みなさんは、「管理会計」という言葉を耳にしたことはありますか。社内で耳にする機会はあっても、実際に管理会計で何を行うのか、詳しく分からない方も多いかもしれません。
また、管理会計という言葉を認識していても社内で正しく行われていない、具体的な手順について知りたいと悩む方もいるでしょう。
さらに、効率的な管理会計の実施のために、システム導入を検討している企業も少なくありません。そこでこの記事では、管理会計の概要や必要性、関連する課題などについてまとめました。また、管理会計の課題解決方法としてシステム導入のポイントについても分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
管理会計とは?
管理会計とは、予算策定・財務管理・経営計画など、自社の経営の意思決定の指標となる、社内向けの会計です。
では、管理会計の目的は何でしょうか。
管理会計の目的
管理会計の目的は、各企業の経営の考え方に基づいて、経営管理に関する会計情報を企業内部の経営管理者(経営トップ・マネージャー)が経営管理に役立てることです。
したがって、管理会計は、経営の意思決定や業績向上のための「経営管理会計」と言えます。
管理会計で算出された数字は、事業に関連する意思決定や人材の評価、事業継続の判断材料などに活用されます。ほかにも、現段階での自社の状況を把握して、経営管理の適正な実行にも用いられます。つまり、自社の経営活動に生かすために作成する内部向けの会計が管理会計ということです。
財務会計との違い
管理会計と似た言葉に、「財務会計」があります。
財務会計とは、債権者や投資家などに自社の経営状態を提示するための会計のことです。債権者は財務会計のデータをベースに、追加融資や返済についての判断をします。投資家は財務会計から経営状態を把握し、追加で投資をするか判断する場合が一般的です。また、財務会計は税務省への提出が義務付けられており、法律に従って行う必要があります。
それでは、管理会計と財務会計の違いについて考えてみましょう。まず挙げられるのが管理会計が自社内に掲示するのに対し、財務会計は外部へ掲示する点です。
管理会計は自社内のみで閲覧できる情報のため、あくまで自社の経営や評価の基準に沿った書類として作成します。一方で、財務会計は提出先が税務署など外部のため、法的な罰則や作成ルールが定められていることが特徴です。管理会計と財務会計は似ていますが、作成する方法や目的などが異なるため、混同しないように気をつけましょう。財務会計に関する内容は以下でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
管理会計の内容
続いて、管理会計の内容について詳しく見ていきましょう。管理会計は主に予算管理と原価管理の2種類で構成されています。それでは、この2つの管理方法の詳細を解説します。
予算管理
予算管理とは対象となるデータを比較して、改善計画を立てる管理方法です。予算に対する実績をベースに経営に活かすための予算を中長期に計画し、一定期間ごとに予算についてのすり合わせを行います。
予算管理の具体的な手順では、まずはじめに予算を設定し、実際に使った経費の情報から経費の増減に関する原因を挙げ、改善策を立案して実行していきます。予算管理の一連の流れにはPDCAサイクルが活用される場合が多く、以下のような手順で行われます。
- Plan(計画):予算設定
- Do(実行):実際の経費を計算
- Check(評価):経費増減の理由を確認して評価
- Action(改善):原因について改善する
- Pへ戻る
予算についての改善はPDCAサイクルを繰り返すことで徐々に効果が出始めます。これをベースに、自社が設定した予算の不備や改善点を洗い出していく取り組みが重要です。
原価管理
原価管理とは目標として設定した原価と実際に発生した金額を比較し、改善策を立案するための管理です。原価は材料費・労務費・経費の3種類から構成されており、主に製造業などの業種と関わりがあります。
製品を製造するために、どの程度の原価が必要なのか、実際に使用した金額がいくらなのかを把握し、差異を算出して最適な原価を設定します。原価管理の計算方法も、標準原価計算・実際原価計算・直接原価計算の3つの方法に細かく分類されています。
そして、原価管理にも予算管理と同様に、PDCAサイクルの活用が有効です。ただし、予算管理の際と実行すべき詳細の項目は異なり、原価管理の場合は以下の流れでPDCAサイクルを行います。
- Plan(計画):原価設定
- Do(実行):実際の原価を計算
- Check(評価):目標と実際に使った金額を比較
- Action(改善):目標が未達であれば改善する
- Pへ戻る
原価管理も予算管理と同様、PDCAサイクルの流れを繰り返し行うことで改善が見込めます。
管理会計の必要性
管理会計を会社で適切に行うと多くのメリットがあり、健全な会社運営を実現するためには欠かせないポイントばかりです。管理会計の必要性について、改めて確認してみましょう。
経営状態を見える化できる
管理会計の最大のメリットは経営状態を可視化できる点です。経営状態に関連する活動の実態を具体化することは、客観的な判断に欠かせません。管理会計で経営状態を可視化すると、主に以下の項目が明確になります。
- 資源を重点的に配分すべき部署はどこか
- 部門ごとにバランスの取れた財務状況であるか
- 事業計画や予算計画、要員計画は適正か
- どのようなアクションを取れば経営改善につながるか
例えば、会計管理を取り入れて部門ごとの数字が見えれば、売上目標やコスト削減の目標が立てやすくなるでしょう。その結果、部門内でやるべきことが明確になり士気向上も期待できます。
このように経営状態の見える化は経営陣や管理職だけでなく、現場で活躍する社員にとっても有益です。管理会計の実施で全社を通しての経営に対する意識改革が期待でき、会社として掲げた目標達成への貢献が可能です。
評価軸を明確化できる
管理会計の導入は経営陣だけでなく、社員全体に与える影響も少なくありません。社員にとって働くうえで大切なのは、自分の仕事がどのように評価されているかという点ではないでしょうか。
管理会計の実施で経営に関する目標が明確化するため、それを基準に社員や部署ごとの明確な目標を設定できます。そして、個々の目標が明確になれば評価軸の具体性も増すため、経営側も社員も評価に関しての基準がより明確になるでしょう。
社員のモチベーション向上につながる
管理会計の導入は、社員全体のモチベーションを上げる効果もあります。管理会計を行っている会社では経営状態が見える化されているため、社員からの関心が高い評価軸などの情報も明確です。社員は会社のために仕事を日々行いますが、行動に評価や理由を求める場面も少なくありません。
今月残業を行うと評価はされるのか、なぜ今の業務が優先されているのか、会社の業績は良いのかなど、気になる情報は多くあるはずです。管理会計を適切に行っていれば、社員の気になる情報についても定性的な表現だけでなく、根拠のある定量的なデータで示せます。
そして、管理会計で明確になった指標を社員に共有できれば、それぞれが目標達成のためのプランも立てやすくなります。社員は経営者目線を持って日々の業務に取り組めるので、会社と自身のキャリアをより良くするために何を行えるかを考えられるでしょう。
社内の士気も向上するため、ポジティブな循環が期待できます。現場が実際の数値感をもち、経営的な視点をもつことはスキルアップや組織力向上にもつながるでしょう。
従来の管理会計の課題
従来の管理会計では、Excelなどの汎用ツールが主に使われてきました。
しかし、汎用ツールによる管理会計には、さまざまな課題があります。ここでは、従来の管理会計の業務での代表的な課題について解説します。
リアルタイムに更新できない
汎用ツールでは、リアルタイムでのデータ更新や管理が行いにくいデメリットがあります。
しかし、管理会計業務では会社全体から大量の情報を集めて、データ分析などの作業をするケースが少なくありません。業務や会社の規模にも左右されますが、社内の各部門からデータを集計して、情報を分かりやすく整理するには膨大な時間と手間がかかります。
Excelなどの表計算システムは便利で優秀ですが、膨大な量のデータをリアルタイムで扱うとなると限界があります。マクロやAccessを活用すればExcelを適用できる業務範囲は少し広がりますが、どちらも専門的な知識が必要になるため簡単とはいえません。
また、複数名での同時の作業や確認作業の効率性を考えると、Excelは管理会計業務にカスタマイズされていないため不便が生じます。そして、アナログな手法で時間をかけてデータ収集をしても、最終的に完成する段階で集めたデータが古くなるリスクも軽視できません。
管理会計では情報の鮮度も大切なので、手間をかけたデータに不備が生じることは避けたいポイントです。
ヒューマンエラーが起こりやすい
ヒューマンエラーの発生リスク上昇もアナログな手法の課題です。扱うデータの量や情報の複雑さに比例して、人為的なエラーが起こりやすくなります。
Excelなどを使えば、ほとんどの計算はソフトが行うため、一見するとヒューマンエラーの発生リスクは低いように感じます。しかし、会社独自のフォーマットやルールで管理している場合が多く、データの貼り付けや集計など部分的に人がアナログに対応している会社も少なくありません。
そうした工程にはヒューマンエラー発生のリスクが潜んでいるため、より効率的かつ確実に管理会計の作業を進められる方法が必要でしょう。
管理会計の課題解決方法
管理会計を効率的に行うには、上記で挙げたような「リアルタイムに更新できない」「ヒューマンエラーが発生する」といった課題を解決する必要があります。
課題の原因であるExcelや人の手による管理から脱却し、管理会計システムを導入することが課題解決への大きな一歩となります。
管理会計システムの導入
管理会計システムとは、その名の通り管理会計の業務をサポートするシステムです。予算管理、経営シミュレーション・分析、管理会計帳票の作成等を行える機能があります。管理会計システムの例は以下の通りです。
CCH Tagetik
Wolters Kluwer社が提供するシステムです。設定項目が多く、様々な業種・職種の経営管理業務に対応できます。
Manageboard
株式会社ナレッジラボが提供するシステムです。シンプルな構成で直感的な操作ができることが特徴です。
Jedox
株式会社KSKアナリティクスが提供するシステムです。自由度の高い業務データ管理システムを自社でスピーディーに構築できます。
Galileopt NX-Plus(財務大将)
株式会社ミロク情報サービスが提供するシステムです。ワークフローとも連動させながら利用できます。
ZeeM 会計
株式会社クレオが提供するシステムです。決算早期化からデータアナリティクスまで対応できます。
ERPの導入
ここまで管理会計システムについてご紹介しましたが、ERPも管理会計の業務に活用できますので、ERPでの管理会計についてもご紹介します。
ERPは管理会計を含む基幹業務をまとめて管理できるシステムで、社内のデータの統合によりさまざまな情報の可視化が可能です。
主に生産管理や在庫管理、販売管理などの正確なデータ連携も行えて、会計管理もカバーしています。統合された原価や売上の指標は、製品や担当に対して時系列に分けて迅速にアウトプットができるため、効率的に業務が遂行でき、ヒューマンエラーの課題も解決できるでしょう。
ERPなら、ぜひ弊社の「GRANDIT」の導入をご検討ください。GRANDITはコンソーシアム方式を導入した完全統合型の国産ERPで、主に以下のモジュールで構成されています。
- 販売
- 経理
- 債務
- 債権
- 人事
- 給与
- 製造
- 調達・在庫
- 資産管理
- 経費
GRANDITであれば、受注・売上・発注・仕入・請求・支払・経費・仕訳・各種月次実績など、管理会計に必要なデータ情報をタイムリーに集約できるため、企業経営をよりスムーズに行えます。業務効率の向上だけでなく、部門、プロジェクト、セグメントによる会計情報管理を実現します。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
今回は管理会計の概要や財務会計との違い、代表的な課題などについて解説しました。
管理会計を適切に実施できると、経営状態の見える化を実現でき、社員のモチベーション向上にもつながります。また、Excelなどのアナログな手法でも、管理会計は行えますが、ヒューマンエラーの予防や効率的な業務の遂行には専用システムの導入がおすすめです。会計管理にシステムを導入すると、業務を正確で効率的に行えるだけでなく、経営状況の予測にも役立ちます。
弊社が提供しているWeb-ERP「GRANDIT」でも管理会計業務のご支援をさせていただいています。ぜひ、お気軽にご相談ください。ERPに関するお役立ち資料も公開中ですので、あわせてご活用ください。
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