失敗しないオムニチャネル

 2018.11.08  株式会社システムインテグレータ

オムニチャネルの先進的事例となった米Macy'sを口火に、世界中でオムニチャネルへの注目が爆発的に高まりました。日本で話題となった大規模オムニチャネル事例といえば、セブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂などのセブン&アイホールディングスが実践する“オムニ7”でしょう。

オムニ7は一つのアカウントでスーパーやドラッグストア、あるいはベビー用品等セブン&アイホールディングスが提供する商品のすべてをオンラインで購入でき、かつ安価な配送料で届けてくれるというサービスです。商品の店頭受け取りができたりポイントが溜まったりと、同社の社運をかけたオムニチャネル戦略だと言えます。

 多くの企業のEC戦略においてオムニチャネル化は必要不可欠な存在として語られ、多くの企業でそれに取り組んでいます。しかし、その取り組みを成功させることは非常に難儀であるということも忘れてはいけません。オムニチャネルの先駆者であったMacy'sは後に41店舗という大規模な閉鎖を行っています。これがオムニチャネル失敗に直結するかはわかりませんが、少なくともオムニチャネル化が業績を飛躍的に伸ばしてくれるとも言えないのかもしれません。

 一部で「オムニチャネルは単なるバズワードだったのでは?」という見解もあり、大手小売りのオムニチャネル戦略に躊躇する動きもあります。しかしオムニチャネル戦略自体が間違ったビジネスなのではなく、失敗には原因があります。

 実店舗はもちろんオンラインショップやその他あらゆるチャネルが統合され、消費者にとって新しい体験を提供することは消費者にとって素晴らしい体験を提供するはずです。そこで本稿では「失敗しないオムニチャネル」と題して、オムニチャネル戦略に失敗する原因と対策をご紹介します。 

オムニチャネル戦略に失敗する原因

原因1. オムニチャネルをリアル店舗と同じように「新たに生まれたチャネル」と誤解する

そもそもなぜオムニチャネルが重視されているのか?この本質を捉えていないと、オムニチャネル戦略は失敗します。よくある誤解が「オムニチャネルとは小売業のオンライン化だ」と捉えることです。これは実に多い失敗事例で、実店舗を単にオンライン化したことでオムニチャネルを実現したと思い込み、結果として適切なオンラインショップ運営すらできなかったという事態に陥ります。

ここでオムニチャネル戦略の本質を理解しておきましょう。世界のEC市場は2015年時点で、経済市場全体の7.6%だとされています※。これが急速に拡大し2020年までには14.6%まで成長すると考えられていますが、それでも非EC市場は全体の85%を占めており、EC市場よりも圧倒的に重要な市場です。

しかし、実店舗にインターネットがどれくらいの影響を与えているかという点に着目するとまた違った見解が得られます。デロイトが行った調査※1によると、2020年には実店舗の売上のうち90%がインターネットの影響を受けたものになると予測しています。つまり実店舗での売上が月間1,000万円あるとしたら、そのうちの900万円はインターネットから何らかの影響を受けているということです。 

従ってオムニチャネル戦略の本質は、消費者のインターネット活用が変化していくなかで、その変化を正しくとらえて、自社にとっていかに有利な形で取り組むかという点にあると言えます。

オムニチャネル戦略を「実店舗の商品をネットで注文して配送するサービス」ととらえるのではなく、インターネットを活用して実店舗での顧客体験を変化させるという点に着目すれば、効果の高いオムニチャネル戦略を打ち出せるはずです。

 

原因2. 本当の消費者目線に立ったオムニチャネル戦略が設計されていない

ビジネスの成功というものは、クライアントの成功の上に成り立つものです。たとえば成功しているWebサイト制作会社が手掛けたWebサイトが、まったくアクセスを集めていないというケースは非常に稀でしょう。そのWebサイトでクライアントが成功したからこそ制作会社の評価が上がり、さらに多くの仕事が舞い込んで、成功へと至ります。

消費者を相手にしたビジネスでもこれは同じことです。たとえば消費者にとって利便性が高い商品を多く提供している小売業者と、そうではない小売業者では当然ながら前者の方が売り上げは多いはずです。消費者にとっての成功とは商品購入によって高い利便性を得ることであり、これは何も商品自体から得られる利便性のことだけではありません。

たとえばよくあるオムニチャネル戦略が「コンビニエンスストアで商品を受け取れる」というサービスです。一見利便性の高そうなサービスですが、果たして本当にそうでしょうか? 

消費者が注文した商品はコンビニエンスストアの店頭で、その状態についてチェックしたり、必要に応じて返品出来たりするものではありません。商品はすでに注文し、購入することは確定しています。仮に注文する商品と同じもの、あるいは代替可能なものがそのコンビニで売っていた場合、コンビニエンスストアで商品を受け取るというサービスは、消費者が実店舗に足を運んで現物をチェックし、そのまま購入して持ち帰るという行動と何ら変わりないのです。これは極端な例ECで販売されている全ての商品がコンビニに置いてあるわけではありません。しかし、より価値の高いショッピング体験という観点で考えると、コンビニに欲しいものが売っている方が、よっぽど便利です。そうなると注文した商品をわざわざコンビニエンスストア受け取りにする必要はありません。

コンビニエンスストア受け取りが一部の消費者に好まれていることは事実ですし、多様な方法で受け取れるようにすることは消費者の利便性を高めるためにサービスとして提供していくこと自体はと間違いではありません。しかしそれだけで消費者がその商品の購入を決定するほどの利便性の高さを提供出来ると考えるのは間違いです。物流の課題を解決する一つの方法ではあるものの、コンビニエンスストア受け取りを実装すれば売上が向上すると思うのは短絡的かもしれません。

このように消費者目線に立って考えてみると、企業のオムニチャネル戦略で良かれと思ってやっていることが裏目に出たり、あまり効果が出なかったりという施策はたくさんあります。 

原因3. スマートフォンの利用は意外と限定的

オムニチャネル戦略を展開するにあたってスマートフォンは無視できないプラットフォームであることに間違いありません。総務省の調査※2によると日本のスマートフォン所持率は56.8%であり年々拡大しています。日本の人口が約1億2,700万人ですから約5,500万人がスマートフォンを所持していることになります。

従ってオムニチャネル戦略でスマートフォンをチャネルの1つとして捉えることは大切なのですが「スマートフォンの利用は意外と限定的」ということを念頭に置かないといけません。 

皆さんはスマートフォンでどれくらいのアプリやWebサイトを使いこなしていますか?メールとSNSだけ、ゲームとその他アプリだけなどと限定的に利用していることが多いことも事実です。この点をあまり考慮せず、スマートフォンアプリを作ったからオムニチャネル化が達成出来て売上が上がると考えるのは、少し単純すぎるかもしれません。

スマートフォンアプリを作ったなら、どうやってそのアプリをダウンロードしてもらうか、使い続けてもらうか、アプリを起点にいかにショッピング体験をリッチにするかを考えなければなりません。

ですので、この点を頭に入れ、オムニチャネル戦略を設計していかないとスマートフォンからの購入等はあまり望めなくなってしまいます。スマートフォンは限定的で汎用的なメディアにはなりにくいものなので、実店舗での販売を支援するためのツールなどその位置づけを明確にすることが大切です。

オムニチャネル戦略は必要だが、正しい設計が必要

結果から言えばこれからの時代にオムニチャネル戦略は必要であることは間違いありません。しかし、消費者の欲求の本質を見極めなければオムニチャネルも失敗に終わります。

本稿でご紹介した失敗原因はあくまで一部ですが、原因として陥りやすいものなのでご注意ください。オムニチャネル戦略はあらゆるリスクや消費者視点を想定して、正しい設計を行いましょう。

 

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※1Navigating the new digital divide: Capitalizing on digital influence in retail

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