所得税とは? 種類や計算方法など基本を解説

 2023.10.25  株式会社システムインテグレータ

納税は国民の三大義務のひとつであり、豊かで安心して暮らせる社会を維持するためにも、私たち国民は然るべき税金を納めなくてはなりません。そして政府の主要な歳入源のひとつとなる税金が所得税です。本記事では所得税の種類や基本的な計算方法、税率の決まり方や納税方法などについて解説します。

所得税とは、個人の所得に課せられる税金

income-tax

所得税とは、1月1日から12月31日までに得た個人の所得に対して課税される税金です。所得は収入から必要経費を差し引いた金額のことで、給与所得者は「給与収入-給与所得控除額」、個人事業主やフリーランスなどの場合は「収入-必要経費」で算出できます。
そして所得税とともに復興特別所得税を納めることが義務付けられています。復興特別所得税は東日本大震災からの復興を目的として、2013年から2037年まで課される税金です。

申告所得税と源泉所得税

所得税は所得税法に基づいて制度化されており、申告所得税と源泉所得税の2種類に分けられます。

■申告所得税
申告所得税は「申告納税制度」に基づいて納める所得税です。一般的に「所得税」としてイメージされます。
個人事業主やフリーランス、あるいは20万円を超える副業所得がある個人などは確定申告を通じて所得税を納付しなくてはなりません。確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算した申告書類を税務署へ提出し、納付すべき所得税額を確定する制度です。個人事業主やフリーランスでも発注側の事業者が報酬の10.21%を源泉徴収するケースがあり、その場合は確定申告時に源泉徴収税額を申告しなければ二重納税となる点に注意が必要です。 

■源泉所得税
源泉所得税は「源泉徴収制度」に基づいて納める所得税です。源泉徴収とは、従業員への給与や業務を委託した個人事業主への報酬から一定金額を天引きし、支払いをした事業者が納税者に代わって納税する仕組みを指します。本来、所得税は個人が自ら納付するものですが、一般的な給与所得者の場合、源泉徴収制度に基づいて給与や報酬の支払いをした事業者が納税者に代わって所得税を納付します。

所得税の税率の決まり方

所得税率は一律ではなく、課税所得金額によって変動する点に注意が必要です。ここでは所得税率の基本的な決まり方について解説します。

所得が大きいほど税率も高い

日本の所得税や贈与税、相続税などには超過累進課税制度が採用されています。超過累進課税は所得が一定の金額を超えた場合、その超えた分についてのみ最も高い税率を適用する課税方式です。詳しくは後述しますが、たとえば一般的な給与所得者であれば、年収から給与所得控除額と配偶者控除や医療費控除などを差し引いて課税所得金額を算出します。仮に課税所得金額が300万円だった場合、195万円までは所得税率が5%、それを超える部分については10%の所得税率が適用されるという仕組みです。

■所得税の速算表

  • 195万円未満 / 5%(控除額0円)
  • 195万円以上330万円未満 / 10%(控除額9万7,500円)
  • 330万円以上695万円未満 / 20%(控除額42万7,500円)
  • 695万円以上900万円未満 / 23%(控除額63万6,000円)
  • 900万円以上1,800万円未満 / 33%(控除額153万6,000円)
  • 1,800万円以上4,000万円未満 / 40%(控除額279万6,000円)
  • 4,000万円以上/ 45%(控除額479万6,000円)

参照元:所得税の税率|国税庁

控除額によって同じ年収でも納税額は違う

所得税率は課税所得金額によって変動するため、同じ収入でも所得控除によって納税額は異なります。代表的な所得控除として挙げられるのが扶養控除や社会保険料控除、医療費控除、生命保険料控除などです。たとえば納税者の配偶者が一定以下の所得の場合は配偶者特別控除の対象となり、同じ年収でも独身の人より納税額の負担が軽減されます。
あくまでも一例ですが、年収500万円の独身の人と配偶者を扶養している人でシミュレーションすると、同じ収入でも所得税額と住民税額に以下のような差異が生じます。

■年収500万円(独身)
厚生年金:45万180円
健康保険:24万6,000円
雇用保険:3万円
所得税:13万7,800円
住民税:24万5,300円

■年収500万円(配偶者を扶養し配偶者の収入が103万円以下の場合)
厚生年金:45万180円
健康保険:24万6,000円
雇用保険:3万円
所得税:9万9,800円
住民税:21万2,300円

所得は10種類に分かれる

所得税法では所得を10種類に区分しています。それぞれ解説します。

給与所得

給与所得は源泉徴収前の給与収入から給与所得控除額を引いた金額を指し、「給与所得=給与収入-給与所得控除額」という数式で算出できます。
給与収入は勤務先から支払われる源泉徴収前の給与や賞与、各種手当てなどを合計した金額で、給与所得控除額は給与収入に適用される控除です。
個人事業主やフリーランスなどは事業所得から必要経費を差し引けますが、給与所得は必要経費の計上が原則として認められていません(特定支出を除く)。その代わり、所得税法で定められた給与所得控除額を給与収入の金額に応じて無条件で差し引くことができます。
たとえば年収500万円の給与所得控除は「収入金額×20%+44万円」で144万円となります。そこからさらに所得控除を差し引いた金額が課税所得金額です。

■給与所得控除額(収入金額:給与所得控除額)

  • 162万5,000円以下:55万円
  • 162万5,001円以上180万円以下:収入金額×40%-10万円
  • 180万1円以上360万円以下:収入金額×30%+8万円
  • 360万1円以上660万円以下:収入金額×20%+44万円
  • 660万1円以上850万円以下:収入金額×10%+110万円
  • 850万1円以上:195万円(上限)

参照元:給与所得控除|国税庁

事業所得

事業所得は小売業や製造業、卸売業、農業、漁業などの事業活動で生じた所得です。商品の販売やサービスの提供などで発生した利益から必要経費を差し引いた金額が事業所得であり、
「事業所得=事業の収入金額-必要経費」
という数式で算出されます。
青色申告の承認を受けた個人事業者の場合は、さらに青色申告特別控除額を差し引いた金額が事業所得となります。一般的に個人事業主やフリーランスなどの収入はほとんどが事業所得ですが、後述する不動産所得や山林所得などは事業所得に含まれません。たとえば個人事業主のWebデザイナーが自身の保有する賃貸物件から家賃収入を得ている場合、確定申告の際に事業所得と不動産所得の青色申告決算書を別途で作成する必要があります。

退職所得

退職所得は退職の際に勤務先から支払われる退職金や一時恩給などによる所得です。適格退職年金契約に基づいて受ける退職一時金なども退職所得に含まれます。
退職所得は所得税と住民税の課税対象となるものの、他の所得と切り離して所得税額を計算する分離課税です。さらに勤続年数に応じて一定の金額を差し引ける退職所得控除額が認められています。
たとえば勤続年数が40年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円」です。
そして退職所得は
「退職所得=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2」
という数式で計算されます。
退職金を2,500万円と仮定すると「2,500万円-2,200万円=300万円」で、その1/2の150万円が課税対象となる計算です。

■退職所得控除額

  • 勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
  • 勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

参照元:退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁

利子所得

利子所得は公債や社債、預貯金などの利子によって生じる所得です。利子所得は事業所得のように必要経費の計上が認められません。
したがって、利子所得の計算式は
「利子所得=利子の収入金額」
となり、預貯金の利子や公社債投資信託の収益の分配といった収入がそのまま所得となります。
また、原則として利子所得は支払いを受ける際に「所得税15.315%」と「住民税5%」が源泉徴収されるため、基本的に確定申告をする必要はありません。

配当所得

配当所得は株式の保有数に応じて分配される配当金、あるいは投資信託の収益分配金などから得た所得です。基本的に配当所得は配当金が生じる元本の取得を目的とする借入金の利子しか必要経費として認められません。したがって、配当所得の計算式は
「配当所得=配当の収入金額-元本の取得に要した負債の利子」
となります。
また、一定の上場株式(大口株主以外)の配当金は「所得税15.315%」「住民税5%」が源泉徴収されます。大口株主や非上場株式の配当金については「所得税20.42%」が源泉徴収されますが、住民税は源泉徴収されないので原則として確定申告が必要です。

不動産所得

不動産所得はマンションやアパート、地上権、地役権など、不動産や不動産上の貸付けによって得た所得です。
不動産所得は
「不動産所得=不動産の収入金額-必要経費」
という数式で計算されます。
不動産の貸付けで発生する収入は、それが事業の場合であっても事業所得ではなく不動産所得に分類される点に注意が必要です。
また、不動産の貸付が事業的規模とみなされると資産損失や事業専従者給与などの取り扱いが優遇され、さらに青色申告特別控除の対象となります。そのため、不動産所得は事業的規模と認められるか否かで所得税に大きな差が生じる可能性があります。

山林所得

山林所得は山林の伐採や譲渡などによって生じる所得です。ただし、山林を取得してから5年未満で伐採・譲渡した場合は事業所得か雑所得に分類されます。また、山林を山ごと譲渡する場合、土地に該当する部分は譲渡所得の対象です。
山林所得は
「山林所得=山林の収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)」
で算出され、次に
「山林所得の税額=課税山林所得金額×1/5×所得税率×5」
という数式を用いて税額を計算します。この税額の求め方は「5分5乗方式」と呼ばれます。
たとえば課税山林所得が500万円の場合、「500万円×1/5×税率(5%)×5=25万円」が納税額です。

譲渡所得

譲渡所得は資産の譲渡によって得た所得です。
一般的には土地や建物、借地権、株式、宝石、書画、漁業権、著作権、鉱業権などの資産が譲渡所得の対象となります。
譲渡所得は
「譲渡所得=譲渡による収入金額-(取得費用+譲渡費用)-特別控除額」
という数式で計算されます。
なお、不動産を売却した際の譲渡所得には2つの区分がある点に注意が必要です。
所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」となり、5年を超える場合は「長期譲渡所得」に分類されます。
短期譲渡所得の税率は39.63%(所得税30.63%・住民税9%)ですが、長期譲渡所得の税率は20.315%(所得税15.315%・住民税5%)と大幅な差が生じます。

一時所得

一時所得は事業所得・退職所得・利子所得・配当所得・不動産所得・山林所得・譲渡所得に該当しない一時的な所得です。たとえば懸賞金やギャンブルで得た利益、報労金、立退料、あるいは保険料の負担者と受取人が同一人物で、満期保険金を一時金として受け取った収入も一時所得に分類されます。
一時所得は
「一時所得=一時的な収入-必要経費-特別控除額(最大50万円)」
で算出可能です。そして算出された「一時所得の1/2」が課税の対象となります。

雑所得

雑所得はここまで紹介した9種類の所得のいずれにも該当しない所得です。たとえば年金や恩給、暗号資産やFXの取引で得た収入、300万円を超えない副業の収入、本業以外の原稿料や印税、非営業用貸付の利子などが雑所得に分類されます。年金や恩給などの公的年金による所得は「雑所得=収入金額-公的年金等控除額」、それ以外の雑所得は「雑所得=収入金額-必要経費」という数式で算出されます。

所得税の計算方法

一般的な給与所得者の具体的な所得税額を計算するプロセスは以下の通りです。

給与所得を計算する

所得税を計算する場合、まずは給与所得を計算しなくてはなりません。
給与所得は「給与所得=給与収入-非課税の手当-給与所得控除」という数式を用いて算出します。非課税の手当に該当するのは一定金額以下の通勤手当や在宅勤務手当、宿直手当、海外渡航費、または社会通念上相当と認められる祝金や見舞金などです。
非課税の手当を差し引いた給与収入が500万円だと仮定します。そこから年収500万円の給与所得控除額144万円を差し引いた356万円が給与所得です。

課税所得金額を計算する

給与所得を算出したら、次は「課税所得金額=給与所得-所得控除」という数式を用いて課税所得金額を計算します。
所得控除とは、一定の要件に該当する場合に所得から差し引かれる控除です。
所得控除には15の種類があり、なかでも48万円の基礎控除はすべての納税者に適用されます。
また、社会保険料控除は正規雇用であれば多くの人が該当する所得控除であり、年収500万円の社会保険料は約75万円です。
年収500万円で給与所得が356万円と仮定し、それに基礎控除と社会保険料控除を適用すると「356万円(給与所得)-(48万円(基礎控除)+75万円(社会保険料控除額))=233万円」で、課税所得金額は約233万円となります。

■所得控除の種類

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

参照元:所得控除のあらまし|国税庁

所得税額を計算する

所得税額は「課税所得金額×所得税率-控除額」という数式で計算されます。
年収500万円で給与所得が356万円、課税所得金額が233万円の場合、「233万円(課税所得金額)×10%(税率)-9万7,500円(控除額)=13万5,500円」が所得税額です。
ただし、これはあくまでも簡易的なシミュレーションであり、非課税の手当や所得控除の適用状況、配偶者や扶養家族の有無などで大きく変動する点に留意してください。

所得税の納税方法

一般的な給与所得者は雇用主が所得税を天引きして徴収するため、原則として納税者が自ら納税をする必要はありません。しかし個人事業主やフリーランス、または一定以上の所得がある給与所得者などは確定申告をして所得税を納税する必要があります。
その場合は振替納税・ダイレクト納付・インターネットバンキング・クレジットカード・スマホアプリ決済といったキャッシュレス納付と、金融機関や税務署の窓口、あるいはコンビニで現金に納付書を添えて納付する方法があります。

キャッシュレス納付、現金納付はそれぞれ以下のような特徴があります。

  • 振替納税は事前に依頼書を提出しなくてはなりませんが、一度手続きをすれば翌年以降の手続きが
    不要になり手数料がかかりません。
  • ダイレクト納付とインターネットバンキングは事前に手続きをすれば手数料がかからず、場所を選ばずに納付できます。
  • クレジットカードは決済手数料がかかりますが分割払いやリボ払いを選べるというメリットがあります。
  • スマホアプリは場所を選ばずに納付できます。
  • 金融機関や税務署、コンビニでの現金納付は手数料がかからず特別な準備も不要な点がメリットです。

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まとめ

所得税とは、1月1日から12月31日までに得た個人の所得に課される税金を指します。課税の対象となるのは給与や売上などの収入ではなく、収入から必要経費や所得控除などを差し引いた所得です。所得税法では所得を給与・事業・退職・利子・配当・不動産・山林・譲渡・一時・雑の10種類に区分しています。そして所得税には源泉所得税と申告所得税の2種類があります。基本的に源泉所得税は給与所得者を対象とする制度で、申告所得税は個人事業主やフリーランス、または一定以上の副業所得がある個人などを対象とする仕組みです。
所得税は超過累進課税制度が採用されているため、基本的に年収の増大とともに所得税額も高くなりますが、所得控除の有無によって納税額は変動します。

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