なぜ外観検査では特殊な照明を使うのか

 2020.08.11  株式会社システムインテグレータ

外観検査の現場で利用される照明は、古くは白熱灯や蛍光灯が主流でした。近年ではLEDの性能が向上したことにより、ほとんどの現場でLED照明を利用するのが一般的です。しかし、LED照明はさまざまな専門照明メーカーから豊富な種類で販売されているため、選定するのも一苦労です。そのため、選定する担当者にもある程度の知識が求められます。

しかし、外観検査の現場の人間からすると「検査が目的なのに、照明の知識がほんとうに必要なの?」
という声が聞こえてきそうです。

おっしゃる通り、目視であれば見えればいいし、写真に撮って検査するのであれば映ればいい。検査をするために照明の知識が必要なんてピンとこないですよね。
しかし、「照明が外観検査の精度を決める」といわれたらどうしますか。実際に、長年外観検査を専門に行っている専門家は、口をそろえて言います。

照明を制すものは外観検査を制す

今回より5回に分けて、この外観検査で必要な技術である「照明」を紹介します。最終的に皆さんが、どのような基準で照明を選定すればいいのか理解できると思います。
いままであきらめていた検査も再検討することができるのではないでしょうか。

第1回目は、外観検査の現場で利用される照明がなぜ特殊なものなのか。LEDの特徴と合わせて紹介します。

照明は目視検査を機械でおこなうための立役者

外観検査の現場は多種多様

外観検査といわれて、皆さんはどのようなイメージをしますか。

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身近なものだと、皆さんが利用しているライフラインにも外観検査があります。たとえば道路の路面が陥没してないかといった検査や、電線が通っている鉄塔が劣化していないかといった検査があります。また普段購入している商品も、商品の組み立てがうまく行えているか確認する検査や異物が混入していないかといった検査があります。

このように「人工的に生産・組み立てされたものが、望ましい形(外観)であることを確認(検査)する必要がある現場」に外観検査は必ず存在します。

では、この外観検査どのようにやっているのでしょう。

昔はすべて人の目で視て検査

ひと昔前から、外観検査の現場は目視検査が主流でした。つまり、検査員は工場の蛍光灯の下で一つ一つ検査品に光を当てて視ていました。光を使って検査対象の特徴がよく見える角度を探し、すべての検査員が同じ条件で検査をするための努力をします。いまも目視の現場ではそのように工夫しながら検査をしています。私もよく現場に行きますが、非常に大変な仕事です。

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一方で、2016年より日本政府が推し進めるSociety 5.0(ソサエティー 5.0)というものがあります。これは日本が抱える諸問題を最先端技術で解決していくというものであり、その柱のなかでも重要な位置づけにある「労働力不足」を自動化技術で改善する試みが、さまざまな現場で取り組まれています。もちろん、製造の現場でも自動化は常に注力されており、この自動化を行う上で避けては通れないのがさきほどの目視検査です。つまり、自動化には目視検査をおこなっている“人”を“機械”に代替することが必要になります。

しかし、“機械”に代替するにも先ほど人が行っていた「工夫して視る」ことも、考慮にいれる必要があります。つまりは、「いろいろな角度から光を当て特徴を視る工夫」や、「毎回同じ条件で視る工夫」はもちろん、視る現場の環境(外光・塵などの外的影響)の考慮も必要です。つまりは、現場で人が視るようにする技術が必要なのです。

これらの要求にこたえるために必要なのが照明の技術です。実は自動化の波と一緒に照明の技術は進化してきました。そして、その発展の陰にはLED技術の進化があるといっても過言ではないのです。

プロジェクト管理に関するお役立ち資料

LEDはこなせる仕事が多い

LEDが光る仕組み

そもそもLEDとはLight Emitting Diodeの略で、日本語では発光ダイオードと呼ばれます。ダイオードとは電気の流れを一方通行にする部品のことで、発光ダイオードは、この電気を衝突させたときのエネルギーが光となって放出される現象を利用した部品です。トランジスタやICといった電子部品の一種と思っていただいて構いません。

実際に発光ダイオードの中身はどのような部品で構成されているのでしょう。
図1で一般的なLEDの内側構造をあらわしています。リードフレームと呼ばれる部品の長い方がプラス側、短い方がマイナス側を指します。プラス側からは電流が流れ、マイナス側からは電子が流れます。この2つが衝突することでLED素子の接合面が発光します。

これが私たちの目に見えるLEDの光の正体です。
LEDは白熱電球に比べ、このように電気エネルギーを直接光に変えているため効率がよく、また、他の電子部品に比べ構成する部品数も少なく単純であるため大量生産にも向いています。このため、エコの代名詞のような照明部品として一気に有名になりました。今では、LED=照明と誰もが知っている電子部品ではないでしょうか。

3【図1.砲弾型LEDの構造】

LEDの長所と短所

ではこのLED照明、ほかにはどのような長所があるのでしょうか。一つ一つ紹介していきます。

長所1 照明の小型化が可能

光源自体を小さく作ることが可能であるため照明自体の小型化を実現することが可能です。

長所2 点灯の応答性が良い

白熱電球のように、熱を利用した発光原理ではなく電気衝突による発光であるため発光の応答時間が短い。
そのため、瞬間の発光にも適しています。

長所3 発光色、波長を選択することが可能

発光する色は白が基本色としてあげられますが、1995年に緑色LEDが登場したことにより、青・赤・緑(光の三原色)が表現できました。これにより、ほとんどの色(※)については表現することが可能となっています。また、光量を自在に変更できる調色・調光機能や点滅機能を備えた製品もあります。

※厳密には色度図と呼ばれる色度を表した楕円図があり、その中にRGBの三角形が存在します。その三角形の範囲内の色のみ再現可能。

長所4 照明の形状が多くあるため、当て方と共に状況に応じた照射が可能

LEDの種類としては大きく砲弾型と表面実装型の2つがあります。1つ目の砲弾型(左図)は、その形状からわかるように前方に強い光を出すことができます。前方に強い光を出す必要がある、信号機や警告灯などに使われています。
もう1つの表面実装型(右図)は全体的に光を拡散することができ、サイズも柔軟に変えられることから、精密機器からヘッドライト、ランタンなど大きなものに使われています。

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このようにLEDは小さな点光源であるため、組み合わせにより照明の形状を変えることが可能です。LEDを集約して集中的に照射することも、分散させて面で照射することも可能で非常に自由度が高いのも特徴です。

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【図2.LEDの集約】

長所5 低消費電力、寿命が長い

1Wあたりの光の量が多いため消費する電力を抑えることができます。
寿命に関しては、蛍光灯に比べると5倍程度長いと言われています。長寿命であるためメンテナンスの手間が少なくなります。

長所6 照明からの放射熱が少ない

白熱電球を長時間つけたあとに、触ってやけどした経験はありませんか?LEDの場合は放射熱がほとんどないため、温度管理された環境での使用に最適です。また、赤外線も放出しないため、虫が寄り付くこともありません。

このように、いいことずくめのLEDにも短所はあります。

それは、熱に弱いこと。
半導体であるため、温度が上昇すると電子回路が高熱になり寿命が縮みます。そのため、LED製品を購入する場合はこの熱問題に対してどのような対策をしているか確認する必要があります。

短所を解決!
・放熱する工夫
 ファン、ヒートシンクを用いて熱を効率よく逃がす仕組みを作りましょう。
・機器のメーカー保証を確認
 照明機器を販売しているメーカーの機器保証があるか、サポート体制が充実しているかを
 確認しておきましょう。

外観検査にLED照明が使われる理由

外観検査は照明にもさまざまな要求がされる

外観検査を行いたいお客様からいただく要求は数多くあります。

「ワークサイズが非常に小さい」
「高速に流れるワークを撮像したい」
「検査スペースが狭い」

などがあります。このような要求に比例して照明に要求することも増えてきます。
以下に、実際にある案件で発生した要求事項を整理しました。

◎小型精密部品の外観検査

要求事項1.小型精密部品にある傷、変色、形状変形の発見をしたい
要求事項2.対象ワークは高速にベルトコンベア上を流れている
要求事項3.検査環境に過剰な熱を与えないでほしい
要求事項4.検査環境はスペース的に限られているため検査機材一式を小型化してほしい

これらの要求に対し、LEDがどのように貢献しているか一つ一つ見てみましょう。

6検査品イメージ

要求事項1.小型精密部品にある傷、変色、形状変形の発見をしたい

光の波長が短い青色の照明を使うことで細かなキズが見えます。また、多彩な色のLEDを作ることができるため、補色(コラム参照)の関係を利用して変色を浮き出すことができます。そして、LEDは構造が単純で加工がしやすく特殊な照明形状を作成することができます。これにより、ワークの形状変形をより見えやすくすることができます。照明形状についての詳しい話は、次回以降のブログを見てください。

要求事項2.対象ワークは高速にベルトコンベア上を流れている

高速に検査対象がベルトコンベア上を流れる場合、撮像に要求される速度は数ミリ秒となる場合があります。LEDは電気信号にて発光しているため、この数ミリ秒の撮像に対応した高速点灯が可能です。

要求事項3.検査環境に過剰な熱を与えないでほしい

検査ワークが精密機械といった場合だけに限らず、対象ワークへの物理的影響を最低限にとどめたいという要求はさまざまな現場であります。熱は影響の中でも代表的な例と言えるでしょう。この場合LEDはそのものの放射熱が低いため最適です。

要求事項4.検査環境はスペース的に限られているため検査機材一式を小型化してほしい

先ほども紹介したようにLEDは様々な照明形状で作成することができます。小型化もその一つです。これによりスペースに合わせた照明を作りこむことが可能です。

これ以外にも、省電力や長寿命などのおかげでランニングコストやメンテナンスコストの低減も見込め、お客様にとってもメリットは増えるばかりです。

いかがでしょうか。実際に外観検査の現場ではLED化によって改善への貢献が見込めます。これまでの白熱灯や蛍光灯で異常を見落としてたものを、LED照明で改善するイメージはついたのではないでしょうか。
次回からは、より具体的に外観検査用のLED照明機材を種類別に紹介していきます。種類ごとにどのようなことが得意なのか理解することで、さまざまな可能性を検討するための道しるべとなるでしょう。

コラム:外観検査で補色を使う
補色は、色相環(以下の図)で正反対に位置する色のことを指します。例えば、検査で抽出したい文字色が「赤色」である場合に補色である「緑色」の照明を使うことで文字を鮮明に表現できるようになります。具体的な検査用途としては、文字抽出、異物確認、変色確認検査に利用されます。

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