データベースリファクタリングとは?取り組むメリット、注意点を解説

 2025.03.13  株式会社システムインテグレータ

データベースリファクタリングとは、システム全体の動作を維持しながら、スキーマの構造や設計を最適化し、パフォーマンスを向上させる手法です。本記事では、データベースリファクタリングのメリット、具体的なアプローチ、実施時の注意点について解説します。

データベースリファクタリングとは

データベースリファクタリングの概要

データベースリファクタリングは、データベースの構造を最適化しながら、システムの動作を維持する技術的な手法です。主に以下の目的で実施されます。

  • パフォーマンス向上
  • データの一貫性確保
  • 保守性の向上
  • 拡張性・耐久性の向上
  • 長期的な運用の安定化

リファクタリングの手法としては、テーブルの分割・統合、カラムのリネーム、インデックスの最適化、クエリの改善などが挙げられます。これにより、データベースの柔軟性を高め、運用負荷を軽減しながら、長期的なシステムの安定稼働を実現できます。

データベースリファクタリングの必要性

データベースに蓄積されるデータは時間とともに増加し、設計時には想定されなかった負荷や要件変更が発生することもあります。そのような場合に、なにもせずそのままデータベースを運用し続けると、以下のような問題が発生します。

  • 処理速度の低下(不要なデータの蓄積や非効率なクエリの増加)
  • 保守性の低下(複雑なテーブル設計や不適切な命名規則により機能改修が困難になる)
  • データの不整合リスク(正規化が不十分になりデータの重複が発生)

データベースを停止することなくこのような状況を改善するために、リファクタリングの実施が求められます。

データベースリファクタリングのメリット

パフォーマンスの向上

クエリの最適化やインデックスの追加を行うことで、検索速度の向上やデータ処理の効率化が図れます。例えば、大量のデータを保持するテーブルの分割やキャッシュの活用により、不要なデータアクセスを削減し、読み込み・書き込み速度を改善できます。

保守性の向上

カラムやテーブル名の適切な命名、不要なデータの削除、正規化を行うことで、データの一貫性・保守性が向上します。結果として、システム全体の耐障害性が高まり、運用リスクが低減されます。

開発効率向上

スキーマ構成を改善することで、開発者がデータベースの構造を直感的に理解しやすくなります。その結果、コードの記述が簡潔になったり、API設計が最適化されたりするメリットを得ることができます。

コスト削減

データベースの無駄を省くことで、ストレージやサーバーリソースが最適化され、インフラコストを削減できます。また、パフォーマンスの向上により、システム全体の効率が上がり、運用にかかる工数も軽減されます。

データベースリファクタリングの具体例

カラムの追加・変更

業務要件の変化に伴い、カラムの追加や変更が必要になることがあります。例えば、ユーザーのログイン履歴を管理するために、ユーザー管理テーブルに「最終ログイン日時」カラムを追加するケースです。カラムの追加や変更を行う際には、データ型やNULL許可、デフォルト値などを適切に設定しましょう。適切な設計と事前準備を行うことで、システムの整合性を維持しながら、安全にカラムを追加・変更できます。

テーブル分割

データの肥大化によるパフォーマンス低下を防ぐために、1つの大きなテーブルを複数の小さなテーブルに分割(シャーディング)したり、パーティションを導入したりするのが有効です。特に、アクセス頻度の異なるデータを適切に分割することで、不要なデータアクセスを減らし、クエリのパフォーマンスを向上させることができます。

データベースリファクタリングの注意点

バックアップの取得

データベースリファクタリングは、適切に実施しないと期待した効果が得られないだけでなく、逆にシステムのパフォーマンスや安定性に悪影響を与える可能性があります。

例えば、適切なインデックスを追加したつもりでも、統計情報が更新されていなかったり、オプティマイザが他のアクセスパスを優先したりすると、期待した効果が得られないことがあります。それどころか、リファクタリングが性能に悪影響を及ぼす可能性もあります。

そのような場合に備えて、リファクタリングを実施する前に必ずバックアップを取得しましょう。特に本番環境では、障害発生時に迅速に復旧できる仕組み(フルバックアップ・スナップショット・トランザクションログの活用など)を整えておくことが重要です。

 段階的な実施

大規模な変更を一度に適用すると、システム全体に大きな影響を与える可能性があります。そのため、リファクタリングは小規模な範囲から段階的に実施することが推奨されます。

例えば、特定の機能しか使用していないスキーマやテーブルからリファクタリングをはじめたり、テスト環境で実施後に問題がないことを確認してから本番環境に適用したりするなどの方法で進めれば、リスクを低減できます。

テストを行い不具合がないか確認する

リファクタリング後は、システムが正常に動作しているか、想定通りの効果が得られているかをテストしましょう。特に、データの一貫性やパフォーマンスに問題がないか確認し、必要に応じて修正を行うことが重要です。

まとめ

データベースリファクタリングは、システムの動作を維持しながらスキーマの最適化を行い、パフォーマンス向上、保守性の強化、開発効率の向上、コスト削減などのメリットをもたらす重要な施策です。

データベースリファクタリングは一度行えば終わりではなく、継続的な改善が求められるプロセスです。業務要件の変化やデータ量の増加に応じて、定期的にデータベースの状態を見直し、適切なリファクタリングを実施することで、システムの長期的な安定運用を実現できます。

本記事の内容を参考にしながら、自社のデータベース環境に適したリファクタリングを計画・実行してみてください。


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