ECの店舗発送とは
こんにちは。システムインテグレータの佐藤です。
最近は割と妻が自宅にいることが多くなったので、使う頻度は少なくなってきましたが、働いているとなかなか平日は荷物の受け取りが難しいので、ちょっと前まではコンビニ受取をよく利用していました。
それとはまた違いますが、最近ではECで買ったものを店頭で受け取るという取り組みをスタートする小売業も増えてきていると聞きます。
お店の立場からすると接客するチャンスを設けて、他の商品をオススメしたり、もっとファンになって頂くためのアドバイスが出来ますし、お客の立場からしても自分の好きなタイミングで取りにいけるし、他の商品を実際に見たり、店員さんの話を聞く機会にもなりますよね。
店頭受取の場合は、ECの倉庫から店頭に向けて出荷して、店員が一旦受け取っておいて来店されたらそこで手渡しをするというパターンと、店頭の在庫をECで販売して、店頭で受け取ってもらうという2つのパターンが考えられます。
後者のパターンが実現出来ると、在庫の最適化が出来て不良在庫を減らすことにつながりますよね。
ここまで長々受け取り方のお話をしましたが、今回は不良在庫を減らすという観点において共通するECの注文に対しての店頭からの出荷について取り上げたいと思います。
店舗発送を行うメリットとは
ここでは「店舗発送」という言い方をしていますが、店頭出荷とか店舗出荷とか実際はいろいろな言い方をします。
どれでも意味は伝わるかと思いますが、意味合いとしてはそのままで、店頭の在庫をECで買ったお客さん向けに発送(出荷)することです。
お客さんからすると、倉庫から送られてこようが、店舗から送られてこようがどっちでも一緒に思うかもしれませんが、1つ大きなメリットがあります。
それは、欲しい商品がECの倉庫で在庫切れであっても、店舗に在庫があれば買うことが出来るということです。
これはお店側からしても売り逃しを回避するという点で、双方のメリットになります。
買いたいのに在庫がないと、すごくショックですよね。
在庫が×だらけのECサイトを見ると、すごく残念な気持ちになるというか、ECに力を全然入れていないんだなと思って、もう訪れなくなってしまいます。
これは私の場合ですが。
いくつかのサイトでは、店頭に行けばあるかないかの情報は出していますが、理想はそのまま買えることですよね。
もちろん実際に手にとってから判断したいという場合は、その場で買える必要はありませんが、機能としては買えるところまであるのが望ましいです。
最近の店舗配送に関する話題としては、Business Insiderの記事によると、ZARAが店頭の商品の発送を行うために新システムの整備をスタートしたそうです。
(画像引用元:https://www.businessinsider.jp/post-172489)
この新システムは2018年末までに運用開始される予定で、アメリカを含む世界2000店舗で展開されるそうで、これによりECでの在庫切れのリスクを低減し、在庫調整がよりしやすくなることが見込まれています。
とはいえアメリカの店舗にあるものを送ってもらう、ということにはならないので、あくまで配送先に近い店舗で在庫がある場合、という形にはなるようです。
特にZARAなどファストファッションに分類され、流行り廃りがとても早い業態であるほど、一般的には在庫リスクが高いものなので、いかに売り逃しをしない仕組みを作るかというのは大事になってきます。
いつでもどこでも買えて、在庫切れの心配があまりないもの、例えば牛乳なんかはこのような仕組みは必要ないですが、ZARAのようにアパレルであったり輸入商品などで入荷に時間がかかるような商品だったりするとこのような仕組みが不可欠になってきます。
実際、同じくBusiness Insiderの記事によると、ZARAの競合であるH&Mは4200億円もの売れ残りを抱え苦しんでいると報じられています。
(画像引用元:https://www.businessinsider.jp/post-165036)
数字が大きすぎてピンと来ないですが、ZARAなどは3週間程度で売り切れる分だけ作るというのは有名な話ですが、それと比較するとH&Mの商品回転日数は130日とかなりの時間を要していることがわかります。
もちろん単に選ばれなくなってしまった、単に需要予測がうまく出来ておらず作りすぎという可能性もありますが、商品の回転が早くないにも関わらず売れ残りが多いということは、少なからず在庫最適化が出来ていないのだろうと考えられ、おそらくH&Mも早晩ZARA同様の施策に着手するものと思われます。
と、言うは易しですが、この店頭在庫をECで売れるようにして、在庫を最適化するというのはシステム的に、運用的に結構難しいことなのです。
店舗発送を実現するためには
では、ここから実際に店頭の商品をECで売るためにどんなことが必要なのかを考えていきましょう。
ECサイトで店頭の在庫を見られるようにする
まず必要になるのが、店頭の在庫状況をECサイトシステムと連携させることです。
そして、それは実際の運用のことを考えると1日1回程度の連携では駄目で、理想はリアルタイムにPOSシステムで持っている店頭の在庫情報を参照出来る必要があります。
先程のZARAの場合だと、世界で2000店舗あるわけですから、この連携部分に相当な負荷がかかることは容易に想像出来ます。
EC側からすると在庫参照用のAPIでリクエストして、POSシステムから在庫情報をもらってくるという、仕組み上はそこまで複雑なものではないのですが、POSシステム側でこういった連携にスムーズに対応出来るかというと、実際お客様とご事情としてはなかなかこれも簡単にいかないケースが多いように感じます。
POSシステムはPOSシステムのベンダーさんがいらっしゃって、そのPOSシステム側の仕様によってしまうからですね。
ですので、実際にこれがマストの要件の場合、ECサイトのリプレイスだけでなく、POSシステムの入れ替えも含めて検討される事業者様が多い気がします。
実在庫と理論在庫のズレをどうするかの運用を考える
あと、当然実在庫と理論在庫がズレている可能性がありますので、そこを踏まえた見せ方、売り方をどうするかの設計は必要になってきます。
店頭商品からの出荷となる場合は在庫切れで出荷できない可能性があることをカートの中で表現して、実際に店頭で出荷用として引き当てた段階で注文が確定するという形に出来れば良いですが、それが難しくて店頭在庫にバッファを設けてN個未満のときは売り越しをしないようにECでは売れないようにしようという設計にしてしまうと、結局やりたかった在庫最適化が中途半端なものになってしまうかもしれません。
ここはシステムの要件もそうですし、棚卸しや在庫チェックの頻度などの運用にも関わってくるところになるので、しっかり考慮する必要があります。
店頭から出荷する運用を考える
在庫情報を出して、店舗側に出荷をどうやって依頼するかの設計は様々ですが、今やタブレットやインターネットにつながる端末があるのは当たり前なので、いろいろな方法で指示を出すことが出来ると思います。
通常の倉庫配送と同じように、当日の○時までの注文は当日配送というようなルールが店舗発送でも決められるはずなので、手が空いてれば適宜出荷指示が来ていないかを確認、もしくはその締めの時間でまとめて確認とこれもいろいろなパターンがあるでしょう。
しかし倉庫と違うのは、店舗には出荷伝票のプリンターがないことです。
よほど店頭からの出荷が多いのであれば、プリンターを用意するのでしょうが、そうでなければ1件1件手書きで書かなくてはならないのが大変です。
出荷に最適化されていないはずの店頭からの出荷作業になるので、その中でもスムーズに業務が出来るような運用を考慮することが、店舗のスタッフからの理解を得る上でも重要な要素でしょう。
と、ここで挙げたのは一例ではありますが、システムの設計、運用の設計ともにしっかり作らないと店舗発送は実現出来ないのです。 [RELATED_POSTS]
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今後は自動運転やライドシェアの普及により、細かい規模での配送がもっと増えていくことが予想されています。
実際の商品が並んでいて、手にとってみることが出来て、接客を受けられるという今の店舗の役割に加え、この店舗発送のようにローカルの物流拠点としての役割が増えていくことになるのでしょう。
買いたいのに買えない、売りたいのに売れないという不幸がどんどんなくなるいいですね。
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