数あるRDBMS(リレーショナル・データベース管理システム)の中でも、とりわけ大きなシェアを持つのが「Oracle Database(オラクル・データベース)」です。本記事ではOracle Databaseの概要とともに、「Oracle Database 19c」の機能や「21c」との違いについて詳しく解説します。
Oracle Databaseとは
「Oracle Database(オラクル・データベース)」とは、Oracle社が開発・リリースしているRDBMS(リレーショナル・データベース管理システム)です。通常、略して「Oracle(オラクル)」と呼ばれます。
世界第1位のRDBMS
Oracle Databaseは、世界で初めての商用RDBMSです。データベース市場ではさまざまな製品が販売されていますが、その中で長年にわたって世界シェアNo.1の地位を維持しています。最近ではSQL ServerやMy SQL、Postgre SQLなどを利用するケースも増えていますが、Oracle Databaseは依然として高い世界シェアを誇り、企業向けデータベース管理システムとして幅広く利用されています。
Oracle Databaseの特徴
Oracle Databaseが世界で初めて商用RDBMSとして登場したのは、1979年のことです。以来、40年以上にわたって世界でトップシェアを維持しているのは、ひとえに企業が求める優れた特徴をもつためでしょう。Oracle Databaseの主な特徴としては、以下のものが挙げられます。
○堅牢性が高い
Oracle Databaseの大きな特徴が、データ保護システムの堅牢さです。災害やシステムトラブルなどでデータベースが破損・全損した場合に備え、遠隔地に複製したデータベースをスタンバイさせる「Data Guard」や、複数サーバーの同時稼働でサーバー停止に備える「Real Application Cluster(RAD)」、データを巻き戻す「フラッシュバック」など、耐障害性の高い機能が揃っています。
○利便性が高い行レベルロック
データベースに多くの人がアクセスして、同時更新が起きないようにロックをかけますが、このとき未リクエストのユーザーまでロックされてしまう「ロック・エスカレーション」が発生することがあります。Oracle Databaseでは同時更新を防ぐロックを最小単位の行(レコード)としているため、たとえ同じ表に同時にアクセスしたとしても、違う行であれば更新が可能です。これにより、アクセスが集中した際も待ち時間が発生しにくくなります。
○データ移行が容易
Oracle DatabaseではエンジンからAPIなどさまざまな機能が、システム開発の基礎といえる「C言語」でプログラミングされています。そのためWindowsやLinux、Unixなど多くのプラットフォームに対応しており、異なるプラットフォーム同士でもデータ移行を容易に行えます。JavaアプリケーションからアクセスするJDBCや、WindowsアプリケーションからアクセスするODBCなどの規格にも対応しているため、アプリケーションからデータベースへのアクセスも可能です。
○データ読み取り時の取得保証
誰かがデータ更新中でも、更新前のデータを別に保存する機能があります。そのため、データ検索時点でのデータを読み取ることが保証されます。読み取りの一貫性が保証されることで、読み取りに時間がかかる心配がありません。また、データベース管理者のデータベース更新と同時にユーザーがアクセスすると、更新前と更新後の情報を取得してしまう「ダーティ・リード」の防止も可能です。
○サポート内容の充実
Oracle Databaseのサポート契約を結べば、重大なバグの修正や、後付けプログラムで修正パッチの提供を受けることが可能です。データベース管理を快適に運用するためには、このサポート契約の利用が有効です。
Oracle Databaseの特徴的なメリットをご紹介しましたが、このように機能性が高いことから、ほかのデータベース製品より高額な点には注意が必要です。Oracle Databaseは大規模なデータベース管理に適しており、主に大企業向けの製品といえるでしょう。
Oracle Database 19cとは
「Oracle Database 19c」は2019年1月にリリースされたOracle Databaseモデルで、「19c」とはリリースした西暦年に由来するバージョン番号です。オンプレミスとクラウドの両方に対応可能で、Oracle社が長年培ってきたデータベース管理システムの拡張性や高い信頼性、セキュアな環境を提供します。
他バージョンとの大きな違いは、年次リリースモデルの“Long Term Release”に位置付けられたことです。Premier Supportの期間は他バージョンだと2年間ですが、Oracle Database 19cの場合は5年間です。さらに、他バージョンにはないExtended Supportが3年間あります。ほかにも無期限のSustaining Support付きです。
Premier Support
技術サポートやトラブル時のメンテナンスリリースといったフルサポート
Extended Support
Premier Supportからメンテナンスリリースやサード・パーティによる動作保証を除いたサポート
Sustaining Support
ライセンス・サポート契約中は無期限に受けられる技術サポートで、バージョンアップ製品の提供サービスなども受けられます
Oracle Database 19cのリリースに伴い、これまで「Oracle Database 11g/12c」を利用していた場合の移行先は、原則Oracle Database 19cのみとなります。
またOracle Database 19cでは、複数のPDB(プラガブル・データベース)をホストするマルチテナント構成を、3PDBまで追加費用なしでサポートできるようになりました。一方で、システム障害のダウンタイムを最小限に抑えるクラスタ技術「SE-RAC」はサポート対象外となりますが、Oracle SEHAやサード・パーティのツールにより、SE-RACに準ずる高可用性ソリューションは可能です。Oracle Database 19cは最新OSに対応していますが、長期間安定して稼働させるために、OSも長期間サポートが予定されているものを使用したほうがよいでしょう。
Oracle Database 19cの特徴
Oracle Database 19cには、運用コストの大幅削減や堅牢なセキュリティ、クラウド導入の柔軟性といった特徴があります。以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
○最大90%運用コストを削減
Oracle Database 19cでは、マルチモデル集中型データベース「Oracle Autonomous Database」の機械学習技術によって、システムの自動化が実現されています。これによりデータベースのプロビジョニングやチューニング、スケーリングによる自律運転、データ保護とセキュリティ、障害検出、フェイルオーバー、修復までユーザーが介入することなく自動的に行われます。コストベースの最適化やパフォーマンスのチューニングと診断、データの最適化、クラウド規模に合わせた運用など、手動管理では難しいレベルの運用において最大90%のコスト削減が可能です。ルーチン作業の人為的エラーを減らしつつ、低コストで運用できるでしょう。
○堅牢なセキュリティ
対象を柔軟に適用できるデータ暗号化、暗号化キーの管理プラットフォーム、アプリケーションに対する効果的なデータ・マスキング、権限分析による特権ユーザーのアクセス制御、アカウントポリシーの作成、アクティビティの監視・監査などの機能により、データ侵害の脅威を評価しリスクの検出・防止が可能です。データセキュリティを強固にしつつ、リスク管理の負担を軽減し、コンプライアンスの簡素化に役立ちます。
○導入の柔軟性
企業データはオンプレミスやクラウドのさまざまなプラットフォームに保存され、データベースもリレーショナルやNoSQLなど種類が異なります。Oracle Database 19cは、顧客企業のビッグデータ化に備え、種類の異なるデータベースのアクセスを統合するプラットフォームを提供します。汎用ハードウェアやエンジニアシステムでも実行できるうえ、オンプレミス・クラウドにも両対応です。
データの保管場所や遅延が問題となるデータセンターやパブリッククラウド、プライベートクラウドなどの環境を問わず、必要な場所にOracle Database 19cを導入できるため、機能の拡張性を高めます。さらに、使い慣れたSQLインターフェイスなどでスムーズにアクセスできることから、異なるデータストア間でデータ移行を行う必要もありません。各種データにSQLやREST、Rなどさまざまな言語を用いて、機械学習やグラフ化など各種分析も容易に行えます。
Oracle Database 19cと21cの違い
「Oracle Database 21c」は、イノベーションリリースとして公開されているOracle Databaseの最新バージョンです。本番環境でも使用可能で、クラウド版から先行公開され、オンプレミス版へと続きます。イノベーションリリースは「最先端技術を継続使用したい」「新しいアプリケーションの開発・展開を迅速に行いたい」というケースを想定しています。Oracle Database 19cにはない新機能として、「ブロックチェーンテーブル」や「JavaScriptの内部実行」などが挙げられます。
○ブロックチェーンテーブル
通常とは異なる構造を持ち、主にデータの改ざんを防止するための特殊なテーブルです。データ挿入のみ操作可能で、アップデートや変更は不可、データを削除する場合も制約がかかります。行データを自由に変更できないため、完全性や証明が必要なデータの管理に有効です。金融や勘定台帳、サブ台帳テーブル、検査証、監査証跡、そのほか法律上保存が必要な情報などが挙げられます。
○JavaScriptの内部実行
開発者は、データベース内でJavaScriptの短いコードを実行できるようになりました。そのため、アプリケーションやブラウザにデータを転送させることなく、JavaScriptで短い処理タスクを簡単に行えます。JavaScriptとOracle Databaseでデータ形式を自動的にマッピングするため、開発者はデータ変換を行う必要がありません。APEXアプリ内の言語もJavaScriptを最優先にして利用できます。
Oracle Database 19cの機能一覧
ここでは、Oracle Database 19cの機能を一覧でご紹介します。オブジェクト管理やSQL実行など、項目ごとにリスト化しました。
オブジェクト管理
・オブジェクトのツリー、リバース表示
・オブジェクトの作成、検索、コピー機能
・オブジェクトのソース編集、印刷
・スクリプト出力機能、統計情報取得機能、権限付与機能
・データ出力、生成機能
SQL実行
・SQL実行、整形、ビルダ、結果出力
・実行計画表示、コードアシスタント
・エディタツールパレット
・ユーザー定義SQL機能、スクリプト実行機能
ストアドプログラム作成
・専用スクリーンエディタ、コンパイル
・実行、デバッグ
DBA向け機能
・ユーザー情報、表領域情報、プロセス情報表示
・ロック情報、コンテナDB情報、インメモリ情報表示
・ジョブ情報、パフォーマンス情報表示
・データベース情報表示(データベース作成は不可)
・SQLキャッチ、リアルタイムSQLモニタリング
・テーブルアクセス表、バックアップ、テーブルデータCSV入出力
その他
・接続先リスト、クロスリファレンス、マトリクス表、オブジェクト比較機能
・インデックスアドバイザ、コメントチェック、ドキュメント出力
・SQLリファレンス、DB負荷テスト、パフォーマンスレポート
Oracle Database 19cで追加された機能について
Oracle Database 19cでは、これまでにない新しい機能がいくつか追加されています。ピックアップした新機能の特徴をそれぞれ簡単に解説します。
アプリケーション作成ウィザードの改善
アプリケーションを作成するためにできる限りソースコードを書かず、迅速に開発できるローコード・アプローチと、より簡単に最新の設計に置き換えられるウィザードを装備しています。ダッシュボードやマスター・詳細などより、仕組みが複雑なページ作成の機能もサポートされます。アクセス制御やアクティビティ・レポートなどのアプリケーションを作成する際は、共有フレームワークや機能の追加、ユーザー・インターフェースのカスタマイズも可能です。
ソーシャル・サインイン認証
「ソーシャル・サインイン認証」とは、会員制Webサイトなどのアカウントを使用し、ほかのアプリやサービスにサインインできる仕組みのことです。Oracle Database 19c のソーシャル・サインイン認証スキームは、Open ID Connect / OAuth2の標準を使用するSNSでの認証をサポートします。主にGoogleやFacebookなどのSNSから未認証のユーザーがアプリケーションを使用する場合、または企業でOpen ID Connect / OAuth2などのユーザー資格検証を標準化している場合にWebアプリケーションで役立ちます。
REST対応SQLのサポート
分散システムで複数のソフトウェアを連携させる、「REST」に対応したSQLをサポートします。通常SQLではリモート・データベースでセッションを開きますが、REST対応SQLの場合は、HTTPまたはHTTPSを通じてJava Script Object Notationを扱います。そのため、インターネット上やクラウド環境での使用が可能です。
まとめ
Oracle Database 19cは、長期間サポートや最大90%の運用コスト削減、強固なセキュリティなどの特徴をもち、システム導入における柔軟性があります。新しくアプリケーション作成ウィザードの改善や、ソーシャル・サインイン認証などの機能も追加され、データベース管理システムの拡張性や利便性がより追求されています。
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