ログ情報のような時系列のデータを管理するには、従来のデータベース(RDB:リレーショナルデータベース)よりも、時系列データベースのほうが適しています。
本記事では、時系列データベースの基礎知識やソフトウェアについて解説します。
Amazon Redshiftの概要
Amazon Redshiftとは
Amazon Redshiftは、クラウドサービス「AWS」上でデータウェアハウスを提供するフルマネージドサービスで、SQLベースで高速な分析処理を実現します。
また、Amazon RedshiftはPostgreSQLをベースに開発されているため、既存のSQLクライアントアプリケーションに対しては最小限の変更で利用できる特徴があります。
Amazon Redshiftの構成要素
Amazon Redshiftは、主要なコンポーネントとして「クラスター」があります。クラスターは、以下の図のとおりリーダーノードと複数のコンピューティングノードによって構成されます。
それぞれのノードは以下の役割を担っています。
- リーダーノード
クライアントプログラムおよびコンピュートノードとの通信を管理する。クエリの実行計画とコードを作成し、それをコンピューティングノードに配分する。 - コンピューティングノード
リーダーノードから割り当てられたコードを実行し、分散されたデータストレージにアクセスして並列してデータ処理を行う。
Amazon RedshiftとAmazon RDSとの違い
AWSはAmazon Redshiftだけでなく、データベースサービスとしてAmazon RDSを提供しています。この2つの違いをみてみましょう。
|
Amazon RedShift |
Amazon RDS |
用途 |
データウェアハウス |
リレーショナルデータベース |
目的 |
大規模データの集計・分析(OLAP) |
オンライントランザクション処理 |
ストレージのタイプ |
列指向 |
行指向 |
データ処理 |
並列処理 |
複数インスタンスでの分散処理 |
対応DB |
PostgreSQL |
MySQL PostgreSQL SQL Server Oracle Database MariaDB |
Amazon RDSは、リレーショナルデータベースの運用をサポートします。用途としてOLTP(オンライントランザクション処理)向けであり、データの一貫性を保ちながらデータの検索・更新処理を行います。
一方、Amazon RedshiftはOLAP(オンラインアナリティカル処理)、つまり複雑なクエリや大規模なデータ分析に適したデータウェアハウスです。頻繁にデータの更新が発生する処理には向いていません。
Amazon Redshiftの利用料金
AWSの利用料金は従量課金制となっており、Amazon Redshiftでは以下によって課金されます。
・ストレージ:データを保存するためのディスク容量
・コンピューティングノード:使用するノードのタイプおよび数、利用時間
なお、コンピューティングノードの料金は、リージョンごとに単価が異なる場合があるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
Amazon Redshiftの特徴
Amazon Redshiftには、大量のデータに対して高速処理を実現する多くの特徴があります。ここではRedshiftの特徴を4つ紹介します。
超並列アーキテクチャ
Amazon Redshiftは、超並列アーキテクチャ(MPP:Massively Parallel Processing)を採用しています。このアーキテクチャにより、複雑なクエリや大規模なデータセットに対しても、高速な処理を実現します。これにより、企業は大規模なデータ分析をスムーズに行えます。
列指向ストレージ
Amazon Redshiftでは、データを列指向で保存します。列指向ストレージは、同一の列のデータをまとめて保存する方法で、特に集計やフィルタリングを行う分析処理に最適です。データ検索時に必要な列のみを高速に読み込むことで、ディスクI/Oを最小限に抑え、パフォーマンスが向上します。
フルマネージドサービス
Amazon Redshiftは、フルマネージドサービスとして提供されています。インフラの管理や保守作業はAWS側が実施するため、ユーザーはデータ分析に集中できます。さらに、必要に応じてノード数やスペックを手動またはスケジュール設定により柔軟にスケールアップ・ダウンすることが可能です。
他のAWSサービスとの連携
Amazon Redshiftは、AWSの他のサービスとの連携が容易であり、さまざまなデータソースからデータを抽出し、強力なデータ分析が実行できます。例えば、以下の機能があります。
- Redshift Spectrum
RedshiftからAmazon S3に格納されたデータに対してクエリを実行できる機能。Redshiftのストレージを削減できる。 - フェデレーテッドクエリ
Redshiftから他のデータベース(Amazon RDSやAmazon Aurora)に対してクエリを実行できる機能。データ間の連携をシームレスに行える。これにより、異なるデータソースを統合し、複雑な分析が行えます。
Amazon Redshiftのユースケース
Amazon Redshiftの優れた特徴を活かしたユースケースが多数あります。ここでは3つ紹介します。
大容量データの集計・分析
Amazon RedshiftとBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使って、膨大なデータセットを迅速に処理し、リアルタイムにデータ分析結果を得ることが可能です。これにより、企業はマーケティングや販売データなどの分析を行い、意思決定の支援に活用できます。
機械学習の前処理
機械学習モデルのトレーニングを行うためには、大量のデータに対してクリーニングや変換などの前処理の実施が必要です。Amazon Redshiftなら、そのような前処理を高速で実行し、機械学習に必要なデータ準備を迅速に行えます。また、AWSの機械学習サービス「Amazon SageMaker」などと連携し、機械学習のワークフロー全体を統合して管理できます。
IoTデータの処理
IoTデータは、IoTデバイスからリアルタイムでデータが生成されるため、大量のデータを即時に分析し反映する処理が求められます。例として、Amazon Redshiftでは、Amazon Kinesisと連携することで、IoTデータのリアルタイム分析にも対応できます。
まとめ
本記事では、Amazon Redshiftについて解説しました。Redshiftは、高速な分析処理と柔軟なスケーリングにより、大容量データの集計や分析、機械学習の前処理などのさまざまな用途で利用されます。
また、フルマネージドサービスであるため、管理や保守作業をAWSに任せることができ、運用の負荷が低いというのも大きな特徴です。すでにAmazon S3やAmazon RDSなどのサービスを利用しており、それらのデータを分析するためのデータウェアハウスを構築する場合は、Amazon Redshiftの利用を検討してみるとよいでしょう。
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