時系列データベースとは?基本と活用のメリット

 2025.02.10  株式会社システムインテグレータ

ログ情報のような時系列のデータを管理するには、従来のデータベース(RDB:リレーショナルデータベース)よりも、時系列データベースのほうが適しています。

本記事では、時系列データベースの基礎知識やソフトウェアについて解説します。

時系列データベースの概要

 時系列データベースとは

時系列データベースとは、データが発生した時刻と関連付けてデータを格納・管理するデータベースのことです。従来のデータベース(RDB)がデータの属性や関係性を重視するのに対し、時系列データベースは「時間」という軸を重視します。

例えば、気温や株価、センサーデータなどは、時間の経過とともに変化するデータです。時系列データベースは、これらのデータを効率的に保存し、高速に検索・分析できます。

時系列データベースの必要性

時間とともに変化する大量のデータを扱う場合、RDBでは処理速度や効率の面で限界があります。特に、IoTや金融、製造業などの分野でデータ量が爆発的に増加する中、従来のRDBでは処理が追いつかなくなってきています。

時系列データベースは、時間軸に沿ってデータを最適化して保存するため、RDBと比較して圧倒的に高速にデータを処理することができます。この特徴から、時系列データの重要性が高まるにつれ、時系列データベースの必要性も高まっています。

時系列データベースの用途

時系列データベースの主要な用途を紹介します。

・IoTデータの管理

IoTデバイスから生成される大量のセンサーデータを効率的に格納し、分析するために使用されます。

・金融市場の分析:

株価や為替レートなどの金融データをリアルタイムで監視し、市場の動向を予測するために利用されます。

・サーバーログの管理:

サーバーのパフォーマンスやエラーログを監視し、問題の早期発見と解決を支援します。

・気象データの分析:

気象データを収集し、天候予報や気候変動の分析を行うために使用されます

時系列データベースとRDBの違い

時系列データベースとRDB(リレーショナルデータベース)の主な違いは、以下の表のとおりです。

時系列データベースは時間とともに変化するデータの効率的な格納と取得に特化しており、リレーショナルデータベースは関係モデルに基づいた多様なデータの管理に適しています。

項目

時系列データベース

リレーショナルデータベース

データ構造

時刻と値で構成

行と列で構成

最適化

時系列データ

関係モデルに基づく

データの更新

追加のみ、更新無し

更新あり

スケーラビリティ

大量のデータポイントの高速書き込みに適している

大量の時系列データの処理に不向き

クエリ性能

時間範囲や特定条件のクエリに効率的

複雑な結合操作や条件検索に強い

データ圧縮

時系列データに特化した圧縮

一般的な圧縮手法

用途

センサーデータ、ログ、監視データ

ビジネスデータ、トランザクションなど

時系列データベースを活用するメリット

時系列データベースは、従来のリレーショナルデータベース(RDB)と比べて、時系列データの管理において多くのメリットを提供します。以下に代表的なメリットを紹介します。

高速な読み書き

時系列データベースの大きなメリットの一つは、高速なデータの読み書きが可能なことです。時系列データベースは、時間軸に沿ってデータを保存するため、特定の時間範囲のデータを効率的に検索できます。この高速な読み書き性能により、リアルタイムデータ分析やモニタリングなどで優れたパフォーマンスを発揮します。

高い圧縮性能

時系列データベースは、高い圧縮性能を持っています。時系列データは、一定の間隔で繰り返し収集されるため、データ量が膨大になる傾向があります。時系列データベースは、これらの大量のデータを効率的に圧縮し、保存できます。

アプリ連携が容易

時系列データベースは、様々なアプリケーションやツールとの連携が容易であるというメリットがあります。多くの時系列データベースは、RESTfulなAPIを提供しているため、プログラミング言語やフレームワークを問わずにデータにアクセスできます。これにより、時系列データを使ったアプリケーションの開発が容易になります。

 時系列データベースシステム

ここからは、主な時系列データベースソフトウェアを紹介します。

InfluxDB

InfluxDBは、高いパフォーマンスとスケーラビリティをもつオープンソースの時系列データベースです。GoとRustで書かれており、RESTful APIを通じてデータの読み書きが可能です。InfluxDBは、データの保持ポリシーや連続クエリなどの機能を備えており、IoTやモニタリングのユースケースに適しています。

TimescaleDB

TimescaleDBは、PostgreSQLを拡張した時系列データベースです。リレーショナルデータベースの機能と時系列データの管理機能を組み合わせており、SQLを使ってデータにアクセスできます。

Azure CosmosDB

Azure CosmosDBは、Microsoftが提供するグローバル分散型のマルチモデルデータベースサービスです。CosmosDBは、ドキュメント、キーバリュー、グラフ、時系列データなど、様々なデータモデルをサポートしています。時系列データの管理には、CosmosDB Cassandraと統合されたAzure Metricsが使用されます。

Graphite

Graphiteは、時系列データの保存と可視化に特化したオープンソースソフトウェアです。シンプルなアーキテクチャを持ち、Carbon、Whisper、Grafanaの3つのコンポーネントで構成されています。Graphiteは、データの保存にWhisperと呼ばれる時系列データベースを使用し、Grafanaを使ってデータを可視化します。

Kdb

Kdbは、金融業界で広く使われている時系列データベースです。q言語と呼ばれる独自のプログラミング言語を使用し、高速なデータ処理を実現しています。Kdbは、リアルタイムデータ分析や高頻度取引などの低遅延が求められるユースケースに適しています。

Prometheus

Prometheusは、Kubernetes環境でのモニタリングや警告に特化したオープンソースの時系列データベースです。メトリクスデータの収集、保存、クエリ、可視化を行うことができます。

まとめ

時系列データベースは、時間に関連するデータの追加と高速アクセスに特化しており、リアルタイムでのモニタリングやセンサーデータの管理に最適です。

一方、リレーショナルデータベースは、その柔軟なデータ構造と強力なクエリ機能により、多様なビジネスデータの管理と複雑なトランザクション処理に適しています。

これらのデータベースは、データ構造、最適化方法、データの更新、スケーラビリティ、クエリ性能、データ圧縮技術、そして用途といった複数の側面で異なります。適切なデータベース技術の選択には、これらの特性を理解し、組織やプロジェクトの具体的なニーズに合わせることが重要です。


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