法人組織が確定申告を行う際は、確定申告書とともに貸借対照表や損益計算書などの財務諸表(決算書類)を提出しなくてはなりません。そして、財務諸表を作成する上で欠かせない作業のひとつが「仕訳」です。本記事では、決算書類の作成に欠かせない仕訳の基本的な知識について解説します。
確定申告や決算で重要になる仕訳とは
「仕訳」とは、簿記上における取引を「借方」と「貸方」に分類し、勘定科目と金額を仕訳帳に書き記す作業を指します。複式簿記では、商品の販売や経費の支払いなどの取引を借方と貸方に分けて記帳し、最終的に財務諸表にまとめます。基本的に法人組織は会計期間の末日の翌日から2ヶ月以内に確定申告を行う義務があり、確定申告書とともに貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を提出しなくてはなりません。こうした決算書類を作成する上で欠かせないのが、勘定科目と金額を書き記す仕訳なのです。
仕訳のルール
仕訳の目的は、事業活動においてどのような取引が行われ、どれだけのお金が動いたのかを把握することです。複式簿記では、「資産・負債・純資産・収益・費用」の5つの要素が増減することを「取引」と定義し、すべての取引を勘定科目とともに左側に借方、右側に貸方として振り分けます。借方には資産の増加や費用の発生などを計上し、貸方には負債や純資産の増加、または収益の発生などを振り分けるというのが大原則です。
たとえば、ボールペンを100円で購入した場合、文房具を手に入れる代償として現金が減少します。この「ボールペンを購入した」というひとつの取引を「ボールペンが増えた」と「現金が減った」という2つの観点から帳簿に記録することが仕訳の基本です。この場合、借方に「消耗品費」や「事務用品費」として100、貸方に支払った「現金」として100と記帳するというのが仕訳の基本的なルールとなります。
勘定科目とは何か
勘定科目には「貸借科目」と「損益科目」という2つの大きなカテゴリーがあり、さらに先述した資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループに分類されます。5つの概要については下記のとおりです。
・資産:現金や有価証券、土地などの財産
・負債:買掛金や借入金、支払手形などの債務
・純資産:資産から負債を差し引いた純粋な財産
・収益:売上や受取家賃、受取配当金などの収入
・費用:仕入や外注費、従業員給与などの必要経費
資産と負債、そして純資産は「貸借科目」に属し、収益と費用は「損益科目」に属します。仕訳をスムーズに行うためには、この5つのグループを把握しておかなければなりません。そして、この5つの勘定科目は、さらに「現金」や「預金」、「買掛金」「売掛金」「消耗品費」「通信費」「租税公課」などの項目に細分化されます。
仕訳帳とは何か
仕訳帳とは、取引が発生した日付順に仕訳を記入する帳簿のことを指します。企業はすべての取引を会計帳簿に記録し、保存することが会社法(第432条)で定められています。取引が発生した場合、まずは仕訳帳に借方と貸方の仕訳を記載し、それを勘定科目ごとに取引を記載する「総勘定元帳」に転記するというのが一般的なプロセスです。原則として、取引が決まった状態でも、お金に動きが生じていない場合は仕訳の必要はありません。しかし、どんな小さな金額であっても、金銭に動きがあった場合は仕訳帳に記載しなければ、財務諸表の作成時に金額が合わない可能性があります。
貸借対照表と損益計算書について
複式簿記では、貸借科目である資産と負債、純資産は「貸借対照表」に記載し、損益科目に属する収益と費用は「損益計算書」に記載します。
貸借対照表の概要
貸借対照表とは、ある一定期間における資産と負債の内訳を示す財務諸表です。左側に資産を、右側に負債と純資産を記載し、右左の金額が一致する必要があるという性質から、「バランスシート(B/S)」とも呼ばれます。企業が保有する資産や返済義務がある負債、または総資産から負債を差し引いた純資産の情報などを把握できるため、組織の財務状況を俯瞰的な視点から分析できます。貸借対照表は損益計算書とともに、決算時に作成が義務付けられている書類のひとつです。
損益計算書の概要
損益計算書とは、ある一定期間の収益から費用を差し引き、どれだけ利益が残っているかを示す財務諸表で、「プロフィット・アンド・ロス・ステートメント(P/L)」とも呼ばれます。企業の事業活動における収益性や成長性などの経営成績を表した書類であり、損益計算書を読み解くことで、経営判断や意思決定の材料になるのはもちろん、投資先の選定にも役立ちます。「収益−費用=利益」を段階的に計算し、「売上総利益」→「営業利益」→「経常利益」→「税引前当期純利益」→「当期純利益」を算出することが損益計算書の役割です。
仕訳の書き方
仕訳の内容は最終的に財務諸表にまとめるため、非常に重要度の高い作業です。仕訳をする際は以下の点に注意しつつ、取引を借方と貸方に振り分ける必要があります。
取引に適した勘定科目を決める
仕訳の第一ステップは取引を分解して考え、適した勘定科目を定めることです。先述したように、勘定科目は大きく分けると資産・負債・純資産・収益・費用という5つのグループがあり、取引内容に応じてさらに細かい勘定科目を定めます。たとえば、資産の場合は代表的なものに「現金」や「預金」、負債であれば「買掛金」や「社債」、純資産なら「資本金」や「資本準備金」などがあります。収益の領域であれば「売上高」や「雑収入」、費用なら「交通費」や「福利厚生費」などが具体例として挙げられます。
取引の勘定科目がどのグループに属しているかを確認する
取引内容を分解し、具体的な勘定科目が定まったなら、次は5つのグループのどの領域に属しているかを確認しなくてはなりません。例を挙げるなら、「現金」は資産のグループに属しますが、預金の利子は「受取利息」として収益のグループに分類されます。また、手数料収入のように本業との関連性が希薄であり、かつ金額としての重要性が乏しい取引も資産ではなく収益のグループに属し、「雑収入」として計上するのが一般的です。グループの分類を間違えると、最終的な結果が異なってくるため注意しなくてはなりません。
勘定科目と金額を借方と貸方に振り分ける
取引のグループと具体的な項目が決まれば、勘定科目と金額を借方と貸方に振り分けます。グループによってルールが異なりますが、基本的に資産と費用の増加は借方に記載し、負債と純資産、収益の増加は貸方に記載するのが原則です。先述の5つのグループごとに増減を借方と貸方のどちらに記入するかが決まっており、そのルールに則って仕訳を行わなければなりません。
- 資産:増加は「借方」/減少は「貸方」
- 負債:増加は「貸方」/減少は「借方」
- 純資産:増加は「貸方」/減少は「借方」
- 収益:増加は「貸方」/減少は「借方」
- 費用:増加は「借方」/減少は「貸方」
たとえば、土地を現金で購入した場合、「土地が増加」して「現金が減少」します。土地も現金も資産のグループに属するため、借方に「土地」を、貸方に「現金」を勘定科目として記載します。
仕訳のポイント
仕訳を行う際のポイントとしては、資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループをしっかりと把握し、必ず2つの勘定科目が関わることを意識することです。また、借方と貸方の合計は必ず等しくなる点も押さえておかなくてはなりません。借方の合計と貸方の合計が一致しない場合、仕訳に何らかのミスや漏れがあります。取引内容によっては勘定科目が2つ以上になるケースも少なくありませんが、そのような場合においても借方と貸方の合計金額は必ず左右で一致します。借方と貸方で金額が一致しない場合は、取引内容や入力した数値、預金出納帳の金額などを再度確認する必要があります。
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まとめ
仕訳は勘定科目と金額を「借方」と「貸方」に振り分け、仕訳帳に書き記す作業です。組織においては、いかにして仕訳を正確かつ効率的に実行するかが重要課題です。会計業務の効率化を目指すなら、財務・会計などの基幹業務を統合的に管理できるERPシステム「GRANDIT」の導入についてご検討ください。
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