外観検査の現場で利用される照明は、古くは白熱灯や蛍光灯が主流でした。近年ではLEDの性能が向上したことにより、ほとんどの現場でLED照明を利用するのが一般的です。しかし、LED照明はさまざまな専門照明メーカーから豊富な種類で販売されているため、選定するのも一苦労です。そのため、選定する担当者にもある程度の知識が求められます。
しかし、外観検査の現場の人間からすると「検査が目的なのに、照明の知識がほんとうに必要なの?」
という声が聞こえてきそうです。
おっしゃる通り、目視であれば見えればいいし、写真に撮って検査するのであれば映ればいい。検査をするために照明の知識が必要なんてピンとこないですよね。
しかし、「照明が外観検査の精度を決める」といわれたらどうしますか。実際に、長年外観検査を専門に行っている専門家は、口をそろえて言います。
外観検査に欠かせない照明
外観検査には外観検査で必要な技術である「照明(ライト)」について紹介します。最終的に皆さんが、どのような基準で照明を選定すればいいのか理解できると思います。
いままであきらめていた検査も再検討することができるのではないでしょうか。
本記事では、外観検査の現場で利用される照明がなぜ特殊なものなのか、LEDの特徴と合わせて紹介します。
そもそも外観検査とは?
外観検査とは、製品や部品の品質を担保するため、表面を確認する検査業務のことです。例えば異物や汚れ、キズなどがついていないか、変形していたり欠けたりしていないかといった外観上の検査を行います。
外観検査は完成した製品だけではなく、製品を作る部品の確認でも行われます。各生産工程で外観検査を行うことで、製品の品質担保に寄与しています。
外観検査についてはこちらのブログで詳しく解説しています。
外観検査とは?目的や発見可能な不良など徹底解説
LEDライトがなぜ重要か
外観検査の現場は多種多様
外観検査といわれて、皆さんはどのようなイメージをしますか。
身近なものだと、皆さんが利用しているライフラインにも外観検査があります。たとえば道路の路面が陥没してないかといった検査や、電線が通っている鉄塔が劣化していないかといった検査があります。また普段購入している商品も、商品の組み立てがうまく行えているか確認する検査や異物が混入していないかといった検査があります。
このように「人工的に生産・組み立てされたものが、望ましい形(外観)であることを確認(検査)する必要がある現場」に外観検査は必ず存在します。
では、この外観検査どのようにやっているのでしょう。
昔はすべて人の目で視て検査
ひと昔前から、外観検査の現場は目視検査が主流でした。つまり、検査員は工場の蛍光灯の下で一つ一つ検査品に光を当てて視ていました。光を使って検査対象の特徴がよく見える角度を探し、すべての検査員が同じ条件で検査をするための努力をします。いまも目視の現場ではそのように工夫しながら検査をしています。私もよく現場に行きますが、非常に大変な仕事です。
一方で、2016年より日本政府が推し進めるSociety 5.0(ソサエティー 5.0)というものがあります。これは日本が抱える諸問題を最先端技術で解決していくというものであり、その柱のなかでも重要な位置づけにある「労働力不足」を自動化技術で改善する試みが、さまざまな現場で取り組まれています。もちろん、製造の現場でも自動化は常に注力されており、この自動化を行う上で避けては通れないのがさきほどの目視検査です。つまり、自動化には目視検査をおこなっている“人”を“機械”に代替することが必要になります。
しかし、“機械”に代替するにも先ほど人が行っていた「工夫して視る」ことも、考慮にいれる必要があります。つまりは、「いろいろな角度から光を当て特徴を視る工夫」や、「毎回同じ条件で視る工夫」はもちろん、視る現場の環境(外光・塵などの外的影響)の考慮も必要です。つまりは、現場で人が視るようにする技術が必要なのです。
これらの要求にこたえるために必要なのが照明の技術です。実は自動化の波と一緒に照明の技術は進化してきました。そして、その発展の陰にはLED技術の進化があるといっても過言ではないのです。
LEDはこなせる仕事が多い
LEDが光る仕組み
そもそもLEDとはLight Emitting Diodeの略で、日本語では発光ダイオードと呼ばれます。ダイオードとは電気の流れを一方通行にする部品のことで、発光ダイオードは、この電気を衝突させたときのエネルギーが光となって放出される現象を利用した部品です。トランジスタやICといった電子部品の一種と思っていただいて構いません。
実際に発光ダイオードの中身はどのような部品で構成されているのでしょう。
図1で一般的なLEDの内側構造をあらわしています。リードフレームと呼ばれる部品の長い方がプラス側、短い方がマイナス側を指します。プラス側からは電流が流れ、マイナス側からは電子が流れます。この2つが衝突することでLED素子の接合面が発光します。
これが私たちの目に見えるLEDの光の正体です。
LEDは白熱電球に比べ、このように電気エネルギーを直接光に変えているため効率がよく、また、他の電子部品に比べ構成する部品数も少なく単純であるため大量生産にも向いています。このため、エコの代名詞のような照明部品として一気に有名になりました。今では、LED=照明と誰もが知っている電子部品ではないでしょうか。
【図1.砲弾型LEDの構造】
LEDの長所と短所
ではこのLED照明、ほかにはどのような長所があるのでしょうか。一つ一つ紹介していきます。
長所1 照明の小型化が可能
光源自体を小さく作ることが可能であるため照明自体の小型化を実現することが可能です。
長所2 点灯の応答性が良い
白熱電球のように、熱を利用した発光原理ではなく電気衝突による発光であるため発光の応答時間が短い。
そのため、瞬間の発光にも適しています。
長所3 発光色、波長を選択することが可能
発光する色は白が基本色としてあげられますが、1995年に緑色LEDが登場したことにより、青・赤・緑(光の三原色)が表現できました。これにより、ほとんどの色(※)については表現することが可能となっています。また、光量を自在に変更できる調色・調光機能や点滅機能を備えた製品もあります。
※厳密には色度図と呼ばれる色度を表した楕円図があり、その中にRGBの三角形が存在します。その三角形の範囲内の色のみ再現可能。
長所4 照明の形状が多くあるため、当て方と共に状況に応じた照射が可能
LEDの種類としては大きく砲弾型と表面実装型の2つがあります。1つ目の砲弾型(左図)は、その形状からわかるように前方に強い光を出すことができます。前方に強い光を出す必要がある、信号機や警告灯などに使われています。
もう1つの表面実装型(右図)は全体的に光を拡散することができ、サイズも柔軟に変えられることから、精密機器からヘッドライト、ランタンなど大きなものに使われています。
このようにLEDは小さな点光源であるため、組み合わせにより照明の形状を変えることが可能です。LEDを集約して集中的に照射することも、分散させて面で照射することも可能で非常に自由度が高いのも特徴です。
【図2.LEDの集約】
長所5 低消費電力、寿命が長い
1Wあたりの光の量が多いため消費する電力を抑えることができます。
寿命に関しては、蛍光灯に比べると5倍程度長いと言われています。長寿命であるためメンテナンスの手間が少なくなります。
長所6 照明からの放射熱が少ない
白熱電球を長時間つけたあとに、触ってやけどした経験はありませんか?LEDの場合は放射熱がほとんどないため、温度管理された環境での使用に最適です。また、赤外線も放出しないため、虫が寄り付くこともありません。
このように、いいことずくめのLEDにも短所はあります。
それは、熱に弱いこと。
半導体であるため、温度が上昇すると電子回路が高熱になり寿命が縮みます。そのため、LED製品を購入する場合はこの熱問題に対してどのような対策をしているか確認する必要があります。
短所を解決! ・放熱する工夫 ファン、ヒートシンクを用いて熱を効率よく逃がす仕組みを作りましょう。 ・機器のメーカー保証を確認 照明機器を販売しているメーカーの機器保証があるか、サポート体制が充実しているかを 確認しておきましょう。 |
外観検査でLED照明を使う理由
外観検査は照明にもさまざまな要求がされる
外観検査を行いたいお客様からいただく要求は数多くあります。
「ワークサイズが非常に小さい」
「高速に流れるワークを撮像したい」
「検査スペースが狭い」
などがあります。このような要求に比例して照明に要求することも増えてきます。
以下に、実際にある案件で発生した要求事項を整理しました。
関連記事:AIに分かりやすく伝える画像データ ~光の当て方~
◎小型精密部品の外観検査
要求事項1.小型精密部品にある傷、変色、形状変形の発見をしたい
要求事項2.対象ワークは高速にベルトコンベア上を流れている
要求事項3.検査環境に過剰な熱を与えないでほしい
要求事項4.検査環境はスペース的に限られているため検査機材一式を小型化してほしい
これらの要求に対し、LEDがどのように貢献しているか一つ一つ見てみましょう。
検査品イメージ
要求事項1.小型精密部品にある傷、変色、形状変形の発見をしたい
光の波長が短い青色の照明を使うことで細かなキズが見えます。また、多彩な色のLEDを作ることができるため、補色(コラム参照)の関係を利用して変色を浮き出すことができます。そして、LEDは構造が単純で加工がしやすく特殊な照明形状を作成することができます。これにより、ワークの形状変形をより見えやすくすることができます。照明形状についての詳しい話は、次回以降のブログを見てください。
要求事項2.対象ワークは高速にベルトコンベア上を流れている
高速に検査対象がベルトコンベア上を流れる場合、撮像に要求される速度は数ミリ秒となる場合があります。LEDは電気信号にて発光しているため、この数ミリ秒の撮像に対応した高速点灯が可能です。
要求事項3.検査環境に過剰な熱を与えないでほしい
検査ワークが精密機械といった場合だけに限らず、対象ワークへの物理的影響を最低限にとどめたいという要求はさまざまな現場であります。熱は影響の中でも代表的な例と言えるでしょう。この場合LEDはそのものの放射熱が低いため最適です。
要求事項4.検査環境はスペース的に限られているため検査機材一式を小型化してほしい
先ほども紹介したようにLEDは様々な照明形状で作成することができます。小型化もその一つです。これによりスペースに合わせた照明を作りこむことが可能です。
これ以外にも、省電力や長寿命などのおかげでランニングコストやメンテナンスコストの低減も見込め、お客様にとってもメリットは増えるばかりです。
いかがでしょうか。実際に外観検査の現場ではLED化によって改善への貢献が見込めます。これまでの白熱灯や蛍光灯で異常を見落としてたものを、LED照明で改善するイメージはついたのではないでしょうか。
コラム:外観検査で補色を使う |
照明機材を選定する方法
LED照明機材についてご紹介しましたが、実際に照明機材を選ぶとしたら、どのようなことに気を付ける必要があるでしょうか?
基本的に外観検査では、照明を検査対象(ワーク)に照らした際「反射してくる光」を確認することで検査を行います。この光のことを物体光と呼び、「直接光」と「拡散光」に分類されます。
「直接光」は光が検査対象にあたり入射角と反射角が等しく返ってくる光(正反射光)や、ワークを透過した光(透過光)のことを言います。一方で、「拡散光」は入射角と反射角が異なっている光を言います。(図参照)
例えば、よく磨かれている対象物に光を当てると直接光の割合は多く拡散光は少なくなります。反対にざらついた表面の対象物では、拡散光の割合が多くなるという特徴があります。よく磨かれた鏡は強い光を反射しますが、くすんだ鏡だとぼんやりとしか光を返さないのはご存じかと思います。
(光の特徴について詳しく知りたい方は「AIに分かりやすく伝える画像データ ~光の当て方~」を参照ください。)
このように外観検査の照明には検査したい対象の「表面の特徴」と「光の特徴」を組み合わせて、よりよくワークの特徴が捉えられるようにする方法が求められます。
よい特徴づけを行うための機材選定
外観検査でいうよい特徴づけとは、検査したい特徴(キズや変色など)を最大限よく見えるようすることです。それを実現するための機材選定には、3つのポイントを抑える必要があります。
1つ目は、ワークの特徴と検査したい特徴の組み合わせです。例えば、ワークの特徴は、そのものの形状・素材・大きさなどの物体そのものの特徴を指します。それに対し検査したい特徴とは、ワークの表面に発生するキズや変色、変形などの特徴を指します。これらの検査組み合わせすべてのバリエーションを把握すること。
2つ目は、1つ目のすべてのバリエーションに対しそれぞれ「直接光」と「拡散光」のどちらに重心をおいて照明を当てればよいのかということです。検査したい特徴が多ければ多いほど、すべてのバリエーションの特徴をまんべんなく抽出することができる方法を選ぶ必要が出てきます。検査したい特徴によっては、「直接光」でも「拡散光」いずれの方法でも特徴は出ます。ただし、その発生度合いの強弱を鑑みて選択する必要があります。ただ、1つの照明にこだわらず複数の照明条件を切り替えて対応することも可能ですので検討してみてください。
3つ目は、実際の現場環境や運用に合わせて機材を選定することです。2つ目の話は理論上の話であるため実際やってみると違った、ということがよくあります。例えば、実際に運用するとなった場合の機材の配置場所のスペース問題や検査にもとめられる時間制約による原因で発生します。これについては選定以前に知っておくべき内容ですが、重要であるため必ず抑える必要があります。
外観検査の照明機材はこの3つのポイントに対応した機材が各社からさまざまラインナップされています。以降の章ではおもに直接光を使うことを念頭に置いた機材について詳しく紹介していきます。
直接光が映し出す特徴の世界
「直接光」を使うことを念頭においた照明機材は非常に種類が多いです。ここでは、代表的な3種類の機材を紹介します。それぞれの特徴とどのような用途に利用されるかも紹介していきます。
リング照明
角度をつけて狙ったところに直接光を強く照射できる万能照明
【図 1リング照明】出展元:LDR2シリーズ|CCS:シーシーエス株式会社
メリット
- 中心部の光が強く、特定の箇所の検査や小型品の検査に向く。
- 照明の形状により360℃方向から照射可能であるため影ができにくい。
- 設置のときに治具を使うことで、照射方向も上下左右と自由度が高い。
デメリット
- 検査対象が鏡面素材の場合はLEDの素子が映り込む可能性がある。
設置例
中心部に光が強くあたるように照射
- 撮像画像
文字と周りの濃淡をはっきりと表現することが可能。また、検査対象自体の形状もはっきりと捉えることができる。
自動車部品(左画像) 自動車部品 照明利用後(右画像)
【図 2リング照明撮像画像】出展元:撮像例|CCS:シーシーエス株式会社 - 適する検査
文字認識、基板上の部品検査、キズ・汚れ検査、表面検査 など - まとめ
検査箇所の位置が特定され、かつ照射範囲に収まる大きさでは比較的適合しやすい。
ただし、鏡面加工のように光の映り込みが発生する素材には工夫が必要となる。
バー照明
直線状の検査対象に強く、角度をつけて様々な照射ができる照明
【図 3バー照明】出展元:LDL2シリーズ|CCS:シーシーエス株式会社
メリット
- 照射方向が一方向で均一に光があたるため表面検査や文字の読み取り検査に向く。
- 機器の照射できる範囲が横に長いため、シート状、円柱上の検査(検査対象を動かしながら光を当てる)に有効。また、機器の形状が単純であるため横並びに複数台つなげることでより長く大きな検査対象にも対応できる。
デメリット
- 1本での設置では照明ムラが発生する可能性が高いため、複数台の導入を検討する必要がある。
- 1方向からの照射が基本となり、360℃方向からの照射に適さないため凹凸、刻印検査には向いていない。
設置例
照明を2本使用した設置方法。バー照明の角度は変えることが可能であるため自由度が高い。- 撮像画像
以下は、照明を4本使った設置方法。照明ムラがなくはっきりと撮像できていることが分かる。
タイル タイル 照明利用後
【図 4バー照明撮像画像】出展元:撮像例|CCS:シーシーエス株式会社
- 適する検査
シート状の表面検査、文字読み取り、プリント基板検査 など - まとめ
検査対象箇所がシート状や線状の表面キズや汚れといった面を確認する検査の場合に比較的適合しやすい。ただし、凹凸の程度が大きい場合や不規則な場合や刻印を確認する検査には適合しにくい。
直下式透過照明
検査対象の背面からの照射で、透明な検査対象の異常確認や形状確認ができる照明
【図 5フラット照明】出展元:TH2シリーズ|CCS:シーシーエス株式会社
メリット
- 面で光を当てることができるため透過検査、検査面にできた小さな穴の検査や形状確認検査に向く。
- 他の照明に比べ、高密度にLEDが配置されているため全体的に強い光があたる。
デメリット
- 機材自体に厚みがあるため、カメラとの距離を長くとる環境下では向いていない。
設置例
- 撮像画像
形状をはっきりと捉えることができる。
ストロー ストロー照明利用後
【図 6フラット照明撮像画像】出展元:高輝度タイプ|CCS:シーシーエス株式会社
- 適する検査
バリ検査、透明容器異物検査、フィルム汚れ検査、シート検査 など - まとめ
検査対象を透過しての検査、形状の確認をする検査に適合する。
発行面が検査対象より大きくなるため、設置スペースの制約を受ける。
直接光を照射する機材と一言でいっても、機材そのものの形状も異なり、得意とする検査や光の当て方まで異なることが分かりました。ここで上げたのは一例です、他にもいろいろあるので照明会社のカタログを見てみてみるのもいいと思います。現在外観検査を行われていて満足のいく結果が得られていない方は、この機会に1度照明機材を見直してみるのも良いかもしれません。次の章では、照明機材変更によって改善が見られた実例を紹介します。
撮像方法があっているか確認する ~直接光で対応する~
弊社のお客様で、製品に刻印している文字があるかどうかを目視で確認しているお客様がいらっしゃいました。刻印がないまま出荷してしまうとその日に出荷したものすべてを回収しなければならないため、非常に重要な業務でした。そのために人を何人も配置して見逃しがないようにしていました。
お客様:「毎日、検査員が製品に決められた刻印があるか確認するだけなのですが、見逃して出荷してしまうことが多くて困っています。以前市販のカメラで撮影した画像をつかって画像処理ソフトで判断をしようと試みたのですが、うまくいきませんでした。」
SI:「なるほど、画像処理で利用した画像を見せてもらえますか」
見せていただいた画像は、ワークの中央に刻印が入るようにきれいに写っていました。ただいくつかの画像も拝見すると、画像によって明るさもまばらで、ときどき人の影が映りこんでいます。
SI:「この画像の撮り方はどのように決めましたか。あと使っている照明を見せてもらえますか」
お客様:「検査員がいつも見ている見え方のアングルで撮れるようにWEBカメラを設置して撮影しています。照明ですか?検査員が座っている部屋の蛍光灯ですよ。」
この撮り方は、検査員の見え方を忠実に再現し刻印も見えて一見良いようにも思います。しかし、外観検査の画像としては不足しています。既存のカメラ、蛍光灯、設置環境では人間の見え方を再現するだけで終わってしまい画像処理に適した見え方にはなっていません。
外観検査で画像処理を使って検査をする場合は、人が見た視点で撮るだけでは特徴(キズ、欠け、刻印など)を際立たせることは難しいです。なぜならば、人が見た視点(角度)を整えても、光の当たり方はその時々で異なるためです。そのために、同じものでも見え方が毎回異なり、判断基準はあいまいになってしまいます。それでは画像処理を行う機械では判断できません。機械は曖昧なものに対しての判断を苦手とします。そのため、検査対象に適した照明、カメラ、治具を使い一定の環境下で撮像し「特徴(キズ、欠け、刻印など)をはっきり撮る」ということが大事なのです。そこまで厳密にしなくてもAIなら大丈夫ではというお声もいただきます。たしかにDeepLearningにはその曖昧さを解決してくれる部分はあります。ただし、精度を追求するのであれば、最低限撮像条件は整える必要はあると考えます。
結果的にこのお客様には特徴をはっきり撮るために、リング照明を使い直接光を照射し刻印部分を暗くその他の部分を明るく照らすことで、よりくっきりと「刻印」という特徴を表すことに成功しました。
このように、現場に適した照明機材を使うだけで問題を解決することができます。実際にリング照明はその使い勝手の良さからさまざまな現場で使われています。しかし、だからと言ってなんでもリング照明でうまくいきません。それは直接光のような強い光であるが故に起こってしまう問題でもあります。
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