カゴ落ちは、ECサイトの売上アップを阻む原因のひとつです。カゴ落ちとは、ショッピングカートに入れた商品を購入せず、サイトから離れてしまうことを指します。カゴ落ちに対して適切な対策を行うことで、売上を伸ばせます。本記事では、カゴ落ちの概要、カゴ落ちが起こる理由、カゴ落ち対策のポイントなどについて解説します。
カゴ落ちとは
カゴ落ちとは、ショッピングカートに入れた商品を購入せず、サイトから離れてしまうことです。
2022年に株式会社イー・エージェンシーが発表した調査から、平均のカゴ落ち率は約64.7%だと判明しました。このカゴ落ちによる機会損失額の平均は、売上の約2倍にのぼります。なお、カゴ落ち率の計算方法は以下のとおりです。
カゴ落ちした顧客数÷サイトアクセス総数
カゴ落ちが起こる10の原因
購入が完了するまでに、サイトを離脱してしまう顧客が多数存在します。ここでは、Bay Institudeの調査で判明した、カゴ落ちが起こる上位10個の理由を取り上げます。
追加コスト(送料、税金、手数料)が高かった
1つ目は、想定よりも送料、税金、手数料などの値段が高かったケースです。商品購入手続きに進んだ結果、追加コストが加算され、予算をオーバーしてしまう場合があります。熟慮の結果、「このサイトでの購入は控えよう」と判断する顧客も少なくありません。
会員登録が必須で面倒だった
2つ目は、購入のために会員登録を行わなければならないケースです。個人情報の入力やメール送信が手間に感じ、商品購入意欲が削がれてしまいます。また、重要な個人情報を気軽に渡したくないという顧客もいるはずです。
配達が遅かった
3つ目は、思っていたよりも商品到着予定日が遅いケースです。たとえば、商品購入手続きを進めた結果、「最短配達日は2週間後」などと表示されたとしましょう。一刻も早く商品を欲しい顧客は、該当サイトでの購入をやめてしまうはずです。
クレジットカードの情報を入力することに不安があった
4つ目は、クレジットカード情報の入力に不安を感じたケースです。決済方法がクレジットカードしか用意されていない場合、こうした不安はカゴ落ちの大きな理由となります。とりわけ大手ECサイトではない初見のサイトであれば、カード情報の提供に抵抗感を覚える顧客も少なくありません。
決済完了までのプロセスが長く複雑
5つ目は、決済完了までの購入手続きが長いケースです。あとどれくらい情報を入力すればいいのかわからず、作業が煩わしいと感じてしまいます。入力内容の確認や、情報入力画面を複数に分けてしまうと、途中で離脱してしまう顧客が増えます。
注文の合計金額を前もって知ることができなかった
6つ目は、決済画面に進んでからはじめて合計金額(送料、手数料などを含む)が表示されるケースです。途中で金額の調整ができないため、予算をオーバーした際などに、購入自体をやめてしまう可能性があります。
サイトがエラーを起こした
7つ目は、ページのフリーズなどが発生し、サイトそのものがエラーを起こしたケースです。アクセスが集中してサーバーエラーを起こしたり、リンクの記載ミスで404エラーが表示されたりします。エラーが頻発するサイトに不信感を覚えた人は、他サイトへ行ってしまいます。
返品ルールに不満があった
8つ目は、返品ルールに対して顧客が納得できなかったケースです。「返品そのものが不可である」「返品ルールが詳しく明記されていない」「返品ルールに誤字脱字がある」といった場合は、カゴ落ちが発生する可能性があります。
支払方法が充実していなかった
9つ目は、支払方法が充実していないケースです。顧客が対応できる決済方法がない場合、購入をやめてしまうことがあります。普段利用しているクレジットカードが非対応である場合や、代引き決済に対応していない場合などが例に挙げられます。
クレジットカードが拒否されて決済できなかった
10個目は、顧客が決済を行おうとしたクレジットカードが、システム上で拒否されるケースです。原因は、有効期限切れや利用限度額オーバーなどが挙げられます。ただ、顧客側に問題が発生している場合、サイト側が実施できる対策はあまりありません。
その他の原因
ここまで紹介した理由のほかにも、「カートに入れたまま、購入することを忘れてしまった」「買い物リストとしてカートに商品を入れた」といったカゴ落ちの原因が考えられます。顧客によって考え方や環境は異なるため、ひとくくりにまとめられない原因も存在します。
カゴ落ちを防ぐ7つの対策
カゴ落ちは、どのように対策すべきでしょうか。適切に対策を行うことで、顧客満足度や売上の向上につながります。ここからは、カゴ落ちの対策方法を7つご紹介します。
対策1.送料無料にする
1つ目の方法は、送料を無料にすることです。大手ECサイトでは送料無料で買える商品が多いため、顧客は送料無料を求めてしまう傾向にあります。
もっとも、すべての送料を事業者側で負担をするのは現実的ではありません。したがって、商品の価格を送料込みの値段に変えるのが得策です。
浜松委托運送株式会社が2020年に公開した調査によると、合計金額が同じであった場合、「送料無料」の記載があるほうが購入する可能性が高い、と回答した人が84%いたとの結果が出ています。
すなわち、商品価格に送料を含め送料無料(商品価格2500円、送料無料)と記載するほうが、商品価格と送料を分けて(商品価格2000円、送料500円)記載するよりも、購入されやすくなると考えられるわけです。
このことから、「送料無料」というフレーズがユーザーの購買行動に与える影響がとても大きいことがわかります。
対策2.送料も含めた合計金額を表示する
2つ目の方法は、購入手続きに進む前に、送料も含めた合計金額を表示することです。価格競争が激しいジャンルの商品など、商品に送料を含めることが難しい企業に適しています。事前に合計金額がわかれば、購入直前にサイトを離脱する顧客を減らせます。
なお、「○○円以上購入すれば送料無料」と表記する方法も有効です。顧客にお得感だと感じさせながら、総量が無料になる条件を満たすための「ついで買い」も誘発できます。
対策3.会員登録の手間を省く
3つ目の方法は、会員登録の手間を省くことです。会員登録が必要なECサイトは、顧客の購入意欲を削ぎます。情報入力の面倒な会員登録画面が表示されると「また今度購入しよう」と買い物を中断してしまうかもしれません。顧客が手間を省けるよう、以下の3つの方法を試してみましょう。
ゲスト購入を導入する
ゲスト購入とは、会員登録せずに商品を購入することです。初めての利用者における購入のハードルを下げられます。
ただ、EC事業者としては、顧客情報は大切な資産であり、ユーザーと関係性を深めるために欠かせません。そこで、ゲスト購入を導入できない事業者は、以下の方法で会員登録の手間を減らすことも効果的です。
入力項目を減らす
会員登録の入力項目を減らせば、顧客の負担を軽減可能です。たとえば、2016年に株式会社ルーシーが出した記事では、入力項目を半分に減らした際のコンバージョン率が、約2.5倍に変化したと述べられています。ゲスト購入を導入し難い企業は、入力を求めている情報が本当に必要な項目かどうか精査してください。
ソーシャルログインを導入する
ソーシャルログインの導入もおすすめです。ソーシャルログインとは、顧客がすでに保有しているSNSやWebサービスのアカウントを使って、サイトにログインできる機能です。主な例は以下のとおりです。
SNS:LINE、Facebook、Twitter など
Webサービス:Google、Yahoo!JAPANなど
これにより、顧客は新たなアカウントの作成や、情報入力の手間を省けます。
ソーシャルログインに関する記事は、こちらからご覧ください。
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対策4.配送を早める
四つ目の方法は、配送処理の最適化を図ることです。主な方法は、以下のとおりです。どの作業に時間を要しているのか調査・分析し、配送処理の流れをブラッシュアップさせましょう。
在庫管理の最適化
在庫切れの防止によって、配送をスピードアップさせます。現在の在庫状況を把握しておくと、欠品手配のリードタイムをなくせるからです。
発送作業の効率化
配送スピードの向上には、配送手順の見直しが必要です。自動化ツールやシステムの活用によって、商品受注から発送までのフローをスムーズに変更できます。
対策5.決済手段を増やす
5つ目の方法は、クレジットカード以外の決済手段を増やすことです。ここで、総務省が2020年に公表した「通信利用動向調査報告書」を参考にします。ECサイトで商品を購入する場合、以下の決済手段が利用されていることが判明しました。クレジットカード以外の決済手段も、多く利用されています。
特に、中高生はコンビニ支払いといった前払い決済を選んでいます。複数の決済手段も採用すれば、セキュリティに不安をいだいている顧客やクレジットカードを使わない層からの購入率を高められるはずです。
対策6.カゴ落ち対策ツールを導入する
六つ目の方法は、カゴ落ちツールを使うことです。自社サイトで発生しているカゴ落ちに対し、原因分析や内容修正ができます。主なツールはを下記のとおりです。
- メール自動配信ツール
カゴ落ちが発生している顧客に対して、レコメンドメールを送信するサービス。 - Web接客ツール
チャット(AI、有人)によって、顧客の買い物をサポートするサービス。 - 決済フォーム改善ツール
購入画面の決済フォームがより使いやすくなるように、顧客の分析などを行うサービス。
対策7.カゴ落ちメールを送る
「カゴ落ちメール」とは、カゴ落ちした顧客に対して、カートに入れたままの商品をリマインドするメールのことです。商品をカートに入れたままサイトを離脱した顧客は、商品そのものには関心があると考えられます。そこで、時間を空けて再度商品を思い出していただくことは、販売促進の重要な手段となるでしょう。
カゴ落ちメールには、以下のような内容が記載されています。
- 未購入商品をまとめたリスト
- カートに入った商品の画像、詳細情報
- 購入を促すメッセージ、割引クーポン
- カスタマーサポートへの問い合わせ先、リンク
カゴ落ちメールのポイント
カゴ落ちメールを送信する場合は、以下のようなポイントに気をつけましょう。
- 送信するタイミングはカゴ落ちが発生してから約2~3時間後
顧客が商品への興味関心を持っているタイミングです。あまり早すぎると、監視されている感覚を顧客が持ってしまいかねません。
- メールの総送信数は3~4通まで
しつこくメールを送信すると、サイトそのものに嫌悪感を抱かせてしまいます。なお、複数回メールを送信する場合は一定の間隔を空けましょう。一般的に、カートに入れた3時間後、24時間後、7日後に送信すると効果的とされています。また、セールが始まったタイミングで送るのも効果的です。
カゴ落ちメールの例文
カゴ落ちメールを作成する際は、以下のような文面を意識してください。
件名:「カートに入れたままの商品があります」
本文:
いつもサイト○○をご利用いただき、ありがとうございます。
ただいま、お客様のカートに商品○○が残っております。お買い忘れはございませんか?
【商品画像や商品URLなど】
送料や決済方法などにつきましては、下記のヘルプをご覧くださいませ。
ログインはこちら
なお、すでに商品をご購入されている場合や、カートから削除されている場合も、本メールが送信されることがございます。何卒ご了承くださいませ。
適切なカゴ落ち対策で顧客により良い購買体験を
カゴ落ちは、売上の機会損失に結びつきます。適切な対策を行うことでカゴ落ちを減らし、売上をアップさせることが可能です。加えて、カゴ落ち対策によりサイトのユーザビリティも高められます。サイトの使いやすさは顧客満足度を左右する、非常に大事なポイントです。今回取り上げた内容をもとに、ECサイトの改善に取り組んでみましょう。
自社サイトの売上を高めるためには、具体的な方策を学ばなければなりません。以下の資料では、検索やレコメンドのパーソナライズについて詳しく解説しています。ご興味をお持ちの方は、ぜひご覧ください。
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