販管費(販売費及び一般管理費)とは?内訳や分析方法を解説

 2022.01.11  株式会社システムインテグレータ

損益計算書に記載する科目のひとつ「販管費(はんかんひ)」は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益です。おおよその概念は理解しているものの、「実務で費用を振り分ける際に手間取ってしまう」という方もいるのではないでしょうか。しかし、ビジネスを行ううえでは企業会計を正しく理解しておかなければいけません。今一度、内訳や分析方法を確認しておきましょう。

この記事では、自分の理解度を再確認したい方や、これから知識を身に付けたい方に向けて、販管費の概要や内訳・勘定科目、分析方法、費用を抑える方法について解説します。 

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販管費とは

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「販売費」は「販売費及び一般管理費」もしくは「販売管理費」の略称であり、商品・サービスの販売や管理にかかった経費を指します。英語では「Selling, General and Administrative expenses」と表記し、「SG&A」と略されるのが一般的です。

会社の営業利益を増やすためには売上を上げるかコストを削減する必要があり、この「販売費」は費用のなかでも大きな割合を占めています。具体的には、商品やサービスの販売・管理に要した人件費や福利厚生費、販売手数料、接待交際費、オフィスの水道光熱費、消耗品費などの経費全般です。ここでは、基本となる「販売費」と「一般管理費」についてわかりやすく解説します。 

販売費とは

「販売費」は、会社の営業活動に費やした費用のうち、商品の販売に関連して発生した費用です。

具体的には、販売する従業員の給与や、チラシなどの広告宣伝費、発送費・配達費、委託業者や代理店への販売手数料などが挙げられます。なお、売上原価は商品を製造・加工したり、仕入れたりする際に発生した「直接費」となるため、この科目には含まれません。 

一般管理費とは

販売費のなかでも、販売に直接影響しないが業績や景気に関わらず日々必要になる支出で、会社の一般管理業務に必要なすべての経費が「一般管理費」です。会社の本業において収益を得るために使用される経費を指します。

例えば、販売に直接関与しない間接部門の人件費や、オフィスの光熱費や保険料、採用費、通信費など「販売を管理するためのもの」にかかる費用が該当します。

この費用は、少なければ少ないほど企業にとって良い結果であると言えるでしょう。売上に対する経費が少なければ、効率的な企業経営ができていることを意味するためです。 

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販管費の内訳と勘定科目について

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ここでは、販売費と一般管理費について、「内訳と勘定科目」という視点で解説します。

各項目では給与手当や法定福利費など共通点もありますが、その他の内訳を見ると違いが明確になるでしょう。

販売費の内訳と勘定科目

販売費の内訳・勘定科目は、以下のとおりです。 

給与手当

雇用契約に基づく労働の対価で、営業部門の従業員に対する人件費を指します。 

法定福利費

健康保険法や労働基準法、厚生年金保険法などの様々な法律・法令によって定められた給与手当に伴う「事業者に負担が義務付けられている福利厚生の費用」です。 

販売手数料

あらかじめ定められた契約に基づいて、委託業者あるいは委託会社、仲介人に支払う手数料です。

販売に用いる決済システムの利用料も含まれます。この費用は「情報の提供」や「紹介」などの対価として支払う際にも用いられることがあるため注意しましょう。 

広告宣伝費

ウェブメディアへのニュースリリース掲載やCM広告などの宣伝にかかる費用です。 

旅費交通費

営業部門の移動交通費です。具体的には、飛行機代や有料道路の通行料金、電車やバスなどの公共交通機関を利用した費用、タクシー代、ホテルや旅館などの宿泊費などが挙げられます。 

一般管理費の内訳と勘定科目

一般管理費の内訳・勘定科目は以下のとおりです。 

給与手当

経理など管理部門の従業員の人件費です。従業員が受け取る給与の9割程度が基本給、1割程度が給料手当になるのが一般的と言われています。 

法定福利費

給与手当に伴って発生する人件費です。具体的には、健康保険や厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険などが該当します。 

採用費

採用費には2種類あり、社内の採用業務にかかった時間を「内部コスト」、採用ポータルサイトや求人情報誌の掲載費用などを「外部コスト」と言います。その他、合同会社説明会への参加費や、採用パンフレットの印刷・製本費、プロモーション動画の制作費などの外注費もこちらに含まれます。 

通信費

社内ネットワークの通信代やハガキ、切手、FAXなどに使用した費用です。電報料金やサーバー代などは通信費に含まれますが、電話のリース料金や宣伝用のダイレクトメール、印紙などの経費は含みません。従業員本人のスマートフォンや携帯などを仕事で使用する場合は、私用と業務とで使用した分を明確に分類して計上します。 

消耗品費

コピー用紙やペンなど日常消耗品に使用した費用です。税法において厳密な定義は定められていないものの、国税庁が公表している「帳簿の記帳のしかた」には以下のように記載されています。

  • 帳簿や文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの購入費
  • 使用可能期間が1年未満、あるいは取得価額が10万円未満のオフィス備品の購入費

※ 取得価額が10万円未満か否かは、事業者が採用する経理方式(税込経理方式または税抜経理方式)によって判定基準が異なります。 

人件費の取り扱いについて

会計のルール上、人件費は従業員の業務区分によって売上原価に計上されることがあります。

例えば、製造業は人件費が売上に直結するため、人件費が売上原価に含まれます。人件費=販管費ではなく、従業員の業務区分に応じて売上原価にも計上される場合があることに留意しましょう。 

販管費を使った分析

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一般的に、この科目には「販売費比率(販売管理費比率)」を使用して分析します。スムーズに分析できるように算出方法を覚えておきましょう。ここでは、販売費比率の概要やその算出方法、分析例などを解説します。 

販売費比率とは

販売費比率は、売上高に対してどれだけ費用がかかったかを示す指標です。この数値は少ない方が営業利益や収益性の向上に繋がります。売上高が一定であっても、この比率を低く抑えられれば、営業利益を上げられます。

比率は業種や事業内容によって幅があるため、比較を行う場合は自社の業種や業務内容に近い企業と比較すると良いでしょう。例えば、医薬品・精密機器などの製造業は比率が高くなり、建設・造船などの製造業は低くなる傾向にあります。 

販売費比率の算出方法

販売費比率を算出する際に使う計算式は以下のとおりです。

販管費比率(%)=販売費及び一般管理費÷売上高×100

 販売費のみを対象とする場合は以下の計算式を用います。

販売費比率(%)=販売費÷売上高×100 

販売費比率を活用した分析例

ここで、実際に販売費率を活用して分析例を見てみましょう。

2019年4月期:伊藤園「有価証券報告書」より主要指標を転載 ※2020年5月末時点 

売上高 504,153百万円
販売費及び一般管理費 217,555百万円
営業利益 22,819百万円 

販売費及び一般管理費の内訳

販売手数料   84,760百万円
給与手当 44,292百万円
運送費 15,210百万円
広告宣伝費   11,544百万円
減価償却費  11,296百万円
賞与引当金繰入  3,909百万円

計算した結果

販管費率 43.1%
販売手数料、対売上高比率 16.8%
給与手当、対売上高比率 8.7%
運送費、対売上高比率  3.0%
広告宣伝費、対売上高比率 2.2%
減価償却費、対売上高比率 2.2%
賞与引当金繰入、対売上高比率 0.7% 

分析結果を見ると販売費の割合が大きく、手数料と給与を合わせると25%以上となっていることがわかります。

この分析方法だけでなく、前期と比較する「二期間比較」など異なる方法で分析すれば新たな課題や改善点を見つけられるかもしれません。 

販管費を抑えるには

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有効な対策として、以下が挙げられます。 

経営層の報酬削減

多くの場合、人件費は販管費の5〜7割を占めていると言われています。しかし、給与削減や解雇は労使間トラブルなどのリスクがあります。まずは、役員報酬や接待交遊費の削減など、経営層が調節しやすい範囲から見直すことを推奨します。 

広告費の見直し

この費用は固定費として扱われる場合が多く、改善すべき項目として扱われないことも少なくありません。しかし、この費用こそ売上や需要予測に応じて削減できる項目と言えます。費用対効果を測定し、効果が高いものに集中的に投資することで効率的に商品やサービスのアピールをできるためです。

また、コスト構造を理解しておけば、値下げ・オプション交渉の余地を把握して対策を講じられます。その結果、大幅なコスト削減に繋げられるでしょう。 

オフィスのテナント料

複数の事業所を所有している企業では、この項目での支出が大きな負担となります。人件費の次に負担となる項目が、オフィスのテナント料というケースも少なくありません。しかし、近年では新型コロナウイルス感染症対策としてリモートワークが急速に普及しています。従業員の出社する日数が低減したことから、オフィスの立地や広さにこだわる必要がなくなりつつあります。

この機会に立地や広さなどの条件を見直して、テナント料のより安い物件に移転するのもひとつの手段です。その他、電気代や水道代・通信費などを見直すのも良いでしょう。電気やガスを安いプランに変えたり、節電・節水を従業員に求めたりする、契約中のインターネットに不要なオプションがあれば外す、などといった手軽にできる対策から始めるのも効果的です。 

その他

前述のように、人件費は経費のなかでも多くの割合を占めています。いくら経費を削減すると言っても人件費を削減するのは難しいため、まずは小さなことから始めてみましょう。例えば、社内で使用するメモや資料作成に裏紙を使用する、Web会議ツールを活用して営業活動における接待費や交通費を削減するといったことなどです。また、残業時間や、社用車の燃費を見直すのも良いでしょう。

特に消耗品に関して、受注する業者を確定してから見直しを行わない企業もあります。多少手間がかかっても定期的に見直すことでコスト削減に繋げられるでしょう。ロットとなれば多額となるため、年間を通して考慮すると大きな成果を実感できるはずです。 

ERPで会計処理を手軽に

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会計処理は他部門との連携が必要な業務ですが、転記・共有が必要なうえ、手作業によるヒューマンエラーや非効率化などのリスクもあります。そこで活用したいのがERPです。

ERP(Enterprise Resources Planning)は、企業経営における資源要素を適切に分配して有効活用する計画を指します。現在では、企業の情報戦略に欠かせないツール「基幹系情報システム」を指して用いられることが多いです。そんな基幹系情報システムは、以下の主要システムから構成されています。

ERPなら会社全体のあらゆるデータを一元管理できるため、リアルタイムで他部門とデータを共有することが可能です。変更点が生じてもシステム上で常に最新情報を共有できるため、情報の誤認を低減できるでしょう。紙媒体を使用するコストやコミュニケーションコスト、時間的コストなども削減できます。

また、情報を一元管理することでセキュリティの管理がしやすくなる点も特長といえるでしょう。アクセス権限を設ければ業務に携わる従業員以外の閲覧・変更を限定できるため、紙媒体のような盗難や紛失のリスクを防げます。さらに、ERPは以下のように様々な導入形態があります。 

完全統合型ERP

すべての業務一式をカバーするオールインワンタイプです。 

コンポーネント型ERP

会計や販売、生産などある程度の業務単位で導入して、追加・拡張できるタイプです。 

業務ソフト型

財務会計や在庫管理、発注管理など単独業務のみをソフト化して導入するタイプです。 

ERPの導入形態については以下のブログで詳しくご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

ERPとは?統合基幹システムの種類やメリットなどを解説

自社に合うERPを導入することで業務効率化やコスト削減を図れます。まずは自社の課題を洗い出し、どの業務を自動化すべきか、どの部署まで連携すべきかなどを明確化しましょう。 

まとめ

販管費は分析や他部門との連携など、管理が煩雑になってしまうケースが多数あります。独立した会計システムではなく、ERPを導入することで原価など他の会計業務と合わせて管理できるようになります。

業務全体の効率化についてERP導入もお考えの場合はぜひ弊社資料をご覧ください。ERPの基本についてわかりやすくまとめた資料をご用意してあります。

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