一昔前まではECサイトを構築する際には、自社で物理サーバを調達、あるいはECサイト専用のクラウドサービス(SaaS)を活用することが一般的でしたCサイトを構築する際には、自社で物理サーバを調達、あるいはECサイト専用のクラウドサービス(SaaS)を活用することが一般的でした。
しかし、最近ではAWS(Amazon Web Service)などのパブリッククラウドを活用してECサイトを構築するケースが増えてきています。クラウド基盤(IaaS)を活用するこの手法は従来のハウジングやホスティングと比較し、コスト削減や柔軟さといった様々なメリットを享受できます。
しかしながら、AWSなどのパブリッククラウドを利用するにあたって、セキュリティ面での不安や、本当にコスト削減になるのかという疑問を持つこともあります。特に経営層がクラウド基盤に否定的な場合、説得するのは一苦労でしょう。
そこで今回は、AWSなどのパブリッククラウド基盤でECサイトを構築する場合のメリットについて紹介します。
AWS上でのECサイト運用と、クラウドサービス(SaaS)を利用することの違い
AWSなどのクラウドプラットフォーム上にECサイトを構築・運用することと、クラウドサービスを利用してECサイトを構築・運用することは、同じようで違います。
AWSとはいわゆるIaaS/PaaSといったサービスで、サーバリソースを、インターネット経由で利用できるサービスです。
本来社内に設置するサーバを、設置せずに利用すると考えるとイメージしやすいでしょう。ユーザはAWS上に自由にソフトウェアをインストールして、システム環境を構築することが可能です。もちろん、ECサイトに限らずあらゆる業務システムを、AWS上で構築することができます。
一方クラウドサービスはASPやSaaSとも呼ばれ、予め構築されたEコマースシステムを、インターネット経由で利用します。皆さんが普段利用しているGmailやDropBoxといったものが、まさにクラウドサービスです。
月々の契約料金を支払うことで、社内にインフラを持つことなく、ソフトウェアをインストールすることもなく、Eコマースシステムをサービスとして利用することができます。
AWS上でECサイトを構築・運用することと、クラウドサービスを利用してECサイトを構築・運用することは明確に違うので、まずはこの部分について理解しておくことが大切です。
AWS上でECサイトを構築・運用するメリット
それではAWSなどのクラウドプラットフォーム上でECサイトを構築・運用する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?
最も大きなメリットは、サーバリソースを必要な時、必要な分だけ柔軟に調達出来ることです。構築時に数年後のピーク需要を予測した大規模なインフラを整える必要なく、かつ自由度の高いEコマースシステム・ECサイトを構築できることにあります。
ECサイトを構築するにあたって、クラウドサービスを利用しない場合には、パッケージ製品を導入するか、OSS製品を導入するか、フルスクラッチ開発によって構築するか、という3つの方法があります。いずれも自社でサーバなどを用意することを前提としたオンプレミス環境での運用が考えられます。
これらをオンプレミス環境でなくパブリッククラウドであるAWS上で運用する場合、オンプレミスよりも初期導入コストを抑えつつ、オンプレミスと同等のECサイト構築・運用環境が整えられるのです。
サーバ運用コストに関してはどうでしょうか?
AWSなどクラウドプラットフォームの料金体系は“使った分だけ費用が発生する”が基本です。料金が時間単位で発生するかトラフィック単位で発生するかはサービスによって異なりますが、“使った分だけ発生する”という基本は変わりません。
AWSにはもう一つメリットがあります。それは容易なスケールアップ・スケールダウンにあります。
AWSはそもそもサーバリソースをクラウドサービスとして利用するので、CPU・メモリ・ストレージ・ミドルウェアといった構成を、ユーザ企業が自由に選択することができます。このため、ECサイト導入後も容易にスケールアップ・スケールダウンが行えるのです。
ECサイトを運用し、継続したPDCAサイクルを行えば徐々にアクセス数が伸びていきます。順調にECビジネスが拡大していくと、当初調達したサーバリソースが不足してくることが予想されます。
オンプレミスの場合でもコストをかけることでサーバリソースが不足しそうなタイミングでスケールアップやスケールアウトは可能ですが、そのアクセス増がキャンペーン施策などによる一過性のものである場合、キャンペーンの終了に伴いECサイトのアクセス数が低下しますので、結局スケールアップやスケールアウトによってかかったコストが無駄になってしまいます。
一方でAWSではスケールアップもスケールダウンも容易に実現できるので、ECサイトのアクセス数に応じて都度、サーバリソースを変更することが可能です。
クリスマス商戦などのキャンペーンによって急激にトラフィックが増加するようならスケールアップあるいはスケールアウトすることで対応し、キャンペーン終了後はスケールダウンするといった対策が取れます。
クラウドサービス(SaaS)を利用してECサイトを構築・運用するメリット
一見、AWSなどのクラウドプラットフォームと同じようなメリットがあると考えられますが、クラウドサービスのメリットは他のところにあります。その代表的なメリットが、短期導入と低コスト導入です。
クラウドサービスは、ベンダーが提供するEコマースシステムをインターネット経由で利用し、ECサイトを構築します。
その性質上、社内インフラを整えることはもちろん、ソフトウェアのインストールといった作業も必要ありません。ユーザ企業は月々の契約料金とインターネット接続環境、PCさえあれば迅速に利用することができます。
このためECサイト構築期間が短縮化し、短期導入が実現することで人件費がかからないので、導入コストを削減できますサイト構築期間が短縮化し、短期導入が実現することで人件費がかからないので、導入コストを削減できます。
もう一つのメリットは、Eコマースシステムの運用負荷が大幅に軽減することです。クラウドサービスによるEコマースシステムの運用は基本ベンダーが行います。ユーザ企業はそれをインターネット越しに利用するだけなので、サーバ監視やシステム運用が不要となります。
ただし、機能面や運用方法などすべてはアプリケーションを提供するベンダーに依存することを理解する必要があります。自社戦略に応じたECサイト構築や運営ができない場合もありますので一般的には中小企業のためのものと考えた方が良いでしょう。
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パブリッククラウド活用時のセキュリティはどう考える?
AWSなどのパブリッククラウドを利用する上での懸念点といえば“セキュリティ”です。
システムは社内でなく社外で稼働し、データ管理もクラウド上で行われます。このため、第三者によるデータ傍聴や、情報漏えいといったセキュリティリスクに不安を抱くユーザ企業も少なくありません。
しかし、昨今そうした不安を払拭するほど、AWSやクラウドサービスのセキュリティは強化されています。
AWSを例に挙げると、世界16のリージョンと44のアベイラビリティーゾーンで運用されており、ユーザ企業のプライバシーを保護するため第三者機関からのセキュリティ認証を数多く取得しています。(2017年8月現在)
実際にAWSと同等のセキュリティ基準を満たそうとすると膨大なコストがかかります。社内でシステム環境を構築するよりも、AWSを利用したほうが、厳しいセキュリティ要件にも対応できるといったことがほとんどでしょう。
そして、次に考慮するべきは重要なことがEC構築パッケージのセキュリティです。
どんなにインフラのセキュリティが強固でもアプリケーションが脆弱であれば意味がありません。
オープンソースやフルスクラッチで開発した場合にはセキュリティ確保はすべて自己責任になります。EC構築パッケージの場合には、第三者機関でしっかりとセキュリティが保証された製品を選定することが重要です。 [RELATED_POSTS]
まとめ
業務システムをパブリッククラウド上に構築することや、クラウドサービスを利用することは、今や当たり前です。ECサイト構築においても例外ではなく、多くのECサイトがAWSなどのパブリッククラウド上で構築されるようになりました。
皆さんもECサイト構築の際は、ぜひAWSなどのパブリッククラウド基盤の利用をご検討ください。オンプレミスとのメリット・デメリット比較をしっかりと行い、自社にとって最適な構築方法を採用しましょう。
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