近年では、リアル店舗以外で商品を購入することが当たり前の時代になりました。
その中でも、Amazonや楽天などのECサイトを利用してオンラインで購入する方がほとんどですが、
最近では「メタバース」と呼ばれる、インターネットの3次元上の経済圏でも商品を購入できるようになってきています。
メタバース空間により、よりオフラインとオンラインの垣根が無くなってきているとも言えるでしょう。
今回はメタバースの基礎的な知識とメタバースを取り巻く環境、そしてメタバースを活用したEC事業者の取り組み例について解説していきたいと思います。
今後、新しいデジタルチャネルを駆使してECの売上を上げていきたい、最新のECトレンドについて抑えておきたいというEC事業者の方はぜひご一読ください。
メタバースとはなにか
メタバースは、インターネットの3次元空間で提供されるサービスを指します。
メタバースの語源は、
「meta(メタ)=超」、「universe(ユニバース)=宇宙・空間」を組み合わせて作った言葉で、
メタバースという言葉自体が注目され始めたのは、2021年の後半ごろからです。
ただ、メタバースと定義できるもの自体はもっと前から存在はしていました。
例えば、アバターがオンライン空間で、別のアバターと会話をしたり、アバターの着せ替えを行ったりするようなゲームを経験したことがあるという人も少なくないでしょう。
メタバースは大手IT企業にも注目されている技術でもあり、実際にフェイスブック社が2021年10月に社名をFacebookからmetaへ変更しています。
GAFAMの1つである企業が、社名を変更してまでも「メタバース」へ大きく事業のかじ取りをした点も踏まえて、今後に期待できる技術といえるでしょう。
主要なプラットフォームとは
メタバースには、いくつかの主要なプラットフォームが存在します。
今回はそれぞれの特徴について解説していきます。
Roblox(ロブロックス)
日本ではまだあまり浸透していないですが、
全世界では月間のアクティブユーザーが2億人(2021年4月時点)を超える大手プラットフォームです。
2021年の3月に株式に上場した際は、時価総額が4兆円を超えました。
ロブロックスの特徴は、様々なゲームをユーザーが作り、
それを他のユーザーがプレイできる仕組みにあります。
具体的には、
・人生シュミレーションゲーム
・FPSシューティングゲーム
・タイピングゲーム
など、種類は多岐に渡ります。
また、ロブロックスのもう1つの特徴として挙げられるのが
「大手ブランドとのコラボレーション」です。
例えば、大手ファッションブランドのNIKEがRoblox上に
「NIKE LAND」という空間を作って、陸上のミニゲームができるようになっています。
他にもファッションブランドのVansは「Vans World」という空間で、
スケートボードができるゲームを提供しています。
こういったゲームで手に入れたコインをアイテムに変換し、アバターに装着させることでスキルが上がるような仕掛けも用意されています。
フォートナイト
フォートナイトは2017年から公開されているEpic Gamesが提供するオンラインゲームです。
「unreal Engine」というゲーム制作ツールを元にフォートナイトが作られており、メタバースの中でも爆発的な人気を誇っています。
フォートナイトの特徴としては、
・オンラインで100人同時プレイができる
・ユーザーが新しい土地を作れる
・観客がアバターとして観戦できる
など、自由度が高い点です。
また、フォートナイト内では様々なイベントも行われていて2020年8月にはメタバース内での「ライブ」として日本の人気アーティストである米津玄師氏がバーチャルライブを行っています。
ユーザーもアバターとなって、バーチャル空間でライブを楽しむことができるのも、フォートナイトの1つの特徴ともいえるでしょう。
Decentraland(ディセントラランド)
ディセントラランドは2015年から開発が始まった古参のクリプト系メタバースのサービスです。
メタバース内の土地の売買でよく話題にあがるプラットフォームでもあり、
2021年下旬にはDecentraland内の土地が1億円以上で売買されたという経緯もあります。
Decentralandの特徴は2点あります。
1点目は、アイテムなどの専用のマーケットプレイスが存在しているということです。
Decentraland内で利用できるアイテムが購入できるのはもちろんのこと、他のメタバースに比べ、メタバース内の経済圏が確立してきているといえます。
2点目は、作れる土地の数の上限が決まっているという点です。
他のメタバースの場合は、「自由かつ無制限に」土地などのサービスやコンテンツを作ることができますが、Decentralandでは作れる土地の数に制限を設けることで土地の「希少性」を生み出しています。
そうすることで、メタバース空間にいっても土地がありすぎてかえって過疎化してしまうこと、むやみに作られた不要な土地ばかりになってしまうことを防ぐことができるのです。
なお、日本でもDecentralandを活用したプロジェクトは行われており、アソビシステム株式会社、ParadeAll株式会社、Fracton Ventures株式会社は、メタバース内の文化都市「MetaTokyo(メタトーキョー)」を構築。
そして、2021年11年にはMetaTokyoで日本初のジェネラティブアートに着目したポップアップミュージアムや、国内最大級のNFTアートプロジェクトを行いました。
このように海外のみならず、日本国内でも認知が拡大しているプラットフォームです。
ECの活用事例について
ここでは、メタバースを活用したECの事例についてご紹介していきます。
今後、新たにデジタルチャネルを拡大させて売り上げの増加を図りたいという事業様はぜひ参考にしてみてください。
パル
株式会社パルが運営するファッション通販「パルクローゼット」が、メタバース空間であるバーチャル渋谷 au5Gハロウィーンフェス2022で展示会を開催しました。
リアルな3Dデータを含む25体のコーディネートを見ることができ、バーチャル空間の中でもリアル店舗でお買い物をしている体験ができます。
なお、気に入ったコーディネートは通販サイトで購入可能です。
また当日参加したユーザーには、通販サイト「パルクローゼット」でも購入できるパーカーなどのアイテムがアバターに付与されるので、ユーザーの購買意欲の向上にも繋がります。
アダストリア
ファッションブランドを展開する株式会社アダストリアも、
メタバース業界に進出する企業の一つです。
2021年7月23日~8月21日に開催された阪急阪神ホールディングス主催「JM梅田ミュージックフェス2022」のメタバース空間に出店、同社のブランド「RAGEBULE」「HARE」のアイテムをアバターにし、来場者に提供した。
アバターは提供されたアイテムを利用して、メタバース空間を楽しむことができる。
同社は2025年の成長戦略として、「デジタルの顧客接点・サービス拡大」を掲げており、メタバース領域にもより力を入れていく姿勢を見せています。
コクヨ
文房具を取り扱うコクヨ株式会社は、凸版印刷が提供するサービスであるメタバースモールアプリ「メタバ」でバーチャル店舗の「KOKUYOショップ」をスタートしました。
コクヨショップでは、アバターが自由にドットライナー型の店内を移動でき、3DCGで制作されたコクヨで取り扱っている商品をリアルに再現しています。
メタバース空間で売られている商品を選択し、ECサイト上で商品を購入するということも可能になっています。
「メタバ」内で、音声会話やテキストでのチャットも行うことが可能なので、メタバース空間でのバーチャルな接客を行うこともできます。
今後のメタバース×ECにおける展望
今回はメタバースにおけるECの活用について解説しました。
コロナ禍でECなど非対面での売買が増えた今、新しいデジタルチャネルとしてメタバースが期待されます。
ただメタバース市場は新規領域のため、メタバース空間内で購入したアイテムの取り扱いにまつわる法整備や、セキュリティなど課題はまだまだあると考えられます。
とはいえ、様々な企業がメタバースを注目している今、市場もどんどん拡大していくとみられています。
今後、自社の新たな販路拡大としてメタバースを検討してみてはいかがでしょうか?
- カテゴリ:
- EC市場・トレンド
- キーワード:
- システム