会計監査とは?目的や具体的な内容、準備すべき項目について徹底解説

 2022.09.15  株式会社システムインテグレータ

企業の経営者や経理を担当する方は「会計監査」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。しかし、一般的になじみのある言葉とはいえず、詳しく把握していないという方も多いのではないでしょうか。
会計監査は経済秩序の維持発展に重要な役割を果たしています。この記事では会計監査について、概要や監査を行う際の準備について解説します。 

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会計監査とは

会計監査とは?目的や具体的な内容、準備すべき項目について徹底解説

会計監査は企業の信頼に関わる重要な役割を担っています。会計監査とは、企業・行政機関・公益団体などの財務諸表や計算書類の中身が正確かどうかを、組織と利害関係のない第三者が調べるものです。

会計監査では公認会計士や監査法人により、「貸借対照表」「損益計算書」「売掛金・買掛金残高」「伝票」「引当金」「経理処理状態」などが精査されます。

なお、監査対象が公的機関の場合もあり、その場合は「公監査」ともいわれます。

会計監査の理解を深めるには、会計と監査それぞれについて知っておかなければなりません。ここでは、会計と監査の概要について解説します。また、会計監査を行う目的や時期についても確認しましょう。

会計とは

会計は「財務会計」と「管理会計」に分けられます。

財務会計は、企業が必ず実施しなければならないものです。財務諸表を作成・公開することにより、会社の利害関係者に説明責任を果たします。

管理会計は、会社任意で行われるので法的な義務ではありませんが、企業経営の判断材料として活用できます。

このうち会計監査の対象になるのは「財務会計」です。

財務会計、および管理会計についての詳細は、こちらの記事もご覧ください。

財務会計とは?システム導入による効率化のポイント

管理会計とは?財務会計との違いや脱Excel・システム化のポイント 

監査とは

監査とは、企業などの組織が公表している情報について、第三者が企業の情報が正しいかどうかを検査し意見を表明することです。企業の監査には「内部監査」「内部統制監査」「外部監査」があります。

内部監査

内部監査は、企業の内部で行う監査です。会社が任命した監査室や内部統制室が監査を行い、社内で法律や社内規則が遵守されているかの確認を行います。その結果は経営層に報告し、年に1回の内部監査報告書にまとめます。

また、内部監査は内部統制監査の一つとして、企業の運営を維持することに役立てられているのです。

内部統制監査

内部統制監査は、企業の目標達成のために社員が守るべきルール(内部統制)を、外部の監査法人がチェックして意見を表明するものです。

内部統制の目標には、「業務の効率を高める」「財務関連情報に信頼性を持たせる」「法令の遵守」「資産を適切に管理・活用する」が挙げられます。内部監査だけでは企業の課題や状況を把握することが難しいため、内部統制監査が存在するのです。

外部監査

外部監査は、監査法人や公認会計士など、会社の利害関係から独立した社外担当者によって実施されます。会社法や金融商品取引法などで義務付けられており、対象となった会社は必ず受けなければなりません。

外部監査の対象となるのは上場企業や大手の会社が該当します。企業の財務諸表が適切か確認する会計監査と同じ意味で使われています。

こちらの記事では内部統制について詳しく解説しています。併せてご覧ください。
内部統制とは?目的・構成要素やERP活用による統制強化のポイントを解説

会計監査を行う目的

会計監査は、財務諸表や決算書類など組織の財務状態を記録した会計書類が、法的・社会的に正しいことを証明する目的で実施されます。債権者・金融機関・投資家などのステークホルダー(利害関係者)が会計書類をチェックして、組織の経営が健康であるかを判断します。そして、取引先や投資先として信用できるか判定するのです。

ステークホルダーは、会計書類の完成版しか閲覧できません。不正や誤りがあったとしてもそれだけでは見抜けないため、利害関係から独立した会計監査人によって会計書類が精査されます。外部の監査法人が信用を保証することで、取引先や利害関係者、投資家は安全にビジネスができるようになります。

会計監査人の意見は「独立監査人の監査報告書」として表明・公開され、このプロセスにより利害関係者は企業の財務情報を信用できます。つまり会計監査は、ステークホルダーが企業の現状を正しく客観的に知るために必須の手続きなのです。 

会計監査を行う時期

会計監査は決算時に必ず行われ、決算以外では会計期間中に実施されることが一般的です。

決算時の会計監査は「監査契約書締結」「監査実施」「監査契約書提出」の順序で実施されます。具体的には、事業年度末を3月31日とすると、監査契約書締結は6月〜7月中旬、監査実施は7月下旬〜翌5月上旬、監査報告書提出は翌5月中旬となります。つまり、企業により差はありますが、会計監査は監査対象の事業年度よりも3か月ほど遅れて行われるのです。期中の決算が3月の場合は、7月・10月・1月が実施期間です。3月の決算時には、1年分の会計監査を4月から5月の間にまとめて実施します。

また、期中と決算時それぞれの時期で調査内容は異なります。期中の会計監査の場合は、内部統制に関する項目が中心です。決算時には、期中の監査結果を踏まえ、企業が公表する決算書(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の内容が正しいかについての調査が行われます。固定資産の仕入れなどで高額になる場合には、監査法人の判断で請求書の提出を求められる場合があります。

決算時の会計監査が義務である会社は、株主総会において財務報告が必要です。財務報告ができなければ、企業の上場が廃止になるリスクが発生します。そのため、株主総会までに会計監査を必ず完了させましょう。会計監査には多大な時間がかかることから、一般的には株主総会の1年前から作業が開始されます。

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会計監査の種類

会計監査とは?目的や具体的な内容、準備すべき項目について徹底解説-1

会計監査の種類には、根拠法による分け方と、実施担当者による分け方があります。それぞれの種類について以下で確認しましょう。

はじめに、根拠法は「会社法」「金融商品取引法」「その他」に分けられます。

会社法に基づく会計監査

「大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)」「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社」「会計監査人の任意設置を行った会社」のいずれかに該当する企業が対象です。会社法監査で調査されるのは、「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算表」「個別注記表」およびそれらの付随明細書です。会社法に基づく監査報告書は、会社が公開する財務諸表と一緒に公表されます。

金融商品取引法に基づく会計監査

財務諸表監査および内部統制監査が行われ、財務諸表と内部統制報告書を調べます。対象として義務付けられているのは、証券取引所に上場している企業です。

金融商品取引法では上場企業に対し、会計監査に加えて内部統制監査の義務も課しています。内部統制監査では、会社が作成した内部統制報告書の内容が正しいかについて会計監査人が確認します。

会計監査と内部統制監査は、同じ会計監査人が実施することが大半です。会計監査・内部統制監査の報告書は、有価証券報告書に添えて公表されます。

その他の法令に基づく監査

学校法人・独立行政法人・社会福祉法人などが対象です。

次に、会計監査の実施担当者をもとにした分類について紹介します。「内部監査」「監査役監査」「外部監査」の3つに分けられますが、いずれも財務諸表の正当性を確認するという目的は変わりません。

内部監査

社内で実施され、自社の監査役に相当する人物が内部監査人として調査を行います。法律上の義務ではありませんが、上場企業では必ず実施されています。内部監査は、経営改善や利益向上を目的として、業務生産性向上および不正の予防発見のために行われているのです。

監査役監査

株主総会で選出された監査役員・監査委員会が実施します。監査役監査においては、取締役の仕事が正しく行われているかをチェックし、必要ならば意見を出します。監査役は、公認会計士・経営経験者・弁護士が担当することが一般的です。

外部監査

監査対象の組織と利害関係がない外部の公認会計士・監査法人が実施し、会計監査の中でも重要視されている方法です。また、外部監査は会社法と金融商品取引法の規定で、大会社は会計監査人を置かなければなりません。この法的義務がある会社を「会計監査人設置会社」と呼びます。

これらの内部監査・外部監査・監査役監査を合わせて三様監査といいます。株式を上場している民間企業では、すべての会計監査が行われています。

また、法的な義務とは別に自発的にも会計監査を受けられます。 

会計監査の具体的な内容

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会計監査は、企業情報の正確性を調査するものですが、具体的にはどのように調査が行われているのでしょうか。実際の会計監査は、以下のような手順で行われます。

1「予備調査」

監査人が依頼を受けると、企業に監査を受け入れる準備が整っているかを調査します。この調査ができていなければ、その企業は早急に体制を構築しなければなりません。 

2「監査計画立案」

予備調査を基に監査計画を立てます。大きな企業では、実施された取引をすべて確認することは困難です。そのため、実際には「リスク」と呼ばれる重要ポイントにフォーカスした計画が立てられることが多くなるでしょう。 

3「監査手続開始」

監査計画に沿って監査手続を進めます。大きな企業の監査では、大人数の監査人で共同作業する場合があります。勘定科目ごとに監査され、集められた監査証拠は監査意見の判断材料となるのです。

4「監査意見形成」

監査証拠をもとに監査意見を形成します。具体的には、監査内容が会計基準に正しくのっとっているのか、監査報告書に記載する意見を検討するのです。

5「審査」

ここまでの監査手続の結果は、別の公認会計士が審査を行います。ここでは、監査に不備がないよう入念にチェックされます。上場企業の監査では、この審査のプロセスが義務となっているのです。

6「監査報告書提出」

以上の過程で必要な監査証拠がそろったと判断されると、監査報告書に意見がまとめられます。完全に適正ならば「無限定適正意見」、おおむね適正ならば「限定付適正意見」として表明されます。 

なお、監査人がよく見るポイントは以下の通りです。

  • 総勘定元帳残高の妥当性、および配列や形式の正確性
  • 売掛金と買掛金における情報の正確性
  • 未回収金の有無
  • 現金、預金、借入金における正確性や残高と残高証明書における符号の有無
  • 経理担当者の能力
  • 個別の帳簿間での連動の正確性、および取引内容の正確な帳簿記録
  • 実際の取引記録に基づいた正しい伝票発行、および責任者の確認/承認フローの有無
  • 勘定科目内容の正確性
  • 賞与引当金、貸倒引当金、退職給付引当金などにおける計上の正確性
  • 固定資産の計上や減価償却の正確性、および売却時/除却時の会計処理の正確性  

これらのうち、すぐに実施可能な調査は期中の監査で実施し、決算を待つ必要がある調査は決算時の監査で行います。

期中の監査では、内部統制について会計監査人が調査し、社員へのヒアリングや書類閲覧により、財務諸表が正しく作成される体制であるか検査します。

決算時に会計監査人が行うのは、決算書、仕訳帳、勘定科目などを閲覧し、正確かを調べることです。財務諸表に間違いがないか、法令や会計基準様式にのっとっているかなどがチェックされます。

調査によっては会計監査人の判断で経営者や監査役と面談したり、実地棚卸へ立ち会い直接確認したりすることもあるでしょう。 

会計監査に必要な書類

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会計監査を行う際は、多くの書類が必要です。不備のないよう入念に確認を行い、事前に用意しておきましょう。

以下に必要書類の例を紹介します。

  • 賃貸契約書
  • ローン契約書
  • 請求書・領収書・小口現金伝票
  • 金融機関の残高証明書
  • 固定資産台帳
  • 棚卸表
  • 企業の組織図
  • 株主名簿と株主総会の議事録
  • 取締役会議事録
  • 稟(ひん)議書など決裁書類
  • 総勘定元帳と各種勘定明細
  • 仕入先リスト
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 総勘定元帳
  • 売掛金等残高証明書 

会計監査に向けて必要となる準備

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会計監査の開始前には、前述した各種資料の準備が必要ですが、会計監査人からヒアリングを求められる場合があります。そのため、書類について質問があった際は対応できるよう内容を把握しておきましょう。

これらの準備に不備がある際は、余分な作業や思わぬ請求額がかかることもあります。もし回答に曖昧な点があれば、追加で資料の作成・提出を求められるケースもあるため、内容の確認は重要です。

監査に必要な書類のリストは、監査人から配布されるので、それに従って用意しましょう。 

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まとめ

この記事では、会計監査について、目的や種類、準備項目を解説しました。会計監査とは企業の情報が正確かどうかを第三者に確認してもらうことを指します。会計監査を行うことで、企業の管理体制の整備・強化を行うことができ、社会的信頼の獲得につながるでしょう。

会計監査では貸借対照表・損益計算書・総勘定元帳といった資料や内容説明が必要です。そのため、直前の準備だけでなく普段からシステムを利用して業務を整備しておくことで、円滑に準備を進められるでしょう。

個別に会計ソフトを活用する手段もありますが、ERPの会計機能を使う方法をおすすめします。ERPを導入することで、経理業務以外の業務にも対応できます。ERPの基本についてまとめた資料もご用意しておりますので、ぜひご覧ください。

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