コラム

オムニチャネル戦略とECサイトの位置づけ

  • 2018.07.10
  • 株式会社システムインテグレータ
オムニチャネル戦略とECサイトの位置づけ

オムニチャネル戦略の重要性が叫ばれるようになってから数年、一時は勢いが弱まったように感じられたオムニチャネルも、技術発展によって現実的な施策がより多く展開され、近年ではその重要性が再認識されています。

そもそも「オムニチャネル」とは何でしょうか?この概念が誕生したのは2011年米国のことです。大手百貨店であるMacy's(メイシーズ)が取り組んだことで話題を集め、以降世界中の小売業者がオムニチャネル戦略に取り組みます。

メイシーズが取り組んだ施策とは簡単に説明すると「オフラインとオンラインを統合してサービスを提供すること」です。ECサイトと実店舗の商品在庫を統一し、店舗には専用のタブレットを普及させます。スタッフは店舗にない在庫はタブレットですぐに検索してその場でEC決済を行うなど、ユーザーにオフラインとオンラインの境界を意識させないことがオムニチャネル戦略という取り組みです。

同社はこの取り組みによって商品在庫を40%圧縮することに成功し、小売業で問題視されていた「ショールーミング(店舗で商品を確認してオンラインで買うこと)」解消の一手として成果をあげることができました。

日本でもセブン&アイホールディングスやイオングループといった大手企業がこのオムニチャネル戦略へ積極的に取り組んでいます。最近では、中小企業でも取り組むケースが多いでしょう。

今回ご紹介するのは、オムニチャネル戦略におけるECサイトの位置づけです。

オムニチャネル戦略をもう少し具体的に

ここまでの内容でオムニチャネル戦略は「オンラインとオフラインを繋ぐための施策なんだ」とイメージした方が多いかもしれませんが、それは正しくありません。実はオムニチャネル戦略とは必ずしもオフライン→オンライン、オンライン→オフラインというベクトルを示すものではありません。

オムニチャネル戦略の理解で最も大切なことは「チャネルとチャネルの境界を意識させないこと」です。つまり必ずしも実店舗とECサイトの連携を表すものではなく、SNSやWebサイトなど様々なチャネルを総合的にとらえ、境界を意識させないという取り組みです。たとえば次のような例があります。

≪オムニチャネルの一例≫

とある消費者は旅行を計画中です。まずは各旅行代理店のホームページで何かよいツアーはないかと情報を収集し、気になったツアーをピックアップしてその旅行代理店の実店舗へと足を運ぶことにしました。ちなみに旅行好きのこの消費者には各旅行代理店のECサイト会員になっています。実店舗に足を運んでスタッフの説明を聞きましたが、どのツアーにするかは決めかねたまま店舗を後にします。この時スタッフは消費者に「良かったらご覧になってください」と旅行代理店のSNSアカウントを伝えました。消費者は帰宅後にSNSアカウントを閲覧すると、自分が気になっているツアーで訪れる旅行先に関するコンテンツが表示されます。色々な風景や観光地の写真を見た消費者の購買意欲は高まり、最終的にはECサイトにてツアーを申し込むに至りました。

この一例では、消費者はECサイト→実店舗→ソーシャルメディア→ECサイトと遷移して最終的に購買へと至っています。この時、消費者はほとんどチャネルごとの境界を意識することなく行動しているでしょう。このようにチャネルごとの境界を意識させずに、新しい購買体験を提供することこそオムニチャネル戦略の本質です。

オムニチャネル戦略におけるECサイト

ECサイトは実店舗に訪れなくても商品を購入できるという利便がある反面、商品を手に取って見ることができないなどの課題もあります。近年ではVR(バーチャル・リアリティ)技術の発展によってECサイトとの連携が注目されていますが、それでも商品を手に取って見るという行為は難しいものです。さらに、ECサイトはインターネット上での比較が簡単かつサービス提供の範囲が限られているため、ユーザーをファンとして囲い込むことは難しいものです。

では、そんなECサイトはオムニチャネル戦略においてどういった位置づけなのでしょうか?一つは消費者の購買行動の終点として存在するというものです。前述のように小売業ではショールーミングという問題が深刻化していますが、これを逆手にとって消費者を上手く自社ECサイトに誘導し、収益の柱をECサイトに置くという施策があります

たとえばオムニチャネル戦略を展開しているとユーザーは複数のチャネルを行き来します。実店舗を訪れたり、ECサイトへアクセスしたり、ソーシャルメディアでコンテンツを楽しんだり、こうした動線も最終的にはECサイトで商品を購入することが多いでしょう。

実際に経済市場におけるEC化率は年々増加傾向(電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC市場規模が16.5兆円に成長。国内CtoC-EC市場も拡大~)にあり、消費者だけでなく企業の購買行動までもデジタルへ移行しています。つまり、ECサイトを最終的な到達点としてマーケティングの動線を設計すれば、ショールーミングがあったとしても事業全体の収益を確保できるのです。

もう一つの位置づけは、消費者の購買頻度を上げるというものです。あるアパレルファッションブランドでは実店舗とECサイトの連携を行ったところ、その後6ヵ月間である変化が起こったとのことです。その変化とは「購買頻度の上昇」です。実店舗だけで商品を購入する消費者に対し、ECサイトも含めて商品を購入する消費者の購買頻度は月に2.5回も多いという結果があります。さらに、ECサイトとの連携を行ったことで実店舗へのリピート回数も2~3ヵ月に1回だったものが1.5~2回に上昇したと認識されました。

ECサイトを構築し実店舗との統合を図るという取り組みは、消費者にとって購入の敷居を大きく下げる要素になることが分かります。さらに、ECサイトでは実店舗ほどの人件費がかからないためキャンペーンなどを開催しやすく、それも購買頻度が上昇する要因になります。

オムニチャネル戦略成功のポイント

では、こうしたオムニチャネル戦略を成功させるポイントとは何でしょうか?まず大切なのは「オムニチャネル戦略を理解すること」でしょう。オムニチャネル戦略に類似したものはECサイト黎明期からあります。オフラインからオンラインへ、オンラインからオフラインへ動線を設計する「O2Oマーケティング」がその代表です。しかし厳密には、オムニチャネル戦略とO2Oマーケティングは異なるものなので、そうした理解を深める必要があります。

もう一つは「複数のチャネルを統合して一貫した購買体験を提供するためのシステム構築」です。オムニチャネル戦略では各チャネルから生まれたデータを一つのデータベースで統合し、紐づけることで一貫した購買体験を提供できます。そのためには専用のシステムを構築し、データ統合のためのツールが必要です。

そのためオムニチャネルを意識したシステムが非常に重要になります。ECサイトは一つのチャネルですが、単なるWebサイト構築ではなく、全体の戦略の中で位置づけ、実現できるシステム選びも重要です。みなさんもこうした成功のポイントを留意しつつ、オムニチャネル戦略へ積極的に取り組んでみてください。

最後にオムニチャネルに成功している企業は、オムニチャネルを成功させる組織がきちんと整備されてます。例えば、ECサイトで購入された成果があっても、実際には店舗スタッフの努力がきっかけだったことも多くあります。それを適切に評価できる組織、評価制度が実は重要だったりするのです。

ECサイト構築パッケージ選定 7つのポイント

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