IT・インターネット業界は常時進化を続けており、非常に変化が激しい業界であることは周知の事実です。IT・インターネットを活用した商取引を行うEC業界も例外ではありません。
本記事では、2021年のEC業界のトレンドと今後の動向について、業界の歴史・市場規模・コロナ事情を踏まえて解説しています。
既存のEC実践企業も新規に参入する企業も、ECで結果を出すためには業界事情や技術動向といったトレンドを押さえることがポイントとなります。2021年ならびに今後のEC業界について興味・関心がある方は、ぜひ参考にして下さい。
「EC」の定義とは?
細かなトレンドの前に、ECとはどこからどこまでの話なのか、定義をおさらいしておきましょう。
ECとは、「Electronic Commerce(エレクトリックコマース)」の頭文字から取ったワードです。日本語に直訳すると、「電子商取引」という意味になります。
電子商取引とはつまりインターネット上で商品・サービスの売買を行うことを指しており、具体的にはECサイト(通販サイト)での物販・コンテンツ配信・予約サイト・オンライントレードなどが挙げられます。
ECの定義については、経済産業省がOECD(経済協力開発機構)の定義を引用し、以下のように定めています。
広義ECの定義
「コンピューターネットワークシステム」を介して商取引が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるもの
狭義ECの定義
「インターネット技術を用いたコンピューターネットワークシステム」を介して商取引が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるもの
引用:平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備|経済産業省
ECとはなにかについてはこちらの記事でも解説しています。
EC(E-Commerce)とは?
EC業界の歴史
現代においてはインターネット通販で商品を購入することが当たり前となり、EC業界は私たちの生活において無くてはならない存在といっていいほど浸透しています。しかし、当然ながらECは遥か昔から存在したわけではありません。
ここでは、ECの誕生から市場が拡大した転換期まで、EC業界の歴史についてご紹介します。
EC業界について詳しく知りたい方は、同業界がどのような経緯を辿って成長してきたかを知っておきましょう。
EC業界の誕生
日本でECに取り組む企業が増え、業界が本格的に拡大したのは、パソコンや通信インフラといったECに必要な環境が整った1996年頃だといわれています。
各家庭にパソコンが普及する契機となったWindows95が発売された翌年には、既にEC業界が誕生していたことになります。弊社で提供するSI Web Shoppingが日本初のECサイト構築パッケージとしてリリースされたのも1996年のことでした。
1997年には楽天市場、1999年にはYahooショッピング、2000年にはAmazonが日本国内でサービスを開始しており、大小さまざまな企業がEC業界に参入するきっかけとなる3大ECモールの基盤は、2000年には既に完成していました。
誕生からあっという間に成長地盤が整ったEC業界は、モール型ECへの参入企業が増え続け、その後も順調に市場規模は右肩上がりに成長していきます。
EC業界の転換期
成長を続けるEC業界に、さらなる飛躍をもたらした出来事に、「スマートフォンの普及」が挙げられます。2009年にはiPhone3の日本での発売をきっかけにスマホは爆発的に普及し、消費者はパソコンだけでなくスマホから時間・場所を問わずECを楽しめる環境が整いました。
ECを運営する企業側もスマホ普及に合わせて、ECサイトのレスポンシブ対応や、オンラインクーポンの普及、大手モールの即日配送サービスの開始、SNSの活用などといった、消費者の利便性を高める施策を次々と開始しました。そして、2015年にはEC市場は8兆円市場まで成長しました。
同年以降はECサイトと複数チャネルを連携させたオムニチャネル化や、配送業者のサービス充実、決済の多様化、越境ECの登場など、消費者の利便性はますます高まり、EC業界ならびにその市場規模は今なお成長を続けています。
新型コロナウイルスが与えるEC業界への影響
新型コロナウイルスの感染拡大は、飲食店をはじめとする実店舗型のビジネスに大きな打撃を与えました。
一方でEC業界は、コロナ禍において大きな成長が見られた業界です。巣篭もり需要の増加や実店舗型を利用していた消費者の流入により、2020年は著しい成長が見られました。
これには、消費者の他人との接触を避けたいという心理や、ECを利用して利便性や有用性を認識した方が増えて定着したことも一因として考えられます。ECの利用増と合わせて、置き配など商品の受け取り方も非対面が増加しています。いずれにしても、コロナ禍がEC業界の成長を後押ししたことは間違いないといえるでしょう。
以前からECに取り組んでいた企業は実店舗の売上減をECで全てではないにしろカバーすることが出来ましたが、非接触経済は当面継続することは明らかであるため、今後は生き残りを賭けてEC業界に参入する企業は激増することが予想されます。
EC市場自体は成長を続けていくでしょうが、EC業界のプレイヤーには好ましい影響だけではなく、競争の激化や不慣れな消費者との受発注・配送トラブルの増加など、リスクとなる影響も懸念されます。物流の課題解決にはドローンや自動運転技術、ロボット配送などのテクノロジーが期待されていますが、技術的な問題と法整備の問題があるため、時間を要すると考えられます。
また、終わりの見えないコロナ禍においては、消費動向の変化による影響も見逃せません。必然的に生活必需品の需要は高まり、娯楽品・嗜好品の需要は控えめとなるなど、同じEC業界においても商品カテゴリーによる差が見られます。
今後の時流によっては、その傾向はますます顕著となるでしょう。
EC業界の市場規模は?
EC業界の市場規模は拡大を続けていることは先に述べた通りですが、実際にどの程度の市場規模があるのか知りたい方もいるでしょう。
EC業界の市場規模は、ビジネスモデルによって以下2つのタイプに分けられます。
BtoC(Business to Consumer)
企業が個人を対象に販売するビジネスモデル
BtoB(Business to Business)
企業が企業を対象に販売するビジネスモデル
一般的にいわれているECは、ネットショッピングを中心とした前者のBtoCのモデルを指す場合がほとんどです。
「BtoC」「BtoB」のEC業界における市場規模について、経済産業省のデータを用いて以下に解説します。
EC業界の市場規模(BtoC)
出典:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査|経済産業省
インターネット通販による一般消費者を対象としたECの市場規模は、2019年時点で19兆3609億円となっています。市場は拡大し続けており、コロナ禍による後押しもあることから、2021年現在においては20兆円をゆうに超えているといえるでしょう。
上記のBtoCのEC市場規模はデジタルコンテンツ販売やサービス提供も含まれている金額となります。物品売買のネットショッピングにフォーカスすると、2019年時点で10兆515億円というデータが同じ資料にて示されています。
いずれにしても、BtoCのEC市場は巨大なマーケットであることが理解できると思います。
EC業界の市場規模(BtoB)
出典:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査|経済産業省
オンラインによる企業間商取引であるBtoBの市場規模は、2019年で352兆9620億円と非常に巨大な市場であることがわかります。BtoBのEC市場はBtoCの取引よりも単価が大きいことと、商流が多段階であることから、BtoC EC市場よりも大きな市場となっています。
グラフで見ると市場の拡大は緩やかに見えますが、2018年から2019年の間だけでも約8兆7000億円以上も拡大しています。
上記でご紹介したBtoC・BtoBを合算したEC市場は非常に巨大であり、今後の拡大も見込まれるため、ビジネスチャンスに満ち溢れた非常に活況なマーケットといえるでしょう。
EC業界のトレンドは?
EC業界は、テクノロジーの進化や消費者動向の変化の影響を大きく受けながら成長してきた業界であることは、先にご紹介した通りです。
そのため、EC業界で2021年ならびに今後においても飛躍し続けるためには、業界のトレンドを把握しておくことが非常に重要となります。トレンドに乗ることで、時代に合った戦略・施策を実施することに繋がります。
ここでは、現時系列におけるEC業界のトレンドについてご紹介します。ぜひ参考にして下さい。
複数チャネルへの参入
顧客との接点のことを「チャネル」といいますが、近年では実店舗・ECサイト・SNS・Webメディア・アプリなど複数のチャネルを併用して販売促進を図る戦略がトレンドとなっています。この複数のチャネルを活用する考え方を、マルチチャネルといいます。
ECサイトと実店舗の併用が基本的な考え方となりますが、EC専業の事業者においてもSNS・動画・Webメディアを併用することで効果的な戦略となります。
また、複数チャネルをそれぞれ独立して運用するのではなく、各チャネルを連携させて顧客にプロモーションやサービス提供を行う戦略も見られるようになりました。このような考え方を「オムニチャネル」と呼び、マルチチャネルを進化させたような概念となります。
オムニチャネルでは、顧客は時間・場所・チャネルに依らない購買行動が可能となり、顧客満足度や顧客体験の向上ならびに売上拡大が期待できるとして、今後EC業界の主流となる戦略として期待されています。
オムニチャネルの事例についてはこちらの記事でもご紹介しています。
オムニチャネルとは?事例から学ぶ実施のポイント
SNSを活用したプロモーション
発信者も読者も手軽に扱えるSNSはECとの相性が良く、情報発信によるプロモ―ションから双方向コミュニケーションによるアフターフォローまで幅広く活用されています。
ECサイトにSNSを活用することには、以下のようなメリットがあります。
- ECサイトへの導線を作りやすい
- 拡散力に優れており、商品情報やレビューの拡散が期待できる
- オムニチャネル・マルチチャネル等のトレンドの手法と親和性が高い
- SNS広告・SNSキャンペーン・インフルエンサー活用などさまざまな施策を実施できる
- 各SNS同士を組み合わせたプロモーションも効果的
近年ではSNSの有用性の高さは浸透しており、ECサイトにおいても当たり前のように活用されるようになってきています。
また、一部のSNSではECショッピング機能が付加されており、プロモーションに留まらずSNSをECサイト化してダイレクトに販売することもできます。
SNSはユーザー数も増え続けており活用事例も豊富であるため、EC分野におけるSNS活用は今後更に勢いを増すと考えられます。
SNSはオフィシャルな情報発信だけでなく、少しくだけた面白い投稿が共感を呼び、多くのユーザにシェアされることもあります。こうした拡散を「バズる」といいますが、ECを取り巻くプロモーションや顧客とのコミュニケーションもSNSが中心となってきています。
バズるについては以下の記事で詳しく解説しています。
バズるとは? Twitter・インスタ・TikTokでの事例から読み解く法則と必要な施策を解説します
D2Cブランドの拡大
D2C(Direct to Customer)とは、企業が商品やサービスの企画・製造・販売までを一貫して行い、中間業者を介さず直接商品やサービスを提供するビジネスモデルのことです。
D2C企業の特徴は、消費者の意見や要望が商品やサービスに反映されやすい点や、革新的・独自的な商品やサービスを提供している点にあります。
アイデアとマーケティング次第では大きく飛躍する可能性を秘めており、近年ではさまざまなジャンルのD2Cブランドが拡大傾向にあります。
D2Cブランドの多くはECをメインの販売チャネルに活用しており、今後D2CはEC業界の成長を担う存在として注目されています。
D2Cについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「D2C」とは?注目される背景やメリット、成功事例まで解説!
越境ECの拡大
コロナ禍は国内の人の移動を絶っただけでなく、日本と海外との人の往来も断ち切りました。このような状況下で、国境を超えたeコマースである越境ECの存在感が強まっています。
海外渡航が難しくなった今では、海外の商品をECサイトで購入する流れが強まっています。
しかし、国内における越境ECはまだまだ発展途上であり、多言語対応・海外決済・海外物流・法令など多数の課題や障壁があることから、現状において海外消費者への対応は十分ではありません。
2020年において越境ECの流通額は過去最高額を記録したと公表されていますが、多大なニーズに対して対応が追い付いていない部分もあるため、まだまだ大きな伸びしろがある分野といえるでしょう。
決済方法の多様化
ECサイトは決済方法が豊富であるほど売上が上がる傾向にあり、ECサイトの運営にあたって決済方法を充実させることは非常に重要です。望んだ決済方法が用意されていないと、決済画面で顧客が購入をやめてしまう「カゴ落ち」が発生してしまう恐れがあります。
ECサイトの決済方法では、クレジットカードが多く使用されていますが、これに加えてコンビニ決済・代金引換・銀行振込などの決済方法は最低でも選択できるようにすべきでしょう。
また、近年ではキャッシュレス化の影響やセキュリティ意識の高まりもあり、新たに登場したモバイル決済・ID決済・電子マネー決済などのニーズも高まっています。
各決済方法は利用手数料が発生するため、より多くの決済方法を用意すると管理の手間やコストが増加することがネックです。しかし、チャンスロスを避けるためにもできるだけ多くの決済方法を用意することが重要です。
顧客の年齢やニーズによってどのような決済方法を好むかは異なるため、すべての決済方法を用意できない場合は顧客の傾向に合わせて導入する決済方法を見極めることも重要です。
決済方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【EC決済方法 おすすめ8選】それぞれのメリット・デメリット、選び方まで解説
AI技術の活用
近年ではさまざまな分野でAI(人工知能)技術の活用が注目されていますが、EC業界においても既に活用が始まっています。
以下は、実際にECで活用されているAIの事例です。
- 訪問者の行動や履歴をAIが自動分析して、メッセージ・クーポン・バナーを表示
- 顧客の反応をAIが予測して、最適な提案に繋げて販売促進を行う
- AIの接客結果を蓄積して、今後の接客パターンを最適化
ECとAIは親和性が高く、従来の静的な画像・テキストによる商品販売だけでなく、インタラクティブな接客を可能としてくれます。人的リソースも不要で、購入率やリピート率を自動的に高めることが可能です。
効果性・有用性の高さは立証されており、今後は更に進化したEC向けAIの登場や、AI技術を活用するECサイトの増加が予想されます。
物流強化の必要性
EC業界が今後も成長を続けるためには、新たなテクノロジーや施策を取り入れるだけでなく、商品を消費者に送り届けるための物流インフラの強化が重要です。
EC業者に配送サービスを提供する物流業者においては、慢性的な人手不足の解消や配送の効率化・最適化が大きな課題となるでしょう。
また、プレイヤーであるEC業者においては、マルチチャネル化やオムニチャネル化に伴って在庫管理が煩雑になったり、発送業務が増加して作業負荷が増えたりという課題も出てきます。EC業者は適正な在庫管理方法や配送システムの構築などの変革を検討する必要があります。
オムニチャネルやプロモーションへの尽力も重要ですが、物流も含めてのECであるため、トレンドに乗って成長したい企業は、物流強化も含めて包括的に取り組むことが重要です。
EC業界への参入を目指すには?
EC業界へ参入するためには、商品・サービスを販売・提供するためのECサイトが必要です。ECサイトの構築方法には「モール出店」「ASP」「オープンソース」「パッケージ」「フルスクラッチ」など、さまざまな方法がありますするためには、商品・サービスを販売・提供するためのECサイトが必要です。ECサイトの構築方法には「モール出店」「ASP」「オープンソース」「パッケージ」「フルスクラッチ」など、さまざまな方法があります。
それぞれの構築方法にはメリット・デメリットがあるため、売上規模・機能性・カスタマイズ性・ランニングコスト等のさまざまな条件を比較検討して、最適な構築方法ならびにシステム・サービスを選定することが重要です。
ECサイトの構築方法については弊社の以下の記事でも詳しく解説しているため、EC業界への参入を目指す方はぜひご参考にしてください。
【ECサイトの構築方法】初心者でもわかるように全方法を徹底解説!
ECパッケージ「SI Web Shopping」
ECサイト構築方法のひとつであるECパッケージは、ECサイトの構築から運営までの必要な機能をパッケージ化したソフトウェア製品のことです。
弊社が提供する「SI Web Shopping」は、1,100サイトを超える豊富な導入実績を誇る、年商数十億またはそれ以上の中規模から大規模のEC事業者様を対象としたECパッケージです。
「SI Web Shopping」は、以下のような特徴・優位性を持っています。
- リリース以来20年以上活躍してきた実績を持ち、信頼性・堅牢性・安定性に優れている
- 数多くのマーケティングソリューションとの連携機能を標準搭載
- ソースはお客様に開示しており、カスタマイズ性に優れている
- 複数チャネル展開に必要なAPIを標準搭載
- 豊富なテンプレートとオプションを活用することで、低コストでスピーディーなECサイト構築が可能
一般的なECパッケージと比較してカスタマイズ性に非常に優れており、高度なECサイト・運用システム構築にも対応できることが「SI Web Shopping」のセールスポイントです。競合との差別化や競争優位性の発揮にもおすすすめです。
ECサイトの構築にECパッケージを活用したい方は、ぜひ「SI Web Shopping」をご検討下さい。
まとめ
EC業界について現在のトレンドを中心にご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
コロナ禍によるオフライン販売の低迷・非接触経済への適応・販売チャネルの拡大などの理由により、EC業界への新規参入を考えている方や既存のECサイトを強化(リプレイス)したい方は少なくないと思います。
弊社では、現在多くの企業が抱える課題を解決すべく、上記のような方を対象としたECサイト構築の基礎から応用までを学べるガイドブックを提供しています。
以下のサイトからダウンロードできますので、ご興味のある方はぜひご覧になって知識の充足に役立てて下さい。
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