TiDBとは?分散型データベースの仕組みと特長

 2025.07.01  株式会社システムインテグレータ

TiDBは分散型のNewSQLデータベースです。MySQLと互換性を持ち、OLTP、OLAPどちらも対応するHTAP(ハイブリッドトランザクションおよび分析処理)をサポートしています。本記事では、TiDBの仕組みや特長について、詳しく解説していきます。

TiDBの概要

分散型データベース「TiDB」

TiDBは、PingCAP社によって開発されたオープンソースの分散型データベースであり、NewSQLの1つです。従来のRDB(リレーショナルデータベース)では、整合性・一貫性を保てるものの、大量データの読み書きが行われる大規模で複雑な環境には、対応が困難という課題がありました。NewSQLは、RDBのように整合性、一貫性を保ちつつ、分散環境の仕組みによりスケーラビリティとパフォーマンスの課題を解決しています。

NewSQLについては、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。https://products.sint.co.jp/siob/blog/newsql

TiDBの仕組み

TiDBは、大きく分けて4つの主要コンポーネントで構成されています。

  • TiDB Server
  • TiKV Server
  • TiFlash Server
  • PD Server

これらのコンポーネントが連携してTiDBというシステムを構成しています。

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引用:TiDB ドキュメント

・TiDB Server

TiDB Serverは、SQLクエリを受け付け、処理を行います。ユーザーやアプリケーションからのSQLリクエストを受け付け、それを解析・最適化し、データを取得・格納するTiKV Serverまたは、TiFlashに処理を依頼します。TiDB Serverはステートレスであるため水平方向へのスケールアウトが容易であり、アクセス負荷の増大時にも柔軟に対応できます。

・TiKV Server および TiFlash Server

TiKV Serverは、実際のデータを格納するストレージレイヤーです。データは「リージョン」と呼ばれる単位に分割され、複数のTiKV Serverに分散して保存されます。TiFlash Server もデータを格納するストレージレイヤーですが、こちらは列ごとにデータを保存し、主に分析処理に用いられます。

・PD Server

PD Serverは、どのデータがどのTiKV Serverに格納されているかといったメタデータ管理や、スケジューリング、リーダー選出などを担います。

TiDBの特長

分散型SQLデータベース

TiDBの大きな特長が、分散型SQLデータベースであることです。分散型データベースは、複数のノードにデータとワークロードを分散することで、高い拡張性と可用性を実現します。また、分散型でありながらSQLを用いてRDBと同様の操作方法が可能です。これにより、従来のRDBMSと同様の操作で、大規模データ環境においても対応できます。

HTAP(ハイブリッドトランザクションおよび分析処理)

HTAP(Hybrid Transactional and Analytical Processing:トランザクション処理と分析処理の両立)とは、トランザクション処理(OLTP)と分析処理(OLAP)を同一のデータベース上でリアルタイムに実行できる仕組みのことです。TiDBでは、トランザクション処理向けのTiKV Serverと、分析処理向けのTiFlash Serverが連携することで、データを自動的に同期・最適化して処理を分散させます。

MySQLの互換性

TiDBはMySQL5.7互換のSQL構文およびプロトコルを採用しています。このため、MySQLを利用していたシステムでは、既存のアプリケーションやクライアントライブラリをほぼそのまま利用可能です。また、開発者は追加の学習コストを抑えて導入することが可能です。

フルマネージドサービス

TiDBは、オンプレミス向けのオープンソースソフトウェアのほか、TiDB Cloudと呼ばれるクラウドネイティブなマネージドサービスも提供しています。TiDB Cloudを利用すれば、ユーザーはインフラ構築や運用管理が不要となり、アプリケーション開発に集中できます。

TiDBの導入事例

格闘技イベントのライブ配信システム

TiDBは、リアルタイム性と高い同時接続性が求められるライブ配信システムでも採用されています。例えば、数万人の視聴者が同時にアクセスする格闘技の大規模なイベントでは、ライブ配信システムにTiDBが採用され、従来のデータベースでは処理が困難な膨大なトランザクションと高負荷を支えました。

マイクロサービスのデータベースにTiDB Cloudを採用

フードデリバリーを運営する企業では、既存のITインフラがスケールアップの限界を迎えており、システムのマイクロサービス化に向けて取り組んできました。そこで採用されたのがTiDB Cloudです。チューニングせずとも必要な性能を確保できる高いパフォーマンスで運用負荷の低減と柔軟なスケーリングにより課題をクリアしました。また、マネージドサービスであるため運用負荷を軽減できることや、MySQLと互換性によりアプリケーション開発者にも扱いやすいことも魅力です。

分散技術「シャーディング」の課題をTiDBで対応

オンラインゲームを運営する会社では、複数のAmazon Aurora MySQLサーバーを用いてシステムを運用していました。データを複数のサーバーに分散させる「シャーディング」を用いて負荷分散を行っていましたが、データの分割設計が難しいだけでなく、変更時は計画停止を伴います。そのため、データベースの運用に課題を抱えていました。これに対してTiDBは、データベースエンジン内部にシャーディング機構が備わっているため、アプリ開発者はシャーディングを意識する必要がありません。また、無停止でスケーリングも可能であるため、計画停止の問題も解決できました。

まとめ

TiDBは、リレーショナルデータベースの一貫性・整合性を維持しながら、分散アーキテクチャによって高いスケーラビリティと可用性を実現するNewSQLデータベースです。MySQLとの互換性を持ち、既存システムからの移行がしやすい点も大きな魅力といえるでしょう。

また、OLTPとOLAPを同時に処理できるHTAP型の構成により、リアルタイム性が求められる大規模システムや、負荷の高い分析業務にも柔軟に対応できます。ライブ配信、ゲーム、フードデリバリーなど、瞬間的に膨大なアクセスが集中するビジネスでも実績を重ねており、パフォーマンスと信頼性の両立が可能です。

以上のような特徴を持つTiDBは今後ますます有力な選択肢となっていくでしょう。


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