EC業界は毎年市場規模が拡大している成長著しい業界です。業界の成長に合わせて、消費者の利便性・満足度の向上に繋がるサービスも充実してきています。近年オムニチャネルやOMOといった実店舗を含めたEC事業者に注目されているのが、BOPISと呼ばれるシステムです。
当記事では、BOPISの概要・注目されている理由・メリット・デメリット・導入方法・国内企業の導入事例について解説していきます。ECビジネスの成長に繋がる施策に興味がある方は、ぜひご参考下さい。
BOPISとは
BOPIS(Buy Online Pick-Up In Store:ボピス)とは、ECサイトで購入した商品をオフラインの実店舗で受け取ることができる購買プロセス・システムのことです。
仕組み自体は非常にシンプルですが、消費者・事業者双方にとって非常に大きなメリットがあるため、現在多くのEC事業者が導入を進めているシステムとなります。
Click & Collectとの違い
ECサイトで購入した商品をオフラインで直接受け取るシステムには、BOPIS以外にもClick&Collectがあります。両者は類似したシステムですが、厳密には受け取り場所・受け取り方法において違いがあります。
BOPIS
ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取るシステム。オンラインショッピングの利便性・効率性をそのまま享受できるのが特徴。
Click&Collect
ECサイトで購入した商品を、小売店・受取拠点・ロッカー等の自宅以外の場所で受け取るシステム・スタイル全般を指す。
BOPISはClick&Collectに内包されていると捉えても差し支えないでしょう。
BOPISが注目されている理由
BOPISが大きな注目を集めている理由は、導入メリットが大きい以外にも以下のようなさまざまな理由が考えられます。
コロナ禍の影響
コロナ禍の影響で実店舗への長時間の滞在や接触が敬遠される傾向にあるため、事業者は具体的な対処法を迫られています。BOPISであれば、購入自体はオンラインで行えるため、受け取り時のみの最低限の店舗滞在時間で済ませることができます。
実店舗来店のきっかけを作れる
BOPISを導入すれば、商品の受け取りを実店舗への来店のキッカケとすることができます。客足が遠のきつつある実店舗への来店者数を増やせる有効な施策としても注目を集めています。
新規顧客の創出に繋がる
BOPISを導入すれば、消費者の購買行動の選択肢を増やせるため、実店舗・ECサイトどちらかに偏重していた顧客を新たな顧客として取り込める可能性があります。このような客数増加によるビジネスの成長のためにBOPIS導入を検討する企業も多くあります。
BOPISを導入するメリット【消費者側】
BOPISを導入すると、ECサイトを利用する消費者に数多くのメリットを提供することができます。
ここでは、BOPIS導入により消費者側が得られる主なメリットについて解説します。
送料がかからない
ECサイトで商品を購入すると、商品代金とは別途で送料がかかります。BOPISが導入されているショップで店頭受け取りを行えば、送料をかけずに商品を手に入れることが可能です。
多くのECサイトでは、一定金額以上での送料無料サービスや、特定の商品を送料無料とするサービスが行われていますが、スポットで欲しい商品がある場合には使いづらいという懸念があります。
BOPISにより、いつでも欲しい商品のみ送料無料にできるということは、消費者側にとって大きなメリットと言えるでしょう。
好きなタイミング・好きな店舗で受け取れる
一般的なECサイトの商品購入では、配送業者から商品を受け取るための時間を確保する必要があります。都合の良い時間や日時を指定することはできますが、急な予定が入ることも考えると時間的な制約を受けることは大きなデメリットに感じるものです。
BOPISであれば、指定した店舗で好きなタイミングで商品を受け取ることができるため、スケジュールの調整や時間の確保を気にする必要がありません。買い物の利便性・自由度が大幅に高まるため、忙しい現代人にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
効率良く買い物ができる
BOPISで商品を購入するチャネルはECサイトです。時間・場所に関わらずいつでもどこでも商品のチェック・購入が可能であるため、実店舗での購入よりも効率的に買い物を楽しむことが可能です。トレンドの商品ラインナップ・在庫数等も手軽に確認できるため、店舗に無駄足を運んだり無駄な労力を費やすこともありません。
利便性・効率性を重視する消費者にとっては、BOPISを利用するメリットは大きいでしょう。
BOPISを導入するメリット【事業者側】
BOPISを導入すれば、ECサイトを運営する事業者側にとっても大きなメリットがあります。ここではBOPIS導入により事業者側が得られる主なメリットについて解説します。
BOPIS導入を検討している方は、ぜひご参考下さい。
顧客満足度を高められる
BOPISを導入すれば、上述の消費者側のメリットでもご紹介した通り、顧客に対して利便性・効率性といったさまざまなメリットを提供できるため、顧客満足度を向上させることができます。
顧客満足度が向上するとリピート率や顧客単価も向上させることができるため、ビジネスを運営する事業者にとって大きなメリットとなります。
他社と差別化できる
BOPISは消費者からのニーズが高く、非常に人気のあるシステムです。自ECサイトに導入することで、利便性・効率性・満足度などさまざまな面において、ECサイト専業の競合他社と大きく差別化することが可能です。競合の存在が売上拡大の障壁となっている場合は、BOPIS導入による差別化で大きくシェアを獲得できる可能性もあります。
EC業界は非常に競合性の高い業界であるため、差別化ポイントを創出できるメリットは大きいでしょう。
来店機会を創出できる
BOPISを導入すれば、ECサイトで商品を購入した顧客に対しても、実店舗へと来店する機会を創出することができます。店舗での接客・販売の機会も生まれるため、上質な接客や魅力的な商品ディスプレイを行えば、ついで買いによる売上も期待することができます。
従来であればオンライン偏重の顧客に対しても、ECサイトと実店舗という2つのチャネルでアプローチできることは、事業者にとって大きなメリットです。
BOPISの導入に必要なもの
ここでは、BOPISを導入するにあたって必要となる設備・システムや準備しておくべきことを解説します。これからBOPISの導入を検討している方は、ぜひご参考下さい。
ECサイト・実店舗が必要
BOPISを導入するには、商品の販売を行うECサイトと商品の受け取りを行う実店舗の両方が必要です。現在店頭販売しか行っていない場合は、ECサイトの開設を行う必要があります。
リアルタイム在庫管理システムの導入
BOPISは顧客が商品をスムーズかつ速やかに店舗受け取りできる体制を構築しなければならないため、リアルタイムの在庫管理は必須です。顧客からの注文に応じて、速やかに店舗へ商品を配送したり店頭在庫を取り置きできる環境を構築しておく必要があります。
配送システムの最適化
BOPISでは、一般の通販のように配送業者を利用して顧客の自宅へ商品を発送するのではなく、各受け取り店舗への配送を行わなければなりません。注文を受けた商品をスムーズに配送できるように、自社内の出荷・配送の仕組みを整えておく必要があります。
BOPISの導入に成功した事例
BOPISは日本国内でも取り組みを始める事業者が増えてきており、既に成功した事例も目立ち始めてきています。
ここでは、日本国内でBOPISの導入に成功した代表的な事例をご紹介します。
ヨドバシカメラ
家電量販店大手のヨドバシカメラは、ECサイトにて全国の実店舗の商品在庫状況をリアルタイムで公開。店舗に在庫がある場合は、ECサイトでの注文から30分以内に商品が受け取れるシステムを構築しています。一部店舗では営業時間外にも専用受け取り窓口での商品受け取りが可能となっています。
いつでも好きなタイミングで商品を受け取れるだけでなく、待ち時間がほぼ不要でスピーディーに商品を受け取れるのが同社のBOPISの特徴です。利便性・効率性の高いサービスを提供することにより高い満足度を得ています。
ワークマン
全国に800以上の店舗を構える作業服専門店のワークマンは、BOPIS戦略を上手に活用している企業です。
同社は2020年に大手ECモールから撤退を行い、全商品を自社ECでの販売へと切り替えました。ほぼ同時期に店舗受け取りサービスの開始を行い、EC売上の67%がBOPISからもたらされ、EC売上も前年比130%以上という状況を実現しています。
ECサイトでも1万円以上で送料無料のサービスを行っていますが、ワークマンのアイテムは単価が安く、送料無料を適用するには多くの点数を購入する必要があります。BOPIS導入により送料を気にせず買い物ができるようになったことが、売上拡大ならびにBOPIS普及の成功要因と言えます。
ユニクロ
アパレル大手ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングは、2016年に「顧客ニーズのある商品をリアルタイムで把握・製造してよりスピーディーに提供する」ことを目指す改革「有明プロジェクト」をスタート。
同プロジェクトの一環としてBOPISの導入を行い、ECサイトで購入した商品をユニクロの実店舗だけでなく大手コンビニ各社の店舗でも受け取れる仕組みを構築。受け取りスピードも最短翌日と非常に速く、2週間の店舗預かりも可能という非常に利便性の高いサービスを提供しています。
このような取り組みの結果、EC売上高・EC化率ともに驚異的な成長に繋げることに成功しています。
オムニ7
セブン&アイ・ホールディングスのグループ傘下企業として総合通販サイトを運営するオムニ7は、2014年に同サイトで販売された商品を対象とした店頭受け取りサービスを本格的に強化。
従来からも一部商品についての店頭受け取りサービスを提供していましたが、対象商品を150万点まで大幅に拡充。単に店頭受け取りできるだけでなく、翌々日には商品を受け取れる体制を構築するなど配送スピードも大幅に強化しました。
同社のBOPISは親会社であるセブン&ホールディングスのグループシナジーを活かして、全国のセブンイレブン店舗を受け取り場所として指定可能であることが特徴です。
消費者にとって最も身近な小売店であるコンビニエンスストアを活用することで、非常に利便性・効率性の高い優れたシステムの構築に成功しています。
まとめ
現在はコロナ禍の影響もあり、人々の購買行動も以前とは大きく変化・多様化しています。ECサイト・実店舗を運営する事業者がこれからビジネスを成長・存続させていくには、新しく生まれた消費者のニーズに応えていくことが重要です。
効率性・利便性・非接触等を求める消費者のニーズに対応するのには、BOPISは非常に有効的・効果的な打ち手となりうるでしょう。
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