多様化する消費者ニーズや購買行動の複雑化に伴い、企業が売上をあげるためにはいかに消費者の期待に応えるかが重要となってきました。このような時代の変化に伴い注目されたのが、オムニチャネル戦略です。
あらゆるチャネルを活用して顧客に多角的なアプローチができるオムニチャネル戦略は、その効果性が認められて今や大企業だけでなくさまざまな企業から注目されています。
当記事では、オムニチャネルの戦略面にフォーカスして、概要・歴史・メリット・成功事例・成功のポイントまで幅広くご紹介しています。
オムニチャネル戦略はビジネス戦略におけるトレンドとなっており、売上拡大や競合と差別化を図るには必須の戦略と言われています。オムニチャネル戦略について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
オムニチャネル戦略とは?
オムニチャネルとは、企業と顧客の接点となるあらゆるチャネルを統合・連携して、チャネルの境界を意識させないシームレスなアプローチを行う戦略のことです。
各チャネルを個別に運営するよりも顧客に対して包括的で多角的なアプローチが可能となり、単価アップ・リピート率アップ・販売数アップといったさまざまなメリットが期待できます。
オムニチャネル戦略の成功事例は増え続けており、売上拡大・オリジナリティの創出・ブランディング・競合との差別化等のために、今や多くの企業が戦略の推進に取り組んでいます。
オムニチャネルについては、以下の記事でも詳しく解説しているため、併せてご参考下さい。
オムニチャネル戦略の歴史
オムニチャネル戦略の発端は、アメリカの百貨店Mayc’s(メイシーズ)であると言われています。
ECの普及により店舗売上が低迷していたMayc’sは、2011年より実店舗と自社サイトを統合。顧客情報・在庫情報を一元化した取り組みを行うことで、大幅に業績を回復させました。
Mayc’sの成功は大きな注目を集め、以後小売業を中心に世界中の企業がオムニチャネル化に取り組むようになります。
オムニチャネルは、突然登場した戦略であるイメージがありますが、実際には前身となるチャネルの概念があるため以下にご紹介します。
シングルチャネル
実店舗のみ・ECサイトのみといった単一のチャネルのみで販売を行う概念です。限定的な集客・販売しか行えませんが、一昔前では当たり前でした。
マルチチャネル
複数のチャネルを保有して、顧客との接点をより多く持つことを目的とした概念です。各チャネルは繋がっておらず、別々に運営されます。
クロスチャネル
マルチチャネルを発展させて、チャネル間を横断して顧客との接点を持つことを目指す概念です。顧客情報・在庫情報を共有してサービス提供を行います。
クロスチャネルをより発展させて、チャネル間の境界を感じさせない戦略がオムニチャネルであるといえます。
オムニチャネル戦略は海外で発祥・発展してきた歴史があり、日本はそれに追従しているような状況です。大企業を中心に成功事例が目立ち始めていますが、海外と比べるとまだまだ普及・発展の余地があるといえるでしょう。
O2OマーケティングとOMOマーケティングとの違い
オムニチャネル戦略と同じくオンライン・オフライン双方を活用するマーケティング戦略には、O2Oマーケティング・OMOマーケティング等があります。共通している部分や類似している部分もありますが、ビジネスとして戦略・施策を推進する際にはこれらを明確に区別して理解しておくことが重要です。
ここでは、オムニチャネルとO2Oマーケティング・OMOマーケティングの違いについて解説します。
O2Oマーケティング
O2O(Online to Offline)とは、Webサイト・SNS・アプリ等のオンライン上の媒体を活用して、オフラインの実店舗に顧客を誘導する施策のことです。代表的な施策には、オンラインクーポンの発行や、セール・キャンペーンの告知などが挙げられます。
O2Oとオムニチャネルの違いは、前者がオンラインからオフラインへの誘導を行うのに対して、後者はオンラインからオフラインに限らず、あらゆるチャネルを統合・連携させる点にあります。オムニチャネルの方がより包括的で規模の大きな施策となります。
オムニチャネルの一環としてO2Oが活用されているケースは非常に多く、O2Oは実店舗を保有するビジネスのオムニチャネル化には必要性が高い施策といえるでしょう。
OMOマーケティング
OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインを融合させるという意味のマーケティング用語です。顧客にオンライン・オフラインの境界を意識させず、最適な顧客体験(CX)の提供を目指すことを目的としています。
オンライン・オフラインの境界を感じさせないシームレスなサービスを提供する点ではオムニチャネルと非常によく似ていますが、OMOとオムニチャネルでは以下の点において違いがあります。
目的の違い
オムニチャネルはあくまで商品・サービスの販売を目的としていますが、OMOでは購買に限らずあらゆる顧客体験の向上を目的としています。
チャネルの区別の有無
オムニチャネルでは各チャネルを統合・連携させる点に特徴がありますが、OMOではオンライン・オフラインが融合しておりチャネルの区別を行わない点に特徴があります。
OMOは、オムニチャネルをより発展させたマーケティング概念であるといえるでしょう。今後はオンライン・オフラインを分けてビジネスを行うこと自体難しくなることが考えられるため、OMOのマーケティング概念は、オムニチャネルに代替するトレンドとなることが予想されます。
関連記事:OMOとは?意味やマーケティング施策の事例、O2O・オムニチャネルとの違いについて解説
オムニチャネル戦略をもう少し具体的に
ここまでの内容でオムニチャネル戦略は「オンラインとオフラインを繋ぐための施策なんだ」とイメージした方が多いかもしれませんが、それは正しくありません。実はオムニチャネル戦略とは必ずしもオフライン→オンライン、オンライン→オフラインというベクトルを示すものではありません。
オムニチャネル戦略の理解で最も大切なことは「チャネルとチャネルの境界を意識させないこと」です。つまり必ずしも実店舗とECサイトの連携を表すものではなく、SNSやWebサイトなど様々なチャネルを総合的にとらえ、境界を意識させないという取り組みです。たとえば次のような例があります。
オムニチャネルの一例
とある消費者は旅行を計画中です。まずは各旅行代理店のホームページで何かよいツアーはないかと情報を収集し、気になったツアーをピックアップしてその旅行代理店の実店舗へと足を運ぶことにしました。ちなみに旅行好きのこの消費者には各旅行代理店のECサイト会員になっています。実店舗に足を運んでスタッフの説明を聞きましたが、どのツアーにするかは決めかねたまま店舗を後にします。
この時スタッフは消費者に「良かったらご覧になってください」と旅行代理店のSNSアカウントを伝えました。消費者は帰宅後にSNSアカウントを閲覧すると、自分が気になっているツアーで訪れる旅行先に関するコンテンツが表示されます。色々な風景や観光地の写真を見た消費者の購買意欲は高まり、最終的にはECサイトにてツアーを申し込むに至りました。
この一例では、消費者はECサイト→実店舗→ソーシャルメディア→ECサイトと遷移して最終的に購買へと至っています。この時、消費者はほとんどチャネルごとの境界を意識することなく行動しているでしょう。このようにチャネルごとの境界を意識させずに、新しい購買体験を提供することこそオムニチャネル戦略の本質です。
オムニチャネル戦略を実施するメリット
オムニチャネル化は、顧客利便性・顧客満足度向上により売上拡大や顧客の囲い込みができるというメリットは広く知られています。しかし、ビジネス戦略的な観点での具体的なメリットについては、詳しくは分からないという方も少なくありません。
ここでは、オムニチャネル戦略を実施するメリットについて、企業側のビジネス戦略的観点からご紹介します。オムニチャネル戦略の実施を検討している方は必ず知っておくべき
内容であるため、ぜひ参考にしてみて下さい。
オンライン・オフラインの壁がなくなる
ECの発展やスマホの普及により、現代は24時間いつでも自由に購買行動ができることが当たり前となっている時代です。ECサイト・実店舗を中心としたマルチチャネルを展開すれば、消費者のニーズを幅広くカバーできそうですが、実際には以下のような課題が発生します。
- 特定のチャネルに顧客が偏ってしまう
- ECサイトが在庫切れとなり消費者は意図せず実店舗へ足を運ぶ
- 各チャネルで在庫が共有されていないため売り残しが発生する
- 各チャネルが個別に運営されているため、売り逃しが発生する
オンライン・オフラインのチャネルが統合されていないと、このようにさまざまなチャンスロスが発生してしまうことが実状です。
各チャネルを統合したオムニチャネルであれば、顧客情報・在庫情報・受注情報などの各種情報も一元管理されているため、本当の意味でオンライン・オフラインの障壁を取り除き、消費者にシームレスな顧客体験を提供することができます。
商品・サービスを販売する側においても、顧客との接点不足・在庫切れ・対応不足等によるチャンスロスも低減できるため、ビジネスの運営・成長に大きなメリットがあります。
顧客データの活用
複数チャネルを活用する施策にはオムニチャネル以外にもマルチチャネルがありますが、全社は各チャネルの顧客データを統合して活用するのに対して、後者は各チャネルで別々に顧客データを管理しています。
そのため、マルチチャネルの場合は複数チャネルを活用していても、他のチャネルの顧客データを得られず、多様化する顧客行動の把握やチャネルを跨いだ対応を行なうことはできません。
対してオムニチャネルは顧客データが統合されているため、チャネル全体を俯瞰した顧客行動の把握や、より詳細な分析、きめ細やかな顧客対応を行なうことができます。
オムニチャネル化による顧客データ統合により、蓄積した顧客データを有効活用したり、高度な分析を行って今後の施策に活用したりできることは、ビジネス戦略上大きなメリットといえるでしょう。
業務効率の改善
オムニチャネル化は、チャネル間の連携を行うことで業務の複雑化や負担増が起こる印象を多くの方が持っています。しかし、仕組み作りと業務フローを入念に行えば、ビジネス全体での業務効率化が可能であることも大きなメリットです。
オムニチャネル化により各チャネルを統合すれば、チャネル間の受注情報・在庫情報だけでなく受注管理・在庫管理といったバックオフィス業務も統合して行うことができるためです。
その結果、ビジネス全体のバックオフィス業務の効率化・工数削減・管理コスト削減などさまざまな面において業務効率を改善することができます。
業務効率が改善することにより、商品・サービスをよりスムーズに届けられたり、問い合わせ対応を素早く行えたりするため、顧客体験・顧客満足度の向上も期待できます。
オムニチャネル戦略成功のポイント
オムニチャネル戦略は、全社を挙げて取り組む大規模な戦略であることや、高度で複雑な仕組みを構築する必要があることから、成功の難易度が高いと言われている戦略です。そのため、これからオムニチャネル戦略に取り組む方は、あらかじめ成功のためのポイントをおさえておくことが非常に重要となります。
ここでは、オムニチャネル戦略を成功させるために重要なポイントについてご紹介します。オムニチャネル戦略の成功確度を高めるためにも、ぜひ参考にしてみて下さい。
オムニチャネル戦略について理解を深める
オムニチャネル戦略を実際に実行して顧客体験を提供するのは、各チャネルに関与するスタッフです。システム導入や仕組み作りだけを行っても、戦略に携わるスタッフの理解度が低いと、オムニチャネル戦略を上手く運用することは難しくなります。
そのため、戦略を成功させるためには、関与するスタッフがオムニチャネル戦略の概要・目的・実際の提供方法までを理解していることが重要なポイントとなります。
- オムニチャネル戦略とはどのような戦略であるのか
- どのような目的でオムニチャネル戦略を実行するのか
- 各チャネルはどのように行動すればよいのか
経営陣・管理職といった指揮を執るメンバーだけでなく、各チャネルの実務に携わるスタッフも戦略について理解する必要があります。そうすることで、チャネル間の意識統一やコンセプトの共有も図ることが可能となるでしょう。
社内講習会・勉強会・マニュアル配布などの方法を利用して、いかにオムニチャネル戦略に対する理解や意識をメンバーに浸透させるかが、成功のための重要なポイントとなります。
ロードマップの策定
オムニチャネルは、大規模かつ複雑な戦略です。そのため、プロジェクト立ち上げの際にはロードマップの策定を行い、自社の現状・目指すべき目的・目標を明確化することや、進捗状況や達成度合いを把握することが成功のための重要なポイントとなります。
不明瞭な状態のままオムニチャネルを進めると、各チャネルの状況が把握できなくなったり、チャネルの連携・統合をスムーズにできなかったりと、さまざまな弊害が発生してプロジェクトの遅延や失敗を招いてしまいます。ロードマップを作成しておけば、自社の現状・目指すべきゴール・ギャップを埋めるプロセスまでを可視化することができるため、プロジェクトを計画的かつ確実に推進することが可能です。
プロジェクトの指針となる完成度の高いロードマップをいかに緻密に作成できるかが、オムニチャネル戦略成功において最も重要と言っても過言ではありません。オムニチャネル戦略の成功確度を高めるためにも、プロジェクト立ち上げ前には必ずロードマップを作成しましょう。
社内体制の構築
オムニチャネルに成功している企業は、IT・ツールの整備だけでなく社内体制もきちんと整備されていることが特徴です。具体的には、以下のような点が挙げられます。
業務フロー
オムニチャネルでは、各チャネルが別々に運営されるのとは異なる業務フローが必要となります。例えば、ECサイトで購入した商品を店頭で受け取ったり、店頭で在庫が無い場合に他のチャネルの在庫を販売したりといった、チャネル間を連携させた業務が加わります。
成功している企業は、オムニチャネルが目指すところであるシームレスな顧客体験を提供できる業務フローが確立されているため、スムーズなサービス提供を行うことができます。
評価制度
オムニチャネルでは、他のチャネルがきっかけとなって販売に結びついたり、直接販売に結び付かないけれども貢献度の高いチャネルが発生したりするケースが多々あります。そのため、従来の評価制度のままだと適切な評価が行えず、モチベーション低下やチャネル間の対立を生んでしまいます。
オムニチャネルで成功している企業はこのような状況への対策として、オムニチャネル向けの評価制度を確立しており、携わったスタッフが適切に評価される仕組みを確立しています。
オムニチャネル戦略を推進する際には、必ず全社的に社内制度の見直しを行う必要があります。成功するためには、従来の社内制度のままでは難しい点に留意しておきましょう。
複数チャネルの統合
オムニチャネル成功において重要なポイントのひとつが、「各チャネルが統合・連携されており、一貫した顧客体験を提供できる環境が整っていること」です。チャネルを増やしただけで統合がなされておらず、別チャネルの情報や状況が分からないのであれば、オムニチャネルが目指すシームレスな顧客体験を提供することはできません。
各チャネルの統合・連携を実現させる鍵となるのが、顧客情報や在庫情報、受注情報を紐づけて一元管理できるシステムやデータベースの構築です。情報がアナログで管理されている場合、チャネルを統合・連携することは不可能と言ってもいいでしょう。
システム・データベースの完成度によってオムニチャネル戦略の成否は大きく分かれるため、自社が目指すオムニチャネル戦略を実現できるシステムの選定・導入を慎重に精査して行うことが重要となります。
適切なECシステムの導入
ECサイトはオムニチャネルを構成するチャネルの一つですが、実店舗・SNS・アプリ等の各チャネルと連携する機会も多く、オンライン販売の要(かなめ)となるチャネルです。
そのため、オムニチャネル戦略を成功させるためには、ECサイトを単に構築するだけでなく、適切なシステムを選定して戦略全体における位置づけ・役割を実現できるECサイトを構築することが重要となりますニチャネル戦略を成功させるためには、ECサイトを単に構築するだけでなく、適切なシステムを選定して戦略全体における位置づけ・役割を実現できるECサイトを構築することが重要となります。
オムニチャネルに適したECシステムには、高機能・多機能であるだけでなく、拡張性・柔軟性・カスタマイズ性・堅牢性・信頼性などさまざまな要素が求められます。
弊社では、多様なニーズに対応可能なオムニチャネルEC構築パッケージの提供も行っています。オムニチャネル用のECシステムをお探しの方は、ぜひご検討下さい。
まとめ
現代では、消費者はECサイト・実店舗・SNSなどさまざまなチャネルを駆使して、自分が選択した手段で購買活動を行うことが一般化しています。このような時代のニーズに応えて、消費者により良い顧客体験・価値提供を行うためにも、オムニチャネル化は最早必須と言えるでしょう。
オムニチャネル戦略が成功すれば、新規顧客獲得・リピート化・売上拡大など多くのメリットを得ることが可能です。
当記事ではオムニチャネルの戦略面にフォーカスして成功のポイントをお伝えしましたが、弊社ではオムニチャネル実現のためのより詳しい資料もご用意しています。オムニチャネル化を検討している方は、ぜひダウンロードしてご活用下さい。
- カテゴリ:
- オムニチャネル
- キーワード:
- オムニチャネル o2o omo