IT・Web分野はテクノロジーの進化・発展が目覚ましく、私たちの身近にあるスマートフォンで利用するアプリについても例外ではありません。今後のアプリの新しい形態として話題となっているのが、「スーパーアプリ」です。
当記事では、スーパーアプリの概要から、誕生・普及の背景、主な成功事例、活用するメリット・デメリットなど、スーパーアプリに関する情報を幅広くご紹介しています。
スーパーアプリは既に海外では複数の成功事例が出ており、日本国内でもスーパーアプリが増えていくことが予想されます。アプリを活用したビジネスを行っている方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
スーパーアプリとは
スーパーアプリとは、日常生活に必要なあらゆる機能を統合して提供することを目指すアプリのことです。ひとつのスーパーアプリからさまざまなアプリにアクセスでき、プラットフォームの役割を果たします。
ソーシャルメディア・メッセージング・決済・送金・予約・EC・音楽といった各種サービスを1つのアプリでまとめて提供することが可能となり、ユーザーは多種多様なサービスを利用できるため、簡便性・利便性が非常に高いことが特徴です。
サービス提供側にもユーザー側にも大きなメリットがあることから、従来のスマホアプリに代替される新しいアプリの在り方として、多方面から期待と注目を集めています。
ミニアプリや既存のアプリとの違い
スーパーアプリについて理解するには、ミニアプリや既存アプリといった関連性の強いアプリとの違いも把握しておく必要があります。それぞれについて解説します。
ミニアプリとの違い
スーパーアプリがプラットフォームであるのに対して、ミニアプリとは、スーパーアプリをプラットフォームとして動作するアプリケーションのことです。いわばアプリの中のアプリです。
スーパーアプリ自体がさまざまなサービスを提供するのではなく、実際のサービス提供は各種ミニアプリによって行われることを理解しておく必要があります。
既存アプリとの違い
スマホアプリ(ネイティブアプリ)とも呼ばれる既存のアプリは、ひとつひとつ単体で端末にインストールすることで活用します。
プラットフォーム等を必要とせず単体で動作する点がスーパーアプリ・ミニアプリとの違いです。
スーパーアプリが誕生した背景
スーパーアプリは中国で生まれ、その後も東南アジア圏で発展してきました。欧米のIT先進国ではなく中国で誕生した理由は、スマホ端末が普及した経緯が欧米とは異なるためです。
欧米諸国はPCが普及した後に徐々にスマホが普及しましたが、中国を中心とするアジア圏の新興国では、PCからの段階的移行ではなくスマホが一気に普及した背景があります。
中国国内で多くのシェアを占める大手IT企業は、突然出現したスマホアプリの巨大なマーケットに対して、欧米諸国の実績あるビジネスモデルを参考に一気にシェアを拡大しました。その中で作られたのが、さまざまな機能を統合したアプリです。これがスーパーアプリの始まりと言われており、実際にこのアプリが多くのシェアを獲得したことから、アジアの新興国各国の企業もスーパーアプリの提供を進めました。
中国ではECの発展も目覚ましく、オムニチャネルに続くオンラインとオフラインの融合を図るマーケティング施策「OMO」の先進国でもあります。OMOの推進にはスマホアプリによる施策が重要であり、スーパーアプリの普及・発展が大きく寄与している側面もあります。
OMOについては、以下の記事で詳しく解説しているため、是非ご参考下さい。
OMOとは?意味やマーケティング施策の事例、O2O・オムニチャネルとの違いについて解説
日本におけるスーパーアプリの広がり
2022年1月時点において、スーパーアプリの代表的な成功事例はすべて海外のものであり、日本国内で「スーパーアプリの成功例」として取り上げらる事例は多くありません。しかし、スーパーアプリ化の兆候は各方面で見られています。
- LINE
国内では最もスーパーアプリ化に近しい取り組みを実践
- Yahoo!JAPAN
PayPayへの注力によるスーパーアプリ化戦略
- 大手通信キャリア(Docomo・au・SoftBank)
金融・決済サービスを中心としたサービスの集約
LINEとYahoo!Japanを運営するZホールディングスは、GAFAに対抗すべく2019年に経営統合を行いました。国内でスーパーアプリ化が進んでいる2強が統合したことで新たなスーパーアプリ登場の可能性が囁かれています。
国内大手IT企業もスーパーアプリ化に注力する可能性もあり、今後は国内でスーパーアプリの競争激化や新たなイノベーションが起こることも十分考えられます。
スーパーアプリの必要性
スーパーアプリが注目を集めている背景には、従来のスマホアプリに次のような課題があるためです。
- 利用するアプリごとにダウンロード・インストールする必要がある
- ユーザー情報の登録・管理は各アプリごとに個別に行う必要がある
- 都度アプリを起動する手間がかかる
- 端末の容量を圧迫する
従来のスマホアプリは、このようにユーザーの手間・負担となる要因が多くありますが、スーパーアプリはプラットフォームでのサービス提供によりこれらの課題をまとめて解決することが可能です。
現代のビジネスシーンでは顧客満足度・顧客体験の向上が重視されているため、従来のスマホアプリのデメリットを払拭する手段としてスーパーアプリが求められはじめているのです。
代表的なスーパーアプリの事例
スーパーアプリについて理解を深めるには、実際の成功事例を参照するのが近道です。ここからは、代表的なスーパーアプリの成功事例についてご紹介します。
WeChat(ウィーチャット)は、中国のTencent社が運営するメッセンジャーとSNSの機能が融合したアプリです。スーパーアプリ・ミニアプリの仕組みを初めて導入したアプリとして知られており、ショッピングやキャッシュレス決済、チケットやホテルなどの予約機能といった幅広い機能を搭載しています。
現在ではミニアプリの数が100万を超えていると言われており、社会生活で必要となる多くのサービスがWeChat内で完結できてしまうほどです。中国国民の大半が使用していると言われるほどのITインフラに成長しています。
Alipay
Alipay(アリペイ)は、中国の阿里巴巴集団(アリババグループ)が提供する東南アジア最大級のキャッシュレス決済サービスです。中国国内を中心に10億人以上のユーザーを抱えており、オフラインでの幅広い決済シーンに対応しています。
キャッシュレス決済からスタートしたAlipayは、タクシー配車・バイクシェアリング・資産運用・医療関連・信用スコア診断などさまざまなミニアプリが統合され、非常に利便性の高いスーパーアプリへと進化しています。
Grab
Grabは、2012年にマレーシアで誕生した、東南アジア最大の配車サービスを中心としたスーパーアプリです。Grab社は設立後すぐにシンガポールに本社を移し、現在では東南アジア約330の都市圏に展開するまでに成長しています。
同アプリでは、車の手配・運転手とのコミュニケーション・料金支払までをアプリ内で完結できるため、効率性・安全性に優れているのが特徴です。
配車サービスに加えて決済・ローン・自動車保険等の各種サービスも提供しており、各都市の事情に合わせてカスタマイズされた統合的なアプリを展開することで、圧倒的なシェアを獲得しました。
LINE
LINEは、日本国民の約半数というシェアを誇るスマホ向けのチャット・通話アプリです。
厳密にはスーパーアプリとして分類されていませんが、LINEアプリをプラットフォームとして、店舗予約・クーポン・音楽・決済・送金・ゲームなどさまざまなミニアプリが利用可能となっており、極めてスーパーアプリに近いサービスを展開しています。
LINEの普及は日本国内にとどまっており、現状の規模は前述のスーパーアプリ事例には及びませんが、今後提供するサービスが充実してスーパーアプリへと発展する可能性は十分に考えられます。
企業がスーパーアプリを展開するメリット
多くの企業がスーパーアプリに注目を集めている理由は、企業にとってさまざまなメリットがあるためです。
ここでは、企業がスーパーアプリを展開することで得られる主なメリットについて、従来のスマホアプリとの比較を交えてご紹介します。スーパーアプリの展開を考えている方は、どのようなメリットがあるのかを把握しておきましょう。
ユーザーを獲得しやすい
スーパーアプリは、プラットフォームとなるスーパーアプリさえインストールされていれば手軽に複数のミニアプリを活用することができます。従来のアプリのように都度ダウンロード・会員登録を行う必要が無いためアプリ利用のハードルが低く、ユーザーを獲得しやすいことが大きなメリットです。
いくら優れたアプリを開発しても、ユーザーに利用されなければ意味がありません。アプリ・サービスの利用率を高める簡便性・利便性を備えていることは、ビジネスを推進する企業にとって大きなアドバンテージと言えるでしょう。
アプリが削除されにくい
8割以上のユーザーが、利用しなくなったアプリを削除すると言われており、その理由には端末のホーム画面の整理・端末の容量節約などが挙げられます。一度削除されたアプリが再びインスト―ルされる機会は少ないため、アプリが削除されてしまうことは提供側にとっては大きな懸念となります。
スーパーアプリであれば、ミニアプリをひとつのプラットフォームで管理できるため、多少利用頻度が下がった程度では削除されにくいという傾向があります。ユーザーの端末上に残っていれば、再度利用される機会もあるため、アプリを提供する企業側にとっては機会損失の低減に繋がります。
さまざまなサービスを展開できる
スーパーアプリは、同一プラットフォーム上にミニアプリを集約することができるため、多種多様なサービス展開を行いやすいことが大きなメリットです。新しくリリースしたサービスにも既存ユーザーを呼び込みやすいため、シェアの獲得や集客に成功しやすいと言うメリットもあります。
従来のスマホアプリでは個々にサービスを展開する必要があるため、多種多様なサービスを展開することは容易ではありません。集客やアプリ展開を集約できることは、事業の成長・拡大を目指す必要がある企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
開発コストが抑えられる
スーパーアプリを展開すれば、プラットフォーム上で動作するアプリ(ミニアプリ)の開発コストを大幅に低減できることも企業側のメリットです。
一般的なアプリ(ネイティブアプリ)は、iOS・Androidで別々にアプリを開発する必要がありますが、スーパーアプリ上で動作するミニアプリは、ひとつのアプリで両方のOSに対応できるためです。
異なるアプリをバラバラで作成するより開発工数を削減できるため、アプリをリリースする期間も短縮することができます。ビジネスを展開する企業にとってのメリットは非常に大きいでしょう。
ユーザーがスーパーアプリを利用するメリット
スーパーアプリは、提供する企業側だけでなくユーザー側にとってもたくさんのメリットがあります。ここでは、ユーザーがスーパーアプリを利用することで得られる主なメリットについてご紹介します。
スーパーアプリに関心が高い方や、スーパーアプリの提供を検討している方は、ユーザー側の視点についても確認しておきましょう。
手軽に取得・登録できる
スーパーアプリで活用するミニアプリは、プラットフォームと会員データ・利用データ等が紐づけられています。そのため、ユーザーはプラットフォームに一度会員登録を行っておけば、利用するミニアプリに簡単な操作で会員登録を行うことができます。
通常複数のアプリを利用する際には都度会員登録を行う必要があり、登録・管理の手間が掛かります。煩雑な会員登録の手間を省いてたくさんのアプリを利用できることは、スーパーアプリを利用するユーザーの大きなメリットと言えるでしょう。
アプリを探す必要がない
たくさんのアプリを利用していると、どのアプリがどこにあるか、そもそも入れていたかどうかわからなくなります。利用頻度の高いアプリであれば、最初のホーム画面に集約されていたり、アプリを配置した場所を覚えているかもしれませんが、利用頻度が低いアプリの場合、探すところからスタートしなければなりません。
スーパーアプリは利用頻度の高いサービスが軸となり作られています。そもそもの利用頻度が高く、そのアプリ内にさまざまなミニアプリが集約されているので、利用頻度の高くないものであってもすばやくアクセスすることができます。
スーパーアプリのデメリット
スーパーアプリはメリットや成功事例ばかりが注目されがちですが、実際にはデメリットとなる側面も存在します。これからスーパーアプリの提供や活用を検討している方は、効果を発揮するためにもメリット・デメリットの両側面を把握しておくことが必要です。
ここでは、スーパーアプリのデメリットについてご紹介します。
参入が難しい
スーパーアプリの特徴は、1つのアプリにたくさんのサービス(ミニアプリ)が集約されていることです。自社で提供できるサービスがたくさんあることが前提となるため、ビジネスとして多角化されていない状態だと参入が難しいといえます。自社のサービスではなく、さまざまなパートナーのサービスを組み込むということも検討できますが、自社が魅力的なプラットフォームでない場合、パートナー側が参画するメリットが小さく、なかなか進まないでしょう。
スーパーアプリに参入するには、
- すでに多くのユーザーに利用されているアプリを提供している
- そのアプリの利用頻度は高い
- 自社でさまざまなサービスを展開している、もしくはパートナーを募ることができる
といった要件を満たせる必要があり、容易には参入することはできないでしょう。
機能過多になり使いづらくなるリスク
スーパーアプリは多数の機能やミニアプリのサービスが集約されているのがメリットですが、ユーザーの利便性についてはスーパーアプリのUI・UXにより大きく左右される点に注意が必要です。
あまりに機能性を追求するあまり、機能過多になりすぎたり操作性が悪くなったりしてしまっては、スーパーアプリのメリットを活かすことは難しいでしょう。特にスマホという端末では機能性と操作性の両立が難しいため、バランスを考えてUI・UXを設計することが求められます。
まとめ
次世代のスマホアプリの在り方と言われているスーパーアプリについてご紹介してきました。海外で誕生したスーパーアプリですが、日本国内でもスーパーアプリ化の流れが進みつつあります。
現代はモバイルファーストの時代となってきており、企業がビジネスを展開するにあたってアプリの活用は必要不可欠です。利便性を求める顧客からの、スーパーアプリに対する需要は今後高まっていくでしょう。スーパーアプリを提供する企業側にとってもより良い顧客体験を提供しやすいというメリットがあります。
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