EC事業とは?はじめてのECビジネス基礎知識

 2022.12.26  株式会社システムインテグレータ

商売の歴史というのは紀元前にまで遡り、それから人々は「対面での商売」を数千年にわたって続けてきました。それが今ではどうでしょう?インターネットの発展とスマートフォンの急速な普及により、わざわざ店に足を運ぶ必要はなく、ネット上で売買が完結する時代です。

こうしたビジネススタイルは少子高齢化が進む現代社会にとって欠かせない存在になってきています。

本稿では、EC事業とは何なのか?今後はじめて取り組む方に向けてその概要について説明し、ECビジネスに欠かせない基礎知識も紹介していきます。EC事業をはじめたい、EC担当者に任命された「けれどECってそもそも何なんだ?」という疑問を持っている方は、ぜひ参考にしてください。

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EC事業とは?

EC事業とは?はじめてのECビジネス基礎知識

ECは「Electronic Commerce(エレクトロニック・コマース)」の略であり、Electronicは電子的、Commerceは商取引を指すことから、「電子商取引」を意味します。このほか「e-コマース」などと表記されますがいずれも同じ意味です。EC事業とは、一般的に企業が顧客に対して商品・サービスをオンライン上のECサイトで販売することを指します。

国内におけるECの歴史は1996年が元年と考えられており、この頃、パソコンの普及やインターネットの整備によってユーザーが急増し、ショッピングサイトが数多く立ち上がるようになります。時を同じくしてエム・ディー・エム(後の楽天)がモール型のショッピングサイト「楽天市場」を立ち上げ、翌年にはヨドバシカメラ、ノジマ、味の素、小林製薬などがショッピングサイトを開始しています。

ちなみに、立ち上げ当初は13店舗しか登録されていなかった楽天市場も、現在では4万5,000店舗を超える超巨大なモール型ショッピングサイトに成長しています(2019年2月時点の情報)。

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EC市場の事業者数・割合

それでは現在のEC事業者の割合についてご紹介します。

経済産業省の調査によると、EC事業者数は電子商取引実態調査対象5万6199事業者のうち、回答を得た2万7558事業者です。

産業別にみると以下が上位3位になっており、こちらで全体の7割以上を占めています。

  • 小売業:6%
  • 製造業:2%
  • 卸売業:7%

また、法人・個人の区別で見ると、法人が86.6%、個人事業主が13.5%となっており、EC市場の経営組織としては法人が大半を占めている結果となっています。

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増加するEC市場

では、国内におけるEC市場はどれくらいの規模なのでしょうか?これは経済産業省が毎年発表している情報で明らかになっています。

その情報によると、令和2年の日本国内におけるEC市場はBtoC(消費者向けビジネス)で19.3兆円、BtoB(企業向けビジネス)で334.9兆円となっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、物販系分野では大幅に市場規模が拡大しました、一方で、外出自粛の影響で旅行サービスなどが大幅に縮小され、全体で見るとBtoC市場が減少しています。

BtoC市場規模が減少したのは2013年以降初めてのことです。また、商取引市場全体におけるEC化率はBtoC、BtoBともに増加傾向にあり、商取引のEC化は進展しています。

引用:経済産業省 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

EC市場については以下のブログで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
EC市場とは

BtoBのEC事業とは

BtoBにおけるEC事業とは、取引が企業間で行われるECのことを意味します。ECサイトというとAmazonや楽天といった消費者向けサービスが一般的ですが、国内のBtoB EC市場は年々増加しています。

EC事業とは?はじめてのECビジネス基礎知識 1出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 | 経済産業省 

2020年はコロナウイルス感染拡大による影響で、一時的に市場が縮小したと考えられていますが、今後はよりECに注力する企業が増加するとみられています。 

BtoB ECについてはこちらのブログでより詳しく解説しています。
BtoB ECとは?市場規模やBtoC ECとの違い、成功のポイントをわかりやすく解説します 

CtoCのEC事業とは

CtoC ECとは、個人間取引を意味するECのことです。CtoC ECの代表であるメルカリを想像するとわかりやすいと思いますが、消費者が消費者に対してモノやサービスを販売する形態がCtoC ECです。

近年はこのCtoC ECの市場が急速に拡大しています。経済産業省の調査によると、国内のCtoC EC市場は2020年から2021年で12.90%と高い伸び率となっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、インドアで楽しめる商品の購入が加速したのと併せて、不用品を換金するために販売する動きがあったことが市場拡大の要因になったといえます。

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出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました 

DtoCのEC事業とは

DtoC ECとは、卸売や小売店などの仲介業者を介さずに、メーカーが直接消費者に商品を販売する形態のECです。DtoC ECの場合、仲介業者を介さないため不要な経費をカットできます。また、Amazonや楽天などの通販サイトを利用するよりも自由にマーケティング施策を行うことができ、ブランドの世界観を直接消費者へ伝えることも可能です。

SNSなどの、消費者と直接やりとりができるツールが普及した事や、BASEやShopifyなど、短期間でECサイト構築が可能なツールが普及したことなどから、国内のDtoC ECも広がってきています。

ショッピングサイトのすみ分け

広義でのECは、前述したようにEDIのような商取引も含まれますが、ここでは「EC=ショッピングサイトによる通信販売」と考えて話を進めます。そして一口にショッピングサイトといっても、実はいろいろと種類があります。

パッケージタイプ

いわゆる「ソフトウェアパッケージを用いて作成したショッピングサイト」のことで、開発会社が提供するソフトウェア製品を購入し、そこからサイトを構築します。ある程度サイトが作りこまれた状態であり、かつ独自のカスタマイズも加えられることから、柔軟性とコストのバランスが取れたタイプです。ブランド色を前面に出せることから、高いブランディング効果を発揮します。

オープンソースタイプ

オープンソースとは「ライセンス費用がかからず、無償で商用利用できるソフトウェア」のことであり、これを活用してショッピングサイトを構築します。ソースコードが開示されているので技術力さえあれば自由にカスタマイズできる柔軟性と、無償ゆえの低コストが魅力です。ただし、セキュリティ面での不安やカスタマイズ時の難しさが大きいため、慎重な導入が欠かせません。

クラウドタイプ

最近では、パッケージタイプに搭載されている機能をインターネット上で提供し、ソフトウェアを購入せずにショッピングサイトを立ち上げられるサービスが増えています。それがクラウドタイプです。ライセンス費用が一括ではなく定期的に発生しますが、マルチテナントを採用しているサービスが多く、比較的低コストに利用できるのが強みです。ただし、ソフトウェアを提供事業者側で管理していることから、カスタマイズ性はかなり低く、ある程度自由にしたい企業にとってはお勧めしません。

モールタイプ

楽天市場などのモール型ショッピングサイトが備えている機能で作られるサイトのことです。誰でも簡単にサイトを立ち上げられる反面、他店との差別化がほとんど図れないため、ブランディング効果はかなり低くなってしまいます。多くのショッピングサイトは、独自のサイトを楽天市場などに組み込んで運用しているので、モールタイプのサイトはあまり見かけないでしょう。

ECはなぜここまで拡大したのか?

この理由を「以前に比べてショッピングサイトの立ち上げ難易度が大幅に下がったから」や、「ECならば日本全国に商圏を広げられるから」などと説明する人もいます。しかし、本質的な理由はそうした事業者側の都合ではなく、単純に「消費者がそれを求めているから」だと考えられます。

インターネットがそこまで普及しておらず、情報源の多くをテレビや新聞などネット以外の媒体に頼っていた時代では、情報とは事業者から消費者に対して一方通行でした。「消費者が欲しい情報を自ら迎えに行く」という行為は難しく、限られた情報の中で生活していたのです。

それが1990年代後半から2000年初頭にかけ、インターネットが急激に普及したことでその状況が一変します。消費者は欲しい情報を欲しい時に入手できるようになり、消費者自身が情報をかんたんに発信できるようになります。すると消費者のさまざまな行動は、自然とネット上へと移行していきます。

単純な情報の取得も、他人とのコミュニケーションも、テレビの視聴も、そしてショッピングもネット上で求めるようになったのです。EC事業を展開する場合、EC担当者はこのことを決して忘れてはいけないでしょう。EC市場がここまで発展するのに技術的躍進があったのは確かですが、それ以上に「消費者がネット上で生活の一部の遂行すること」を求めたからこそ、今日の発展があります。

日本国内の代表的なEC事業者を紹介

Amazonジャパン

Amazonはマーケットプレイス型のECモールで、企業やブランドが商品を1点ずつ出品する形になっています。Amazonは「Amazonプライム」という月額500円、年間4,900円(いずれも税込)の有料会員プランを提供しており、加入することで配送料無料、お急ぎ便無料、Amazonプライム・ビデオの動画が見放題などの様々な特典を得ることができます。 

楽天市場

楽天市場はテナント型のECモールで、国内最大級のインターネットショッピングモールです。楽天トラベルや楽天モバイル、楽天銀行など、楽天が提供するサービスとの連携性が高く、複数のサービスを利用することでポイント還元率がアップするプログラム(SPU:スーパーポイントアッププログラム)があり、顧客の囲い込みを実現しています。

Yahoo!ショッピング

Yahoo!ショッピングは成果報酬型のECモールです。Amazonや楽天とは異なり、初期費用や月額費用、売上ロイヤルティなどはかかりません。その代わりYahoo!ショッピングが共通施策として行う販売促進に対して原資負担や手数料が必要になります。

また、Yahoo!ショッピングはPayPayと連携しており、PayPayを頻繁に利用する、特に若年層の取り込みがしやすいと考えられます。

ZOZOTOWN

ZOZOTOWNは株式会社ZOZOが運営する、衣料品を中心に扱うECサイトです。採寸や集客、出品、梱包・発送、サポート対応まで一貫して自社で行っているのが大きな強みです。

また、肌の色を計測して似合うコスメの色を提案する「ZOZOGLASS」、ミリ単位で足を3D計測し、シューズ購入の参考にできる「ZOZOMAT」などを提供することで、実際に試すことができないECの弱みをカバーしています。

ヨドバシカメラ

大手家電量販店であるヨドバシカメラは、ヨドバシカメラ.comというECサイト運営に力を入れています。ECサイトの黎明期である1998年にECサイトを開設し、送料無料でのサービス展開を始めました。店舗で見た商品をネットで購入したり、ネットで購入した商品を店頭で受け取れたりするなど、オンラインとオフラインを統合するサービスを提供しており、高い顧客満足度を誇っています。

BASE

BASEとはサイトのデザイン作成や決済機能など、ECサイトの開設~運営に必要な機能がそろっているネットショップ作成サービスです。初期費用や月額費用が無料なのが特徴で、利用料は売買が完了した際にかかる体系です。

2022年12月には累計190万のショップが開設されており、個人だけでなく法人や自治体などでも広く利用されています。 

メルカリ

メルカリは株式会社メルカリが運営するフリマアプリです。洋服や雑貨など、個人が所有するものを自由に販売できるCtoC-ECです。出品や購入は無料で、取引が完了した際にだけ販売価格の10%が手数料として差し引かれる体系になっています。ラクマやジモティーなどフリマアプリは多数ありますが、メルカリは2021年9月時点で、月間利用者数が2,000万人を突破するなど、国内最大級のサービスになっています。

EC事業の運営で重要な「フロント業務」「バックオフィス業務」について

ECサイトを運営するための業務として、大きく「フロント業務」と「バックオフィス業務」の2つに分けられます。フロント業務は顧客に販売するまでの業務で、バックエンドは販売した後の業務を指します。

それぞれ詳しく解説します。

フロント業務の業務内容と役割

フロント業務は顧客へ商品・サービスを販売するまでのプロセスにおける業務を指します。商品の企画や仕入れ、マーケティングはもちろん、ECサイトの制作もフロント業務です。

商品の企画はもちろんですが、実際ユーザーが購入する接点となるECサイトの制作も重要な業務です。自社のブランドをどのように訴求するかなどコンセプトを定めたうえで、ユーザーに使いやすいサイトにする必要があります。

代表的なフロント業務には以下のようなものがあり、フロントエンドは直接売り上げに直結する役割を持つ業務になります。

  • 商品企画
  • ECサイト制作
  • 在庫調整
  • マーケティング・プロモーション 

バックオフィス業務の業務内容と役割

バックオフィス業務は、フロント業務に対してECサイトの前面に立たない業務を指します。フロント業務で注文を受けてからは、在庫の確認、商品の出荷業務や商品到着後のアフターフォローまで担うことになります。

具体的には以下のような業務があげられます。

  • 商品情報登録業務
  • 商品の受発注管理
  • 在庫管理
  • 商品の出荷・配送
  • アフターフォロー

業務内容を分けて書いていますが、たとえば商品の仕入れ管理と在庫管理は適切に連携しなければ適正在庫を保つことができません。実際にはフロント業務とバックオフィス業務は密に連携しているのです。 

具体的な運営の業務についてはこちらのブログでより詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
ECサイト運営とは?業務内容や基礎知識について解説 

まとめ

現在の市場動向を踏まえつつ、EC事業の基本についてご紹介いたしました。コロナウイルス感染拡大の影響やスマートフォンが広く普及したことなど、様々な要因からEC市場は拡大を続けており、今後も成長していくでしょう。

新しい技術の登場によってトレンドも次々に変化していきます。その分、商機もどんどん増えていきますので、今とこれからのEC事業についてよく検討した上で、最適なEC戦略を練っていただきたいと思います。

変化するトレンドに対応するためにどうすべきなのか?ECの新常識についてまとめた資料もありますので、ぜひ併せてご覧ください。

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