こんにちは。
システムインテグレータの佐藤です。
先日安倍首相が2019年10月に予定通り消費税を引き上げると表明されましたね。
これに伴い、軽減税率制度も実施されることとなるわけなので、軽減税率の対象商品を取り扱うEC事業者は対応しなくてはなりません。
軽減税率の対象となる品目は、
- 酒類及び外食を除く飲食料品
- 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞
なので、ほとんどの場合食品を扱っているかどうかがまずはポイントになります。
今回はECサイトとして考慮しなくてはならない軽減税率対応についてまとめていきたいと思います。
軽減税率対応とは?対象となる品目について
冒頭にも書きましたが、軽減税率の対象となる品目は、
- 酒類及び外食を除く飲食料品
- 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞
となります。
ニュースでよく取り上げられるのは、どこまでが外食でどこからが食料品なのか、についてですね。
持って帰って食べるなら食料品、イートインスペースで食べたら外食のパターン、という整理もありますが、例えば、
「おにぎりを三つ買って、一つを(店内で)食べて二つを持ち帰る場合、一つ一つ(異なる税率をレジで)打ち込む必要がある」
なんてことも考えないとなりません。
ちなみにこれは、ユニー・ファミリーマートホールディングスの高柳浩二社長が話されていた懸念だそうです。
これを徹底してやるのであれば、イートインスペースがあるコンビニやスーパーで食料品をレジに持っていく度に、
「食べて帰るものはありますか?」
と毎回聞かれることになるでしょうから、いち消費者としても面倒くさいなぁ、と正直思ってしまいます。
それでも、ズルっこして持って帰ると伝えて8%の消費税で買って食べて帰るお客さんもいるでしょうから、完璧にはいかないでしょう。
特にこれから食料品店を意味する「グロサリー」と「レストラン」をかけ合わせたグローサラントが注目を集めているので、消費者はより混乱することになりそうです。
<SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFE>
(引用元:https://www.ryutsuu.biz/report/j092804.html)
あくまでスーパーに併設されているレストランという位置づけで、スーパーで売っているものを食べるスペースではないという整理であれば、グローサラントでの飲食は軽減税率対象外となりますが、どこそこのスーパーについているのはイートインスペースで、どこそこのスーパーについているのはグローサラント、なんて気にしないですよね。
他にもケータリングはどうなんだ、食品とその他の商品が一体になったもの(おもちゃ付きのお菓子など)はどうなんだ、というのも話題に上がりますが、大まかなところは以下の画像に、もっと細かい内容については財務省のホームページにもまとまっていますので、気になる方はぜひ覗いてみてください。
(引用元:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d02.htm)
ECサイトとして必要な軽減税率対応とは
外食なの?そうじゃないの?お酒なの?というところが、その食品が軽減税率かどうかの判断基準になります。
そもそも食料品にあたるもの(おもちゃ付きのお菓子を含む)を一切取り扱っていないというECサイトであれば、ひとまずは税率の変更を然るべきタイミングで実施すれば良さそうです。
食料品を取り扱っているものの、一切お酒やおもちゃ付きのお菓子のようなものも取り扱っていない、軽減税率対象外の商品も扱っておらず、これから先も軽減税率の対象外となる品目は取り扱う予定がない、というECサイトであればこちらもひとまず税率の変更を然るべきタイミングで実施すれば良いと言えます。
しかしながら、今後軽減税率がどうなるかわからないという前提に立つと、今が大丈夫だから対応は今後も考えなくてもよいとは言い切れません。
複雑な制度にしたり、頻繁に制度が変えるようなことがあると市場に混乱を招くことになるので、政府としてもコロコロ変えるようなことはしないと思いますが、消費増税後の消費動向を鑑みて軽減税率の対象品目を再考する、なんてことはあり得なくはない話かと思います。
ですから、現時点では影響のないECサイトもこのタイミングで軽減税率に対応出来るようにしておいた方が安心といえるでしょう。
では具体的にECサイトとしてどのような対応が必要かをまとめていきます。
1.商品毎あるいは商品カテゴリ毎に税率を設定できるようにする
軽減税率の対応のポイントは、複数の税率が混在するところにあります。
これまでのECサイトでは複数の税率の商品が混在することを考慮する必要がなかったので、税率の変更機能があってもそれは「○年○月○日からこのサイトの消費税率を○%に変更する」といった機能でした。
今後は品目毎に消費税が変わることを考慮しなくてはならないので、商品毎(SKU単位)あるいは商品カテゴリ単位で消費税率を設定出来るようにする必要があります。
2.消費税の計算ロジックを整理する(決める)
複数の税率が混在する場合、それぞれの税率で消費税を算出する必要があります。
税抜き2,098円の消費税率10%の商品と、税抜き1,033円の消費税率8%の商品を一緒に買った場合、単純に計算すると、
(2,098×1.1)+(1,033×1.08)=2307.8+1115.64=3423.44
となります。
合計金額に対して、消費税を切り上げにするのか切り捨てにするのかで、3,424円になるのか、3,423円になるのかが変わってきますが、単純に計算するとこうなります。
ただし、消費税率毎に消費税額を出すことを考えると、税率単位で切り上げにするのか切り捨てにするのかを判断しなくてはなりません。
消費税率別に消費税額を計算してみると以下のようになります。
- 税抜き合計金額
3,131円(2098円+1,033円) - 消費税率8%
消費税額 82.64円(1,033円×8%) - 消費税率10%
消費税額 209.8円(2,098円×10%)
この場合、どちらの税率でも小数点以下の税金が発生するので、どちらも切り捨てにする場合と、どちらも切り上げにする場合とで2円の差が発生します。
最も細かいケースでいうと、商品明細単位で消費税額を計算することが考えられますが、その場合、切り上げと切り捨てでの金額差も最も大きくなることになります。
ただ、こちらの方式を取るECサイトはあまりないとは思います。
おそらく消費税率単位での税抜き金額、消費税額の表示を選択されるECサイトがほとんどになると思われます。
ここでは2パターンの計算をご紹介しましたが、企業様によってはもっと複雑な税計算のルールが存在します。
クーポンやキャンペーンやポイントなどを使った値引きとの兼ね合いでとても複雑になるケースが今後は発生することが考えられます。
例えば税抜き金額から値引きをするルールでクーポンを運用する場合、どちらの税率の商品からの値引きとするかなども決めていく必要があります。
どうせなら税率の高い商品の税抜き価格から値引きしてくれた方が、消費者としてはありがたいのですが、この辺りをどうしていくのかなども決めていく必要があります。
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3.消費税率毎に税抜き合計額、消費税額を表示出来るようにする
消費税率毎に税抜き合計金額と消費税率を表示させる場合、カート画面で表示される内容を今と変更する必要があります。
2.でご紹介したように計算ロジックを決定した後に、それを表示する仕組みを実装するという流れになります。
同じようにマイページから確認できる注文履歴でも表示されるように変更する必要があります。
他にもサンキューメールに購入内容を記載している場合、そちらにも同じ様に表示されるように修正する必要があるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
一口にECサイトの軽減税率対応といっても、どうやって計算するのかは企業様によって対応が大きく異なります。
これまでとは消費税の取扱いの複雑さが変わってきますので、早めに対応方針をご検討されることをおすすめします。
多くの場合、会社全体の方針、例えば基幹システム側にECシステムを合わせるといった対応になることが多く、基幹システム側の仕様が固まらないとECシステム側の変更が進められないということもしばしばです。
ドタバタの対応にならないように気を付けないとなりませんね!
(2019/3/4加筆)
2019年3月にリリースした、SI Web Shoppingの最新バージョンV12.6では軽減税率に標準対応しております。
ご興味のある方はぜひこちらのページよりダウンロードお願いします。
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