ビジネスを拡大する上でオンラインショップといった電子商取引(Eコマース)に参入することは、今やグローバルスタンダードといってよいほど拡大しています。経済産業省の調べ※では消費者向け電子商取引の市場規模は16.5兆円にのぼり、物販の取引においては全体の約6%(EC化率)がインターネット上で行われています。市場規模もEC化率も年々増加傾向にあり、商取引の電子化は今後も進展していく模様です。
電子商取引が拡大している理由は2つあります。
1つはユーザーの購買行動が完全にデジタル化していることです。パソコン、スマートフォン、タブレットが普及し、デバイスを1人1台のみならず複数台所持している現代では、何か欲しいモノがあるときは真っ先にインターネットでどういった商品があるかを検索します。「気になったらお店に行ってみよう」ではなく、「気になったらインターネットで検索してみよう」が当たり前になっているのです。
さらに、そうしたインターネットで欲しいモノを検索したユーザーの大多数は、そのままオンラインで購入します。わざわざお店に足を運ばなくてもよいですし、何よりオンラインショップの商品は価格を比較検討しやすく安く購入できるという特徴があります。そのため企業は消費者のこうした購買行動を考慮し、インターネット上で早期の接触を試みることがビジネスを成功させる秘訣になっています。
もう1つの理由は、オンラインショップ等の電子商取引を実行するためのプラットフォームや決済手段が整備されたことです。今やオンラインショップはECサイト構築ツールなどを用いればどのような企業でも構築することができます。昨今のこの手のツールはWeb接客機能や集客のための機能も豊富に搭載されているため新たな販売チャネルとして大きな期待が持てるでしょう。
こうした理由から電子商取引が増加しているわけですが、問題点もあります。それを上手く解決できないと取引で様々なトラブルが発生するかもしれません。本稿ではそんな電子商取引の問題点の解決方法をご紹介します。
1. 成りすましでアカウントを不正に利用される可能性がある
皆さんが会員制のオンラインショップを運営しているとして、商品を購入したユーザーが本人であるかどうかは、一般的には入力されたIDとパスワードでしか判断できません。対面で確認を取ることはできませんし、取引の度に電話確認することも不可能です。そのため電子商取引では第三者による成りすましが度々発生します。
この問題がどういった経緯で発生するか。一般的には第三者が他社Webサイトで不正に入手したIDとパスワードを使用して、不正アクセスを試みることで発生します。いくつものWebサイトにアカウント登録しているとIDとパスワードの管理が複雑になるため、複数Webサイトで同じIDとパスワードを使い回しているユーザーが多いのです。そのため他社Webサイトで不正入手したIDとパスワードを使って成りすましが発生します。
では、成りすましに気付かないまま取引が成立してしまった場合、その責任は事業者と消費者どちらのあるのでしょうか?これは消費者に責任があるケースが多くなります。
たとえば他社WebサイトからIDとパスワードが搾取されて不正アクセスに至った場合、IDとパスワードの管理責任は消費者にあるので、それによる成りすましは消費者に責任があると考えられます。しかし、そのような場合でも事業者に責任を負わされるケースもが多いのも事実です。
どうしようもないことかもしれませんが、だからといって事業者側が何も対策を取らないのは好ましくありません。事業者側の必要に応じて成りすましへの対策を講じることが必要です。例えばログインアラートや二要素認証、パスワード変更時や購入時の通知などの機能です。このような機能を提供することで消費者からの信用が厚くなり、ひいてはは電子商取引の拡大に繋がります。
ただし、あまりユーザーの認証を多段階にし、強固にしてしまうと、UXとしては煩わしいサイトになってしまうため、バランスをどう取るかは多くのEC事業者が頭を悩ますところになります。
2. 操作ミスによって間違った商品を注文してしまった
購入する際に間違えて多く頼んでしまった、そもそも間違った商品を注文してしまった…。これは電子商取引を運営していると当たり前のように起こる問題です。この問題について結論から言うと、たとえクリックミスによって間違った商品を購入してしまっても、キャンセルできるのが基本です。
なので「先日注文した商品、間違って注文してしまったのでキャンセルしてください」という連絡が来れば、事業者はこれに対応せざるを得ません。しかしこうした問題が何度も発生すると、事業者の生産性は大きく下がってしまいます。
そこで取れる解決方法としては、カートに商品を投入する画面において、ご操作が起こりづらいようなUIとすること、またカート画面で購入する商品をわかりやすく確認出来るように設計することがまず考えられます。多くのECサイトでは数量は直接数字を入力する機会は少なく、プルダウンで数量を選択する、あるいは一つずつ追加をしていくというUIが多いです。当然といえば当然の配慮とはなりますが、プルダウンで選択出来る範囲は必要な範囲に狭め、カートに一つでも商品を投入した場合、すでにカートに一つ投入済みであることがわかるような表示をして、間違えて再度投入することのないようなUIとすることが重要です。カート画面では購入完了する前に必ず確認画面を表示しますが、金額だけでなく個数もわかりやすく表示するようにすることで、頼みすぎのミスを防ぐことにつながります。
それでも入力ミスによる間違った取引が実行されてしまったら、そのときは真摯に対応してユーザーの要望に応えましょう。
3. 国際的にトラブルが発生した際はどう対処するのか
近年では日本国外を対象にオンラインショップ等を展開する“越境EC”がトレンドになっています。
そうした越境ECを展開する企業にとって懸念すべきことが、国際的なトラブルが発生したときに対処法です。当然ながら法律は国によって違うので、2国間で発生したトラブルをどちらの法律に準拠して対処するかが大きな問題点になります。
そのような場合に備えて購入者の国の法律をしっかりと調べておく必要もあるでしょう。そして、法律に遵守することを利用規約に明記することでトラブルが発生しても法令に準拠した対処が行えます。
4. サイバー攻撃による情報漏えいの危険性がある
電子商取引を展開している以上避けて通れないものが“サイバー攻撃”です。インターネットが普及し、消費者の購買行動がデジタル化して情報の価値が増すようになってから、Webサイトを狙ったサイバー攻撃が急増しています。
従来のサイバー攻撃はページを改ざんしたり、愉快犯的な面が強かったのですが、最近では明らかな金銭目的で情報を不正に搾取しようというものが横行しています。特にユーザーIDとパスワードや、個人情報を大量に管理しているECサイトは格好の的になります。
2015年には国民年金機構にて125万人以上の個人情報が流出するなど、毎年のように大規模な情報漏えい事件が発生しています。ちなみにサイバー攻撃の危険性は大企業だけにあるわけではなく、ドメインを公開しているWebサイトなら例外なく攻撃を受ける可能性があると言えます。
攻撃方法は多様化、高度化し続けている為、事業者側もセキュリティ対策をしっかり行う必要があります。ネットワーク側で対応可能なセキュリティ対策、サーバー側で対応すべきセキュリティ対策、アプリケーション側で対応すべきセキュリティ対策、事業者内部で行う必要のあるセキュリティ対策と考えなくてはならないことは多岐に渡ります。そのため自社で一からセキュリティ対策を講じるのではなく、すでにセキュリティ対策が施されたパッケージあるいは高いセキュリティを実現可能なECプラットフォームを利用することが、効率的な対策方法の第一歩と言えるでしょう。
電子商取引の問題点と向きあう
電子商取引は事業拡大として有効な方法です。しかしそこには様々なリスクや問題点もあるため、これらの問題点とどう向き合っていくかが成功のカギを握るでしょう。電子商取引を展開する際はメリットばかりではなく問題点にもしっかりと目を向けてください。
システムインテグレータはECサイト構築プラットフォームを長年提供した過程の中で、さまざまな運営ノウハウを保有しています。もし、上記のような不安や問題がある場合には弊社にお問い合わせください。
※電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました - 国内BtoC-EC市場規模が16.5兆円に成長。国内CtoC-EC市場も拡大
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