レコメンドとは日本語で「勧める、推薦する」という意味です。
ECサイトにおけるレコメンド機能も同じように、Aという商品を見ている人に、Bという商品を勧めます。顧客にとっては、自分で探し当てなくても勧められる商品をチェックするだけで必要かどうか判断ができるため、いわばWeb上で行われる一種の接客と言えます。ECサイトの運営サイドとしては、購入したことのある商品や閲覧しているページと関連する商品などの情報から特定商品レコメンドすることで、クロスセルやアップセルの機会を創出する手段ともなります。
ECサイトでレコメンド機能を活用するメリット
レコメンド機能は、購入段階と言う一番顧客がホットな状態にあるタイミングで、さらに追加の情報をプッシュするため、非常にシンプルな手法でありながら展開方法によっては大きな効果が期待できます。では、どういったメリットがあるのでしょうか。
趣味嗜好に応じた商品を表示する
実店舗ならば、スタッフが来店客を接客している中で趣味嗜好を感じ取り、都度最適な商品を提案します。この取り組みによって、もともとは購買意欲のなかった人が購入したり、予定の金額以上の買物をしたりします。これらは全て接客によって、最適な商品を提案したからこそ得られる利益です。
ECサイトにこうした仕組みを取り入れるのがレコメンド機能です。コンタクトの属性や購入履歴、行動情報などから一定の傾向を判断することで来訪者の趣味嗜好に応じた商品を表示することで、訪問者ごとに最適な商品提案を行うことができます。
ECサイトへの信頼が上がる
レコメンド機能を活用することで、訪問者の「欲しいもの」を「欲しいとき」に、提供できる確率がアップします。訪問者からすれば「自分の購買行動や好みを理解している」と感じるので、利便性とともにECサイトへの信頼性も向上します。これにより、リピーター獲得に繋がります。
クロスセルの実施により客単価が向上する
クロスセルとはAという商品を購入した人に対し、Bという商品をすすめるという販売手法です。たとえば自動車販売業界では、顧客が購入の意思決定を示した際にオプション製品やサポート製品のクロスセスを実施します。ポイントは、メインの商品価格より低価格なものをすすめることです。
自動車という高額商品を購入する際、人間はかなり慎重になります。しかし一度意思決定をすれば緊張感が一気にとけ、一種の麻痺状態に陥ります。この段階でカーナビやドライブレコーダーといった少額商品(本来は高額だが自動車に比べれば少額)をすすめられると、さっきまでの慎重さが嘘だったかのように、購入を決定します。
レコメンド機能ではアルゴリズムに則った商品表示だけでなく、表示する商品を細かく設定可能なので、こうしたクロスセルをECサイト上で実践できます。
種類別レコメンドエンジンの仕組み
レコメンド機能を提供するエンジンには「協調フィルタリング型」「コンテンツベースフィルタリング型」これらを複合的に使用した「ハイブリッド型」などいくつか種類や実装のロジックがあります。
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ルールベース型
いわゆる一般的な店舗でも展開しているリコメンド手法と同一です。運営者側が定めた一定のルールに基づいてプッシュされるアイテムとなるため、コンタクトの属性や行動、嗜好性などとは関係なく、「お買い得商品」としてのおすすめ感が強くなります。
在庫数と連動させたキャンペーンや季節に応じて表示量を変化させるといった、商品陳列の発送に近い形で、サイトの商品情報を管理できます。
協調フィルタリング型
協調フィルタリング型とはECサイトの訪問者の、サイトアクセス履歴や行動履歴をもとにして、関連性の強い商品を表示させる仕組みです。例えばAという商品を購入した人の中でBという商品も購入することが多いので、Aを購入した(する)人に対しBをレコメンドします。
同じ商品を購入した訪問者の購買行動も似通っている可能性が高いことを前提に考えられたロジックで、非常にシンプルではありますが高い効果があり、ECサイトばかりでなく、キュレーションサイトや動画配信サイトなど多くのサイトで採用されています。
コンテンツベースフィルタリング型
コンテンツベースフィルタリング型とは、商品情報に基づき類似した商品を表示する手法です。商品情報を登録する段階で、アイテムの特性についてベクトル情報を取得し、各コンテンツの関連性にルールを持たせることが可能となります。
商品情報のもつ特性から抽出した情報に基づいて条件を設定できるため、コンテンツが登録された段階からリコメンドとして一定の精度が担保できる点が特長です。
メタ情報や紹介文といったテキスト情報を使用することも可能なため、大量に商品情報が存在する文献検索や動画・音楽配信といったライブラリ系のサービスにもよく利用されています。
ハイブリッド型
ハイブリッド型とは文字通り複数のフィルタリング技術を組み合わせることで、より最適なレコメンドを実現するための仕組みです。
提供するサービスの特性や顧客のセグメント、商品自体が持つ情報量などを加味して、利用シーンごとに使用するリコメンド手法を使い分ける方式です。
すでに購入記録があるコンタクトであれば、購買履歴や行動情報などから協調フィルタリングを使用することで趣向性に基づいたリコメンドが可能となります。
一方、初めての来訪やまだ購入記録などがないコンタクトであれば、より多くの商品を横断的に検索してもらう際には、アイテムの関連性が強いほど自然な検索結果となるため、コンテンツベースフィルタリングの使用が効果的です。
新規商品を取り扱う場合も、まだアクセスログや購入記録の蓄積が少ないため、コンテンツベースフィルタリングから始めることが多くなります。
ECサイトにレコメンド機能を取り入れる方法
レコメンド機能を取り入れるための代表的な例として4つの方法をご紹介します。自社でどこまで管理するべきか?費用対効果によってどこかでコストをかけるべきか?など、いくつか検討する上で踏まえておくべきポイントが存在します。
Eコマースシステム包括されている機能を利用する
ECサイトを構築する際に導入した、Eコマースシステムにレコメンド機能が包括されているパターンです。レコメンドのためだけに追加コストがかかるらないのですが、一方専門的なレコメンドエンジンと比較すると機能や性能は劣っている場合がほとんどです築する際に導入した、Eコマースシステムにレコメンド機能が包括されているパターンです。レコメンドのためだけに追加コストがかかるらないのですが、一方専門的なレコメンドエンジンと比較すると機能や性能は劣っている場合がほとんどです。
一方で、商品情報などとの連携は強く、ルールベースへの対応も取りやすいため、初めてレコメンドを取り入れる場合は、Eコマースシステムに包括されている機能を確認することがお勧めです。
ASPサービスを利用する
レコメンド機能に特化したASPサービス利用します。比較的低コストかつ短期での導入が可能となるのが特長です。また、専門的なツールとして独自開発したレコメンドエンジンを搭載していることも多く、安価な費用で高機能なサービスを利用することが可能です
弊社が提供する SI Web Shoppingでも、パッケージ標準でご提供しているレコメンド機能がありますが、より高度なレコメンドを行いたいお客様向けに専用のレコメンドエンジンとの連携サービスをご提供しております。
また、サービス特性や機能、運用の負荷など加味してビジネスの成長や運営体制の変化に合わせて、レコメンド機能を切り替えていくこともAPSサービスだと比較的容易です。
プライベートDMPを導入する
自社内にプライベートDMPを構築し、レコメンド機能と連携させる方法です。ASPサービスよりもコストはかかりますが、社内に蓄積した多種多様なオーディエンスデータや3rdパーティーが提供する拡張データとの連携を図ることで、より高度なレコメンド機能を実装することができます。
本格的なECサイトを展開しているケースで、商品点数や会員数、月間トラフィックも一定量発生している場合、活用できるデータが豊富にあるため、自前のデータプラットフォームを構築することで、より精細なレコメンドを行うことが可能となります。
DMPが整備できると、データ分析についても様々な取り組みができるため、レコメンドエンジンのためだけでなく、顧客管理基盤としてもプライベートDMPを構築するケースが多くなっています。
フルスクラッチで開発する
レコメンド機能を一から独自に開発すると言うよりは、顧客管理中心にすえたCDP(Customer Data Platform)を個別に構築し、そこから派生した情報に基づいて、レコメンドエンジンやマーケティングオートメーションと連携させる方法です。
レコメンド機能単体で売上拡大を図ることが難しくなってきている企業では、顧客のライフタイムバリューを算出してマーケティング施策に生かす動きに注目が集まっています。
レコメンド機能のあり方も変わり、より顧客エンゲージメントを高める手段として、マーケティング施策が設計され、サイト内での商品情報表示にとどまらず、ソーシャルでのプッシュメールや買い置きのご案内メールなど、様々な手段に広がりを見せています。
まとめ
いかがでしょうか。レコメンド機能を導入したからといって、必ずしも収益が伸びるわけではありません。レコメンド機能はあくまで手段なので、それをいかに活用するか、が重要となります。しかし、導入することで、ECサイトのユーザビリティを向上できることは間違いありません。これからECサイト構築をするという企業は、レコメンド機能を包括している、あるいはオプションによって追加できるパッケージ製品を選ぶのがベストと言えるでしょう。
また、レコメンド機能を使うことで「客単価を高めること」ばかりに目を向けるのでなく、顧客に「ストレスなくサイトを回遊してもらうこと」も顧客満足につながり、さらには長期的な売上増加へとつながっていきます。
レコメンド機能は、商品を強くプッシュするだけの時代は終わり、必要なものを必要なタイミングでご案内するコンセルジュサービス的な意味合いも持つ様になっています。
ぜひ、この機会にマーケティング施策としてのレコメンド機能について、検討してみてはいかがでしょうか。
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