ちます。しかしその一方で、環境や用途によってはデメリットも存在します。

メリット

ファイバースコープは細く柔軟性があるため、先端部を自由に動かしながら狭い場所や奥深い領域を観察できます。そのため、通常では目視やアクセスが難しい場所を調査する際に非常に便利です。検査の自由度が高いため、細かいディテールを見逃すことなく、精度の高い検査が行えます。

検査対象を傷つけずに操作できるため、非破壊検査にも適しています。機械の内部部品や配線、管路、壁面など、検査対象を損傷せずに問題を発見し、保守・修理を行えます。機械のダウンタイムや建物の解体作業を最小限に抑えられるため、時間とコストの節約に効果的です。

工業用ファイバースコープは耐熱性能も有しています。熱源や高温になるプロセスでの点検や検査に適しており、安全性を確保したい検査で活用できます。

工業用ファイバースコープはその柔軟性、非破壊性、耐熱性能などのメリットにより、様々な分野で活用されています。特に、アクセスが難しい場所や高温環境などでの点検を行う際に、安全性を保てるというメリットは見逃せません。生産性の向上とコスト削減が実現でき、設備や施設の適切な保守と品質管理のレベルが向上します。

デメリット

ファイバースコープの主なデメリットのひとつは、棒の部分が長いほど映像が暗くなることです。この現象は、光がファイバー内で減衰し、明るさが低下するために引き起こされます。長くなればなるほど内部の映像が不十分になり、詳細な画像情報を見逃す恐れがあります。長距離の視覚検査が必要なシーンでは注意が必要です。
ファイバースコープのメンテナンスや修理の費用もかかりますし、棒の部分が長くなるほど機器のコストが増加するという課題もあります。導入・運用コストが高額になる可能性は考慮しておきましょう。

強度についても注意が必要です。ファイバースコープの光ファイバーは細く繊細であり、強い負荷や折れ曲がりに対しては弱い構造です。乱暴に取り扱う、過度に湾曲させる、強い荷重をかけるなど、使い方によっては光ファイバーが損傷する恐れがあります。そうなると修理や交換が必要になり、追加コストとダウンタイムが発生することもデメリットです。

いくつかのデメリットがあるものの、ファイバースコープは多くの産業分野で役立てられています。デメリットを最小限に抑えるために、適切な選択や正しい取り扱いが重要です。

工業用ファイバースコープの使用用途

工業用ファイバースコープは各産業界のさまざまな場面で活用されています。使われているシーンや得られるメリット、期待される効果などを解説します。

製造業

製造業において、ファイバースコープは「工業用内視鏡」または「工業用ファイバースコープ」とも呼ばれます。
運輸関連メーカーでは、エンジンやタービン、噴射ノズル、油圧部品検査で使用されます。耐熱性があるため、高温環境下でのエンジンオイルの検査などにも最適です。

土木建築業

土木建築業では、メンテナンス、鉄骨診断、床下などの検査で活用されています。建築物や橋梁などの鉄骨構造物の内部にアクセスし、錆や腐食、ひび割れ、溶接部の状態などを視認できます。
床下のように入りにくい場所の検査でも、ファイバースコープを使用することにより、配管や電気配線の状態、絶縁材料の劣化、湿気やカビの発生などを早期発見し、適切に対処可能です。

メンテナンスによって得た情報を活かして、より効果的な保守計画を策定したり、修理コストを最小限に抑えたりできる可能性が高まります。

食品業

食品業では品質管理に使用されています。生産ラインの衛生管理や、異物の検出に有用です。
たとえば蒸溜タンクや排出タンクを使う製造プロセスがある場合、管内の汚染は品質に関わります。ファイバースコープを用いて管内をスムーズかつ詳細に点検することにより、品質維持に寄与します。

インフラ業(電力・ガス・水道)

工業用ファイバースコープは、生活に欠かせないインフラ業でも活用されています。人間が入れない水道管やガス管の内部にファイバースコープを入れ、詳細な画像情報から腐食や汚れ、配管詰まりなどの異常を発見できます。

また、原子力、加熱発電などの検査や保守点検にも欠かせません。原子力発電所や加熱発電所などの施設では、多数の配管が高温・高圧の環境下で運用されています。こうした配管の内部状態を点検する際にファイバースコープを使用すれば、安全性を確保しながら信頼性の高い情報を得られます。

まとめ

工業用ファイバースコープは幅広い分野で活用されています。従来であれば人の手が届かず、情報を得られない場所であっても、安全性を保ちながら高精度の情報が得られる優れた機器です。メリット・デメリットを把握しながら適切に活用し、生産性の向上や効率化、コスト削減などに役立てましょう。


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