OMOとは?意味や事例、O2O・オムニチャネルとの違いを解説

 2022.12.08  株式会社システムインテグレータ

消費者にとっても企業にとってもデジタルの活用が当たり前になった今、オンラインもオフラインといった分け方を意識しない、OMOというマーケティングの概念が浸透しつつあります。
本記事ではOMOの基本的な内容と具体的な事例の解説、類似の概念であるO2Oオムニチャネルとの違いについても触れていきます。

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OMOとは?わかりやすく解説

「OMO」とは「Online Merges with Offline」の略語で、オンラインとオフラインの情報と体験を融合するという意味のマーケティング戦略に活かされている概念です。
オンラインとオフラインが融合した優れた顧客体験を生み出し、提供することが目的とした考え方で、オンラインの情報からオフラインの購買行動に誘導するO2O(OtoO、Online to Offline)が進化した形態としてもとらえられています。

OMOという言葉を提唱したのはGoogleチャイナ元CEOの李開復(リ・カイフ)氏です。2017年、李開復氏が英経済誌「エコノミスト」特別号に寄稿したコラムでOMOは使われ、有名になりました。日本では、2019年に出版された書籍「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」(藤井 保文、尾原 和啓 著)で広く知られるようになりました。

OMOが生まれた背景とは?

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OMOが生まれた背景には、スマートフォンなどのモバイル端末が人々の生活に浸透したこと、キャッシュレス決済の普及、センサーを搭載したIoTの普及などが挙げられます。
従来はWebサイト閲覧履歴などのオンラインデータと、実店舗での購買履歴などオフラインで収集したデータを連携することは難しく、履歴のデータは別々に管理されていました。

しかしテクノロジーが進歩したことにより、スマホのアプリを経由して収集されたECサイトの閲覧履歴や実店舗訪問を割り出すための位置情報、店舗に置かれたセンサーが読み取る来店情報などをすべて関連付け、同一のユーザーデータに統合できるようになったのです。

こうして企業はユーザーの行動をより詳しく把握できるようになり、そのデータを利用してユーザーに今まで存在しなかったような画期的なサービスの提供ができるようになりました。

モバイル端末の活用が進んでいる中国では、巨大ECサイトを運営するアリババグループ(阿里巴巴集団)の創始者であるジャック・マー(馬雲)氏が、2016年の時点ですでにオンラインとオフラインの情報を組み合わせて小売りに活用するニューリテール(新小売)の構想を提唱していました。中国は小さな個人商店や屋台でもスマホで買い物ができるキャッシュレス大国となっており、OMOが普及するのも当然の流れであったとも言えます。

O2O・オムニチャネルとの違い

OMOと類似の言葉としてO2Oとオムニチャネルがありますが、これらはすべて別の意味を持つ概念です。

O2OはWebサイトなどのオンラインからリアル店舗などのオフラインへ、またはその逆にオフラインからオンラインへ誘客するマーケティング手法を指しています。ECサイトでのプレゼントやクーポンなどのインセンティブによって顧客の関心を引き、リアル店舗へ誘導する施策がその代表例です。フリーペーパーにQRコードを印刷してオフラインからオンラインへいったん誘導し、そこからまたリアル店舗へ誘導するO2O2Oのような方法もあります。

オムニチャネルとはあらゆるチャネルという意味の言葉で、オンラインとオフラインを問わず自社のすべての販売チャネルを統合し販売促進につなげる戦略を指します。主にスーパーマーケットのような小売業界で広がっている概念で、在庫を一元化することで顧客がどのチャネルでも同じように商品を購入できるようにするのが主な狙いです。

これらの概念を比較してみると、O2Oは主にインセンティブ付与による誘客施策、オムニチャネルはシームレスな購買体験を提供することによる囲い込み施策であるのに対し、OMOはデータや顧客情報の統合施策である点が大きく異なります。

O2Oとオムニチャネルについては以下の記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:オムニチャネルとは?OMO・O2Oとの違いから事例や戦略について解説
関連記事:O2Oとは?事例と成功のポイントについて解説

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日本でOMOは浸透していくのか

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OMOのマーケティング概念は将来的に日本でも浸透していくのでしょうか。ここ数年でPayPayをはじめとするキャッシュレス決済が普及しつつあるものの、マーケティングの面ではいまだにオンラインとオフラインを統合できているとは言い難いのが現状です。ただ、今後の日本が目指す姿として、2018年の第5期科学技術基本計画でサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させた新しい社会の姿である「Society5.0」が提唱されています。そのため、全体的な流れとしては日本でもOMOが今以上に浸透していくと考えられています。

店頭などオフラインなチャネルであってもデジタルを活用したコミュニケーションや買い物は当たり前になりつつあります。移動中にコーヒーをスマホからオーダーしておいて店頭で受け取る、なんてことは全体からするとまだ少数ですが、その仕組自体はもはや珍しくありません。

日本でもスターバックスがMobile Order & Payとしてサービスを提供していますし、後述するOMO先進国である中国のluckin coffeeでは完全にキャッシュレスでセルフピックアップかデリバリーのみと、店頭でもデジタルを前提としたサービスを提供しています。まだ実験段階といった様子ではあるものの、日本でも完全キャッシュレスの店舗は増えつつあります。

OMOが生まれる条件

OMOを提唱した李氏はOMOが発生するには以下の4つの条件を満たす必要があるとしています。

1.スマートフォンおよびモバイルネットワークの普及

オンラインとオフラインの垣根がなくなったのは、インターネットに接続可能なデバイスを常に持ち歩くようになったからです。
日本においてもスマートフォンは普及しているため、この発生条件は満たしていると言えます。

2.モバイル決済浸透率の上昇

モバイル決済の先進国である中国と比べるとまだまだですが、キャッシュレスの文脈でモバイル決済の利用者の増加してきています。
モバイル決済が浸透すると、店頭でのスマートフォンの利用が増え、また購入に関するデータを蓄積できるようになります。
日本においても、この発生条件は満たしつつあると言えます。

3.高品質で安価な幅広い種類のセンサーの普及

IoTが普及すると活用可能なデータが劇的に増え、パーソナライズの精度が格段に向上します。機械の予知保全だけでなく、計測される身体のデータを活用することによる様々なレコメンデーションは、これまでの購買プロセスを一変させます。
現状IoT機器は普及段階にあり、これから増えていくことで様々なシーンで活用されるようになっていくでしょう。

4.ロボット、AIの普及

IoTの普及により活用できるデータ量はこれまでと比べものにならないほど大量になります。これらの大量のデータを処理し、学習し、レコメンデーションなどの方法でパーソナライズされた体験に活用するために必要なものがAIです。またその結果を単なる情報発信だけに留まらない、フィジカルなサービスとして提供するためにはロボットが必要です。
AIによる自動運転技術とロボットは物流を大きく変える可能性があります。また、自身の体調に合わせたオーダーメイドの化粧水を自宅で調合するロボットはすでに登場しています。
これからAIとロボットが普及するにつれ、データを活用した様々な体験が生み出されていくでしょう。

日本版スーパーアプリの誕生

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OMO施策の鍵となるのが、スマートフォンアプリです。消費者のもっとも身近にあるデジタルデバイスだからです。スマートフォンから提供されるデジタル情報を活用したシームレスでパーソナライズされた購入体験の提供こそがOMOの基本となります。

中国がOMO先進国となっているのはキャッシュレスが浸透しているから、とご紹介しましたが、単純なキャッシュレス決済ができるアプリではなく、チャットも、買い物も、送金も、タクシーの配車まで行うことができる「スーパーアプリ」が浸透しているという点もOMOが進んでいる理由のひとつです。利用可能なデータが分断されている状態では、パーソナライズもシームレスな体験の提供も難しいですが、スーパーアプリ内で全て完結する仕組みになっている、あるいはスーパーアプリから提供される情報が利用できる仕組みであれば、多くの情報を活用した購入体験の最適化を実現することができます。

日本でも2019年10月にYahoo!とLINEが経営統合するというニュースが発表されました(執筆時点では、経営統合済み)。Yahoo!はポータルサイトのYahoo!や決済アプリPayPayを持っており、LINEは日本で最も利用者の多いチャットアプリとモバイル決済のLINE Payを運営しています。多くのユーザと多くのサービスを提供している両社がグループとなることで、日本でもスーパーアプリがこれから誕生していくことになります。

PayPayの決済情報、Yahoo!の買物情報をもとに、自社のサービスのうちマッチするものを、位置情報などを活用しながらLINEで最適なタイミングでオファーする、LINE上でモバイルオーダーを取る、といったことができるようになるかもしれません。

スーパーアプリについては以下の記事でも詳しく解説しています。
スーパーアプリとは?特徴や成功事例、提供するメリット・デメリットを解説

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OMOマーケティングを実現するためには

OMOを導入するためには以下のような要素を満たす必要があります。

マルチチャネルを設ける

OMOはオンラインとオフラインを統合することで、顧客に優れた購買体験を提供するのが目的です。多くのチャネルを設けることで、企業は顧客との接点を増やすことができ、活用できるデータを多く収集することができます。

また、顧客との接点が増えることで、顧客と自社の関係性を深める効果も期待でき、ロイヤリティを高めることにもつながります。

データベース・システムの整備

OMOは顧客データや商品データ、売上のデータなど、あらゆるデータが基盤となります。チャネルが多くなることで管理は難しくなりますが、あらゆるチャネルを横断して常に最新のデータを確認できるよう、データベースの管理が必要不可欠です。

スキルを持った人材

OMOを実現するには、データ収集だけでなくデータを分析するといった業務も必要になってきます。そのためスキルやノウハウを持った人材が必要になります。

また、業務の属人化を防ぐために、ノウハウを蓄積するような仕組みも考える必要があります。 

OMOの具体的なマーケティング施策

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OMOはオンラインとオフラインの垣根を意識せず、データをもとにパーソナライズされた顧客体験を提供するという概念です。
ここからはOMOとして具体的に行われている施策についてご紹介していきます。

店頭受取(モバイルオーダー)

位置情報をもとに、チャットでコーヒーのお得なクーポンが届きます。その流れで注文までできます。後は店頭で受け取るだけです。

スマートフォンの情報と、チャット、決済、店頭でのオペレーションまでがデジタルで統合されることで実現できる施策です。

モバイルペイメント

店頭での決済も自社の提供するアプリで行うことができます。これまでのポイントカード代わりだったアプリで決済まで行えるようにすることができます。

モバイルペイメントを普及させることにより、レジの無人化を進めやすくなるだけでなく、電子レシート(スマートレシート)などの購入履歴を活用した様々なサービスの提供、パーソナライズを進めることができます。

自宅配送

ECでは自宅に配送してもらうのは当たり前ですが、近所の店舗の商品を自宅にいながらスマホからオーダーし、自宅に届けるというサービスも提供できます。

いわゆるネットスーパー的な取り組みですが、配送方法・物流の多様化に合わせて提供できるサービスは増えていきます。

店頭で気になった商品のリッチな情報を提供する

店頭で気になった商品のバーコードやQRコードをアプリで読み込んでおくことで、お気に入りのリストに追加したり、購入者のレビューや、様々な情報にアクセスすることができます。

O2Oとして行われていた施策の1つですが、オフラインのチャネルでもデジタルを活用したサービスを提供するという一例です。

データを活用したパーソナライズしたコミュニケーション

中国の平安保険グループでは、単に保険商品を販売するだけでなく、医師に相談したり、病院を予約することができるサービスを提供しています。この行動履歴のデータをもとに、顧客にマッチする保険商品を、顧客の関心が高いタイミングで提供しています。
また、医師への相談サービスにはポイントが必要なのですが、このポイントは歩いた数に応じて付与されます。顧客の健康が促進されるとともに、保険を支払う側のリスクを低減するよくできた仕組みが構築されています。

このように、スマートフォンを起点としたデータを活用した新たな価値提供により、ビジネスを拡大することができるのがOMOの施策です。

OMOの事例

ここではOMO施策が進んでいる中国と米国と国内の事例を紹介します。
OMOの事例についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
関連記事:アフターデジタル時代の施策「OMO」の最新事例をチェック

アメリカ「Amazon GO」

世界一の規模を誇るECサイトAmazonは2016年に新世代の実店舗「Amazon GO」の第1号店を米シアトルにオープンし、2020年7月現在はサンフランシスコやニューヨークなどに計26店舗を展開しています。Amazon GOの店舗ではAmazonのECサイトと同一のアカウントで専用アプリを使ってログインして入店すれば、希望の商品をバッグに入れるだけで店内のセンサーによる読み取りが行われ自動で決済できるレジ不要の店舗です。Amazon Goでの購買履歴とECサイトでの購買履歴は一元管理されますので、Amazon GOで購入した商品をもとにユーザーの好みを分析して、Amazonサイト上でレコメンド表示するといったことが可能になるのです。

Amazon Goに関して、日本では「キャッシュレス決済」「無人店舗」という点がクローズアップされることが多いのですが、OMOという視点からもAmazon Goは非常に分かりやすい事例です。

中国「Tencent」

中国版のLINEともいわれる「WeChat(ウィーチャット、微信)」のアプリで有名なTencent(テンセント、騰訊)は、総合ECコマースのアリババや検索エンジンのBaidu(バイドゥ、百度)と並ぶ中国の大手IT企業です。テンセントはWeChatの関連アプリとして、QRコード決済の「WeChatPay(微信支付)」を提供しており、WeChatPayを活用した飲食業界のデジタル化にも力を入れています。

テンセントがAmazon GOと同時期の2018年に開始したのが、鴨肉加工品を販売する大手ファストフードチェーン「周黒鴨(ツォヘイヤー)」で展開しているスマート決済店舗です。

WeChatに含まれるミニプログラムで事前に顔認証の登録を済ませておき、来店時に顔認証のみでキャッシュレス決済を行うことができます。商品にはバーコードやICタグなどはついておらず、台の上に置かれた商品をセンサーとAIで認識して商品の種類と数を識別するしくみになっていて、決済ではスマホすら不要という徹底ぶりです。

WeChatに含まれる顔認証システムのように、中国では「小程序(シャオチェンシュ)」と呼ばれるミニプログラムが普及しており、大手アプリはミニプログラムで便利な機能を提供することでユーザーの囲い込みを図っています。スマホの位置情報を基にして近くの店舗をレコメンドするミニプログラムもあり、OMOを生かした施策として活用されています。

日本国内 「BEAMS」

セレクトショップとして有名なビームスは、オンラインとオフラインの顧客データの統合・一元管理を実現しています。購入履歴をもとに、パーソナライズされた内容でレコメンド、案内をすることができます。

これらのデータはメールマーケティングや広告のターゲッティングにも活用されており、ユーザはさらにBEAMSの提供する商品が気に入る仕組みを構築しています。

また、店頭受取はもちろん、オンラインでの試着の予約だったり、オンラインで自宅に取り寄せた商品を試着できるようにするなど、ユーザにとって利便性の高い様々な機能を提供しています。

まとめ

オンラインとオフラインの情報を融合するOMOは現代のユーザーの購買行動と非常に相性が良いマーケティング手法です。日本でも近い将来にAmazon GOのような無人店舗が普及していくと考えられています。今後のビジネスでは最新の情報を基に新しい流れを積極的に取り入れていく姿勢が重要になるでしょう。

そしてOMOの入り口となるのがスマートフォンアプリです。スマートフォンアプリを起点としたデータ収集および活用こそが、顧客を虜にする体験の提供のカギとなります。
OMOを実現するためのスマートフォンアプリの活用の方法についてまとめた資料をご用意しておりますので、OMOへの取り組みにご興味があればぜひご覧ください。

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