ビジネスの世界では耳にすることが多い「KGI」「KPI」という指標。
言葉を聞いたことはあっても、その意味を正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。
企業によっては単なる「目標」という意味合いで使用されていることもあります。
今回はそんなKGIとKPIの要点を詳しく解説するとともに、ECビジネスにおけるKGIとKPIの押さえておきたいポイントについても見ていきます。
「KGI」と「KPI」の正体
まずは、今回のメインテーマであるKGIとKPIについて、それぞれの言葉の意味を詳しく解説していきましょう。
KGIとは
「KGI」はKey Goal Indicatorの頭文字からなる言葉であり、日本語では「重要目標達成指標」と訳されることがあります。
ごく簡単な言葉に換えれば、「目標数値」と同じ意味になるでしょうか。
KGIは「ビジネスの最終目標を定量的に評価できる指標」でなければならず、設定する際には「具体的な数値で示せる目標にすること」が肝になります。
たとえば、「1年後までに売上30%アップ」や「半期で利益率を40%に改善」といった目標の達成を客観的に判断できるような具体的な指標が必要です。
KPIとは
「KPI」はKey Performance Indicatorの頭文字をとった言葉で、日本語では「重要業績評価目標」などと呼ばれます。
KGIが「最終結果に関する指標」であるのに対して、KPIは「途中経過における目標の達成度や進捗を測るための指標」です。
会社としての目標はあるものの、組織において具体的に何をすれば目標に貢献できるのか曖昧なままになってしまうケースも少なくありません。
目標達成のために解決すべき課題をクリアにし、その達成度合いを測るのがKPIです。
KGIと同様、客観的に判断できる数値化された目標を定めることが大前提となります。
ちなみに、KPIを設定する際には以下の項目をすべて網羅することが必要とされています。
- 明確性(Specific)
- 計量性(Measurable)
- 現実性(Achievable)
- 結果指向または関連性(Result-oriented or Relevant)
- 適時性(Time-bound)
ECビジネスにおけるKGIとKPIとは
KGIとKPIという言葉の意味は確認できたかと思います。
では、実際にビジネスの現場に落として考えたとき、どのような意味になるのでしょうか。
今回はECサイトを運営するにあたり、「小売業の経営視点」と「Webサイトの運営視点」、それぞれについて考えてみます。
「小売業の経営視点」でのKGIとKPI
小売業という観点から考えると、やはり結果として分かりやすいのは「売上」ではないでしょうか。
KGIの例でも紹介したように、「○年(○ヶ月)で売上○%アップ」という数値目標は最も分かりやすく、客観的に判断しやすいからです。
KGIの指標は、必ずしも売上金額でなくても構いません。
具体的に利益率が問題になっているのであれば、利益率にフォーカスしてKGIを設定するほうが効果的なケースももちろんあります。
そして、KGIに設定した指標をクリアするために“中目標”にあたるKPIを設定します。
売上アップのために「リピート率を○%アップさせる」といった目標を設定し、そのために具体的にどんなアクションをするのかを立案しましょう。
たとえば、「○月までにSNSからの流入数や拡散数を○倍にする」「半期で広告からのCV(コンバージョン)を○%アップする」といった内容が具体的な例として考えられます。
「Webサイトの運営視点」でのKGIとKPI
次に、Webサイト運営という観点からKGIとKPIを考えてみましょう。
Webサイト解析において分かりやすい項目の一つに「PV(ページビュー)」があります。
ECサイトにおいてページビュー数をKPIに設定しているケースは多いように思いますが、果たして本当にページビュー数の増加は売上につながるのでしょうか。
一般的には、ECサイトのページビューが増えればユーザーの流入が増え、購入者が増えて売上アップにつながっていくと考えられがちです。
しかしここで注意しなければならないのは、ECサイトのページビューには「偏り」が生じるケースがあるということ。
目玉商品や在庫が多い商品などの「フロント商材」に意図してページビューが集まっていたり、そのフロント商材の売上につながっていたりすればいいのですが、そうでなければページビュー数が売上に貢献しているとはいえません。
総合店にはいろいろなニーズを持った人が訪れます。
ニッチな商品とそうでない商品では、ページに訪れる回数も購入率も違うはず。
ページビュー数をECサイトのKPIにするなら、ページビュー数と商品の売上が本当にリンクしているかを十分に精査する必要があります。
ECサイトのKGIは基本的に「経営視点」と同じで、売上アップや利益率アップに関するものになるでしょう。
ECという事業の成功と失敗を左右する柱がECサイトだからです。
ECサイトのKPIとしては、記事からのCVR(コンバージョン率)アップ、リピート購入率アップ、客単価アップなどが考えられます。
KGIとKPIの設定に関する重要なポイント
ECサイトの運営において、KGIとKPIを設定する際には具体的にどのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。
いくつかのポイントに分けて解説していきます。
定量的に測定可能な目標か
サイト運営担当者は事業責任者に、事業責任者は経営陣に、「誰にでも理解できる形」で結果を報告することが求められます。
そして事業責任者や経営陣は、その結果を受けて目標や目標までのプロセスが正しかったのかを判断・評価しなければなりません。
そのため、KGI、KPIともに、数値で測定できるもの(第三者が客観的に評価できるもの)でなければならないのです。
数値で判断できない定性的な目標は、何を基準にして判断・評価すればいいか分かりづらいので、事業や会社の業績向上につながりにくくなってしまいます。
目標設定の難易度は妥当か
当然のことながら、あまりに非現実的な目標設定は避けるべきです。
例えば、具体的に売上が伸びる要素が見当たらないにもかかわらず、「1年後に売上250%を達成」というKGIを掲げたとしましょう。
そうするとKPIを設定する現場の人間の士気が下がり、本気で取り組んでくれないという問題が起こります。
KGIを設定する際には、現在の状況をよく考えたうえで実現可能な目標であるかを考える必要があります。
KGIに対してKPIがズレていないか
KGIに対してKPIを設定する際、「ズレ」が生じていることがあります。
先ほども例に挙げたページビューもそのひとつ。
ページビューの増加がECサイトの売上増加と関連があるのかを検証した上で、KPIを設定する必要があります。
優先順位を誤っていないか
一口に「KGI」「KPI」といっても、企業ごとに解決すべき問題は一つではない場合がほとんどです。
KGIに掲げられることが多い売上と利益率だけをとっても、どちらを優先するかでアクションは大きく変わってくるでしょう。
売上や利益率といった会社の業績に直結する課題だけでなく、なかには「残業時間」など従業員の働き方に関わる問題を抱えている会社も少なくありません。
KGIやKPIを設定する際に注意しておきたいのは、解決すべきさまざまな課題の優先順位を誤ってはいけないということです。
複数設定する場合には、優先順位を明確にした上で取り組むようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ビジネスに欠かせないKGIとKPIという指標。
言葉の意味は分かっていても、適切な目標管理(目標設定と評価)ができているケースは意外と少ないものです。
ECサイトを運営するにあたっては、まず優先すべき事業成果を決めてKGIとし、実現性がある範囲で具体的な数字として落とし込みましょう。
KPIは必ずKGIとズレのない内容・条件にし、「KPIを達成したらKGIも達成できる」というものにしてください。
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