少子高齢化による若年顧客層の減少や新型コロナウイルス感染拡大により、アパレル業界はかつてない苦境に立たされています。
特に、実店舗での売上は多くの企業で大幅に減少しています。このような状況下で、今後アパレル企業が売上を上げて行くために必要とされているのが、「オムニチャネル化」です。
当記事では、アパレル業界にフォーカスして、オムニチャネル化の必要性・メリット・成功事例・実現方法までをご紹介しています。今後の売上確保や販売戦略にお悩みなら、ぜひ参考にしてみてください。
オムニチャネルとは?
オムニチャネル(Omnichannel)とは、実店舗・ECサイト・アプリ・カタログ・SNS・メールなど、商品を販売するあらゆるチャネルを統合して顧客にアプローチする販売戦略のことです。顧客に「店舗で購入した」「ネットで購入した」などの購入経路を意識させないシームレスな購買体験を提供するところに特徴があります。
オムニチャネルの「オムニ」は“すべての・あらゆる”、「チャネル」は“集客経路・集客媒体”という意味を持ちます。
オムニチャネルが注目される背景
近年のアパレル業界でオムニチャネルが注目されている背景には、ひとつのチャネルに限定して販売する「シングルチャネル」や、複数の独立したチャネルで販売する「マルチチャネル」では、顧客のニーズを満たせず売上の確保が難しくなってきている実情があります。
そのため、多くのアパレル企業がオムニチャネル戦略の効果性に期待して、顧客に高い利便性や上質な顧客体験を提供することで売上確保・顧客のファン化・他者との差別化を図ろうと、オムニチャネル化に積極的に取り組んでいます。
実際にオムニチャネル化により成功した企業が増えてきたことや、スマホやSNSの普及によりオムニチャネルを提供できる環境が整ったことも、多くの企業がオムニチャネル化に取り組み始めた理由です。
特に現在では多くのアパレル企業が新型コロナウイルスの感染拡大による大きなダメージを受けているため、現状を打破するための戦略としてオムニチャネルへの注目度はますます高まりつつあります。
オムニチャネルについては以下の記事でも詳しく解説しているため、併せてご参照ください。
アパレル業界におけるオムニチャネル化の現状
順位 |
企業名(ネットショップ名) |
売上高(百万円) |
前年比(%) |
---|---|---|---|
1 |
ユニクロ |
107,600 |
29.3 |
2 |
ベイクルーズ |
51,000 |
29.0 |
3 |
アダストリア |
43,600 |
7.6 |
(※)【2020年11月調査】ファッションEC売上高ランキングTOP110|ネット経済研究所
上記の表はファッションECの売上高ランキングTOP3の企業です。
実はECサイトを保有しているアパレル企業で売上高上位にランキングしている企業は、程度の差はあれ、ほぼ例外なくオムニチャネルを実践しています。
上位ランキングの企業はいずれもアパレル業界のリーディングカンパニーと呼ばれる企業ばかりであり、実際に非常に大きな成果を上げていることからも、オムニチャネルの効果性・有用性は非常に高いことが伺えます。
今後のアパレル企業が売上を伸ばすためには、オムニチャネル化は必須であると言えるでしょう。
アパレル企業におけるオムニチャネル化の成功事例
オムニチャネル化について詳しく学びたい方は、実際に成功している企業の事例を参考にすると、戦略や施策から顧客の反響まで幅広く具体的にイメージできるためおすすめです。
ここでは、国内大手企業のオムニチャネル化成功事例についてご紹介します。オムニチャネルについて理解を深めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
事例1. ユニクロ
国内アパレル業界のトップ企業であるユニクロは、早期からオムニチャネル化に取り組み、売上拡大や顧客数増加、顧客満足度向上といった確実な成果につなげている企業です。
ユニクロのオムニチャネル戦略の特徴は、公式スマホアプリを積極的に活用することで、ECサイトと実店舗の連携を上手く行っている点にあります。具体例をいくつかご紹介します。
- ECサイトで購入した商品を、店舗で受け取ることができる
- EC専売品を店舗受け取りに来た顧客に対して、実店舗でのクロスセルにつなげる
- ポイント付与・キャンペーン・セールなどの特典を用意してスマホアプリ登録者増加を図る
- スマホアプリを活用して顧客データの一元管理を行い、マーケティング分析・施策に活かす
- チャットボット(UNIQLO IQ)による買い物サポートならびに顧客分析の実施
直近では、ビジネスウェアのオーダーメイドサービスも開始しており、オムニチャネルの仕組みを上手く活用した運用を行っています。
ユニクロはこのように先進的な技術をいち早く取り入れて、自社の顧客ニーズや顧客動向に合わせて巧みなオムニチャネル戦略を実践しており、大きな成果につなげています。
非常に完成度の高い成功事例であるため、これからオムニチャネルについて学びたい方や推進したい方は、必ずチェックしておきたい企業です。
事例2. アダストリア
複数のアパレルブランドを展開するアダストリアは、EC施策・オムニチャネルを積極的に推進して売上を伸ばしているアパレル企業です。
アダストリアのオムニチャネル戦略の特徴は、実店舗・ECサイトの両方を活用する顧客を増やすことに注力している点です。
スマホアプリの利便性を高めたりデータ連携を行ったりといった施策を実践しており、実際に大幅な顧客増・売上増といった成果につながっています。
また、同社はSNSを活用したオンライン接客や店舗スタッフによるスタイリング写真の充足といったデジタル施策にも尽力しており、コロナ禍の現在においてもECサイトによる売上を大きく伸ばしています。
アダストリア WEB事業(画像はアダストリアの決算説明会資料からキャプチャ)
ECサイト寄りのオムニチャネル施策や、デジタル技術の積極的な活用は、コロナ禍におけるアパレル企業のオムニチャネル推進において、非常に参考になるのではないでしょうか。
事例3. ユナイテッドアローズ
セレクトショップを展開するユナイテッドアローズは、独自のコンセプトで安定した人気を集めるアパレル業界のリーディングカンパニーです。比較的初期からオムニチャネル・O2Oに注力しており、堅調に売上を伸ばし続けています。
ユナイテッドアローズのオムニチャネル戦略の優れた点は、実店舗とECサイトそれぞれの長所を活かしつつ、片方の欠点を補うようなサービスを提供していることです。
例えば、以下のような施策が挙げられます。
- ECサイトから実店舗の在庫を調べられるサービス
- ECサイトで実店舗に商品を取り寄せて試着できるサービス
- 別店舗の在庫情報を即座に調べるサービス
- 実店舗での試着品の品番メモを渡してECサイトでの購買を促すサービス
- ワンクリックで全店舗・全ブランドの取り置きができるサービス
ユナイテッドアローズは実店舗を主体に展開しており、豊富な店舗数と店舗ならではのメリットを存分に発揮したオムニチャネル戦略を実践していることが特徴です。
単に販売チャネルを統合するだけでなく、各チャネルを上手くリンクさせて相乗効果を発揮している点は、これからオムニチャネル化に取り組むアパレル企業にとっては参考になるのではないでしょうか。
アパレル企業がオムニチャネル化するメリット
アパレル業界ではオムニチャネル化の推進がトレンドとなっていますが、具体的にどのようなメリットが得られるのかわからない方もいるのではないでしょうか。
ここでは、アパレル企業がオムニチャネル化を行うことで得られるメリットについてご紹介します。
メリットを把握して、オムニチャネル化推進の可否判断や戦略立案に役立てたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
顧客満足度の向上
オムニチャネル化によりチャネル間の垣根を無くせば、顧客は「好きな場所で」「好きな時に」商品を購入することが可能となります。
顧客は購買行動の自由度や利便性が飛躍的に高まるため、顧客満足度を大幅に高めることができるのが、アパレル企業がオムニチャネル化を行う最大のメリットです。販売機会・客単価・LTVすべてを高めることができるため、売上アップにも効果的です。
流行に左右されるアパレル商材は、アイテムの魅力だけでなく販売方法にも気を配らなければ、なかなか顧客の満足を得ることができません。
幅広い顧客の購買ニーズを満たせるオムニチャネル化による恩恵は、アパレル企業にとって非常に大きいといえるでしょう。
機会損失の防止
オムニチャネル化により時間・場所によらず多方面から商品・サービスを購入できる環境を構築すると、消費者の購入手段が増えて利便性が飛躍的に高まるため、販売機会損失を大幅に低減させることができます。
また、従来別で管理していた店舗の在庫やECの在庫を一元化することで、あるチャネルで完売している在庫が別のチャネルで余っているといった状況を回避して、売り逃しを無くすことも可能です。
アパレル商材はシーズン期間内にいかに在庫を売り切るかが経営上のポイントであるため、オムニチャネル化により販売機会を逃さず効率的に在庫を回転させられることは、非常に大きなメリットといえます。
顧客データの詳細分析
実店舗・ECサイト等のチャネルを独立して運営している場合は、仮に店舗で商品を購入した顧客がECサイトも利用していた場合、顧客のデータが紐づかないため的確な顧客ニーズを掴むことはできません。
オムニチャネル化を行えば、各チャネルの顧客情報も一元管理することができるため、顧客動向・売れ筋アイテム・トレンド情報といった詳細な分析を行うことが可能です。
各チャネルを個別に運営している場合よりも顧客データを効果的・有効的に活用することができるため、顧客ニーズに合わせた最適な販売戦略の立案や最適化されたサービスの提供へとつなげることができます。
顧客ニーズに合わせてビジネスを行うことは、時期による変動が激しいアパレル業界においては非常に重要であるため、顧客データを一元化できるオムニチャネルのメリットは大きいといえるでしょう。
アパレル企業がオムニチャネル化するデメリットはある?
これまではオムニチャネルによるメリットをご紹介してきました。アパレル企業がオムニチャネル化により得られるメリットは非常に大きいですが、実際にはデメリットもあります。
アパレル企業がオムニチャネル化する際に懸念されるデメリットには、以下が挙げられます。
導入コストが高い
オムニチャネル化は大規模なシステム導入による仕組みの構築が不可欠であるため、非常に高額のコストが必要となる点がデメリットです。まとまったコストが用意できない場合はオムニチャネル化を実現することは難しいでしょう。
システム導入・仕組み作りのハードルが高い
オムニチャネルは全社を挙げて各チャネルを統合する必要があるため、導入には莫大な労力が必要となります。新しいビジネススキームを全社に浸透させる必要もあります。このようなハードルの高さが障壁となり、オムニチャネル化に踏み切れない企業も少なくありません。
実店舗のショールーム化の可能性
オムニチャネル化により顧客の利便性が高まると、手軽に買い物ができるECサイトやアプリの利用が促進され、実店舗の売上が落ちてしまう場合があります。実店舗では商品を確認するだけで、購入はECサイトというショールーム化が進むこともあります。顧客が望む購入体型を提供しているという視点ではショールーム化自体はデメリットではないのですが、これまで通りの店舗ごとの売上を重視した評価の仕組みのままだと、店舗の理解や協力を得ることができず、従業員のモチベーションを下げる可能性があります。
このようなデメリットからオムニチャネル化に躊躇してしまう企業は少なくありませんが、今後のオンライン需要の高まりや人々の消費行動の多様化といった傾向を考慮すると、デメリットを押し切ってでもオムニチャネル化を推進した方が良いと言えるでしょう。
上質な顧客体験を提供できるオムニチャネル化に成功すれば、デメリットを払拭できるだけのメリットを得ることができます。
次章では、オムニチャネル化におすすめのECパッケージ「SI Web Shopping」をご紹介します。
オムニチャネルに対応|ECパッケージ「SI Web Shopping」
オムニチャネルは、各チャネルを統合してスムーズに機能させてこそ、はじめて真価を発揮することができるため、オムニチャネル構築のベースとなるシステムの選定は非常に重要です。
これからオムニチャネル化を推進するアパレル企業におすすめの製品が、弊社が提供する「SI Web Shopping オムニチャネルEC構築パッケージ」です。同製品の特徴・おすすめポイントについて以下にご紹介します。
- 実店舗の販売管理システムとECサイトをスムーズに連携して情報の一元管理を実現
- 売上アップに効果的なオムニチャネルテンプレートによりスムーズなオムニチャネル化が可能
- リアルタイム在庫一元管理によりスムーズな在庫コントロールを実現
- オンライン・オフラインにおける販促施策の共通化をスムーズに導入可能
- 充実した業務運用支援機能によりバックオフィス業務の効率化・負荷軽減が可能
「SI Web Shoppingオムニチャネル EC構築パッケージ」であれば、オムニチャネル化に伴うさまざまな課題を解決して、各チャネルの利点を最大限発揮できる仕組みを構築することが可能です。堅牢性・信頼性・柔軟性にも優れており、これからオムニチャネル化を推進するアパレル企業のあらゆるニーズにも対応することができます。
オムニチャネル化を実現するための確かなシステムをお探しの方は、ぜひ弊社の「SI Web Shoppingオムニチャネル EC構築パッケージ」をご検討ください。
まとめ
現在アパレル業界では多くの企業がオムニチャネル化の推進に躍起になっており、既にオムニチャネル化で成功を収めている企業や、盤石な体制を整えている企業も多く存在しています。
新型コロナウイルスの感染拡大により実店舗での購買行動が落ち込んでいる今こそ、各チャネルを独立して稼働させるのではなく、オムニチャネル化によりチャネルを統合した販売体制を構築することが非常に効果的です。
今後のアパレル企業の売上確保・売上拡大に繋がる可能性も大きいと言えるでしょう。
弊社では、オムニチャネルの概要ならびにオムニチャネル化推進について詳しくご紹介した資料も提供しています。オムニチャネルについて知りたい方や、オムニチャネルを推進したい方は、ぜひご活用ください。
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