EC担当者が知っておきたいRFIDと適用領域

 2019.12.16  株式会社システムインテグレータ

ECサイトでは利用者の行動を追うことで、「よく閲覧されている商品」や「1度カートに入れたけれど買われなかった商品」などのデータを簡単に取得できます。商売をする上でこうした情報を取得できることは、販売分析で商品ごとの強み/弱みを把握できますし、利用者ごとにパーソナライズされた情報を提供することでマーケティングへと繋げることもできます。

「実店舗でもそんなことができたらなぁ…」と一度は思ったことがあるのではないでしょうか?これを実現する可能性を秘めているのが「RFID」と呼ばれる技術です。

EC担当者にとっては無関係と考えている方もいるかもしれませんが、RFIDの活用範囲は日に日に拡大しており、ECサイトにおいても大きな効果が期待できます。本稿では、そんなRFIDについて解説していきますので、気になる方はぜひ参考にしてください。

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RFIDとは?

RFIDは「Radio Frequency ID(Identification)」の略であり、電子タグの一種です。商品に付けられたタグといえばバーコードが記載されており、レジに付属しているハンディスキャナーで読み取ると、商品情報が表示されて価格計算や目的の作業を行えるというものですね。これらの技術は、販売時や、在庫の棚卸などで利用されています。このタグを電子的なものに作り替えたのがRFIDです。

何ができるかというと、まず「非接触でのデータ読み書き」が可能です。通常のタグも非接触といえばそうなのですが、スキャナーの読み取り範囲をタグに近づける必要があります。それに対してRFIDは対象のタグを専用機器に近づけるだけで読み取れるので、通常のタグ以上に自由度が高く、読み取り範囲が広くなっています。

身近な例でいえばSuicaなどの交通系ICカードが該当します。SuicaにはRFIDが内蔵されており、そこに読み込まれている情報(残高、定期区分など)によってカードを利用できます。カード時代にバーコードはなく、専用端末にカードを近づけるだけで改札を抜け、買い物もできますね。原理はこれと同じです。

そしてもう1つの特徴は、「複数のタグを一括で読み取ることができる」ことです。通常のタグではスキャナーを使って1つ1つ読み取っていくのに対し、RFIDでは専用端末を近づけるだけで1度に複数のタグを読み取ってくれます。

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RFIDの種類

一口にRFIDといってもその種類はいくつかあります。通信方式/周波数帯/アクセス方式/リードライト方式の4項目から、その種類をご紹介します。

通信方式

電磁誘導方式

コイル型のアンテナを使い、専用端末とタグの間に磁界を発生させ、その磁界を媒体として情報のやり取りをします。専用端末からタグに電力供給するためバッテリーは不要です。通信距離は1mにも満たないものの、木材やプラスチックガラスや紙などの非伝導体や水の影響を受けにくいのが特徴です。

電波方式

平板型のアンテナを用いて放射電磁波により、専用端末からタグに電力供給と情報の転送を行います。電波方式によるRFIDはタクティブタグとパッシブタグに分かれ、通信距離は2m~5mと離れた距離でもタグを読み取れます。

周波数帯

LF帯

この周波数帯は他のものに比べると使われてきた歴史が長く、車のキーレスエントリーなどでも使われています。電磁誘導方式によく採用されています。

HF帯

LF帯同様に電磁誘導方式に採用されており、通信距離は同程度になります。違いは小型化がしやすい点です。Suicaや電子マネー等もHF帯を使ったRFIDの一種です。

UHF帯

電波方式で通信を行い、通信距離が5m前後あるので在庫管理や検品作業など、一括読み取りを必要とするシーンでよく使われています。

マイクロ帯

RFIDとしてはあまり普及していない周波数帯です。電子レンジやWi-Fiと同様にISMバンドを使うため、電波干渉が起きやすく通信距離が短いという難点があります。

アクセス方式

リードオンリー型

読んで字のごとく読み取り専用のアクセス方式であり、タグ情報が固定化されているので書き込みができません。特定の情報とリンクさせるのが主な目的なので、データが固定的なため独自性を保てる利点があります。

ライトワン型

1度のみ書き込みが可能なアクセス方式であり、その後は読み取り専用になります。メーカーが工場から商品を出荷する際などに使われることが多く、商品ごとの管理に活用されます。

リードライト型

何度も読み書きができるアクセス方式であり、主にSuicaなどのICカードに使われています。他のタグにRFIDに比べるとややコスト高になります。

読み取り方式

タグトークファースト型

専用端末から電波を受信した際に、応答して情報を送信するのが特徴です。アンチコリジョンという技術により、複数のタグと通信しても衝突を起こさないため、一括読み取りが可能になります。

リーダートークファースト型

専用端末から送信命令を受信すると情報を送信するのが特徴です。送信命令があるまでは情報が送信されないので、タグの通信を制御できる利点があります。リーダートークファースト型でも範囲内にある複数のタグを読み取ることができます。

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ECにおけるRFIDの活用シーン

RFIDの活用シーンは日々拡大しており、現在では大手小売業を中心にさまざまな取り組みが展開されています。中でも特に多いのが「在庫管理の効率化」にRFIDを活用することです。

ECサイトはインターネット上に存在する仮想的な店舗なので、在庫の実物は倉庫や店舗に存在しています。近年店舗の在庫情報もECサイトに表示させたい、ときにはEC倉庫には在庫がなくても実店舗に在庫があるのであればその在庫を引き当てて販売できるようにしたいというニーズが増えてきました。実現するにあたってのシステム的な難易度は、在庫情報を連携させて表示させること自体は難しくないので高くはないのですが、たくさんのお客様が来店される実店舗の在庫を限られた人的リソースで正確に管理することはなかなか簡単には行きません。RFIDを活用し、実店舗の在庫管理を効率化することができて初めて正確な実店舗の在庫連携ができると言えます。

商品ごとに電子化されたタグが付けられていれば、今まで棚卸作業にかかっていた時間を圧倒的に短縮し、人件費削減と在庫管理効率化が行えます。とあるアパレルブランドでは、RFIDを取り入れたことで毎月200人時(10人で20時間かかる作業)を費やしていた棚卸作業が、たった6人時(3人で2時間)で終えられるようになったそうです。このことだけでも、RFIDを取り入れるとどれほどの効果を生むかが分かります。

ただし、「新しい技術の導入」にはそれなりにコストもかかります。RFIDを導入する際は、関連特許に対して1個あたり1.5円を米国に支払うことが定められているので、国内ではそれ以下の価格で購入することが難しいとされています。一般的には2.5円~10円程度で販売されているものが多く、このほか専用端末購入やシステム導入の費用も重なることになります。

長期目線で見れば多くのメリットを生み出すのがRFIDですので、一度初期投資費用と運用費用、それから導入効果を試算してみるのもよいかと思います。

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