EC市場は成長しており、数多くの業界でEC化が進んでいます。
それは食品や飲料の分野においても、例外ではありません。これは、新型コロナウイルスの感染拡大により、巣ごもり需要から食品や飲料のECサイトが身近なものになったという背景も、後押ししています。
しかしながら、さまざまな問題点が影響し、食品・飲料のEC化は、ほかの業界に遅れをとっている状況です。
この記事では食品・飲料のEC化の現状と課題、ECサイトを構築するメリットやポイントをご説明します。これから食品・飲料のECサイトを構築する場合は、参考になる内容となっていますのでご一読ください。
食品・飲食のEC化率は?
経済産業省が公開した「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査))(※)」の報告書によると、食品・飲料のEC化は徐々に高まってきています。
同報告書では、物販系分野のBtoCにおける市場規模が公開されており、酒類を含む食品・飲料のEC化率は、2018年が2.46%、2019年が2.89%となっています。市場規模は増えていますが、他の業界と比較するとまだまだEC化が進んでいないといえるでしょう。特に、物販系カテゴリーでは、事務用品や文房具のEC化率が40%程度、生活家電・AV機器、PC主変機器のEC化率は30%程度ですので、食品や飲料のEC化率の低さが浮き彫りになっています。
(※)参考:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)
食品・飲料のEC化率が遅れている理由とは?
食品や飲料のカテゴリーはリアル、ネットを合計すると物販系では市場規模が大きいものです。しかし、先述した通り、EC化が活発に進んでいるとはいえません。その理由は、一体何なのでしょうか。
ここからは、食品・飲料のEC化率が遅れている理由をご説明します。
「生鮮食品」の扱いづらさ
食品関係の要因をみていくと、生鮮食品の扱いにくさがあります。特に生鮮食品は食品市場においてもボリュームを占めています。しかし、生鮮食品は長期的な保存ができません。
製品ごとの品質も一定ではないため、ECサイトで扱いにくいわけです。生鮮食品が食品関係のEC化の足かせになっていると考えてもいいでしょう。しかし、保存がきく食品であれば、パッケージ方法によって鮮度を保って販売できることがあります。中には、保存しやすい食品を取り扱うECサイトで大きな利益を確保できている企業も存在します。
とはいえ、かける費用との兼ね合いで採算がとれる食品で勝負することが求められるため、食品のECサイト運営に踏み出せない場合も多いでしょう。
実店舗の利便性
食品や飲料のECサイトが普及しない理由は利便性も関係しています。一般的に、ECサイトはパソコンやスマートフォンから注文できるなど、ユーザーにとって利便性が高くなっているのですが、食品・飲料の場合、実店舗のほうが利便性が高いケースも多いといえます。
購入までのプロセスを考えても食品や飲料ならば、身近な実店舗を巡って安いお店で買い物ができます。また、食品を実際に手に取って鮮度を確認することができませんが、ECサイトを利用すると、手にとっての比較はできず、送料がかかるなどのデメリットも考えられるでしょう。
このように、食品や飲料に関しては実店舗のほうが利便性が高く、ECサイトを利用するユーザーも限られてしまうといえるのです。
利益率の低さ
食品のECは客単価が低いため、運営コストに見合う利益を出すことが難しいです。利益率の低さから食品・飲料のECサイトを構築するケースが少なくなっています。
ECサイトはユーザーにとって便利な面が多いわけですが、運用側はバックエンド業務として在庫管理や受発注管理、ピッキングといったさまざまな業務があります。そのため、人件費やシステム運用のランニングコストもかかります。
それに加えて昨今の物流業界のドライバー不足もあり、配送コストの上昇も起きています。運用コストがかかっても客単価が低ければ維持しにくく、ECサイトの展開に大きな課題となっています。
食品・飲料のECサイトを構築するメリット
前項でご紹介したように、食品・飲料業界の課題が影響してEC化が遅れています。しかしながら、EC化することでメリットもあります。ここでは食品・飲料のECサイトを構築するメリットをご説明します。
全国各地に顧客をもてる
ECサイトの構築により、日本中を商圏にして顧客を持つことができます。実店舗であれば、商圏は店舗周辺に限られてしまいますし、テナントを借りればそれだけ固定費も発生します築により、日本中を商圏にして顧客を持つことができます。実店舗であれば、商圏は店舗周辺に限られてしまいますし、テナントを借りればそれだけ固定費も発生します。
しかし、ECサイトならば企業の拠点がどこにあっても、北海道から沖縄、離島まで日本全国が商圏となり、マーケットが格段に広がります。
また、ECサイトは24時間利用可能であるため、ユーザーが希望する時間に買い物できる点もメリットでしょう。
デジタル上のコミュニケーションチャネルになる
スマートフォンを持っていないお客様がほとんどいない事に対し、食品・飲料業界はデジタル上のコミュニケーションが十分にできていないと言えます。SNSを使うことで告知を手軽に行うことができますが、SNS上ではお客様のメールアドレスも住所も名前も得ることができません。ECサイトがあれば、SNSの告知から購入してもらうまでの導線をスマートにできるだけでなく、お客様の情報を得ることができます。その情報を元に、そのお客様にマッチした情報をパーソナライズして提供することもできるようになるため、自社ECサイトの構築は単なる販売チャネルのデジタル化以上の意味を持つようになってきています。
感染リスクの低減
2020年から国内や世界で感染が拡大しているのが新型コロナウイルスです。感染対策のために、外出を減らす働きかけが続いています。そのような背景もあり、生活に必要な物品の購入をECサイトでおこなう人が増えました。
MMD研究所が実施した「2020年5月新型コロナウイルスにおけるEC利用動向調査(※)」によると、2020年3月以前のECサイトの利用頻度は「2カ月に1回未満」が最も多い27%を占めました。
しかし、2020年4月~7月になりと「2カ月に1回未満」の利用者はおらず、「月1回」が26%台で最多回答となっています。以降の期間においても「月1回」のECサイトの利用割合が最多となりました。
同調査からECサイトの利用が日常化しており、多くのユーザーが人との接触を避けて感染リスクの低減にとどめていることが浮き彫りとなりました。
(※)参考:コロナ禍での総合ECサイト利用動向から見る、EC市場成長の可能性|MMD研究所
食品・飲料のECサイトを構築するときのポイント
ここからは、食料・飲料のECサイトを構築するときのポイントをご説明します。
以下の4つに留意して、ECサイトを構築を実施してください。
リピーター獲得施策を実施
収益が安定するECサイトを築くには、リピーター獲得施策の実施が重要です。マーケティングでは有名ですがパレートの法則によると20%のリピーターが売上げの80%を生み出すといわれています。
また、5:25の法則では5%の顧客離れを改善すると利益の25%が改善するとされています。さらに同じ商品を売るにしても新規顧客に対して売る場合は、リピーターよりも5倍程度のコストがかかるという見方(1:5の法則)もあります。
このような知識からもリピーターの獲得は大事であることがわかります。では、どのようなリピーター獲得施策を実行すればよいのでしょうか。
まずは、再度利用したくなるような訴求が必要です。クーポンの発行やポイントサービスの提供などは、代表的な施策ですが、値引き系やポイント付与率アップなどの施策を乱発してしまうと、それをやらないとリピートしてくれないといった結果となるリスクがあります。ですので、「なぜうちのサイトの商品が良いのか」をお客様の興味・関心に沿ってコミュニケーションを取ることが重要です。
顧客にあわせてダイレクトな情報発信も効果的です。メルマガやメッセージ配信により定期的な情報発信をおこなうと、顧客がアクションに移す可能性が高まります。
最近では、SNSによる顧客へのアプローチも有効ですので、とり入れてみてください。
物流の強化
リピーターの獲得や顧客満足度を向上させるには、物流の強化も必要です。ECサイトの場合、さまざまな食品や飲料を幅広く取り扱い、在庫を少なくすることが多いです。このケースでは、幅広い商品を扱うため在庫管理が複雑になります。
また、配送時間を指定するユーザーも多いため、ピッキング作業にはスピード感が求められます。包装やラッピングは小口配送がメインになるため、マンパワーが必要です。仮にユーザーのランク制度を導入しているならば、グレードにより梱包に工夫や同梱物のカスタマイズも必要でしょう。
このように、出荷作業には非常に手間がかかります。自社ですべての工程をこなすには、大きな負担が予想されるため、アウトソーシングをして物流強化を図ってみてください。
UI/UXを工夫する
ECサイトのUIやUXにも工夫が必要です。
UIとは「User Interface」を意味しており、ユーザーが目にするECサイトのレイアウトや画像、文字のフォント、メニューボタンの操作性などが含まれます。
また、UXは「User Experience」の略称です。こちらは、ユーザーが商品を通じて得られる体験を意味します。UXはECサイトを利用して「この食品を購入したい」といった、ユーザーがどれくらい好印象をもったかを示します。
UIはUXに含まれており、UIの工夫や改善がUXに影響を与えます。特に食品・飲料のECサイトは性別に関係なく、幅広い年齢層のユーザーが利用します。誰でも利用しやすくシンプルなデザインや使い勝手にすることが大事です。
「構成がわかりやすい」「コンテンツが整理されていて読みやすい」「ストレスなく使いこなせる」など、ユーザビリティを意識しましょう。
食品・飲料のECサイト例
この項では食品・飲料のECサイトの事例を2つ、ご紹介します。
Amazonフレッシュ
「Amazonフレッシュ」はAmazonが展開するECサイトです。生鮮食品、牛乳、卵、豆腐など鮮度を保つのが難しいと思われる食品を中心に、17万点以上を扱っています。配送エリアは東京都の一部に限られていますが、Amazon川崎フルフィルメントセンターが拠点です。
この拠点では6つの温度帯で食品を管理しているため、食品ごとに最適な温度が保たれます。さらに、鮮度や賞味期限保証サービスも展開しており、ユーザーの不安を取り除く努力をしています。
楽天西友ネットスーパー
「楽天西友ネットスーパー」は、2018年10月にオープンしました。全国展開されている西友の店舗を利用できるため、多くの人々が活用しています。千葉県柏市にネットスーパーの物流拠点を設けており、生鮮食品の配送も可能になりました。
取扱商品数は最大2万点で、Amazonフレッシュよりも少ないですが、西友は全国17都道府県で対応しているため配達範囲の広さが特徴です。楽天ポイントのユーザー層がポイント獲得目的で利用しており、西友との相性のよさが伺えます。
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これから食品・飲料のECサイトを構築するならば、弊社の「SI Web Shopping」をご検討ください。
SI Web Shoppingは、ECサイト構築パッケージとして1996年に誕生しており、これまで1,100サイトに導入いただいております。これまで培ってきたノウハウで売上げ向上に最適なECサイトの提案が可能です Shoppingは、ECサイト構築パッケージとして1996年に誕生しており、これまで1,100サイトに導入いただいております。これまで培ってきたノウハウで売上げ向上に最適なECサイトの提案が可能です。
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その他、月間数千万PV、数百万点の商品点数、数十万人の顧客数などの大規模なECサイトの構築もでき、開発会社に依存しないカスタマイズも可能です。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事では食品・飲料のECサイトについてご説明しました。食品ECサイトは本記事でご紹介したような課題から運用面で難しさがあります。しかしながら、Amazonは2017年から生鮮食品を含む食品の取り扱いをスタート、2018年には楽天と西友が共同運営する楽天西友ネットスーパーを立ち上げました。
今のところ大幅なEC化が進んでいない食品・飲料業界ですが、今後はEC化率がますます伸びていくことも予想されます。今後、ECサイトを構築予定で開発にお悩みでしたら弊社までご相談ください。
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